ニホンナシ(Pyrus pyrifolia

人間生活と植物

仁果類(Pome fruit)リンゴ・ナシの仲間

ナシ棚の上から見ると(附属農場果樹園にて)/ニホンナシの花そう

 水菓子という語がまさに当てはまる果実。ニホンナシは,日本固有のもの。「ありのみ」とも称する。「梨の礫(つぶて)」:梨を無しにかけて,便りを出しても音沙汰ないこと。種により,心室数が異なる。自家不親和で,一部交配不親和がある。柿と違い,庭先果樹にはならなかった。病害虫防除の関係からか。

贈答用の箱には「有りの実」が使用されることもある

台木には何が?

マメナシ:P.calleryanaとホクシマメナシ:P.betulaefolia 直径1-2cm程度の果実。心室は2から3個,雌ずいも2本。

ニホンナシ:Pyrus pyrifoliaとチュウゴクナシ:P.ussuriensisとあわせて,Asian Pearと呼ばれる。

 チュウゴクナシ品種としては,慈梨,鴨梨……白梨系統,開花が早い(霜害を受けやすい)。休眠性の違い。秋子梨:耐寒・耐干性最強。追熟する芳香,北京白梨。

セイヨウナシ:P.communis には

 収穫後,予冷し追熟させる.高温・多雨な気候に不適。密閉性の高い西洋建築と気候にあう?日本建築は隙間が多すぎた。ラ・フランス,ル・レクチェ,マルゲリット・マリラ,バートレット,他

 ニホンナシの品種:現存の栽培種は200以上,文献では500以上の品種名,絶滅の危機。

 江戸末期から明治初期に,在来品種が当時の新品種に更新されていった。・・・幸蔵,独逸,真鍮

長十郎:川崎の当麻長十郎氏,1889年に実生。黒斑病・黒星病に強く,甘い。豊産性。・・・新世紀,長寿,多摩の母本。

二十世紀:1888年松戸市の松戸覚之助氏の祖父庄衛門氏が,分家の石井佐平氏のゴミ捨て場にあった2本の実生から。黒斑病に弱い,品質良好。1898年命名。袋かけと薬散により,普及した。この点は,ゴールド二十世紀により克服。

育種のはじまり:1915年菊地秋雄氏が開始,神奈川県農事試験場(後京大)で,二十世紀に長十郎,太白,赤穂,を交配し,「新世紀」「菊水」「八雲」,天の川に今村秋を交配して,「新高」を育成。

 君塚氏は,新幸蔵に独逸を交配し,君塚早生を

 「菊水」と「早生幸蔵」から「幸水(1959)」が育成され,「新水(1965)」,「豊水(1972)」がつづいた。

 ゴールド二十世紀:直径200mのガンマーフィールドで,コバルト60を20年間照射し,枝変わりを発見。

 おさ二十世紀:自家結実性の栽培品種。

自家・他家不和合性と不結実性,及び単為結果など

 自家不和合性:同一品種間で不受精となる。リンゴ,ニホンナシ,セイヨウナシ,オウトウ,スモモ,ウメ,アンズ,カンキツの一部(ヒュウガナツ,ハッサク,バンペイユ)。

 他家不和合性:ある品種間の組み合わせの時に不受精となる。オウトウ,スモモ,ニホンナシ,リンゴ。

 ニホンナシには,S〜Sの不和合性遺伝子と各遺伝子を組み合わせたSS,SSなどの複数の遺伝子型があり,受精させるには遺伝子型の異なる品種の花粉を受粉する必要がある。‘おさ二十世紀’は,‘二十世紀’の花柱における不和合性遺伝子Sが変異(Ssm)し,遺伝子型がSSsmとなった花柱部突然変異とされる。‘おさ二十世紀’に‘二十世紀’の花粉をつけると受精するが,その逆は受精しない!

 単為結果:受精しなくても,子房だけが発達し,無種子の果実を生じる現象で,自動的/他動的単為結果。単為生殖は受精しなくても,種子の入った果実を形成する現象。しかし,カキ,ブドウ,セイヨウナシやオウトウの一部に受精しても種子を形成せず,子房壁や花托が発達して無種子果実を形成することがある。このような例は偽単為結果という(例:トムソン・シードレス)。平核無は,自動的単為結果と偽単為結果が混在。GA処理。リンゴやセイヨウナシで見られる自動的単為結果の多くは三倍体で花粉不稔や胚のう不完全が原因。 

栽培法は?

下の園はマルチにより光・水分環境が改善された

 光環境の有効利用と樹体の生理・生態,果実の安定生産を考慮して,枝幹の配置等の整枝法が研究されてきた。

主枝の分枝位置の違い:ABともに得失あり,Cは中間

根域制限栽培(栃木農試で開発)も行われる

人工授粉の様子: