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Exciting world of microbial studies toward establishment of sustainable agriculture
= 持続的農業の確立の為の微生物の制御と利用 =
Ryo Fukui (福井 糧)
電話:028-649-5420
Email:ryo@cc.utsunomiya-u.ac.jp
21世紀における持続的な循環型農業・社会を確立するためには、農業廃棄物や生ゴミなどを含む有機廃物を無機物にまで分解する微生物の役割を解明し、さらに有効利用することは不可欠です。一般に「微生物」と言えば「ばい菌」というイメージが常に付きまとい、我々の生活環境から除去される対象となりがちですが、作物や我々人間に感染し病気を引き起こす微生物種は、その全体の1%以下を占めるに過ぎません。即ち大部分の微生物は、生態系の中でそれぞれの役割を担い、その多くは地球上の物質循環に大きく役立っているのです。、また特定の微生物は、作物や人間の病原菌から我々を守ってくれています。一方で、WHO(世界保健機関)によると、1976年以降新しく出現した人間の病原体は30種類以上を数え、今後さらに増加すると予想されており、実際大腸菌O157や近年のSARSウイルスなど、これまでに存在しなかった新しい病原体による感染症も発生しています。これらの情勢をふまえ、微生物の「有害」な部分と「有益」な部分を把握し、農業生態系の中でのそれら微生物種の成り立ちと挙動(役割)を解析することで、熱帯から温帯・寒帯にまで応用できる持続的農業の方法を研究してきたいと考えています。
最近の研究テーマ
・植物残さの土壌埋設に伴う土壌微生物コミュニティの変動の解析と、「植物農薬」系統の育成
・異なる土壌環境条件下におけるRalstonia solanacearum(トマト青枯病菌)の個体群構造の解析
・植物茎頂組織培養系を利用した大腸菌O157の宿主外生態の解析
・生分解性プラスチック連続埋設土壌における土壌微生物コミュニティの解析と作物生産性との関連
・バイオセンサー細菌を用いた環境アセスメント
・乳酸菌による食料残飯の発酵産物を利用した植物病害の防除
・アンスリウム切り花の老化に伴う微生物相の役割と老化抑止法の検討
・タロイモ球茎の休眠機構の解析(温帯性サトイモとの比較)
開講科目
熱帯農学(専門科目):熱帯農学の特徴について、熱帯の気候環境、土壌、そして発展途上国の社会的背景に関連して説明し、水資源などの具体的な問題点を学習する他、熱帯農業、ひいては世界の農業について考察します。
熱帯植物資源論(専門科目):栽培植物を含む様々な熱帯植物について、それらが利用されてきた歴史的背景、その有用性、植物学的な特徴を学習し、今後21世紀に熱帯植物資源がどのように利用され、我々の生活にどのようなかたちで影響を及ぼすかについて考察します。
初期セミナー(初期教育科目):米国Discovery Channel製作の科学に関するテレビ番組のビデオを視聴し、英語を聞き取る訓練を行い、英語による科学的表現を学習するとともに、学生自らミニ科学論文を作成し発表する実践的な演習です。
見て学ぶ微生物学(共通教育科目):米国Discovery Channel製作の微生物に関するビデオ("Understanding: Bacteria"など)を視聴し、英語と視覚から微生物学を学習する訓練を行うことで、微生物学の基礎を学ぶと同時に、生物学に関する基本的な英語用語を学修する授業です。
熱帯農学特論(大学院授業科目):学部生対象の熱帯農学と熱帯植物資源論でカバーできなかった事柄について、さらに専門的に解説し、特に「混作」や「sluch/mulch農法」に焦点をあて、熱帯地域における持続的農業のあり方について考察します。
植物・土壌微生物学特論(大学院授業科目):植物と土壌に生息する微生物について広く紹介し、それらが植物に関わる部分で果たしている役割について考察し、それら微生物を制御する方法や、生態的特性を解析する先端の技術について解説します。
最近の主な研究活動業績
論文:
Fukui, R. Suppression of soilborne diseases through community evolution of soil microorganisms. Microbes and Environments 18: 1-9(2003年)
福井 糧. 持続的農業と生物防除(土屋・對馬監修、土づくりの中の生物防除 −土着・導入微生物活性化技術の開発をめざして−)、日本植物病理学会バイオコントロール研究会、8巻、11-22頁(2003年)
