[ホーム>学位論文]

本頁は吉田智彦指導学位論文の要旨です.

指 導 学 位 論 文

Happy !

以下に博士論文の概要を記し,諸君の努力を私の誇りとしたい. 投稿論文数も付した(勿論審査付全国誌で筆頭著者.私は和文でも充分と思っている). 課程博士は全員3年で修了. 29個の熱いドラマができました. ほぼ全部PDF論文全文へのリンク付き.

注)
I.県の人事担当者へ.「学位=現場無視」 なんて言わないで下さい. ここに掲げた県の人の学位論文は日常の課題そのものを纏めたものばかりです.
II.留学生についてはここ. 皆帰国して活躍中.
III.社会人についてはここここ
IV.農業や理科の先生も先輩に続いて頂戴. 教育を重視した論文内容です.
V.学位論文やその投稿についての雑感はここ

1浜地勇次九大論博1991.2 福岡県農試
2松江勇次鳥取大論博1993.3 福岡県農試
3古庄雅彦九大論博1993.4 福岡農県試
4山本富三九大論博1994.9 福岡県農試
5孫太權九大国際コース1997.9 韓国.IStech.Ltd.
6Totok A.D.H.九大国際コース1998.9 インドネシア Jendral Soedirman Univ.
7今林惣一郎鹿大論博1998.9 福岡県農試
8N.D. Can九大国際コース1999.9 ベトナム Cantho Univ. MeKong Delta Farm. Syst. Inst.
9元鐘建九大国際コース2000.9 韓国.慶尚北道農業技術院
10大里久美九州東海大論博2000.12 福岡県農試
11Anas農工大2004.3 インドネシア Padjadjaran Univ.
12佐々木茂明農工大2005.3 和歌山県有田普及センター,社会人
13太田久稔農工大2005.3 農研機構作物研,社会人
14岡田浩明農工大2005.9 三和生薬,社会人
15内村要介農工大2005.9 福岡県農試,社会人
16藤井敏男農工大2006.3 みつる植物研究所,社会人
17重宗明子農工大2006.9 農研機構北陸研究センター,社会人
18高橋行継農工大2006.9 群馬県西部農業事務所,社会人
19小林俊一農工大2007.3 栃木県農試,社会人
20稲葉幸雄農工大2007.3 栃木県農試,芳賀農業振興事務所,社会人
21佐藤弘一農工大2007.3 福島県農業総合センター,社会人
22Nono Carsono農工大国際コース2007.9インドネシア Padjadjaran Univ.
23坂田勲農工大2007.9 岐阜県飛騨普及センター,社会人
24牛山智彦農工大2008.3 長野県農試,社会人
25Ly Tong農工大2008.3 カンボジア
26大谷和彦農工大2009.9 栃木県農試,社会人
27宮ア成生農工大2009.9 栃木県農業大学校,社会人
28五月女敏範農工大2010.3 栃木県農試,社会人
29亀井忠文農工大2010.3 山梨園芸高校,社会人

ビールオオムギにおける耐湿性品種育成のための遺伝・育種学的研究
浜地勇次(九大論博,1991.2.福岡農試)
 本論文では、ビールオオムギの作柄の安定化を図る目的で、湿害が子実の収量や品質に及ぼす影響を解析するとともに、耐湿性の品種間差異を調査した。さらに、耐湿性の遺伝様式と選抜効果を検討し、ビールオオムギの耐湿性を遺伝的に高める可能性を論じた。
 まず、ビールオオムギの収量と気象要因との関係を多変量解析法で解析した結果、収量は気温や日照時間などの影響よりも、主に降水量が大きく関係し、降水量が多い場合に減収することを明らかにした。また、湿害が収量およびその構成要素に及ぼす影響を調査した.湿害は穎の発育不良や被害粒の発生に大きく影響し、収量や整拉歩合を著しく低下させた。 生育期間中に畦間に湛水処理を行い、多数の品種の耐湿性を判定した結果、稈長、穂数、稔実歩合および収量の被害程度に品種問差異があることを認めた。特に、最近のビ−ルオオムギは他のオオムギやコムギと比較して、過湿条件下での根の障害が大きく、耐湿性が弱かった。
 次に、耐湿性の異なる品種を用いて交配を行い、耐湿性の遺伝様式と選抜効果の検討を行った。耐湿性はポリジーンによって支配され、その遺伝率は低かった(0.12〜0.48)が、選抜効果は認められた。また、耐湿性の選抜にともなう稈長や収量などへの影響は認められなかった。
 耐湿性系統を選抜する形質として、湛水処理による稈長や収量の被害程度および葉枯れの程度を検討した。葉枯れの程度は安定した遺伝率が得られ、簡単に湿害程度の判定ができた.しかも稈長や収量の減少程度と相関があり、雑種初期世代での有効な指標形質であった。 以上の結果から、湿害は収量や品質に及ぽす影野が大きく、耐湿性品種の育成がきわめて重要であることを明らかにしたので、次のような育種方法を提唱した.すなわち、まずビ−ルオオムギと本研究で選定した耐湿性の強い品種を交配,耐湿性はポリジーンによって支配されているので多数の後代の系統を養成し、畦間湛水処理によって初期世代では葉枯れの程度による予備的な選抜を行い、後期世代では稈長、穂数、稔実歩合および収量の減少程度を指標として的確な選抜をすることにより、耐湿性のビールオオムギ品種を育成することが可能であると考察した.(日作紀 4編,育雑 3編公表済)
水稲の食味に及ぼす環境条件の影響及び良食味の奨励品種選定に関する研究
(本研究はさらに発展され,日本作物学会賞に輝いた.写真)
松江勇次(鳥取大論博,1993.3.福岡農試)
 北部九州産米の食味向上を図ることがこの地の水田農業を守り,発展させていくのに急務となっている.そのためには良食味品種の奨励品種の選定や育成,それらの品種の栽培方法の確立などの技術対策が必須である.
1.従来の方法よりも供試点数を増やし,パネル構成員の数を減らし,1回の食味供試点数を10とし,パネル構成員を13人とした本研究での食味試験方法の精度を検討した。食味の品種間差を識別する能力の高いパネル構成員は嗜好性も全体の傾向と一致した。識別能力があると判定されたパネル構成員は全体の約70%であった.品種間差の総合評価のLSD(0.05)は0.522と小さかった。パネル構成員が異なっても両者の判定間の相関は比較的高かった.よってここでの試験方法は妥当と判断された。
2.福岡県の主要品種の食味は日本晴を基準(0.00)として,コシヒカリは0.80,ヒノヒカリ0.80,ミネアサヒ0.56,キヌヒカリは0.36であった。
3.北部九州産の水稲品種において,食味は窒素,アミロースおよびアミログラム特性によって大きく支配され,これらの値を用いて食味判定の指標を作成できることが可能であると考えられた。また重回帰分析によると,ブレークダウン,窒素,アミロースの寄与が大きかった。
4.早植で食味は良く,移植時期が遅れるにしたがい食味は低下した.特に晩植(7月5日植では著しく食味が劣った.また,移植時期の早晩による食味変動の大きい品種と小さい品種があり,食味に対する最適移植時期の幅が品種によって異なることが示唆された。移植時期が遅れることによる食味の低下は,タンパク質含有率・アミロース含有率の増加およびアミログラムの最高粘度,ブレークダウンの低下によるものと考えられた。
5.倒伏により食味が低下し,倒伏時期が早いほど低下が大きかった。成熟5日前の倒伏は食味に影響を与えなかった.倒伏による食味低下は,タンパク質含有率,アミロース含有率の増加およびアミログラムの最高粘凰ブレークダウンの低下によるものと考えられた。
6.早刈や遅刈では食味が低下し,成熟期刈が最良であった.早刈による食味低にはタンパク質含有率,アミロース含有率の増加および最高粘度,ブレークダウンの低下によるものと考えられた。
7.遅刈による食味低下程度の関係は品種により異なり,成熟期刈の食味は良いが遅刈による低下程度が大きいもの,食味が劣り低下程度も大きいもの,食味が良く低下程度が小さいもの,食味は劣るが低下程度も小さいものがあった.
