摘果:果樹の栽培管理

人間生活と植物

摘果(摘蕾・摘花)の目的
 
開花や果実の成長には貯蔵養分,光合成産物,根から吸収された無機成分を多く必要とするため,花数や果実数が多いと果実が小さくなったり,樹体生育などに様々な悪影響がある。そのため,余分な果実,蕾,花を間引くことにより,
a)花芽分化に必要な体内養分を確保し,隔年結果を防ぎ連年安定生産,b)着果数を適正に管理し,果実の大きさや商品性の向上,c)新梢を適度に生育させて樹勢の維持を図ること,などである。


ふじ(11月上旬,盛岡にて)

リンゴの花が咲き,幼果ができるまで


つぼみが出現


各つぼみの花弁が着色


中心花は開花直前(バルーン)


中心花が開花

 受精した果実は開花後1ヶ月くらいは盛んに細胞分裂を行い,その後は細胞の肥大成長により果実サイズを増加する。気温(夜温)が高いほど肥大が良い。幼果期の平均気温が高いと満開から収穫までの日数が短くなる(例:ニホンナシ「幸水」)。
 また,幼果期以降は日射量の多寡が果実肥大に大きく影響する。


摘果前の果そう


摘果後:中心果を残す

参考資料:新編果樹園芸学(化学工業日報社,2002)

摘果の時期は?
 つぼみ時に行う摘蕾(らい),開花時に行う摘花,幼果期に行う摘果がある。摘果の時期は早いほど良く,摘果<摘花<摘蕾の順に効果が大きい。しかし,摘果の後で晩霜害や早期落果があると過剰に果実を落とすことになるので,予備摘果仕上げ摘果ので果実数を調整する。
 予備摘果は,細胞分裂の終了以前に行うことが望ましく,リンゴでは満開後25日頃までに予備摘果,60日までに仕上げ摘果を行う。ニホンナシでは満開後14日頃までに予備摘果,30日頃までに仕上げ摘果を,モモでは同20-30日後までに予備摘果,40-50日頃までに仕上げ摘果を行う。カキの場合は開花前10-15日頃に摘蕾,7月上旬頃に仕上げ摘果を行う。

1果当たりに葉は何枚必要か?
 仕上げ摘果の程度は1果当たりの葉数(葉果比)を基準とし,温州ミカンでは25-30枚/果,多くの果樹で1果当たり20-40枚が目安である。リンゴでは中玉で40枚,大玉品種で60-70枚,ニホンナシ・モモでは20-30枚,カキでは15-25枚,ブドウの大房品種では12-16枚,同小房品種では7-10枚が基準となるが,品種や樹勢,気象条件により調節する。果樹栽培で最も重要かつ労力を必要とする作業の一つであるため,リンゴ・西洋ナシ・柑橘・モモでは効果的な摘果・摘花剤の開発が進められている。将来は開花後早期に適度に生理落果し,予備摘果をしなくても果実肥大に悪影響のない自家摘果性品種の育成が必要である。


仕上げ摘果後(ふじ)

摘果程度
 リンゴでは予備摘果で果実が最も大きくなる中心果を1果そう1果とし,仕上げ摘果で3-5果そうに1果とする(下図参照)。ニホンナシの場合は,大きさは1番花に劣るが果形の良い2-4番花を残す。リンゴの場合中心花から咲き出す(左写真参照)が,ニホンナシの場合は逆に基部から咲き上るので,同じ1番果でも着生位置が異なるので注意!


リンゴの摘果(上:予備摘果前,下:予備摘果後)

 


附属農場における摘果実習風景


わい性台リンゴ樹


ニホンナシ棚仕立て園