国際農業協力論 2005年度期末試験 回答例(参考)
1.「南ブラジル小規模園芸研究計画」について,配布資料14と15の中間評価チーム英文レポートに関しての以下の問に答えなさい。派遣された中間評価チームは、このプロジェクトについて、以下の点をどのように指摘・総括しているか,整理して説明しなさい。
1)プロジェクトの主要な項目:品種と台木の評価および選抜,栽培技術,植物保護技術,土壌・植物栄養・生理障害の4つについて,何が,何処まで,解明されたか?何が残って問題とされているかを述べなさい。 (1)品種と台木の評価と選抜 リンゴ、品種:「さんさ」と「インペリアル・ガラ」が早生(熟)で理想的な形質を持つとして選抜され、カタリナ種は晩生で黒星病抵抗性を持つものとして選抜され、4つのCG台木が、「ふじ」に接いだ時、矮性効果、生産性、果実の形や着色からみて良い結果を示した。リンゴの黒星病、疫病(color rotあるいはcrown rot)、ダニ、アブラムシに対する抵抗性実生を得るために試験が継続中である。 Pyrus calleryana D12とP. betulaefoliaは、ニホンナシ品種に対する高い発根性(活着性)を示す台木として選抜された。この3年間では2種の台木に接いだ13品種のなかで豊水の生長が良好であった。 それ故、この分野におけるほとんどの活動は順調に進行していると評価される。しかしながら、中生品種の選抜とニホンナシの疫病に対する台木の感受性を評価するためにPhytophthora cactorum菌の接種方法の確立が望まれる。 (2)栽培技術の確立 M9を中間台木として使用すると、マルバカイドウ台木に接いだ「ふじ」や「ガラ」の樹勢や樹高を抑制した。中間台木の長さが20cmの場合、収量や樹勢、樹の寿命から判断して2×5mが適正な栽植距離と推定された。枝を十字状に配置する改良主幹形が従来の仕立て(整枝)法に比べて高い生産性を示した。 ニホンナシの3つの整枝法、主幹形、開心形、V字形が試験されているが、定植後数年しか経っていないので差が出ていない。花芽異常の原因は解明されていない。しかしながら、様々な実験で得られた結果に基づいて、冬期の温度変動と休眠後期の温度が花芽異常に増加に関係していた。人工授粉が花芽異常による被害減少に有効である。 この分野における活動は良好に進行している。しかしながら、花芽異常が南ブラジルにおけるニホンナシ栽培の確立のための限定要因であるから、花芽異常に関する調査研究の強化を提言する。 (3)植物保護技術の開発 ニホンナシ園で発生した主要病害虫が同定された。幸水その他における新しく記載された病害はFabraea斑点病(Entomosporium mespili),胴枯病(Dothiorella sp.)である。ミバエとダニもまた主要害虫として発見された。新しく記載された他の害虫はアブラムシ(Diabrotica speciosa)他である。 ナミハダニの激しい蔓延が観察された。この現象はダニ剤抵抗性の発達というより、ピレスロイド剤の過剰散布によるものと判断された。 リンゴの深刻な病害の一つであるガラ穿孔病の原因菌は、Colletotrichum gloeosporioides, C. acutatum & C. sp.と同定され、分生子の侵入に必要な温度条件と葉の濡れの関係が明らかにされた。 マルバカイドウ台のリンゴの樹勢衰弱の原因となるACLSVがリバビリンの散布により感染穂木の新梢先端から除去された。約6000本の感染していないマルバカイドウ実生が茎長培養と熱処理による無毒化の組み合わせにより作成された。 それ故、この分野の活動は良好に進行していると判断された。 (4)土壌、栄養肥料、生理障害研究の強化 リンゴ園における土壌と植物栄養の試験研究は1998/99年のシーズンに開始したので、1年間の結果しか得られていない。ニホンナシ園の植物栄養研究は、植物栄養のアンバランスを発見した。即ち、それは葉中におけるMg、Zn、Bの低含量とK、Mnの高含量である。葉と土壌分析の結果に基づいて、栽培農家に修正対策を提言した。 リンゴ園や低温貯蔵中でのいくつかの生理障害、即ちそれは、water core, lenticel blotch,ホウ素欠乏,bitter pit, cork spotとinternal breakdown、の発生が観察された。ニホンナシについて、栽培園での以下の生理障害の発生が観察された;果実のサビ、葉のMg欠乏とK過剰、果実のホウ素欠乏など。 りんご園での土壌や生理障害に関する試験はブラジル側の土壌栄養分野のカウンターパートの任命の遅れ、JICAにより提供される機器の到着遅れ、ブラジル側の建物建設の完成遅れ等により、計画から遅れていると評価される。 