8.遮光処理によって食味の低下が認められ,遮光による食味低下程度は処理時期が早いほど大きかった.遮光処理による食味の低下は,タンパク質含有率およびアミロース含有率の増加とアミログラムの最高粘度,ブレークダウン低下によるものと考えられた。コシヒカリでは出穂別日後の遮光は食味にほとんど影響を与えず,また日本晴より遮光による食味の低下程度が小さかった。
9.殺虫剤無敵布区と散布区では食味に差はなく,殺虫剤の無敵布により食味が向上することはなかった。
10.干ばつはその程度が小でも食味の低下を招き,その低下程度は干ばつ程度が大きくなるにしたがい大きくなった。干ばつによる食味の低下は,タンパク質含有率,アミロース含有率の増加と最高粘度,ブレークダウンの低下によるものと考えられた。
11.穂発芽は食味の低下を招いた。発芽米の混入率が10%では食味に影響を与えなかったが,発芽米の混入率が増加するとその低下程度は大きくなった。穂発芽による食味低下はアミロース含有率の増加と最高粘度,ブレークダウンの低下によるものと考えられた。
12.干ばつや穂発芽による食味の低下程度には品種間差がみられ,コシヒカリやヒノヒカリは低下程度が小さかった。
13.古米で食味が低下し,古米のコシヒカリは新米の日本晴程度であった。食味低下程度には品種間差が認められ,低下程度の大きい品種と小さい品種とが存在し,新米で食味が良好な品種は古米の食味も良く,古米での食味総合評価には外観,味,粘りが深く影響していた。古米の食味と,タンパク質,アミロース,最高精度,ブレークダウンとの関係は明らかでなかったが,古米の遊離脂肪酸の生成量は品種によって異なり,古米の食味の良い品種は遊離脂肪酸が少なく,食味の不良な品種は遊離脂肪酸が多い傾向にあった。
14.食味低下させる理化学的要因は,栽培環境条件によって異なった。また,食味が−0.5以上の有意な差で低下する場合の理化学的特性の絶対値は,品種間差があるものの概してタンパク質含有率では8.5%以上,アミロース含有率では20.0%以上で,アミログラムの最高粘度が300B.U.以下,ブレークダウンが100B.U.以下の時が多かった。
15.栽培環境条件の違いが食味に及ぽす影響と,品種の違いによる食味の差を比較すると,一般的に品種の違いによる食味の差の方が大きく,したがって食味を改善するためには良食味品種の選定や育成による方法が有効だと考えられた。
16.食味について品種の適応性を解析すると,どの年次でも食味が良く安定性の高い品種(例:コシヒカリ),食味は良いが安定性が低い品種(例:ミネアサヒ),食味は劣るが安定性の高い品種,食味は劣り安定性も低い品種に分類できた。
 また産地の適格性の解析を同様に行ったところ,どの年次,品種でも食味が良く安定性のある地域と,食味が劣り安定性の低い産地などに分類できた。この解析により,食味に関する品種や産地の適応性が定量的に把握できるようになり,奨励品種選定や非適応地域の摘出がより理論的に行えるようになった。
17.以上の結果から,栽培環境条件の違いが米の食味と食味に関係した理化学的特性に与える影響,およびその品種間差,ならびに食味からみた品種や産地の適応性などが明らかになった。これらの結果は,良食味奨励品種の選定や,栽培技術の確立などに大いに寄与し,北部九州における良食味米生産技術ための理論的基礎となると考えられる。(日作紀 5編,家政誌 1編公表済)  (本文PDF,4.6M)
ビール大麦における半数体育種に関する研究
古庄雅彦(九大論博,1993.4.福岡農試)
 自殖作物の交雑育種において,育種年限を短縮するために,半数体を経由して染色体を倍加し固定を計る半数体育種法の確立が強く要望されている.本論文は,ビール大麦育種における遠縁交雑を利用した半数体育種法の確立とその応用について論じたものである.
 まず,大麦の近縁野生種であるHordeum bulbosumを利用した半数体の効率的な作出法を検討して,胚培養や染色体倍加処理の最適条件を確立した.つぎに,H.bulbosumとビール大麦との交雑で半数体作出率にビール大麦の品種間差を認め,その品種間差が授粉後の花粉管伸長程度と染色体消失の早さの違いによることを見いだした.
 半数体作出率が特異的に高いビール大麦品種を選抜し,その品種にはH.bulbosumとの交雑和合性に優性の単一遭伝子が関与していることを明らかにした.さらにH.bulbosumにも半数体作出率に系統間差があることを明らかにし,能力の高いH.bulbosum系統を選抜することができた.
 H.bulbosum以外に,トウモロコシおよびイタリアンライグラスの花粉を授粉し,オオムギ半数体が作出できることを始めて明らかにした.
 また,半数体植物で大麦の主要病害である,うどんこ病や大麦縞萎縮病抵抗性の選抜が可能であることを明らかにした.
 これらの知見に基づき半数体育種法を実際のビール大麦育種に応用して,農業形質と麦芽品質が優れ,うどんこ病および大麦縞萎縮病に抵抗性で,広域地域適応性を持つ有望系統を交配後わずかに3か年で育成することに成功した.これは従来の方法より育種年限を約2年短縮したことになる.
 以上の結果から,ビール大麦の育種においてH.bulbosumを利用した半数体育種法は極めて効率的な技術であると推論した.(育雑 5編,Crop Sci. 1編公表済. 本手法により ビール大麦新品種’ほうしゅん’を育成.H16年産で3167ha,二条第4位) (全文PDF 13M)
暖地水田における地力窒素と水稲の収量
山本富三(九大論博,1994.9.福岡農試)
 水稲が吸収する窒素のうち地力窒素の占める割合は施肥由来の窒素より多く、地力窒素の多少は土壌生産力を決定づける要因となっている。したがって、稲作期間中に発現する地力窒素の量を時期別に明らかにし、その量に応じて適正に施肥量を決定することが合理的な方法である。しかし、今まで水稲の施肥体系では、地力窒素への考慮が十分ではなく、地力窒素に対応した施肥量算定の基準はなかった。また、地力窒素に関する既往の研究は基礎的なものが大部分を占め、実際の圃場で稲作期間中の地力窒素発現量を推定し、それを水稲の生育診断や施肥技術に適用した研究は少なく、とくに西南暖地で検討した研究例はなかった。
 そこで、本研究は室内定温培養実験により、代表的な水田土壌について、地力窒素発現量推定の基礎となる窒素無機化特性値を求めた。得られた窒素無機化特性値並びに地温デ−タから、稲作期間中の地力窒素発現量の推定法を確立した。さらに、地力窒素発現量の推定値と水稲による地力窒素吸収量との関係について解析した結果、地力窒素発現量の7〜8割が水稲による吸収量に相当することが明らかになった。
 また、水稲による地力窒素吸収量や施肥窒素吸収量の時期別推移について解析し、水稲の地力窒素依存度や施肥窒素利用率を求めた。同時に、水稲の窒素吸収量と生育、収量、品質との関係について検討し、暖地水稲の生育期間中における最適な窒素吸収パタ−ンを策定した。以上の結果を基に、水田土壌から供給される地力窒素の量に対応した適正な施肥量の算定法を明らかにした。今までは、水稲の地力窒素吸収量を正確に推定することができなかったため、地力窒素への対応が不十分であったが、本研究により、暖地水稲の施肥の適正化が図られ、収量の高位安定と品質・食味の向上が期待できるようになった。(土肥誌 2編,日作紀 3編公表済)
Studies on Production Physiology and Haploid Induction in Bupleurum falcatum L.(ミシマサイコにおける乾物とサイコサポニン生産および半数体育成に関する研究)
孫太權(Shon Tae Kwon)(九大国際コース,1997.9,韓国)
 ミシマサイコ(Bupleurum falcutum L.)は重要な薬草の一つであるが,その生長解析や多収・高品質を目的とした品種改良のための基礎研究は少ない.本論文では,ミシマサイコの全乾物生産,利用部分である根の収量,さらに主要成分のサイコサボニン生産における生長解析や品種生態的解析,および品種改良の基礎技術となる葯培養による半数体育成について述べている.
 まず,生長解析・品種生態的解析を行い,ミシマサイコの個体群生長率は葉面積の拡大にともなって増加し,乾物生産量は葉面積指数との相関が高いことを明らかにした.また,全投入日射量に対する乾物生産の割合である太陽エネルギー利用効率は,一年生,二年生植物ともに開花期頃が最高であり,その値は一年生でl.02〜1.23%,二年生で1.16〜2.09%であった.サイコサボニンは根の師部に局在しており,また主根より側根,主根では下部や中央部より上部で含有率が高いことを示すとともに,根の収量,サイコサボニン含有量に品種間差を認め,単位面積当たりのサイコサボニン生産の上からは,多収でサイコサボニン含有率の高い品種を,一年で収穫することが効率的であるとした.
 次に,完全な純系を短期間で得ることができる葯培養による半数体育成では,まず葯培養におけるカルスの誘導条件として,葯の生育ステージ,低温による前処理,培地のホルモン濃度や種類について検討し,一核期の花粉を含む長さが200μm以下の葯を5〜10℃の低温で72〜120時間前処理し,2,4-Dとpiclorum各0.1mg/L,または2,4-D単独のときは1mg/Lを含む境地で培養するのが最適な条件であるとした.また,カルス誘導には遺伝子型による差が大きいことを明らかにしたが,品種によって最適培養条件は異ならないことを示した.さらに葯起源のカルスをホルモンフリーの再分化培地へ移植して再分化個体を得ることに成功し,染色体観察によって,再分化個体はn=13の半数体であることを確認した.なお,ミシマサイコの半数体育成は世界で始めてである. (日作紀 2編,Plant Prod. Sci. 1編公表済)  (全文PDF 675K)
INDIRECT SELECTION FOR GRAIN YIELD, GENOTYPE × ENVIRONMENTAL INTERACTIONS AND ADAPTABILITY OF THE IMPROVED POPULATION IN PEARL MILLET (トウジンビエの穀実収量における間接選抜,遺伝子型×環境の交互作用および改良集団の適応性に関する研究)
Totok Agung Dwi Haryanto(トトク アグング ドウィ ハリヤント)(九大国際コース,1998.9,インドネシア)
 トウジンビエ(Pearl Millet, Pennisetum typhoideum Rich.)は熱帯,亜熱帯の半乾燥地域での重要な作物であるが,その安定多収を目的とした品種改良のための作物学的な基礎研究は少ない.本論文では,他殖作物であるトウジンビエ集団の穀実収量を目標にした選抜の有効性,収量構成要素による間接選抜の効果,異なる環境条件下での遺伝子型による反応の違い,改良集団の適応性,および組織培養による同一遺伝子型個体の増殖法などについて述べた.
