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作物各論(甜菜など)

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甜菜 サトウキビ ゴマ 綿 菜種
甜菜 てんさい Beta vulgaris L.  sugar beet    写真 [歴史] 1747年,ドイツの化学者,Andreas Sigismund Marggrafはbeetの糖がサトウキビの糖と同じ成分で あることを発見し,beetがヨーロッパで生産される糖になることを予測した.当時砂糖は熱帯産の貴重品だった. 50年後,彼の弟子であるFranz Carl Achardが製法のパテントを取り,1801年に最初のbeet工場を作った. 同時に品種改良も行った.当時の糖含量は7ー10%程度であった.その半分を収集した.現在は13ー18%である. 20ー22%ものもある.根収量は50-75t/haある. 甜菜は世界で5百万ha栽培され,ロシア,ウクライナ,アメリカが多い. 19世紀中頃以降,甜菜工業が欧州で発達し,種子会社が育種も行った. フランスの種子会社Vilmorin,Louis de Vilmorinが率いて甜菜の育種法を開発した. 後代検定法をとった.糖含量検定に比重法や偏光器を用い,正確な糖含量推定と後代検定が19世紀 後半の育種法の標準となった. 米国では1900年以降発達した.それまでは,各種病害で産地形成ができなかった.1920年以降ウイルス病, 黒根病,褐斑病抵抗性育種が進んだ. [北海道での生産](増谷,農技45,1990,より). 1871年に日本で甜菜栽培は始まった.今日高度の技術で小麦,豆類とともに北海道の畑作基幹作物で, 輪作体系維持に欠かせない. 根重は1871〜1952年迄おおむね20t/ha以下だった.1984年以降53tである.精糖歩留まりは1925年 以前は10%以下,1986年以降は16%の水準である. [栽培法] 通常2年生で,草木の双子葉,初年目に主根を二年目に主茎を作る.花芽形成には,長期の低温(4ー7度)と その後の長日が必要である. 花(果実)は通常葉腋に,花皮が融合して多数付着し,多胚種子(球果seed ball)となり, 機械的に球果をこわして小さくするか,発芽後間引きが必要であった. 単胚種子の発見で間引きが不用になった.これは劣性単一遺伝子で発現する. 3月中旬〜4月上旬にペーパーポットに播種する.35-45日ハウス内で育苗し,本葉が3-4枚で移植する. 条間60cm,株間20-25cm.窒素が生育後期まで残ると糖の蓄積が進まないので基肥のみで, N10-15kg.7月下旬〜8月上旬までに中耕を3〜5回行い,10月中旬〜11月上旬収穫する. 直播は4月下旬〜5月上旬.連作障害が著しいので4年あける. かっぱん病が最大の病害で,耐病性品種利用か,薬散する. 紙筒栽培で生育期間の延長が可能になった. [エネルギー資源作物] ブラジルでさとうきびの全生産の40%がアルコールに転換されており,ブラジルの収量が55.7t, 精糖歩留まりが9.34%に比較するとてんさいは1.6倍位の生産力がある. 戻る
サトウキビ サトウキビ sugar cane   Saccharum officinarum L.   写真 [歴史] 禾本科に属する草木で栽培の起源はニューギニアとインドの2説ある. ローマ人がインドでサトウキビから砂糖を抽出していることを記している.アラビア人が欧州に伝えた. 9世紀には地中海沿岸へ,15世紀には西インド諸島へ,ルイジアナへは18世紀に. わが国では,あまかずらの類が甘味料に用いられていた.慶長年間中国経由で薩摩へ伝わった. 明治以降台湾が主産地になった. [適地] 熱帯で気温高く,年降水料1200-2000mmを要する.成熟期にはやや乾燥を要す. 気温24-25度で,17-18度が限界で,20度以上が好ましい. 世界で2千ha栽培され,ブラジル,インド,中国が多い. [形状] 多年生草木で,栄養繁殖し,挿し木で増殖する.茎は3-4m,径2-5cm,多数の節をもつ. 節間は5-7,20-22cmで,多汁糖分を多量に含む.各節に芽と葉を生じ葉身は長さ1ー2mになる. 根は深根性で,不定根が各節から生じる.出穂するが多くは不稔で多数分げつする. 開散穂状花序を稈の先端に生ずる.