ネジバナ(捩花)

植物のある風景

Spiranthes sinensis 右巻き,あるいは左巻き?

 学内を歩いていると,初夏に芝生のなかに小さな螺旋(らせん)が出現してきます(写真左上)。これは、ネジバナ(捩花)と呼ばれるラン科の多年草です。淡紅から紅色,時には白色の小花が少しずつ回転して花序(花穂)に着生するので螺旋形となるのです。捩摺(もじずり)とも呼ばれます。

 不思議な花の並び方,花序の方向について

 この花をみて何か,不思議ではありませんか?良く見てください。アサガオやフジなど,つる性の植物(写真左下)は巻く方向が決まっています。この2本のネジバナの花序は螺旋が右巻きと左巻きになっています。周りをみると、どこで失敗したのか、螺旋が途中でほぐれたものや不揃いなものなど、色々なものが観察できます。自然の妙といえるでしょう。

 つる性の植物の右巻きと左巻きは、どのように定められているのでしょうか?実際のところ、アサガオやインゲンマメは左巻きとしたもの(牧野富太郎氏)、逆にアサガオを右巻き、フジを左巻きとした植物図鑑もあり、この巻きかたの名称は統一されず混乱しているようです。英語の右巻き(dextrorse)は「上から見て、根から芽に向けて」の意で、これに従うならアサガオは左巻き(sinistrorse)となります。

つる性植物の戦略

 さて、つる性植物は、それに巻きつかれた木の幹よりはるかに細いのに同じような高さにまで到達する。木の幹は自重による圧縮力(座屈)に耐えるために背が高いものほど太くなる必要がある。それに対して、つる植物が引っ張りに対して耐える張力にはつるの長さが関係しないので、長さの割には太くならない。つる植物の生存戦略はなかなかのものです。