福井 糧. 微生物の制御による病原微生物制御、土と微生物、56巻、85-93頁(2002年)
福井 糧. 土壌病原菌の根圏・根面での挙動解析、土壌伝染病談話会レポート、21巻、53-66頁(2002年)
Fukui, R., Fukui, H. and Alvarez, A. M. Suppression of bacterial blight by a bacterial community isolated from the guttation fluids of anthuriums. Applied and Environmental Microbiology 65:1020-1028(1999年)
Fukui, R., Fukui, H. and Alvarez, A. M. Comparisons of single versus multiple bacterial species on biological control of bacterial blight of anthurium. Phytopathology 89:366-373(1999年)
Alvarez, A. M., Fukui, R., Fukui, H. and McElhaney, R. Bioprotecting anthurium against bacterial blight. GrowerTalks 62:74-77(1999年)
Fukui, R., Fukui, H. and Alvarez, A. M. Effect of temperature on the incubation period and leaf colonization in bacterial blight of anthurium. Phytopathology 89:1007-1014(1999年)
Fukui, H., Alvarez, A. M. and Fukui, R. Differential susceptibility of anthurium cultivars to bacterial blight in foliar and systemic infection phases. Plant Disease 82:800-806(1998年)
著書:
福井 糧. 拮抗生物利用による生物防除の将来展望(百町満朗 監修、拮抗微生物による作物病害の生物防除 −我が国における研究事例・実用化事例−)、クミアイ化学工業株式会社、印刷中(2003年)
福井 糧. 生物防除研究の歩みと21世紀での役割 −BakerとCook著「Biological Control of Plant Pathogens」が果たした役割と意義−(服部 監修、新・土の微生物10)、博友社、印刷中(2003年)
学会発表:
Andriantsoa, R. O., Uda, Y., Bang, S. V., Honjo, H., Fukami, M. and Fukui, R. Effects of cruciferous plant residues incorporated into soil on survival of Ralstonia solanacearum. (平成15年度 日本植物病理学会大会)
福井 糧. 持続的農業と生物防除(平成15年度日本植物病理学会 バイオコントロール研究会、シンポジウム講演)
福井 糧. 微生物コミュニティにおける植物病原菌の役割と挙動(平成14年度日本微生物生態学会第18回大会、シンポジウム講演)
福井 糧. 土壌病原菌の根圏・根面での挙動解析(平成14年度日本植物病理学会 土壌伝染病談話会、シンポジウム講演)
福井 糧. 微生物相の制御による病原微生物抑制(平成14年度日本土壌微生物学会2002年度大会、シンポジウム講演)
略歴
2000年 5月 宇都宮大学 助教授 農学部生物生産科学科 就任(現在に至る)
1999年 4月 米国ハワイ大学 植物病理学部 博士研究員
1998年10月 米国カリフォルニア大学リバーサイド校 線虫学部 博士研究員
1993年 1月 米国ハワイ大学 植物病理学部 助手兼専門研究員
1992年12月 米国カリフォルニア大学バークレー校 植物病理学部 博士課程修了
1988年 8月 米国ワシントン州立大学 植物病理学部 修士課程修了
1986年 3月 大阪府立大学 農学部園芸農学科 卒業
所属学会:
日本植物病理学会
日本土壌微生物学会(評議員、2003-2004)
日本微生物生態学会(編集委員、2003-2004)
日本熱帯農業学会
米国植物病理学会(American Phytopathological Society)
米国微生物学会(American Society for Microbiology)