長さは50-80cm.穂軸は多数分枝し円錐状である. 自家受粉率は1%程度で,他家受粉でも10%程度である.11月〜2月に開花する. [育種目標] 耐病性,茎の長く太いこと,分げつ力が旺盛,出穂が遅く(含糖率が高くなる),搾汁率の高いこと, 成熟期が早い,旱害や風害耐性を有する,・・・. [栽培] 深耕して深さ30cmの植え溝を掘る.茎を24cmに2節もつように切る. 1haに2万本位の密度で挿し木する. 追肥2ー3回行い,全生育期間のNは30-40kg/10aである. 気温が低下して茎に糖が蓄積する.収穫は12ー3月で,春植えでは収穫まで約1年,夏植えで は18ヶ月要し,分げつの再生(株出し栽培)を繰り返すときは毎年1回冬季に何回も収穫する. [病虫害] 黒穂病,葉焼け病,赤腐れ病,株腐れ病,矮化病,モザイク病・・. 戻る
ゴマ 胡麻 sesame Sesamum indicum L. [歴史] 食用油としてココヤシとともに最古のものである.エチオピア起源か.それからインド,ヒマラヤへ, B.C.2千年には南欧,アフリカ,南アジアで栽培され,南北40度の範囲に広がった. 日本では,油料作物として菜種より古くから用いられていた. [適地] 栽培適地は大体甘藷と一致する.生育期間約4.5カ月の所用温度が2700度, 生育期間3-4カ月の平均気温20度以上を要する.やや乾燥に適し多雨多湿には適さない. [用途] 食用,食品加工用. [形状] 茎は1m前後.多数の節をもち,葉と枝を対生または互生する.葉は長さ12cm位,分枝は密植すると殆どしない. 花は葉腋に対生する.子房は莢をなし多数(約80)の種子をもつ.油含量は50ー58%,蛋白質20%程度である. [栽培] 低温では発芽しにくい.最低10-11,最適30度である. 6月,7月に播いても相当収穫できるので主作物が途中失敗し急遽栽培する“置換作物”として貴重である. 収量は1t/ha前後と低い.自殖だが一部他殖もする. 戻る
綿 わた(棉) cotton  Gossypium spp. [歴史] Gossypium属の数種が栽培されている.古代インドのサンスクリットに記述されている. 17世紀に北米へ伝播した.我が国では徳川時代に発達した. 開国後外国産輸入により衰退した.戦前自給作により7千ha まで増加したことがある. 主産地は関東で東海であった. [種類] 棉には4大種あり.  濠州野生棉 n=13 G. sturtii F. Muell.  アジア棉  n=13 アジア及びアフリカの野生種と栽培種   G. arboreum  G. herbaceum など  アメリカ野生棉 n=13 北米西南及びガラパゴス島産   G. armourianum ら  アメリカ栽培棉 n=26 北米,南米,アフリカ,太平洋諸島   G. hirsutum 陸地棉ら があり,相互間の交配は不稔になることが多い. [栽培適地] 高温を要する.平均気温25度.北緯42-43度を北限とする. cotton beltは北緯37-39度(ミズーリ州). 年雨量1000-1500mmを要す.開花期には乾燥を要す. [形状] 草丈1m位.主茎に15-20節.各節に葉と2側芽を生じ主側芽は発育枝,副側枝は結果枝となる. 花は葉と対生し,結果枝の各節に生ず. 子房は卵型で3-5室を有し,1室4-5粒結実する.子房が発達してball(朔果)を形成する. 朔果が成熟すると果皮は各室の内部から裂開し,朔内に閉じ込められた白い綿毛を外部に露出する. 種子は短い密毛(地毛fuss)と長い棉毛(floss繊維)とに被われる. 種子1つに1.5gの繊維が生じ,長さは2-4cm,本数では1万ー6千本ある. [育種目標] 自殖だが5-30%は他殖し,純系では弱勢がみられるので,ある程度のヘテロ性を保ちながら品種の固定をする. 早生:早生かつ均一な成熟により機械収穫が容易になる. 機械収穫適性:朔果が充分開いて摘みやすくする.ただし収穫前の雨風でやられないもの. 朔果が高い位置に均一に着くものがいい.苞や葉が成熟期には落ちていると繊維に混ざらない. 繊維の質:長さ,長さが均一で,強く,繊細さが求められる. [栽培方法] 5月中旬播種し,7月中旬から着蕾,開花始まり,開花後40-45日で果皮が開く. 戻る
