熱帯植物資源論(農学部専門科目)

 

<授業の目標>  熱帯地域は地球の全陸地の約38%を占め、世界の人口の約50%がそこで生活している。現在熱帯地域での人口が急速に増加し、それに伴い様々な環境破壊や生物資源の消失が進んでいる。このような状況をふまえ、熱帯植物資源が今後私達の生活にどのような影響を及ぼすかを考えるために、すでに利用されている熱帯植物についての基礎的な形態・生理を学び、それぞれの植物がどのようにして資源として利用されるに至ったかについて学習する。そしてこれらの知識に基づいて、熱帯植物を取り巻く現在の情勢や、今後21世紀に熱帯植物がどのように位置づけられ、利用されるべきであるかについて考察する。

<授業内容>  授業の前半では学生諸君に比較的身近なコーヒー、バナナ、パイナップル、パパイヤなどの嗜好品作物や熱帯果実について紹介し、それらの生態的特性や遺伝的背景について学習し、温帯作物と熱帯作物の基本的な相違点について理解する。授業の中程では、熱帯森林とその現状、そして熱帯森林を構成する木本植物について学習し、資源としての熱帯森林の役割を考えるとともに、海洋植物プランクトンが地球環境に及ぼす効果についても考察する。そして授業の後半では、パラゴムノキ、サトウキビ、香辛料植物、繊維・染料植物などの工芸作物について解説し、其々の植物の特性のみならず、世界で利用されるようになった歴史的背景を学習する。これらの学習を通して、今まで知らなかった熱帯植物が、如何に私達の日常生活を豊かにしているかが理解できるであろう。また薬用植物や麻薬植物にもフォーカスを当て、人間が植物の薬理作用をどのように利用してきたかについて学び、薬物乱用の実情を知るとともに、今後の私達の薬理植物との関わりについて考察する。

<授業計画>

第 1週 熱帯環境と熱帯植物の一般的特性、マングローブ

第 2週 コーヒーとその他のアカネ科植物、コーヒーの化学

第 3週 バナナとその他のバショウ科植物、作物ワクチン

第 4週 熱帯果樹(アナナス科、パパイヤ科)

第 5週 熱帯果樹(ウルシ科、パンヤ科、オトギリソウ科、ムクロジ科)

第 6週 熱帯森林と木材資源の育成と管理

第 7週 「目に見えない熱帯森林」、生物資源の消失とその現状

第 8週 熱帯林を構成する植物(パラゴムノキ、クワ科、ヤシ科、クズウコン科)

第 9週 サトウキビとその他イネ科植物

第10週 麻薬と麻薬植物

第11週 香辛料植物(コショウ科、フトモモ科、ニクズク科、クスノキ科、ショウガ科)

第12週 ワタとその他のアオイ科植物

第13週 繊維植物と染料植物

第14週 薬草と21世紀の代替治療