 まず,導入母集団の農業形質相互間の関係を統計的に解析し,穂重,穂数,一穂粒重の収量への直接寄与が高いことを明らかにし,母集団からの集団選抜の結果,収量,一穂粒重,穂重,穂数の遺伝力が各々0.74,0.84,0.65,0.50,収量と一穂粒重,穂重,穂数との間の遺伝相関が1.00,0.89,0.75であることを示した.また,選抜と多交配を繰り返す循環選抜を試み,収量や収量構成要素による選抜の効果が高いことを見いだした.選抜した集団の穀実収量は10a当たり371〜590kgと多収であった.
 次に,低温での発芽性を指標とした選抜を試み,発芽性(低温下での根長や芽長)の遺伝力が0.28〜0.76で選抜効果のあること,選抜集団が低収とはならないこと,選抜集団と原集団の比較で,異なる環境条件下では遺伝子型による反応の差が認められる場合があり,形質によっては各々の特定環境条件下で選抜を行う必要があること,一方穂長は安定した形質であり遺伝子型×環境の交互作用が小さいことを見いだした.
 さらに,若い花序の培養による脱分化,再分化に成功し,その間の染色体数の変化がないことを確認して同一遺伝子型個体の大量殖の可能性を示し,他殖作物でも自殖作物と同様な系統選抜ができることを明らかにした.(Plant Prod. Sci. 2編,熱帯農業 1編,Zuriat 1編公表済) (全文PDF 613K)
福岡県における良食味水稲品種の育成及び育成品種の適応性に関する研究 (Breeding of Rice Cultivars with High Palatability and the Adaptability of the Released Cultivars in Fukuoka Prefecture)
今林惣一郎(鹿大論博(宮崎大),1998.9.福岡農試)
 福岡県は水稲作付面積が5万ha余で米の大生産県であるとともに,人口約500万人の大消費県でもある.しかしながら過去の県産米に対する流通や販売関係者の評価は必ずしも高くなく,産地問の競争もあいまって,自主流通米の県外からの多量移入や,県産米の過剰在庫等の問題が生じていた.この状況を打破するための一助として,福岡県独自の水稲品種を育成することが各方面から強く要望された.そこで,福岡県内に適する良食味で農業特性の優れた新品種を極短期間に育成しようとしたが,そのための育種方法や,育成した新品種の適応性等についての過去の知見は十分とはいえなかった.
 そこでまず,大量の育種試験成績を処理するため,ワープロと表計算ソフトを利用した簡易なシステムを利用してデータベースを構築し,食味の組合せ能力,現地試験の解析,主要形質の年次間相関等,育種を行う上での有用な各種の解析を行った.
 次に,良食味品種の選抜法を確立するため,理化学的特性と食味との関係をみたところ,アミロース含有率と食味には関係が認められたが,窒素,遊離糖等とは関係が認められなかった.食味関連の理化学的特性の変動を年次間と品種間とに分割し,品種間変動の大きい特性を抽出するとともに,食味関連形質の値から良食味年を推定した.また,穂発芽検定方法を改良し,穂発芽抵抗性系統を選抜した.
 さらに,良食味品種を短期間に育成するため,沖縄を利用する世代促進法を確立し,冬期間の圃場試験により多数の材料について農業形質での選抜をすることを可能にした.また,複数の新品種候補系統について現地試験を併行して同時に行うことにより,育種年限を大幅に短縮できることを明らかにした.
 これらの知見を総合的に応用して,交配の5年後に極早生,良食味,耐穂発芽性を兼ね備えた品種を実際に育成した.さらに,日本晴同等の熟期の早生品種で,良食味の品種も育成した. 最後に,育成した品種の評価や普及のために必要な,品種と環境との交互作用及び育成品種の環境適応性を明らかにした.収量については,年次,場所と品種に交互作用があり,施肥量や作期との交互作用はなく,適応性や安定性は育成品種と比較品種は同程度であるとした.また出穂期や稈長における同様な解析結果を加味することで,適正な育成品種の収量試験や現地試験の方法及び技術指針の作成方法を提唱した.
 以上のように,本論文では,良食味で福岡県内に適応性の高い米の新品種を短期間に育成するために必要な基礎的研究を行い,それらの知見を応用することで育種目標に合った新品種を育成し,かつ育成品種の環境との交互作用を解析するとともに,育成品種の安定性や適応性が高いことを明らかにした.(日作紀 4編,農業情報研究 1編公表済) (本文PDF,5.3M)
STUDIES ON THE COMBINING ABILITY AND ANTHER CULTURE OF SORGHUM―SELECTION FOR HIGH YIELD, EARLY MATURITY, SHORT STATURE AND ADAPTABILITY TO A DOUBLE CROPPING SYSTEM ― (ソルガムの組合せ能力及び葯培養に関する研究 ―多収,早生,短稈の二期作栽培用品種の選抜―)
Nguyen Duy Can(ヌエン ジー カン)(九大国際コース,1999.9,ベトナム)
 ソルガム(Sorghum bicor Moench)は熱帯,亜熱帯の半乾燥地域での重要な食用作物である.本論文では,多収,早生,短稈で,二期作栽培に適するソルガム品種の育成を目標に,主要農業形質の遺伝相関,組合せ能力,異なる環境下での遺伝子型の反応の違い,生長特性などを検討した結果や,純系の作成を短期間に行うための葯培養による半数体作成やその組合せ能力について述べている.
 まず世界各地の多くの遺伝資源から代表的な早生品種をいくつか選んで圃場で栽培し,それらの農業形質相互間の関係を統計的に解析して収量構成要素の子実収量への直接・間接的寄与を数量的に明らかにした.組合せ能力推定のためのダイアレル交配を行い,一般組合せ能力と特定組合せ能力を推定し,子実収量,出穂期,草高で一般組合せ能力による寄与の大きいことを明らかにした.また,いくつかの純系親やF1が二期作栽培条件下で多収,早生,短稈であることを認め,春播きと夏播きでは子実収量について播種期と遺伝子型に交互作用がないことを確認した.
 半数体作成のための葯培養では,植物体の栽培環境条件や,葯の置床培地の組成が葯からのカルス分化や,カルスからの植物体再分化に及ぼす影響を検討し,半数体作成のための最適条件を明らかにした.葯培養における品種間差を検討し,カルス形成や植物体再分化率が高く,効率的に葯培養ができる品種を見いだした.さらに葯培養における組合せ能力を検定し,一般組合せ能力と特定組合せ能力の両者の関与がカルス分化や植物体再分化に大きいことを明らかにした.
 このように本論文では,多収,早生,短稈のソルガム品種育成を行うにあたって必須の基礎知識を提供するだけでなく,実際に優れた純系品種やF1品種のための交配両親を見いだし,また純系親の迅速な作成に必要な葯培養の条件や組合せ能力をも明らかにしている.(日作紀 1編,Plant Prod. Sci. 4編公表済) (全文PDF 569K)
STUDIES ON THE SELECTION OF CULTIVARS, GENOTYPE-ENVIRONMENTINTERACTION AND GROWTH CONTROL OF DIRECT-SEEDED RICE (直播き用水稲品種の選抜,遺伝子型−環境交互作用及び生育の制御に関する研究)
元鐘建 Won Jong Gun(ウォン ジョン グン )(九大国際コース,2000.9,韓国)
 水稲直播き栽培法の確立のため,発芽苗立ちが良く耐倒伏抵抗性のある品種の選抜,選抜品種の適応性の検定,過剰分げつ抑制のための生育制御法の解明などを試みた.
 低酸素濃度の湛水条件下で,稲の発芽は鞘葉のみ伸長して根は伸長不全になるとされていたが,湛水条件下の発芽に品種間差を認め,湛水下でも発芽能力が優れ,根の伸長の良い品種があることを見いだした.水中酸素濃度が2.0−2.5mg/Lで品種間が大きく発現されることも示した.
 外国の直播き用品種と日本の良食味品種の交配後代系統から根の形質や押し倒し抵抗の強い系統を予備的に選抜し,それらの収量試験を行ったところ,選抜系統は比較品種よりも耐倒伏性が優れており,太い根,太い稈,少けつ,穂重型が直播きに向くことを認め,そのような特性を持つ数系統を直播き用として選抜した.
 選抜系統と比較品種を異なる年次,場所,栽植密度,施肥量下で湛水直播き栽培したところ,収量や収量構成要素で品種×年次の交互作用は検出できず,品種×栽植密度,品種×施肥量の交互作用は登熟歩合が有意で,品種×場所の交互作用は穂数以外有意で,いずれの場所でも多収なものがあった.