菜種 ナタネ 菜種 rape (seed) Brasica napus L. および  Brassica campestris L.    カラシナ(B.juncea)と併せて oilseed brassicas   [栽培] 世界合計で2千6百万ha,収量は1.7t/ha程度.中国,インド,カナダで生産が多い. [形態,栽培] 茎は100-120cm,各節から葉,分枝をだし,第2,3次の枝先端に花をつける. 総状花序で,花序の最下部の芽から咲きだし無限型である. 1穂に30-40の莢を付ける.B.napusは自殖だが,条件では30%位他殖もする.B.campestrisは自家不和合性. 授精後子房は8cm位の莢となり約25粒種子を含む.種皮色は黒,通常胚で2枚の子葉が折れ重なっている. 冬型は秋に播き(九州では10月末)5-8枚の本葉が越冬前に出て,春化される. 寒地での生育期間は非常に長く,大麦よりは耐寒性があるが小麦ほどはない. 2月下旬〜3月中旬に抽台し,1月後に開花する.長期間開花する. 日本では成熟期が梅雨に入り,収穫を困難にする.株間,株内で熟度が異なり不整になりやすい. 播性は麦に似る.早生,耐倒伏性,耐病性(菌核病),多収,高含油量目標の育種が行われた. 自殖弱勢はあまりないが他殖しやすいので採種に注意する. ハクサイ,カブ,コマツナの近くで採種をしない. [歴史] B.napus(AACC)B.campestris(AA)B.oleracea(CC)の自然交雑に由来する 複二倍体である.B.campestrisの野生型は地中海の近接高冷地起源で種子を採るために利用され, B.oleraceaは地中海,欧州周辺に自生し葉を利用した. わが国への渡来は古く,B.campestris が栽培されたが(元々は食用),明治以降B.napusが導入され, 在来種と自然交雑し早生の朝鮮種napusが成立した.B.napusは多収等優れた形質を有しているが 晩生で,B.campestrisの早生遺伝子が取り込まれた. [利用] 江戸時代から明治までは灯火用.以降食用油,研磨,工作用グリス,化粧品等と多用途に用いられた. エルシン酸を含むなたね油を飼料に配合して飼育したラットに心臓などの異常が発生し, FAOが1977年にエルシン酸の低減化を勧告し,低エルシン酸品種開発が進んでいる. 野菜として,なばな,つぼみな,くきたち,などとして利用されている.品種としては, 冬期栽培される希少野菜で,病虫害が少なく,生食,漬物,色,軟らかさ,苦みの改善, 春播性,などが求められる. [ゲノムの関係]      盛永,水島,禹長春(う・ながはる)などによる Brassica campestris turnip rape アブラナ 2n=20 (AA) ↓ ↓ B.juncea キカラシ B.napus curled mustard rape ナタネ 2n=36 (AABB) 2n=38 (AACC) ↑ ↑ B.nigra B.carinata B.oleracea black mustard → Abyssinian mustard ← cabbage,broccoli 2n=16 (BB) 2n=34 (BBCC)   2n=18 (CC) カラシナ アビシニア芥子 カンラン ナタネには,B.napusとB.campestrisが含まれる.   B.juncea :高菜,カラシナ B.campestris :ハクサイ,カブ,ミズナ,和種ナタネ B.nigra:クロガラシ   B.oleracea:カンラン,ケール,ブロッコリー   B.carinata:アビシニアガラシ 禹はB.campestrisとカンラン(B.oleracea)を交配しF2中にn=19で普通菜種に形態の酷似した個体を得た. [カナダでの育種と生産] カナダでは1943年当時ナタネ油はエルシン酸のおかげで潤滑油に用いられた.戦争で供給がなくなり, カナダが連合軍海軍のため生産を始めやがて工業用よりも食用の方が重要になった.戦後日本や他の国への輸出用の 生産が確立した.9百万t以上生産している.  