プロジェクト
科学研究費補助金
研究課題名
イネ節組織の分子イメージングによる茎内窒素固定の制御機構の解明
基盤研究(C)(一般)
実施期間
令和7年度~令和9年度
研究背景
持続可能農業への志向や化学肥料の価格高騰から、窒素肥料原料のアンモニアをマイルドな反応条件で作り出す生物学的窒素固定が注目されています。このような背景から牛糞堆肥の長期連用水田でイネを栽培したところ、出穂期に不伸長茎部で窒素固定を触媒する内生細菌ニトロゲナーゼの高活性化が生じていました。出穂期の不伸長茎部では茎下位の節が多く存在し、ニトロゲナーゼの反応に適した環境が整っていることが考えられます。どのような環境がニトロゲナーゼの高活性化に寄与するのかを明らかにすることは、イネの窒素固定活性を高め化学肥料の削減に結び付く可能性が考えられます。
研究目的
ニトロゲナーゼ活性が発現するには、外部から侵入した窒素固定細菌が不伸長茎部まで移行し、さらにそれら細菌が炭素源を分解し活性に必要なエネルギーを獲得するする必要があります。また、ニトロゲナーゼは酸素により失活するため、酸素のない環境である必要があります。葉から輸送される糖類(炭素源)と葉から根に移送される酸素(活性阻害物質)、そして根から侵入する窒素固定細菌(触媒)の茎内交通路における接続点である節でニトロゲナーゼ高活性化が生じる過程を解析します。イネ茎内における窒素固定の仕組みを明らかにすることを目的とします。
研究課題名
土壌窒素固定活性の評価法開発と竹粉砕資材ならびに微生物資材による活性化
基盤研究(C)(一般)
実施期間
平成29年度~平成31年度
研究背景
窒素固定は大気中の窒素ガスから窒素化合物を作る反応です。工業的には化学合成法により製造されるアンモニアを原料として窒素肥料が作られています。この化学合成法では高温・高圧が反応条件として必要となるため、結果として多量の化石燃料が消費されます。一方、自然界ではマメ科植物の根に形成される根粒の中に生息する細菌が窒素固定を行うことがよく知られています。細菌による窒素固定は常温・常圧で反応が進むため、これら細菌を積極的に活用することにより窒素肥料の使用を減らし化石燃料の消費が抑えられる可能性があります。
研究目的
耕作地土壌に微生物資材や、竹稈を数百マイクロメートル程度の大きさに粉砕した竹粉を施用することで、土壌の窒素固定活性を高めることを目的に研究を行っています。微生物資材に関しては、土壌中の窒素固定細菌を単離し培養することで窒素固定能の高い細菌を選抜し、その菌を微生物資材として利用することができるかどうかを評価します。また竹粉に関しては、窒素固定反応に必要となる細胞内のエネルギーの供給源としての利用を考えています。竹粉は窒素に対して炭素の比率が高いことから、土壌微生物による分解を受けた後に窒素固定細菌のエネルギー源となるのではないかと期待しています。
研究成果の概要
宇都宮大学農学部附属農場の水田圃場において、化学肥料、牛糞堆肥、牛糞堆肥と竹粉の3つの施用試験区を設定し、4月、7月、11月の計3回、各区画から3箇所ずつ土壌のサンプリングを行いました。4月、7月、11月採取土壌のいずれからも、窒素源を含まない培地において細菌のコロニーが形成されニトロゲナーゼ活性が確認されました。コロニーを形成した細菌は窒素固定細菌であると考えられます。7月採取土壌では、4月あるいは11月採取土壌と比較しコロニーの数が多く、かつ窒素固定を触媒するニトロゲナーゼ活性も高い値を示しました。気温が高く水田となっていることが大きく影響したと推察されます。しかしながら、4月と7月に採取された土壌ではコロニー数とニトロゲナーゼ活性において試験区間で有意な差が認められませんでした。一方、11月採取土壌では各試験区間で有意な差が認められ、牛糞堆肥と竹粉、牛糞堆肥、化学肥料の施用試験区の順にコロニー数が多くニトロゲナーゼ活性が高い結果となりました。これらの結果から、水田土壌への竹粉供給が土壌の窒素固定活性に及ぼす影響として、非栽培期(11月)における土壌への窒素源供給が増加し次期の稲作に向けた土壌改質に結び付く可能性が示唆されました。現在、各試験区から得られたDNA塩基配列のデータを基にした菌叢の解析と、単離された細菌の窒素固定能の評価を行っています。