 全環境条件下での収量の値を用いて,回帰分析で各品種の適応性を評価したところ,選抜系統の1つであるW42は多収で適応性が高かった.選抜系統と標準品種を用いた総当たり交配で組合せ能力を推定したところ,ほぼすべての形質で相加的遺伝効果による効果が大きいことがを明らかになった.W42は収量や耐倒伏性で一般組合せ能力が高く,W42は直播き用品種,あるいは直播き用品種育成のための中間母本として有望であることが示された.
 直播きで問題となる過剰分げつ抑制のための生育制御を試み,深水処理が無効分げつを抑制し,稈が太く,挫折重が大きくなり,倒伏が減少することを示した.また,深水栽培で土壌由来窒素の利用効率が高まり,増収することを明らかにした. (Plant Prod. Sci. 7編公表済) (全文PDF 723K)
水稲の良食味品種育成に関する研究
大里久美(九州東海大論博,2000.12.福岡農試)
1.良食味品種を材料とした食味試験で,16回行った試験ごとに分散分析(パネル員を反復とみなした)をすると,総合評価と粘りは5%水準で品種間の有意差が全て認められた.硬さは品種間差が明確に識別できなかった.3品種各4回以上行った28名のパネル員ごとに食味品種間差識別の分散分析をすると,有意水準が5%,または10%であったのは15名,または19名であった.食味の識別能力が高いパネル員は,全体が平均的に良い,または不良と判定した品種を,同様に良い,または不良と判定し,全体での傾向と異なる評価を高い精度で行うパネル員はいなかった.以上から,本研究での食味試験は精度良く行われていると判断された.
2.品種間差の識別能力が高いパネル員は,コシヒカリと日本晴の判定の差が大きかった.
3.食味の比較的良い品種間の比較でも,アミロース含有率と食味との相関係数は−0.5前後となり,アミロース含有率の低いものは食味が良かった.重回帰分析によると,その関係は出穂期や窒素含有率の影響を受けていなかった.
4.遺伝獲得量から推定したアミロース含有率の遺伝率は0.5〜0.7であった.
5.福岡農試育成品種の家系図中の総祖先数は平均494,同一品種を除いても平均86と非常に多かった.しかし同上品種への祖先品種の遺伝的寄与率は,愛国,旭(朝日),器量好の3品種で平均42%,上州,大場を加えた5品種で63%,亀の尾,京都新旭を加えた7品種で72%であり,少数の品種が多くの遺伝的寄与をしていた.
6.育成品種はコシヒカリとの近縁度が高く,一方,1970年代に北部九州の基幹品種であったホウヨクなどとの近縁度は低かった.
7.食味の組合せ能力に差があり,食味は対コシヒカリ近縁係数と有意な正の相関があった.従って,従来のように勘や経験,試行錯誤によるのでなく,あらかじめ家系を調べることで,より効率的・理論的に良食味品種育成のための交配親選定ができるようになった.
8.育成系統同士を交配親として育成される系統の42%は対コシヒカリ近縁係数が50%以上だった.
9.完熟種子の胚由来の根再分化率の品種間差は0〜51.3%で,対コシヒカリ近縁係数とに−0.509の相関があり,コシヒカリと近縁なもの再分化率が低かった.一方,ニシホマレと近縁な品種の根再分化率は高かった.
10.食味に,品種×年次,作期,貯蔵期間の交互作用が認められた.品種×土壌型,施肥量交互作用は認められなく,食味の品種間における相対的な差は年次,作期,貯蔵期間の違いによって変化しやすいことが明らかとなり,土壌や施肥量を変えた試験よりも,年次,作期,貯蔵期間を変えた試験が重要であることがわかった.年次,作期,貯蔵期間が異なっても食味の変化が小さく安定性の高い品種のあることが示された.
11.食味の年次間相関は0.58〜0.80であった.分散分析から推定した遺伝率の値は0.30〜0.75,平均0.52であった.
12.葯培養におけるカルス形成培地はN6培地に2,4-Dを2r/L,ゲルライトを2g/Lを添加したものが,再分化培地はN6培地にNAAを0.1r/L,Kinetinを1r/L,ゲルライトを4g/Lを添加したものがよかった.葯培養に適する葯のステージは,葉耳間長よりも,雌ずいの形状で判定するほうが正確であった.近年育成された良食味品種の中から,葯培養育種の交配母本として適する,ハクトモチ,南海109号,愛知92号,西海190号などを選んだ.
13.葯培養法と通常の交配育成法による後代系統の比較を行ったところ,葯培養系統は収量の平均値は劣るが食味では差がなかった.葯培養で多収系統を得るには育種規模を大きくすることが必要と考えられる.葯培養で有望系統ちくし26号を育成した.
14.以上のように本研究は,食味試験精度,遺伝率,組合せ能力,遺伝子型×環境交互作用など食味を育種目標の一形質として把握するための基礎データを明らかにし,良食味品種育成を効率的・理論的に行うための多くの知見を明らかにし,かつ実際の品種育成までを含んだ総合的・包括的な研究である.(Zuriat 1編,育雑 1編,日作紀 4編公表済み)(本文テキストのみ120K) (全文pdf,13M)
Studies on Genetic Diversity, Al Tolerance Selection Method and Effectiveness of Al Tolerance Breeding Program in Sorghum (Sorghum bicolor (L.) Moench) (ソルガムの遺伝的多様性,アルミニウム耐性の選抜方法およびアルミニウム耐性育種の有効性に関する研究)
Anas アナス (東京農工大学(宇都宮大),2004.3,インドネシア)
  Breeding of sorghum tolerance to aluminum toxicity is necessary to improve sorghum production in the arid and semi-arid tropical area. Therefore, evaluation of sorghum germplasm, development of Al tolerance screening technique and development of sorghum genotypes with Al tolerance were carried out in this study.
  SSR markers could discriminate the sorghum germplasm. Sorghum materials used in this study revealed a wide genetic background. The field experiment also exhibited a wide phenotypic and genotypic variation and a significant correlation was found with genetic diversity assessed by SSR markers.
  Hematoxylin staining method was proven to be an accurate indicator for Al tolerance and showed a significant correlation with the method by Al-added soil in pots. Some candidate parental lines were selected for using in the breeding program.
  Crossings between Al-tolerant and high yield genotypes were conducted. The moderately low heritability of Al tolerance and small genetic gain were observed. Dry weight and plant height were most closely associated with Al tolerance based on path analysis, indicating that selection for high dry weight and section of Al tolerance in early generations was more appropriate to maximize the Al tolerance.
  Tissue culture was proven to be a useful tool for screening Al-tolerant plants at the callus level. The differences in callus growth and the percentage of callus formation among genotypes were in agreement with those in the hematoxylin staining screening method. Direct gene transfer into floret-derived sorghum callus using particle bombardment gave GUS gene activities in the callus.(Plant Prod. Sci. 5編公表済み)(全文PDF 888KB)
ウンシュウミカン産地におけるITを活用した農業改良普及方法の研究
佐々木茂明 (東京農工大学(宇都宮大),2005.3,和歌山県有田地域農業改良普及センター,社会人)
 農業へのIT活用は1980年代に入って始まった.しかし,それまでこの分野の研究成果はほとんどなく,農業者及び農業関係者の間で試行錯誤されていた.1986年にパソコン通信システムが民間利用できるようになったのをきっかけにパソコンを農業に生かそうと研究が始まった.著者はその先駆けとしてパソコン通信システムを活用し,バーチャルなコミティーを形成しその中での情報交換による生産・流通販売情報を収集する手法を開発した.
 その後,インターネット環境とインフラ整備が進んだことで,1998年インターネット上にウンシュウミカンに関するデータベースを構築した.それまでペーパーベースで公開されていた栽培技術データを日頃の農業改良普及活動の中で磁気化しデータベース化することで,誰でも必要なデータをいつでも入手できるシステムを開発した.
 気象データはウンシュウミカン生産者の要望もあり,地域の雨量データをデータベース化し病害防除やウンシュウミカンの果実品質管理への判断資料として公開した.公開方法として誰でもどこでも利用できるよう携帯電話で提供した.
 ウンシュウミカンのトレーサビリティを確保するため農業生産法人のWebと卸売会社のWebをリンクさせ,新たな生産方式で栽培した商品の生産工程や流通経路を公開することとした.栽培履歴の詳細には農業日誌などの既存のものを使用し,それらの組み合わせによるトレーサビリティとした.