カナダのナタネ品種の推移(Downey and Rakow 1987) ========================= Year of Cultiva Seed Days to % oil % Seed release yield maturity protein quality −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1943 Argentine 100  101  40.5 47.1 HEHG 1954 Golden   101  101  41.1 43.9 HEHG 1968 Oro     107  106  41.7 43.4 LEHG 1973 Midas    118  98  43.8 42.9 LEHG 1981 Andor    119   95  43.6 45.9 LELG 1982 Westar   127  95  44.3 46.0 LELG −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− Seed yield expressed as % of Argentine. Oil content expressed as % of moisture-free seed. Protein content expressed as % of moisture- and oil-free meal. H=high; L=low; E=erucic acid; G=glucosinolate. 西部カナダのナタネ生産地での無霜期間は100日で早生が必須. [除草剤抵抗性] atrazine散布したトウモロコシ畑にB.campestrisが雑草として残っていた. この除草剤抵抗性は細胞質遺伝をする. 抵抗性B.campestrisを母親として戻し交配し,B.campestrisとB.napusに取り込まれた. しかし抵抗性が低効率の光合成経路と結び付いており,低収であった. [その他の育種目標] 耐倒伏性,脱粒性,低温発芽性,アブラムシ耐性・・ [成分]  C2-pools  ↓ palmitic acid(16:0) ↓ オレイン酸 stearic acid (18:0) → oleic acid (18:1) → linoleic acid → linolenic acid ↓ リノール酸(18:2) リノレイン酸(18:3)   eicosenoic acid エイコセン酸 (20:1) urucic acid  エルシン酸(22:1) 1950年代中頃に低エルシン酸育種が始まった.エイコセン酸への回路がブロックされ, 低エルシン酸となり,オレイン酸は増加した. 一方高エルシン酸油は工業界では潤滑油として必要で,両方(低:1%以下.高:60%以上)の品種ができた. 第二の成分育種はリノール酸を増やすか少なくとも現状のレベルにしておき,リノレイン酸を減らすことだった. リノール酸は栄養上重要な脂肪酸で,リノレイン酸は不飽和脂肪で,酸化されやすく,品質低下しやすい. カナダでは遺伝的にはリノレイン酸が7%以下で,リノール酸が30%が安定している. 化学的突然変異誘発により,リノレイン酸が5と20%でありながらリノール酸が20%で変わらない系統ができた (Rakow1973).Stefanson(1985)はこの系統を用いて,リノレイン酸が3%以下で,リノール酸が22%以上の, 農業特性も充分な春B.napusを育成した. 第三の目標は重合度の低い(shorter chane)脂肪酸,palmiticやpalmitoleic酸含量を増やすことで, これは無エルシン酸のバターが結晶化しやすく,palmiticやpalmitoleic酸が10-12%含まれると防止できる. スエーデン(Persson1985)で研究中である. [油粕の品質] 油粕中の蛋白質は大豆に匹敵する高質であるが,イオウ化合物のglucosinolateが飼料価値の阻害要因であった. myrosinase thiocyanate 甲状腺障害を起こす glucosinolate   → isothiocyanate H2O nitrile+sulfur myrosinaseは高温で不活性化されるが育種での解決が望ましい.テステープで一次的に, 正確には高速液体クロマトで分析する.1960年代初頭に分析方法が確立しカナダで遺伝 資源のスクリーニングが始まった(Finlayson et al.1973). B.napusのポーランドの品種Bronowski が低glucosinolateだった.これを利用して低エルシン酸で低 グルコシノレート品種のTowerが1974年に育成され,低エルシン酸と低グルコソノレートでカナダ産 ナタネ油の評価が世界で高くなった. 戻る
以上