パラゴムノキ(Hevea brasiliensis) トウダイグサ科

比較農学

プランテーション植物としての代表選手

インドネシア・ボゴール近郊にて

 樹齢数年以降の幹の樹皮に切り込みをつけ,浸出する乳液を集め,酢酸を加えて凝固させ,ローラーで圧搾乾燥したものを輸出する。大規模プランテーションでは,およそ20年ほどでゴムの収量が落ちるので,更新される。

 天然ゴム分を含む植物は,トウダイグサ科 (マニホットゴムノキ),クワ科 (インドゴムノキ),キョウチクトウ科( ザンジバルツルゴム),キク科( グアユールゴムノキ,ゴムタンポポ),アカテツ科 (ガタパーチャノキ, バラタ;何れもゴルフボールの外皮に使用,サポジラ;天然チクルとしてチューインガム原料),マメ科 (アラビアゴムノキ)など多いが,大規模な栽培は行われていない。

 ブラジル原産の高木で,樹液から天然ゴムをとる目的で,熱帯雨林地帯で大規模なプランテーション栽培が行われる。樹高17-20m,直径60cmで,樹皮は灰白色で厚く,形成層に接する内層部に多数の乳管が走り,乳液(ラテックス)を含む。乳液には35%のゴム質が含まれる。

 1839年C. Goodyear(USA)がゴムの加硫硬化法を発見して用途が広がり,ゴム工業が発展した。当初はすべての原料を野生樹から得ており,主要積出港の地名パラ(現ベレン,アマゾン河口)にちなみ,パラゴムと名付けられた。乱採による天然資源の枯渇した。1876年, イギリス人探検家ウィッカムにより,ブラジルからひそかに種子7万粒を持ち出された種子が,ロンドンのキュー植物園に植えられ苗にしたのち,ブラジルと気候の似ている英国領植民地インドやマレー半島,スリランカに送られ,1900年頃からの需要の拡大に伴い,東南アジアでの栽培が急激に発達した。

 1930年以降、野生ゴムは世界のゴム市場での役割を失い,アマゾンでのゴムラッシュの繁栄も昔話になった。20世紀になり、自動車が発明普及するとゴムの需要は爆発的に伸びた

ゴムは,イソプレン(C5H8)モノマーが立体的に重合している。化学工業の発達により,合成ゴムが開発された。

参考:世界有用植物事典 平凡社(1989)