 一方,農業改良普及センターがこれらのデータ管理に携わることで,地域の経営体と改良普及員とのバーチャルコミュニティーを形成することができ,新たな普及活動が展開できるようになった.このことから,農業改良普及事業は経営体の積極的なIT活用を推し,経営体が流通業界や研究機関とも容易に連携できるシステムを整え,栽培技術革新や流通改革に取り組むまでに至った.(農業情報研究 3編.農業普及研究 1編公表済み.その内の“携帯電話対応の雨量データベースの開発”は農業情報研究論文賞,“IT活用による新たな農業改良普及活動の開発”は農業普及学会奨励賞授賞.さらに2008年度農業情報学会学術普及賞を受賞.)(全文PDF 1.8MB)  (産経新聞和歌山版)
稲における土中出芽性の評価方法の開発と土中出芽性に優れた品種の育成
太田久稔 (東京農工大学(宇都宮大),2005.3,農研機構作物研究所,社会人)
 水稲の湛水土中直播栽培において重要な特性である土中出芽性に関する検定方法をまず検討した.土中出芽性は苗立ち性とは別に評価する必要があった.室内検定として,25℃で3日間の催芽,温度25℃,播種深度を2cmとする試験条件を設定した.深度2cmに播種できるシーダーテープを用いた圃場検定を開発した.室内検定と圃場検定の間に有意な相関を認めた.土中出芽率が高い品種においては室内検定と圃場検定の結果が異なる品種が認められたため,室内検定の条件を播種深度3cm,20℃とした.
 国内外の約300品種を室内検定した結果,出芽率の変異が0%〜95%となり遺伝的な多様性が明らかとなった.圃場検定において最も土中出芽率が高い品種として,中国品種のTa Hung Kuを優れた交配親として選定した.
 土中出芽性に優れた遺伝子源として,赤米,Arroz da Terra, Dunghan Shali, Ta Hung Kuを用い,キヌヒカリ,どんとこいとの交配後代を育成し,土中出芽検定による選抜・育成を行った.赤米,Ta Hung Kuの交配後代では,初期世代から土中出芽検定による選抜を行い,土中出芽性に優れたいくつかの系統を選抜した.一方,Arroz da Terra, Dunghan Shaliの交配後代では,葉いもち病が多発するなど,土中出芽性や農業特性に優れた系統を選抜できず,交配親の違いによる差が大であった.
 Ta Hung Kuの交配後代であるF3,F4,B1F2,B1F3,B1F4系統の土中出芽率をみたところ土中出芽率は多数の遺伝子によっていると推定され,F3系統と選抜したF4系統の土中出芽率の間に高い相関関係が認められた.B1F4選抜系統で,Ta Hung Ku並の土中出芽率の有望系統を選抜できた.QTL解析において,第2,第5染色体上にいくつかのQTLと思われる箇所が認められた.(日作紀 3編公表済み)(全文PDF 1.7MB)
トリカブトの新品種の育成と栽培法に関する研究
岡田浩明 (東京農工大学(宇都宮大),2005.9,三和生薬株式会社薬用植物・医薬品開発研究所,社会人)
 漢方薬の重要な原料として古くから知られている附子,烏頭の基原植物であるトリカブトを安定して供給するため,新品種の育成を試みた.またその栽培方法についての検討を行った.
 まず育種を行うための材料を収集するために,東北地方と北海道で遺伝資源を収集した.  多くの遺伝資源について成分特性を調査するため,総アルカロイド及びアコニチン系アルカロイドの分析方法の簡便化を行い,分析点数を多くこなせるようになった.
 品種の特性調査を行うに当たり,形態調査方法の基準を明確にした.これをもとに調査を行い,在来品種や育成品種の特性を新基準によって記載した.
 トリカブトの品種の一つとして,ハナトリカブト晩生が知られているが,生育量が小さいため収量が少なく,また収穫時に子根が外れやすいために作業に手間が掛かっていた.これに替わる品種として収量が多く,耐病性で,子根も外れにくい三和2号を育成した.また,トリカブトの主要な成分である,メサコニチン,ヒパコニチン,アコニチン,ジェサコニチンの4成分の含有量の割合の違いにより使用方法が異なることが考えられたので,含有量の異なる品種の育成を行い,新品種として三和3号から8号を育成した.
 栽培方法を検討し,栽植子根の大きさにより生育量,収量,成分含量に変化が見られ,栽植子根が大きいほど,地上部生育量,収量が多く,総アルカロイドや成分が増加した.10aあたり堆肥3tに窒素20kgの施用で,整品数や整品重が増加した.面積当たり成分収量は,栽植子根が大きく株間が狭い場合に最も高かった.
 成分の時期変化は,地下部が形成されてから,つぎの世代の栄養体が形成される頃まで成分含量の増加が続いていた.収穫適期は2年目秋であった.(Natural Medicines誌 3編公表済み)(全文PDF 3.3MB)
ビール大麦の品種育成におけるDNAマーカーの開発と利用に関する研究
内村要介 (東京農工大学(宇都宮大),2005.9,福岡県農業総合試験場農産部,社会人)
 ビール大麦の効率的な新品種育成を目的とした,DNAマーカーを利用した育種選抜システムの開発のための基礎的研究を行った.
 主な国内二条大麦品種間のDNAマーカーを効率的に検出する分析方法を検討するため,RAPD分析,CAPS分析およびSSR分析について比較し,CAPS分析が優れることを明らかにした.CAPS分析を利用して二条大麦の国内22品種間の識別法を開発した.
 品種間の遺伝的背景を把握する方法として,家系図の祖先品種の共通程度を基にしてコンピュータプログラムで簡易に算出できる近縁係数と,DNAマーカーにおける遺伝子型の検出率から根井の遺伝的距離を算出した.また,両者の間にr=-0.526〜-0.650の有意な相関関係があることを明らかにした.
 二条大麦の重要病害である大麦縞萎縮病に対する徳島モチ裸由来の抵抗性遺伝子rym7tを持つ品種と持たない品種の交配F1から半数体倍加系統群を作製した.半数体倍加系統群は,オオムギ縞萎縮病抵抗性,その他の形態マーカーおよびDNAマーカーにおける遺伝子型がいずれも期待分離比に適合した.
 7H染色体の連鎖地図を作製し,rym7tに連鎖するDNAマーカーで検出した遺伝子型は,オオムギ縞萎縮病抵抗性の観察による判定と87%が一致し,育種選抜に利用できると判断した.
 うどんこ病,斑葉病,凸腹粒および麦芽品質のQTL解析を行い,これらに関与するQTLをそれぞれ1,2,2および15カ所検出した.rym7t近傍には検出されなかった.これらは,品種の育成の交配組合せの選定やDNAマーカーの開発に寄与する情報である. (日作紀 3編公表済み)(全文PDF 2.6MB)
高品質の甘茶品種育成及び栽培法の確立に関する研究
藤井敏男 (東京農工大学(宇都宮大),2006.3 みつる植物研究所,社会人)
 アジサイ属の多数品種を用いて形態や栽培特性,DNA量,染色体数,気孔の大きさ,分子マーカーなど多方面から解析するとともに,それらの値から総合的な特徴付けの解析を行ったところ,アマチャ群の品種は他のアジサイ属品種と比べて比較的似ており,アジサイ属のなかで特異的ではないことが認められた.
 甘味の主成分であるフィロズルチン定量の簡易迅速分析法を開発した.メタノール1回抽出,フィルターろ過,および高速液体クロマトグラフの出現ピークをフィロズルチンとヒドランゲノール周辺に絞ることで分析時間の大幅な短縮可ができた.この分析法の精度は育種のためには十分であった.
 ジベレリンの播種直後処理,発芽揃後の液肥葉面散布などで苗立ち率を向上させ,交配後代系統を多数得た.アマチャ×アマギアマチャの組み合わせで稔実率が高く,苗立ちも良い多くの交配後代を得ることができた.1株生葉重やフィロズルチン含有率はほとんどが両親の間に分布したが,1株当りフィロズルチン量では両親を上回るものが多数得られた.生葉重や甘茶重などの値とフィロズルチン含有率との相関はなく,生葉重,フィロズルチン含有率などの値が全て高く,その結果1株当たりフィロズルチン量が両親を大きく上回る系統が比較的容易に得られた.
 アジサイについて未作成のうどんこ病の調査基準を作り,うどんこ病抵抗性で栽培性も改善された,フィロズルチンも含む2倍体の稔性の良い,うどんこ病抵抗性付与のための中間母本も育成した.
 フィロズルチン含有率やヒドランゲノール有無の品種間差は年次間でも安定しており,フィロズルチン含有率の年次間相関は0.950であり,品質についての早期選抜が可能であった.
 遮光区の生育は良く,多肥で生育量が増加した.樹液中のアンモニア態チッソ濃度はアマチャや少肥で生育後期に低下した.排出液のEC値は高いが根は正常で施肥水準を上げることは可能と判断された.葉色は多肥で濃くなった.従って多収高品質の甘茶品種の栽培をするには,遮光を行い,元肥を増量してチッソ濃度を高めて初期生育を確保し,追肥で葉色低下を防ぐ必要があるとした. (日作紀 3編公表済み)(全文PDF 1.0MB)   (下野新聞)
種子および玄米の貯蔵性に優れるイネの良食味品種の育成に関する研究
重宗明子(東京農工大学(宇都宮大),2006.9 農研機構中央農研北陸地域基盤部,社会人)
 北陸系統の家系分析を行った.育成系統の総祖先数は1980年代から増加し始め,現在育成中の系統の平均は1122であった.最終の祖先品種の上位7品種で79.6%寄与していた.現在育成中の系統とコシヒカリとの近縁係数は0.315〜0.595で平均は0.459であった.コシヒカリとの近縁係数と食味との間に相関はみられなかった.
