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この頁の内容は,普通作物(稲麦豆いも類)の収量や生育の調査法の解説です.出所は,農水省の作成した各作物ごとの調査基準や指定種苗品種特徴表示基準,IRRI (1972),など.生物統計学は別頁を参照ください.

ビール麦生産力検定試験圃場

作物の生育調査法

[水稲] [麦] [大豆] [いも類] [その他,発芽率,試験区,統計処理解釈など]


写真はビール大麦の収量試験圃場


[水稲]

☆子実収量
育種試験など多数の品種比較をするときは,1区面積を6u以上,2反復以上,2カ年以上の栽培試験を行い,収穫した玄米の重さを計る.栽培法は試験地近辺の農家の標準的な方法とする.従って田植え機による稚苗移植となろうが,手植えを行う場合は機械移植にできるだけ似た方法をとる.1区の最外側の条と,条の端約30cmを隣接区の影響を避けるため除いてから収穫するのが望ましい(このため調査基準最低の6uではやや狭い).くず粒を風選で除いて玄米収量とする(収量構成要素の解析をするときは比重1.06の水で沈んだ籾(精籾)のみとする).通常の乾燥後玄米は水分14%程度を含むが,水分一定に補正した値とする.粒厚1.8mm以上の玄米(1.8mmの篩でふるった残り)を精玄米とし,精玄米重で収量を表す場合もある.奨励品種決定調査の耕種概要基準では3カ年を必要とする(予備試験を含む).また奨決本試験では3反復以上とする.

広い農家圃場の収量を坪刈りから推定するには,水口と水尻を結ぶ対角線(作柄の高低が予想される線)上やその平行線上の地点3〜5カ所から合計150株(または1カ所から2〜3uずつ)刈り取り玄米重を測定する.

圃場で迅速に収量構成要素から収量を推定するときは(松島ら1960),刈り取った150株から平均1株穂数を示す株を20〜30選び,さらにそれから平均穂重を示す株を1〜3選んで手で脱穀する.比重1.06の塩水で精籾を分離し,ヒーターで水分14%程度に乾燥させてから籾重を計測する.玄米重にするには0.84を乗ずる.

☆出穂期(早晩性)
穂の一部(芒は除く)を葉鞘から抽出している茎が有効茎(穂をつけた分げつ)の40〜50%に達した日を出穂期という.観察で判定する.
早晩性は標準品種の出穂期と比較して判定する.九州では早生品種(日本晴)より出穂期が概ね+1週間で中生,+2週間で晩生とされる.

☆成熟期
約90%の籾が黄化した日.

☆稈長
最も長い稈の地際から穂首までの長さ.出穂期以後,概ね10株(個体)を計測する.当然異株,病気株などは除く.
稈長の長短は標準品種との差で判定する.長,中(日本晴.80cm程度),短稈品種の差は概ね各10cm程度である.
(参考)草高 plant height;地際から,自然状態での植物体の最上部までの長さ.草長(草丈)plant length;植物体の全長で,上位葉身を上に手で持ち上げて地際から植物体の最上部分までを計測する.

☆穂数
出穂期以後,1カ所で隣接した4株,1区で計概ね3カ所の穂を数える.遅れ穂は数えない.

☆草型
コシヒカリや日本晴などを中間型とし,それより比較的穂数が多くて穂長の短いものを穂数型,逆のを穂重型とする.観察により判定する.

☆倒伏程度
成熟期における倒伏の発生程度.観察により,ほぼ100%倒伏から無の間を6段階(甚〜無または5〜0)に区分して判定する.耐倒伏性は標準品種との比較により判定する.耐倒伏性強,中(日本晴),弱品種の差は概ね前記6段階の各1.0程度である.

☆耐冷性,耐病性,耐虫性
正確には,耐冷性では圃場への冷水掛流しや低温室,耐病性では病菌接種やいもち病における畑での多窒素施肥での晩播(梅雨時),耐虫性では摂食などの試験により評価する.
または各障害の自然発生程度を標準品種と観察で比較して各耐障害抵抗性を判定する.この際,各感受性品種に障害が発生していることを確認する.耐障害抵抗性の尺度や強弱品種の判定基準は倒伏程度の場合とほぼ同じである.

☆玄米の見かけの品質
観察により,皮部の厚薄,充実度,粒ぞろい,光沢,心白(中心部が白いもの),腹白(腹部が白く不透明)の程度を総合的にみて9段階(1,2,3等または上,中,下の各上,中,下または1〜9)に区分する.品質の判定は標準品種と比較して行う.品質上(日本晴),中,下品種は概ね前記9段階の各3.0程度の差がある.他作物の子実みかけの品質判定法も同様.

