タチバナ(Citrus tachibana

人間生活とくだものーくだもののある暮らしー


タチバナ(着果状態)

 樹は低木性で,樹高は3m程度になる。耐寒性は優れているが,高温や乾燥には弱い。葉は披針形で翼葉がなく,長さ5cm,幅2cmくらいの小形である。花は小さく,花冠は半開性で,ふつうは上向きになる。タチバナの語源はこの立花にあるとされる。果実は扁平で10g内外の小果である。果面は平滑で光沢があり,鮮やかな黄色を呈する。果皮は薄く,剥皮は容易,果肉は淡黄色で柔軟多汁であるが,酸味が強く生食には不向きである。

参考:園芸植物大事典,小学館(1994)

 日本における野生カンキツの一種で,コウジやサンキツ,クレオパトラなどの小果類と同じ仲間である。野生状態での分布地域は奄美大島から,九州,四国,中国,和歌山,三重,静岡に及ぶ。

 「ときじくのかくのこのみ:非時香菓」は,古事記に「其の非時香菓は是れ今の橘なり」と呼ばれたように,本種であるとされる。また,平安時代以降,儀式時に紫宸殿の南階下の西方に植えたタチバナ(橘)の側に右近衛府の宮人が列したことから「右近の橘」とされ,神聖な樹木として,神社仏閣の境内に植えられてきた。


タチバナ成木(熊本県天草にて)