絞め殺しの木(Ficus属の戦略)

植物のある風景(その7)

ベンガルボダイジュ:イチジク属アコウ亜属
F. benghalensis)Banyan Tree
Hawai'i島にて

ベンガルボダイジュの支柱根
O'ahu島にて

ベンガルボダイジュの気根・支柱根

ガジュマル(F. microcarpa)沖縄・名護市にて

カシワバゴムノキ(F. lyrataHawai'i島にて

アコウ(F. superba var. japonica)熊本・三角にて

 ベンガルボダイジュやガジュマルなどFicus属の植物は,寄主植物の樹上で発芽し,気根を垂らす。そして,寄主を覆うように育ち,同化作用を妨げられた寄主は枯れていく。そして,多くの気根が地中に入り支柱根を形成して,1本の木で広大な面積を占めるようになる。

 ベンガルボダイジュは,インドや熱帯アジアに広く分布する高木で,30mにもなる。果嚢(花床が窪んで壺状となった花嚢が発達したもの:イチジク状果)は葉腋に対でつき,球形で径1.5cm,軟毛があり橙赤色となる。枝からは気根を出し,やがて支柱のようになって枝が横に広がっていく。

 ガジュマルは,イチジク属アコウ亜属で,日本から中国南部,アジア,ニューギニア,オーストラリアまでの熱帯・亜熱帯に分布する。常緑高木で,高さ20mもの大木になる。黄色または赤褐色のイチジクに似た小型の壺状花序を生じる。上に述べた絞め殺し戦略で生長する。

 ところで,観葉植物としてよく知られるインドゴムノキ(F. elastica)はアコウ亜属である。また,葉の形が面白いカシワバゴムノキ(F. lyrata;英名 fiddle-leaf fig)もアコウ亜属である。熱帯アフリカ原産のバイオリン(fiddle)形の大きな葉をつける常緑高木であり,果嚢は腋生し,球形で径約3cmで緑色の地に白色斑点がある。

カシワバゴムノキの果嚢

 アコウは,アコウ亜属で,日本(和歌山以西)から台湾,中国南部に分布する。高さ20mにもなる常緑高木であるが,年2回短期間落葉する。春,枝や幹にごく短い柄の淡紅色の球形の果実(果嚢)を生じる。花嚢内には虫えい果も混在し,虫の出た小さな穴が見られる。

アコウの果嚢(古い葉腋に1-4個束生)

 参考:園芸植物大辞典,小学館,1994