それ故、決定的なデータを得るために、リンゴの土壌栄養に関する集中的な研究の継続が必要である。 2)ブラジルでのリンゴとニホンナシに対する具体的な影響はどういうものか? (1)リンゴ 28年間にわたる日本の技術協力を通して、ブラジルのリンゴ生産は飛躍的に増加した。 プロジェクト方式の技術協力が1996年に開始されて以来、その活動は生産と品質の向上のための技術開発と普及を目標に進められた。多くの栽培農家はプロジェクトにより開発、提言された技術を紹介された。 (2)ニホンナシ サンタカタリナ州で1964年以来少数の農家がニホンナシ栽培を続けてきた。しかしながら、栽培技術上の問題があり、栽培面積は少ししか増加しなかった。1996年のプロジェクト開始以降、プロジェクトによる技術支援と市場での高価格により、ニホンナシ栽培に興味を持ち始めた。最近では、ニホンナシ栽培面積は増加している。1995年に38.1haだったのが1999年には78.5haに増加した。 情報として、リオグランデドスル州におけるニホンナシ栽培面積もまた明らかに増加している。 3)合同委員会は何を提言したか? 1)プロジェクトサイト、即ちEPAGRIのサンジョアキン試験場とカサドール試験場、EMBRAPAのCPACT間の緊密な協力と継続、一層強化されるべきである。 2)ニホンナシの花芽異常に関する調査研究が必要である。 3)リンゴに関しての土壌、栄養の集中的な研究の継続が必要である。 4)ブラジル側の必要な予算の確保がプロジェクトの活動強化に強く望まれる。 5)州政府によるニホンナシ栽培の振興計画の策定と実行が、このプロジェクトによる栽培技術の開発・改良と並んで、欠くことのできない(絶対必要な)対策として必要である。
2.インドネシア作物保護計画のPDMは開始時に作成されていない。そこで,以下に示したプロジェクト実施前に行われた実施協議チームとインドネシア共和国側との討議議事録(RD)における「事業の基本計画(1980年6月18日 ジャカルタにて開催)」を読んで,添付したPDMを貴方の考えで完成させなさい。 事業の基本計画 1.本事業は,虫害及び病害から起因する米収量の損失を最小限に食い止めることをねらいとして,インドネシア国における稲病害虫防除効果の向上のための研究調査を行うことにより,稲病害虫の予察防除技術の開発と,それによる病害虫総合管理体制の確立を目指す。 2.本事業は次の活動を行う。1)ジャチサリ発生予察実験所 稲病害虫(トビイロウンカ,イネシントメタマバエなど)に関する生態学的調査研究(発生生態の地域・季節変動,サンプリング法,個体群動態,経済的防除水準,予察圃場や多発時の調査,気象要因との関係など) 2)ボゴール中央農業研究所発生予察研究室 稲病害虫(同上)に関する基礎的研究:産卵・増殖,死亡率に及ぼす要因の解明とBio-typeの遺伝形質に関する研究 3)パッサルミング農薬検査室 農薬の分析技術の向上;製品検査(標本抜き取り調査と有効成分検査),残留検査(作物標本採取と残留農薬検査) 4)パッサルミング中央事務所 中央政府レベルでの発生予察情報,研究成果や技術開発情報に基づく発生予察・防除に関する本部機能の向上。 5)その他 成果情報,標本,研究報告の交換,食用作物保護に係わるスタッフ,技術者の能力向上 3.日本人専門家 チームリーダーを含む長期専門家(昆虫関係)3名,及び両国政府関係当局により合意された活動調整員 1名。短期専門家(病害,農薬化学,その他)。 4.日本からの供与物品 調査研究及び実験活動に必要な設備,機械,器具,予備部品及びその他の資材;調査研究及び実験活動に必要な農薬及びその他の試薬;視聴覚機材と関連する物品;車両(車,オートバイなど);書籍及びその他必要な印刷物;その他の設備,資材 5,インドネシア人職員プロジェクトリーダー,カウンターパート(日本人専門家への),実験室助手,圃場作業員,タイピスト,書記,運転手,その他職員。 6.土地,建物,施設パッサルミングの中央事務所及び実験室。ジャチサリの発生予察実験所及び実験圃場。ボゴール中央農業研究所内の研究室。設備,機械及びその他資材の格納倉庫。車庫,その他必要な土地,建物。 回答欄:PDMの記入例
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注意事項:本項は,あくまで回答例を提示したものである。インドネシア作物保護計画についての公式PDMの存在の有無は確認できていないので,問2の回答はあくまで記入例に過ぎないことに注意されたい。 |