 育成地における食味試験を評価した.パネル員の評価値と全体の評価値平均との相関の総平均は0.448であった.各評価項目のうち,香りは品種間差の識別性が低かった.品種間差の識別能力の高いパネル員は,全体の平均値との相関が高い,すなわち全体の嗜好と一致する傾向にあった.また,コシヒカリとあきたこまちの差を安定的に評価することができ,食味試験の精度は高かった.
 コシヒカリを1年貯蔵した後の食味は,香りやうま味が著しく低下し,新米のコチヒビキと同等であった.種子の貯蔵性 (種子の寿命) の品種間差を評価するための加齢処理の方法は,30℃で種子の水分を15%程度に保つ方法が適切であった.現在栽培されている品種の種子の貯蔵性は,コシヒカリ並みに優れていた.
 Kasalathの種子の貯蔵性を支配するQTLのうち最大の効果を有するqLG-9の作用は籾や種皮に依存するものではなく,胚や胚乳に由来していた.
 qLG-9を有するコシヒカリの準同質遺伝子系統を選抜した.この系統の食味や玄米千粒重はコシヒカリと同等であり,種子の貯蔵性を有する有望系統であった.
 これらの結果から,食味を向上させる形質として,玄米の貯蔵性を導入する可能性が示唆された.(日作紀 2編,Breed.Sci. 1編公表済み)(全文PDF 745KB)
群馬県稲麦二毛作地帯の水稲栽培における低コスト省力化技術の開発およびその経営評価と普及方法に関する研究
高橋行継(東京農工大学(宇都宮大),2006.9 群馬県西部農業事務所,社会人)
 群馬県東部平坦地域を中心とした稲麦二毛作地帯の特性にあった稲作の低コスト・省力化技術,すなわち新育苗箱と培土量減量 (以下,培土減量と略称) と平置き出芽法 (平置き) について検討した.次に,水稲本田全量基肥施用法 (全量基肥)と水稲育苗箱全量基肥施用法 (箱全量) の検討を行った.
 新育苗箱,培土減量のいずれも培土量が約35%削減可能で,育苗箱の約30%軽量化と低コスト化が達成できた.平置きは育苗箱の移動回数を慣行の無加温積み重ね出芽法 (積み重ね) に対して1〜2回削減でき,作業負担の軽減が可能であった.全量基肥では速効性肥料と被覆尿素を1:1配合にした専用肥料を開発し,現地へ普及した.箱全量ではプール条件での育苗法と生育・収量の検討をしたところ育苗期間を20日程度にすることで慣行の本田分施法 (標準施肥)と遜色なく,現地導入が可能な技術であることが示された.
 これら新技術と慣行法とを経済性,省力性の両面から評価を行った.全量基肥は肥料単価が,平置きは被覆資材が高価なため優位性は認められなかったが,それ以外の技術は経済性で優れていた.省力性では全ての技術が慣行法に対して優れていた.
 アンケート調査により,新技術に対する農家の評価と効率的な普及方法を探った.新技術の評価は様々であり,農家と試験研究・普及指導機関との認識にズレのあることが示された.新技術には普及対象を絞り込む必要のあるものがあった.高齢者や兼業農家は多少のコスト上昇よりも省力を優先し,経済性で劣る全量基肥が支持された.農家は技術には概して保守的であり,技術情報の入手先として口コミを重視していた.効果的な普及のためには先進的かつリーダー的存在の農家に働きかけ,展示圃を活用して新技術を完全に習得し,成功体験をしてもらうこと,技術の伝播に口コミを活用することが有効であると考えられた.(日作紀 9編公表済み.これらの成果で作物学会技術賞を受賞(写真))(全文PDF 1.2MB)
栃木県の主要作物および地域特産作物のDNAマーカーを利用した品種識別と遺伝資源の保存・利用に関する研究
小林俊一(東京農工大学(宇都宮大),2007.3 栃木県農業試験場,社会人)
 栃木県産米の品質向上と原種,および原々種の混種防止を目的として,栃木県奨励品種を中心に酒米品種を含む合計20品種について,RAPD分析により9種類のDNAマーカーを用いた品種識別技術を確立した.
 同様にして,栃木県の奨励品種および有望視している品種を中心に関東周辺地域に作付けされているコムギ17品種をRAPD分析による6種類のDNAマーカーで,二条・六条・裸オオムギを含むオオムギ19品種については9種類のDNAマーカーで,識別する技術を開発した.1945年育成の古い品種である小麦農林61号は原種の採種地により多型が認められた.近年育成の水稲や二条オオムギ品種では,同一品種内に多型は検出されなかった.これらのデータを用いクラスター分析を行った結果,コムギ,オオムギともに大きく2つのクラスターに明確に分類できた.
 ムギ類品種を用い,交配記録の系譜から統計的に近縁係数を算出した.次にこれらの品種間でRAPD分析による同一のバンドを示すDNAマーカー数と根井の遺伝的距離Dを算出した.コムギ,オオムギともにこれらの間の相関は高く,いずれも血縁関係の推定や遺伝的な多様性を維持しつつ品種育成をするための情報として有効と考えられた.
 他殖性であるユウガオの保存品種について維持保存のため,ユウガオ14品種とヒョウタン10品種,合計24品種についてRAPD分析を行ったところ,同一品種内での変異もみられたが,品種間の分類が可能であった.クラスター分析によると,栃木県由来の品種間では近縁関係が極めて近く,県外や海外からの導入品種は近縁関係が遠いことが示唆された.保存品種を維持するにあたり,県内品種については表現型で分類し代表的な品種を,導入品種については広い地域からの品種を数多く保存することが望ましいと提言できた.(日作紀 4編公表済み)(全文PDF 774KB)
イチゴの生理生態特性の解明による周年生産技術の開発および周年栽培品種の育成と普及に関する研究
稲葉幸雄(東京農工大学(宇都宮大),2007.3 栃木県農業試験場,芳賀農業振興事務所,社会人)
 周年生産を実現するために必要なイチゴの生理生態特性について検討し,一季成り性品種‘とちおとめ’を用いた10月どり作型を開発した.近交係数を用いた育種手法について検討するとともに,高品質で生産性の高い四季成り性品種の育成と育成した新品種を用いた夏秋どり栽培の開発・普及について検討を行った.
 イチゴの花房伸長方向はランナー軸方向に関係なく,クラウンの傾斜によって決定されるので,ランナー軸を持たない組織培養苗では,定植時に株を通路側に倒して植え付けることで,花房を通路側に伸長させることができた.
 光合成速度は午前中高く,午後に低下した.午後の光合成速度の低下は,水ポテンシャルの低下による気孔開度の低下が影響していると考えられた.
 夜冷育苗装置を用いて頂花房および一次腋花房を分化させた‘とちおとめ’の苗を9月上旬に定植することで,10月上旬からの収穫が可能となり,年内収量が大幅に増加した.
 イチゴでは近交係数が0.3程度までであれば,近交弱勢による収量の低下は見られなかった.近年育成されたイチゴ品種の近交係数は,一季成り性品種では0.2を超えるものが多かったが,四季成り性品種では多くが0.1以下の低い値であった.代表的な一季成り性品種15品種の総当たり交配による雑種の近交係数の平均は0.210となり,近親交配の程度が高くなった.
 夏秋どり栽培に適し,業務および生食用として利用可能な四季成り性の新品種‘とちひとみ’を育成した.‘とちひとみ’は果実品質(果実硬度,食味)が優れ,収量性が高かった.標高400〜1100 mの幅広い地域で適応性が認められたことから,栃木県における夏秋どり栽培の普及の可能性が示された.(園芸学研究 3編公表済み)(全文PDF 840KB)
福島県における水稲品種の用途別品質に関する研究
佐藤弘一(東京農工大学(宇都宮大),2007.3 福島県農業総合センター,社会人)
 福島県育成系統の家系分析を行った.最終の祖先品種と育成系統との近縁係数を計算したところ,北部九州での材料と異なり,旭,大場,亀の尾の寄与率が高かった.食味について,育成系統はコシヒカリの近縁度との有意な相関関係が認められなかった.
 味度値,RVA特性値のコンシステンシーは食味官能検査との相関が高く,遺伝率が高かった.味度値,最終粘度に一般組合せ能力が認められた.味度値,最終粘度の遺伝率が高く,味度値,最終粘度,コンシステンシーに関する遺伝子は優性遺伝子が相加的に増加させる方向に作用した.
 餅硬化性には品種間差が認められた.また,品種と年次間に交互作用が認められた.餅硬化性は,糊化温度,ピーク温度と正の相関関係にあった.また,餅硬化性,糊化温度,ピーク温度は,登熟気温の影響を受けていた.尿素崩壊性は,糊化温度と相関があり,簡易選抜指標として利用できた.
 選抜実験から,ピーク温度,玄米白度の遺伝率の高いことがわかった.糊化温度,ピーク温度は稈長と負の相関関係があり,短稈・良質系統選抜が可能と考えられた.