☆食味
用語解説集中の「米の食味」を参照

☆奨励品種決定調査での調査項目(以下を基準として県が定める)
播種期,移植期,出穂期,成熟期,稈長,穂長,穂数,全重,玄米収量,玄米千粒重,玄米みかけの品質,倒伏程度,病害虫などの障害(当該県で重要なもの),心白または腹白の多少,搗精歩合(通常90〜92%とする),食味.

[麦]水稲と異なる項目を記す

☆収量
1区面積を10u以上とする.通常,水稲より区間変異が大きいので,反復数や試験年次を増やすほうが良い.くず粒を風選で除いて子実重とする.粒厚が小麦,六条大麦,裸麦は2.0mm,非醸造用二条(大粒)大麦は2.2mm,ビール大麦は2.5mm以上のものを精粒とし,精粒重をもって収量とする場合が多い.

☆早晩性
九州の小麦や二条大麦で,早生品種と中生品種(二条大麦;あまぎ二条,小麦;農林61号)の出穂期の差は,水稲の場合より短く約5日である.

☆成熟期
観察で,全穂数の約80%の穂軸および粒が黄化した日とする.

☆稈長
小麦の長(農林61号.87cm程度),中,短稈品種の差は,水稲の場合より短く概ね各5〜6cm程度である.

☆穂数
条播されているとき,概ね1区で2〜4カ所,長さ50cm程度間の穂を数える.バラ播きのときは,0.5u程度の面積を1区で2〜4カ所数える.

☆耐寒性,耐雪性
前者は雪害のない状態での低温に保ち,後者は積雪期間90日以上の地帯での栽培をし,茎立期(主稈の長さが2cm程度になった日)における株の被害程度を標準品種と観察で比較して判定する.判定基準は耐倒伏性の場合とほぼ同じである.

☆まき(播)性
春に播種して出穂するものを春まき型(性),出穂せず座止したままのを秋まき型(性)とする.
さらに細かく分級するときは,早春から何回か播種し,まき性程度が既知の基準品種の出穂期と比較して判定する.

☆穂発芽性
成熟期に達した穂を採取し,約15〜20℃の箱(室)内に入れ約5日間水を噴霧後,穂発芽の発生程度を標準品種と観察で比較して判定する.10〜20穂供試し,発芽した粒の割合や遅速(根の長さ)から総合判定する.水稲でも本方法がとられる.

☆奨励品種決定調査項目
播種期,出穂期,成熟期,発芽の良否(観察による),稈長,穂長,穂数,子実収量,千粒重,子実みかけの品質,倒伏程度,病害虫などの障害(当該県で重要なもの),容積重(L升での重さ),子実加工品の品質(製粉性,麺適性,醸造適性など).

[大豆]

☆収量
1区面積は12u以上とする.

☆成熟期
約90%の莢が変色し,かつ莢の中で粒が動くようになった日

☆早晩性
標準品種と成熟期を比較して判定する.九州の晩生品種と中生品種(フクユタカ)の成熟期の差は約1週間である.

☆伸育型
主茎の先端における花(花梗)の分化程度を標準品種と比較して判定する.無限伸育型:花が枝の基部から咲き始め,順を追って枝の上方に及ぶもの.先端には花がつかないことが多い.有限伸育型:先端から咲き始め枝の基部に向かうもの.中間的な品種もある.用語解説集中の「形態」を参照

☆開花期
全株数の40〜50%が開花始に達した日.開花始;初めて開花を認めた日.障害などによる異常開花は除く.閉花受粉は葯が裂開したと思われる日.

☆主茎長
主茎の地際から先端(花梗は除く)までの長さ.成熟期以後に概ね20株(個体)を計測する.

☆裂莢性
観察により判定する.

☆奨励品種決定調査項目
播種期,開花期,成熟期,発芽の良否(観察による),主茎長,分枝(2節以上持つ枝とする)数,子実収量,百粒重,子実みかけの品質,倒伏程度,病害虫などの障害(当該県で重要なもの).

[いも類]

さつまいも
☆収量
境界部の株を除いた10株以上の上いも(50g以上のいも)の生重を計る.坂井(1964)は1区が16.5u以上,4〜5畦で60〜70株程度必要としている.

