宇都宮大学 農学部応用生命化学科

-生物高分子材料学(羽生・金野)研究室-

 私たち人類が、過度な石油依存型の社会システムから脱却して21世紀を生き延びていくためには,再生産が可能なバイオマス(生物資源)と上手に付き合っていくことが必要です.

 生物高分子材料学研究室では,バイオマス・微生物(きのこ)・酵素をキーワードに機能性材料開発を目指し研究しています.

 バイオマス資源を化学的もしくは生物的に処理することによって,これまでにない新しい機能を付与する研究や,それらの生分解メカニズムを明らかにする研究などを行っています.バイオマスの高度利用から循環型社会の実現を目指します.

バイオマス由来の新規生分解性材料

 地球上に豊富に存在する代表的なバイオマス資源である「木材」やその主要成分である「セルロース」を効率的に利用することが重要であると考えられます.  近年,バイオマス由来の生分解性高分子が注目されています.私たちの研究室では,再生セルロースをTEMPO触媒酸化することで得られる新規材料「セロウロン酸(β-1,4-グルクロナン)」を特異的に分解する新規酵素を,自然環境中から発見しました.新たな生分解性高分子の開発を目指し,材料分解に関与する微生物や酵素について研究などを行っています.

木材分解メカニズムの解明

 上の写真は,きのこ類(木材腐朽菌)によって腐朽されている木材の内部を,電子顕微鏡で観察したものです.菌糸が木材組織(仮道管)内の穴(有縁壁孔)を貫通している様子がわかります.このように,きのこ類は木材中に菌糸をまん延しながら木材成分を分解し,自身の栄養にしています.この際に,きのこ類は木材を分解する酵素を分泌しています.私たちの研究室では,これら酵素を解析しながら,木材分解メカニズムを解明し,バイオマスの物質変換や,木材防腐技術に貢献したいと考えています.

きのこ類に含まれる多糖や酵素

 上の写真は,シイタケの菌床栽培の様子です.きのこ類は木材等で栽培されるため,森林資源の貴重な活用な場となっています.きのこ類の高付加価値化と新規用途開発を目指し,企業とも協力しながら研究を進めています.特に,きのこ由来の多糖類や関連酵素についての研究,廃菌床の有効活用法の開発を行っています.