 良食味系統の選抜を行い,最低粘度,最終粘度が既存の低アミロース米と粳米の中間の値の系統が育成できた.餅加工特性の優れる系統の選抜を行い,糊化温度,ピーク温度がこがねもち並の系統が育成できた.(日作紀 5編公表済み)(全文PDF 658KB)
The Establishment of in vitro Culture and Genetic Transformation of the Wheat Glu-1Dx5 Gene to Rice Plants by Gene Gun Bombardment (イネの培養系確立と遺伝子銃によるコムギGlu-1Dx5遺伝子の導入)
Nono Carsono ノノ カルソノ(東京農工大学(宇都宮大),国際コース,2007.9 ,インドネシア)
  The work carried out and presented in this thesis was mainly aimed to establish a suitable in vitro culture system as well as to introduce the wheat Glu-1Dx5 gene encoding a high molecular weight glutenin subunit 1Dx5 into rice genome using HeliosTM gene gun bombardment.
  Reliable phenotypic assessment on callus performance was able to identify promising genotypes with high quality callus production. Genotype, medium and explant are considered to be essential factors for inducing high quality calluses. Five selected Indonesian rice genotypes were capable in regenerating whole green plants. Genotypes Fatmawati and BP-140 consistently performed best in callus subculture as well as in plant regeneration.
  Culture media D1 and NB5 were the most suitable media for callus subculture and plant regeneration, respectively. Phenotypic evaluation in the spikelet-related traits of primary callusregenerated plants (T0) showed that the occurrence of somaclonal variants varied with the genotype. The spikelet fertility of the regenerated rice plants was not significantly lower than that of the initial plants except in Ciapus and BP-140.
  Optimization of parameters of Helios gene gun for rice callus bombardment based on synthetic green fluorescent protein (sgfp) expression has been successfully conducted. Parameters found to be the most favorable conditions were as follows: 250 psi helium pressure, 0.6 μm gold particle size, 0.25 mg gold particles per shot, and 1.5 μg plasmid-DNA per shot.
  The introduction of the wheat Glu-1Dx5 gene in combination with either selectable marker bar or hpt gene into rice cv. Fatmawati has been performed well. PCR analysis confirmed the presence of transgene in the genome of some transgenic plants. These plants will be incorporated into breeding program for further assessment of their benefits.
  The significant differences in transient expression of sgfp two genotypes mediated by Agrobacterium were found with regard to the osmotic treatment (0.4 M mannitol), solid-subcultured callus, and 10 min. air drying. The highest sgfp expression was achieved in Nipponbare callus treated with 10 min air drying. The level of green fluorescent spots was higher in Nipponbare than that in Fatmawati. (Plant Prod. Sci. 4編公表済み) (全文PDF 786KB)
岐阜県北部中山間地域における高品質な農作物の生産技術の確立およびその普及に関する研究
坂田勲(東京農工大学(宇都宮大),2007.9 岐阜県飛騨地域農業改良普及センター,社会人)
 岐阜県北部中山間地域では水稲の倒伏,穂発芽,生産コスト削減,ホウレンソウの葉脈間黄化およびコナダニの被害など,高品質な農産物を生産する上での品種および栽培上の問題解決がもとめられている.これらを解決する生産技術を確立し,普及するための研究を行った.
 岐阜県北部における現在の主要品種コシヒカリの倒伏調査を行った.倒伏程度と高い相関があったのは第2節間長であり下位節間長ではなかった.水稲移植用品種として品質,栽培特性が優良な品種を交配育種法により作出した.また奨励品種決定調査により当地に適する優良品種の選定を行った.
 岐阜県における水稲直播栽培は,1963年に導入が試みられたがほとんど普及しなかった.しかし最近では高性能播種機の登場によって移植と遜色ない収量を上げている営農組合があり普及面積は8haに普及しており,今後も増加する見込みである.そこで水稲直播栽培を本格的に導入するために必要な適性品種の選抜法を検討した.幼植物の36〜54゚に伸長する冠根数,冠根の引張りによる破断強度および,茎葉部基部の挫折強度により,品種の耐ころび型倒伏性を短期間で検定できることがわかった.出穂14日後では水平から下向き36〜54゚に伸長する冠根が地上部の支持に重要な役割を担っていることも明らかになった.
 一方,飛騨地域の最も主要な農作物であるホウレンソウについて栽培上の問題解決を試みた.黒ボク土壌におけるホウレンソウの葉脈間黄化症状の原因は土壌のマンガン欠乏であった.硫酸マンガンの葉面散布およびマンガン資材の土壌施用により葉脈間黄化症状は 消失した.難防除害虫であるコナダニは,秋の生息密度のまま越冬し,作付け前の春から圃場に生息していること,培期間中に雨よけがなくなると激減すること,未熟な有機物が施用されると急増すること,石灰窒素の施用により激減する場合のあること,フルフェノクスロン乳剤も効果があることがわかった.
 これらの技術は直ち現場に応用されて諸問題の解消に貢献した.(日作紀 4編公表済み) (全文PDF 900KB)
Studies on Haploid Breeding in Wheat
小麦の半数体育種に関する研究
牛山智彦(東京農工大学(宇都宮大),2008.3 長野県農事試験場育種部長,社会人)
  New cultivars are strongly expected for the stable domestic supply of wheat and the cultivars must have high productivity and high quality.
  In the pedigree analysis for wheat cultivars developed by Nagano Agricultural Experiment Station (Tozan line), seven ancestors, collectively, contributed 51.5% to the gene pool. Fukuhokomugi, which was a high yield cultivar and often used as a cross parent, did not contribute to high flour protein.
  Haploid breeding was applied for developing new wheat cultivars. In this method wheat was crossed with Hordeum bulbosum or maize, following the elimination of the chromosomes and by doubling the chromosomes, a doubled haploid (DH) plant, which was completely homozygous, could be obtained immediately.
  Tozan lines produced haploid embryo with bulbosum method. The treatment with 2,4-D at 25 - 100 mg L-1 was effective for bulbosum method. For maize method, 2,4-D at 50 - 100 mg L-1 was optimum. Teosinte also could be used effectively for haploid breeding of wheat.
  In DH3 - DH6 populations by the bulbosum method, the frequency distribution of culm length showed two peaks, though that in F3-F6 from the same F1 hybrid showed a continual normal distribution. DH lines by the two methods were treated with GA. The scatter diagram of the sensitivity to GA plotted against culm length was divided into three groups. The segregation ratio was close to the expected ratio; 1:2:1 in both DH lines, suggesting the useful selecting of the medium culm-length of DH lines than the conventional bulk method in addition of examining GA sensitivity.
  'Kinuhime' was developed by bulbosum method. 'Yumeasahi' and 'Hanamanten' were developed by maize method. The latters were developed in 8 - 9 years after initial crossing. In conventional method, it took usually 12 - 16 years, showing that haploid breeding could shorten the time considerably.
  Applying the haploid breeding method, the author could develop new cultivars relatively in a short time and the new cultivars had good agronomic characters and high flour quality, which had been considered very difficult for a long time to combine. (Jpn. J. Breed. 1編,Plant Prod. Sci. 4編公表済み) (全文PDF 640KB)
Studies on Direct-seeding Adaptability of Cambodian Rice Cultivars and Development of Cultivars with Good Eating Quality
カンボジア水稲品種の直播適応性,及び良食味品種の育成
Ly Tong  リ トン(東京農工大学(宇都宮大),2008.3.カンボジア)
  This literature is about to study on genetic diversity of Cambodian rice cultivars, their adaptability to direct-sowing under paddy conditions, the method for crossing using Cambodian cultivars and evaluation of agronomic characteristics for selecting lines derived from the crossing.
  Cluster analysis of SSRs data showed that Cambodian cultivars were classified into 3 groups. One of those groups included traditional cultivars, which showed farther genetic distance from Koshihikari. Crossing of this group with Koshihikari could expect to gain wide variation.
  Cambodian cultivars had low adaptability to direct-sowing by showing lower seedling establishment at both low temperature and deep sowing than Koshihikari. It is recommended to cross those cultivars with Koshihikari to improve not only seedling establishment but as well as eating quality.
  Hot-water emasculation could be adopted to cross indica type Cambodian cultivars with japonica cultivars by emasculation with hot water at 43℃ or 44℃ for 7 minutes.
  Crossing of Cambodian cultivars and Koshihikari was achieved. Generations were advanced and selections of progeny lines were conducted. Through the process of selection, two lines were recommended as promised lines. Both of them had long panicle length, short plant length, good seedling establishment, strong lodging tolerance and low amylose content. These lines could contribute to the breeding materials adapted in Cambodia for direct-sowing.  (Plant Prod. Sci. 3編公表済み) (全文PDF 600KB)
栃木県における水稲や麦類の品質安定化に関する研究
大谷和彦(東京農工大学(宇都宮大),2009.9.栃木県農業試験場,社会人)
 数10年間の栃木県内の現地試験結果から,水稲,麦類の収量,外観品質の変動要因を解 析した.地域,栽培年次による特異性や類似性が認められた.玄米収量,倒伏などは,外 観品質に対し適正値があり,外観品質とその安定性には品種間差異があった.調査地ごと に外観品質向上のための要因の効果が違い,基肥窒素量,出穂期,成熟期,穂いもち病, 倒伏,稈長,穂長,穂数,玄米重及び玄米千粒重の適正値を明らかにした.
