ヌマスギ(Taxodium distichum

植物のある風景(その11)

呼吸根(沼地や湿地で生き延びる戦略)

つくば市にて

 ヌマスギ属(Taxodium)は,スギ科でアメリカ東南部からメキシコにかけて3種が分布する。落葉または半落葉の高木である。短枝の葉は線形で2列につき羽状複葉のように見え,秋に短枝ごと落ちるので落羽松の名がある。生長が早く,低湿地によく生育する。本属の仲間は第三紀に北半球に繁茂し,日本の化石層からもメタセコイヤなどともに出土する。

 左写真は,T. distichumであり,ラクウショウと呼ばれる。英名はcommon bald cypressあるいはswamp cypress高さ50mにもなる高木で,日本へは明治期に渡来した。

 庭園や公園の池の周囲に植栽されるが,株の周りに地下の根から発生する杭状または膝状の呼吸根(左下写真)を出す。これは一年の大半が水に浸されるような沼地や湿地(下写真)で生き抜くための植物の適応であろう。

ヌマスギの呼吸根