☆切干歩合(乾物率)
上いもを大中小別に分け,その個数比率により試料約2kgをとり,水洗し,表面の水分が発散後裁断機で千切りし,充分混合してから100gを2点をとり,105℃で8時間乾燥後秤量する.

☆通常の調査項目
たねいもの萌芽性(良否や遅速),堀取りの難易,いもの形状(円か細長いか),大小,皮色,肉色,条溝(有無深さ),外観の良否,食味,つる重,株当たり上いも個数,収量,切干し歩合,センチュウ,黒斑病抵抗性,いもの圃場萌芽.

じゃがいも
☆収量
境界部の株を除いた6〜10u,30〜40株以上の区を3反復以上して,上いも(40g以上のいも.早堀では20g以上)の生重を計る(総いも重は10g以上).奨決本試験では20u,4反復以上とする.

☆通常の調査項目
出芽性(良否や遅速),そう性(直立か開くか),開花期,生育の良否,茎の長さ太さ,いも数,いも重,でんぷん価,いもばなれの難易,休眠期間,いもの形,皮色,食味,病虫抵抗性,貯蔵性など.

[その他]

☆発芽率; 湿った濾紙の間(または稲,小麦では紙の上)か砂中に100粒を置き,稲,大豆は25±1℃(麦では20℃)に保ち,14日(大麦では7日,小麦,大豆では8日)以内に正常発芽した(正常な根や葉を生じた)割合.試験中水分を適宜補充する.4反復する.休眠中のものは稲では予熱50℃,7日以内,麦では30〜35℃7日以内またはジベレリン0.05%浸漬などによる休眠打破をしてから検定する.照明下が望ましい.

☆出芽
 芽が地上に出ること.emergence 出芽率(%)=(出芽個体/播種数)×100   播種数×発芽率を分母がいいかも.  (広義に出芽とは,植物体から新原基が形成され発育すること.budding)

☆苗立ち (なえだち)
 移植,または播種出芽後,個体として確立し (establish),今後順調に生育するであろう状態.  苗立率(%)=(苗立ちした個体数/播種または移植数)×100   移植または出芽の1〜2週間後に計測.

☆調査は目的のあるものに絞り,無目的な調査を避ける.種苗登録に必要な値は観察による標準品種との相対評価でよいことを念頭におく.なお,種苗登録に必要な調査項目や手続きについては農水省農産園芸局種苗課に問い合わせる.

☆ここに記した収量の調査基準での面積や反復数は本当はもう少し増やしたい.面積は15〜30u程度,反復数は4以上が望ましい.

☆必ず統計処理をし,平均値間の多重検定を行う.三元配置以上はデータの解釈が困難になるので避け,できるだけ単純な試験設計とする.乱塊法での供試品種数(処理数)は10を超えないようにする.

☆品種と施肥量,品種と場所などの二元配置実験を行ったときは品種×環境(施肥とか場所)交互作用に留意する.交互作用が有意であるということは,品種間差が環境条件で異なるということで,例えば標準量の施肥では新品種の収量は旧品種よりそこそこ多収だが多肥ではそうでもない,あるいは逆転する,ということがあることである.通常は単なる品種間差,あるいは施肥効果をみたいだけでなく,この品種と施肥(環境条件)との交互作用こそが知りたくて実験しているとも言えるので,統計処理における交互作用の意味を充分理解する.ここを参照.

☆反復とは同一試験区内での複数調査ではない.止むを得ずその場合には,分散分析や多重検定でなく,複数調査値の標準偏差などの表示にとどめる.有意差との表現も避ける.

☆相関係数が“高度に有意”と,2変数間に“密接な関係がある”とは異なる.例えば,r = 0.146***(df=500)である.データが500もあると相関係数値が0.2と小さくとも相関は0.1%水準で極めて高度に有意となる.XとYに関係があるのは極めて確かだが,rが0,2では密接な関係とはいえない.ここを参照.

☆出穂・開花期,稈長・草高,蔓伸長などの大きく異なるものを同一試験に含めるのを避ける.成熟期や用途の異なるものは別個の試験とする.

☆必要面積,株数を確保できないときは,収量での評価に重きをおかず,外観や品質などの評価を中心にする.

☆稈長などの計測では個人差がでやすいので,試験区間で測定者を変えない.少なくとも,同一ブロック内では同一人が測定する.

☆移植直後の欠株は補植するが,生育中期以後に欠株がでたときの補正は避ける(各種障害による欠株はそれも考慮したうえでの収量だとすべき).ただし鳥害などによる周辺部分での障害時には,その部分を除いた面積当たりの収量が妥当である.
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