 玄米の乳白粒,基白粒,背白粒等を総称した白未熟粒の発生要因を探った.栃木県産米 の一等米比率と気象,農業形質の解析から,出穂後6〜25日の飽差と最大風速,出穂前・ 後各20日間の気温,出穂前30日間の日照時間,一穂籾数が白未熟粒発生の要因であった. 基白粒,背白粒は出穂後6〜10日の登熟初期の送風処理により穂上着粒位置にかかわらず, 乳白粒は出穂後21〜25日の登熟中期の送風処理により,上・中位の1次枝梗に多く発生し た.白未熟粒の発生には品種間差異があり.その発生量を推定できた.
 麦類の収量,外観品質の変動要因を明らかにし,気象要因が影響を及ぼす時期は麦種に よる違いが少なかった.ビール大麦,六条大麦,小麦の出穂期,成熟期,稈長,穂数など 要因ごとの適正値を明らかにした.
 栃木育成水稲品種の系譜は近年複雑になっているが,遺伝資源は狭かった.主要品種と の近縁係数と栃木育成品種の農業形質との間には有意な相関が認められた.白未熟粒の発 生が少ない品種はてんたかく,晴れすがた,ふさおとめ,栃木13号であった.栃木県育成 品種の出穂期,成熟期,倒伏程度,穂長,玄米重,玄米千粒重,外観品質に関する特性が 明らかとなった.
 本研究により水稲,麦類の品質変動要因が明確となり,高品質化のための品種の選定や 組合せ,播種期,肥培管理,病害虫防除,水管理などの生産現場に応じた技術指針を明ら かにした.この技術指針を実践することにより,高品質米・麦が効果的に安定生産できる.(日作紀 3編公表済み) (全文PDF 2.66M)
栃木県における水質実態と水質保全技術開発およびその作物栽培への応用に関する研究
宮ア成生(東京農工大学(宇都宮大),2009.9.栃木県農業大学校,社会人)
 栃木県内主要農業用用水および農業用排水の水質はおおむね良好であったが,県南部お よび西部の都市下流域で水質汚濁がみられた.10 年前と比較したところ,栄養塩類の濃度 は低下する傾向にあり,特にT-Nで顕著であった.農業用地下水の水質はNO3-N濃度が環 境基準値10 mg L-1 を超える地点はなかった.土地利用別では畑作地帯で高い傾向であっ た.県南部畑作地域の農業用地下水のNO3-N の起源はδ15Nの値から化学肥料が50〜60% 程度であった.
 ユウガオに標準栽培の2倍量施肥した場合,標準施用した場合に比べかんぴょう果実の 収量は1.1 倍にしかからなず,多肥栽培による経済的メリットはなかった.ユウガオが必要 とする以上に施用された窒素の多くは,降水に伴ってNO3-Nとして地下に浸透した.
豚ぷんに生石灰を添加することにより短時間に粒状肥料が製造できた.肥料は保管によ る変質がなく,運搬や機械散布に耐えうる強度を有し,流通性の高い製品であった.炭酸 カルシウム程度のアルカリ分を含有し,土壌pH矯正資材としての利用ができた.製造過程 で発生するアンモニアガスを肥料として利用できた.
 生石灰処理により農業集落排水汚泥を粒状肥料化する方法を確立し,製造装置を機械メ ーカーと共同で開発し,関連する特許を7 件取得した.肥料の土壌pH矯正資材としての効 果があった.
 家畜ふんを原料に成分を調整し成型した肥料を製造する方法を開発した.肥料は設計ど おりに成分を調整でき,ロットによる成分の変動は小さく,密封により変質なく長期保管 できた.また,コマツナ,ホウレンソウに対し,市販有機入りペレット肥料と同等以上の 施用効果があった.基肥として豚ぷん肥料を,追肥として慣行の化学肥料を施用して水稲 を栽培した場合,慣行栽培と同等の収量および品質となった.
 主要水田域でかんがい期に溶存栄養塩類12項目について水田の浄化能力を評価した結果, 浄化できる元素は窒素のみあった.汚濁した用水の利用している水田地域内ではha あたり 71kg の窒素が消失しており,その主な原因を水田土壌の脱窒作用であった.(日作紀4編公表済み) (全文PDF 915KB)
ビールオオムギにおける大麦縞萎縮病抵抗性遺伝子集積品種の育成とその普及に関する研究
五月女敏範(東京農工大学(宇都宮大),2010.3.栃木県農試,社会人)
 ビールオオムギの安定生産を目指し,大麦縞萎縮病抵抗性遺伝子集積品種の育成と普及を行った.
 栃木県農業試験場で育成したビールオオムギ品種について家系分析を行った結果,はるな二条と育成品種の近縁係数が高く,醸造適性だけでなく収量や成熟期にも影響を与えていること,また,大麦縞萎縮病抵抗性遺伝資源木石港3やはがねむぎとの近縁係数は0.008〜0.078と低いことを,明らかにした.
 ビールオオムギ主産地の栃木県において大麦縞萎縮病の発生状況を調査した結果,県南地域では大麦縞萎縮ウイルスIII型が常発化していることを,また県中北地域ではI型が発生していることを確認し,これまで普及していた品種では安定生産が望めないことを明らかにした.さらに,大田原市においてI〜III型抵抗性遺伝子rym3を犯すIV型と,山口県山口市でV型を発見した.I〜V型抵抗性のビールオオムギ品種育成のためには,抵抗性遺伝子rym3,rym5の集積が重要と考えられた.
 エステラーゼアイソザイムEst1-Est2-Est4の遺伝子型と大麦縞萎縮病汚染圃場を用いて,rym3とrym5の集積法を開発した.本法を用いて,ビールオオムギ品種で初めて全ての大麦縞萎縮ウイルスに抵抗性で,醸造用品質が優れ多収のスカイゴールデンを育成した.
 大麦縞萎縮病の発生状況からスカイゴールデンの普及が必要と考え,生産者履歴等を解析した結果,適期播種,土づくり等基本技術は約半分程度しか励行されていない等の課題を明らかにした.加えて,苦土炭カル100kg/10aと苦土重焼燐60kg/10aの施用による粗タンパク質含量低減化高品質多収技術を確立した.これらを基に,那須地方で栽培技術の徹底を指導した結果,特に不適正とされる粗タンパク質含量12.0%超の生産者の割合は2003〜2006年の平均19.2%から2007年2.7%,2008年13.0%と減少させることができた.
 さらに,県南地域および県北地域を中心に普及に努めた結果,スカイゴールデンは6,639ha,栃木県の作付品種割合で71.3% (以上2008年産) まで普及した.  (日作紀4編公表済み) (全文PDF 1.8M)

山梨県における絶滅危惧植物の保全や増殖技術の確立とそれを教材とする農業高等学校における学習指導法の開発に関する研究
亀井忠文(東京農工大学(宇都宮大),2010.3.山梨園芸高校,社会人)
 絶滅危惧植物, 特に高山植物の生育環境の悪化が深刻化しており, 絶滅の危険性が特に懸念される植物種については積極的な増殖方法の確立が必要と考えられる. この研究では山梨県域の南アルプス高山帯に生育するいくつかの種,特にナデシコ科マンテマ属(Silene)の高山植物2種について 増殖技術・栽培技術等を開発し, その教材化を試みた.
 タカネビランジとタカネマンテマの種子の休眠打破・実生獲得条件と栽培技術を確立した. タカネビランジの両性花の雌・雄蕊の形態学的解析により雄性先熟の他殖性植物であることを明らかにした. また, タカネマンテマの組織培養による大量増殖系を確立した.
 鳳凰三山と北岳産のタカネビランジ個体群のSSR分析の結果, Sb6-342プライマーにおいて, 北岳産すべての個体に約1,000bpの特異的なバンドが検出されDNA識別マーカーとして有効であると考えられた. クラスター分析の結果, 2つの大きなクラスターTとUに分かれた. クラスターUの下位のクラスターU-2に北岳の個体がすべてまとまった.
 キキョウ科ツリガネニンジン属のヒメシャジンについて大量増殖系を確立した.ホウオウシャジンについて個体再生系が完成できた. キタダケデンダの大量増殖法を開発した.
 山梨県における絶滅危惧植物数種の農業高校における教材化を図った. 科目「課題研究において,マンテマ属植物を教材と して学習内容を具体的に位置づけた. 数種の実験で「学習指導案」を作成し授業を展開した. 目標への到達度を測定し結果の分析・評価を行った.
 タカネビランジのDNA分析とその実験結果について, DNAを理解させた上で, 手計算でクラスター分析の計算をさせることで, その概念を生徒に理解させることができた.
 絶滅危惧植物を教材とする科目 「課題研究」 の授業分析と評価方法の開発を行った. 学習単元ごとに評価規準を作成し, 授業の到達度を測定・分析した. 到達度は各単元とも概ね良好だった. 農業高校生にバイオサイエンスの高度な最先端技術に触れさせることはさらなる学習意欲の向上や自信回復にもつながり, 彼らの今後の生き方にもよい影響を与えたものと考える. (農業教育学会5編公表済み) (全文PDF 2.52M)
ご挨拶状のなかから

頁の頭へ戻る

以上