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作物各論(豆)

目次

大豆 小豆 リョクトウ ササゲ インゲンマメ 落花生 エンドウ ソラマメ ヒヨコマメ
大豆 ダイズ  soybean    Glycine max Merr. [栽培法]  N:2-4kg,P2O5,K2O;3-5kg/10a. 地温15度以上で播種.5月中・下旬.秋大豆は7月から.  播種量は5-10kg/10a(条間50cmm,株間25cm).土寄せ,除草を兼ねて中耕.  収穫は11月ころ.夏大豆では7月下旬.  連作で低収.大豆後は有機質(茎葉,根)を多く残す.イネ科−大豆ー根菜類の作付体系が望ましい. [起源] 大豆の原型はノマメ(別名ツルマメ,G. soya Sieb. et Zucc.).ノマメはシベリアのアムール河流域から中国,朝鮮, 日本にかけて自生.n=40で大豆と同じで,容易に栽培大豆と交雑. 中国では5千年前から栽培.日本には作物としては弥生時代初期に中国から伝来.古事記(712),日本書紀 (720)に大豆が記.欧州には18世紀に.米には19世紀に日本,中国から.19244年から普及し始め,第二次世 界大戦後世界一. 米国で1900年以前大豆は目だたない牧草にすぎなかった.半世紀の後に米国の主要穀物,生産では3位 (トーモロコシ,小麦),金額では2位になった.この急速な伸びは類がない. これはこの間の多収,耐病性,生態型に適応した,機械適性品種育成なしにはなりえなかった. [種子の形態] 種皮の色は黄,黒,・・種子と莢の連結していた部分(臍,hilum)の色も白,黄,・・子葉(cotyledons)は  90%の種子重を占める.子葉内部の肥大した棚状組織に澱粉粒,蛋白粒,脂肪粒が蓄積.臍上部に2枚の小  さい初生葉と1本の幼根がある.発芽時は臍の一端の珠孔から根が,次いで胚軸が伸びて子葉を地上部にもち上げる. [発芽]  胚の胚軸(下胚軸hypocotyl)が伸びて子葉を地上に持ち上げる(epigeal,epigea cotyledon地上子葉,  これに対して下胚軸が伸びず地中に残るものをhypogeal).子葉のつけねから上,初生葉のつけねまで  が上胚軸(epicotyl)で,初生葉から上が正常な茎になる. 種子の寿命は約2年で3年目にはほとんど死ぬ.高温で登熟すると発芽力が低下. [根]  発芽に際して伸びた1本の主根と分枝した2,3次根からなる.主根は2m,2次根も2.5mに達する.  普通深さ30cm位の2次根が主. 根には根粒菌(Rhizobium japonicum)が寄生し,根粒を形成. [茎・葉]  主茎は30ー90cmで14ー15節あり各節に1枚ずつの葉と側芽がでる.  上位の葉腋の側芽は分枝として成長しない.  子葉(まめ),初生葉(単葉で楕円型で子葉節の上の第1節に対生),本葉(3小葉をもつ複葉で第1節  以上のすべての節と分枝の節に1枚づつつく),前葉(各側枝の基部にある1mm程度の小さい1対の葉で  葉柄を欠く)の4種類がある. [花成と開花] 花は各葉腋にでる短い花枝につく腋生総状花序.無限成長性(indeterminate)では花序は成長に伴って  次々にできる.有限成長性(determinate)では腋生花序の他に茎の頂部にも花序(terminal racemes)がつく.  最初に花序が出るのは下位から5ー6節目でそれから上位下位に発生していく. [花の形態]  長さ約5mm,花冠は1枚の旗弁(standard vexillum),2枚の翼弁(wings, alae),2枚の竜骨弁  (keel,carina)からなる.雄蕊は10本でうち9本は癒着.写真.  開花直前に受粉し自家受粉が多い. [花芽形成]  短日植物で,早生では24時間でも花芽分化するが,中・晩成品種では16ー14時間.開花までの日数が最も  短縮される最適日長は早生品種が11ー13時間,中生品種10ー12時間,晩生品種8ー10時間. 生態型分類によると,Ia〜Vcまでの9段階に分けられる(福井ら 1951). −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 生態型   T      U     V   W  X    a b   a b c   b c c  c 開花迄日数 極短 極短 短 短 短  中 中  長  極長 結実日数 短  中  短 中 長  長 長  長  長 北海道と九州の夏大豆 九州の秋大豆 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 日長感応性は age が進むにつれて高まる.日長感応は葉身においておこなわれ葉が出葉展開するにつれて感応度 は高まり,最高時には1枚に葉の処理でも効果がある.北海道では日長が長いので感光性の高い晩生品種では開花 が遅れるので日長に鈍感な早生の夏大豆が,低緯度ではより晩生で限界日長のやや短い中間型が,九州では晩生で 感光性の高い秋大豆が分布.  米でのグループ分けは00(極早生で長日)−X(晩生で短日),IXとXは赤道の両側である.0と00は最北部, IとIIは北部Corn belt,IIIとIVは中央Corn velt,V,VI,VIIはMississippi deltaと南部諸州に栽培される. [窒素と根粒]  根粒菌による固定窒素が利用されだすのは発芽後4週目ころ.子葉内貯蔵窒素は2週間目(第1本葉期)には不足 するから4週目までは窒素肥料が必要.開花期に最も多くの窒素を必要.2ー3t/ha以上の収量をあげるためには 固定窒素のみでは足りない.根粒自身の成長が急な初期は大豆へは窒素は供給されない.開花期から登熟期では80ー 90%が大豆に供給される. [育種目標] 収量:プラトーといわれるが,貯蔵物質が蛋白(40%)や脂肪(20%)であり,果穀類と異なることに留意. 適切な成熟期:日長と成熟期に関係する. 倒伏や脱粒抵抗性:有限伸長型が倒伏には強い.多いときには30ー50%もが脱粒する.手収穫では問題が少な  くとも,機械収穫で問題.成熟後も脱粒せずたっている品種をCNS(Clemson Non Shatter)という. 窒素固定能力:根粒菌の利用効率のよいもの.根粒菌非着性系統利用でわかる.耐寒,乾性:低温発芽や生育で早  播可能になり,北部で栽培可能になる.また,多くの土地で高温乾燥時に登熟する.抵抗性は収量品質向上になる. 耐病性:多くの病気がある.  根や茎腐れ,糸状菌,バクテリア,ウイルス,ネマトーダ,・・  褐斑病−ウイルスの罹病によって種子に斑紋が発生した総称.原因となるウイルスは国内ではダイズモザイクウィルス  (SMV),ダイズ萎縮ウィルス(SSV)が主である.種子伝染およびアブラムシでも媒介される.SMVで5レース,  SSVで4レース分化している. −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−            SMV      SSV       A B C D A B C D −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− デワムスメ R R R R R R R R ネマシラズ R R S S − − − − Harosoy R S R R  R R R R −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− SMVのA,B系統に抵抗性のネマシラズとC,D系統に抵抗性のHarosoyからA,B,C,D系統に抵抗性 (SSVも抵抗性)のデワムスメが育成された(石川ら 1979).  紫斑病−紫斑病(Cercospora kikuchii Matsumoto)の種子感染で種皮に紫色の病斑を生じた物.外観を損ねる.  成熟期に温暖(18度前後)で多湿で多発.品種間差があるが,健全粒種子,菌剤を種子粉衣,散布で予防.  裂皮粒−外観を損ね,吸水速度が不均一になる.子実が品種固有の大きさより肥大したときや(早播,適湿),  子実の乾燥が急速なとき発生.品種間差がある. 耐虫性:カメムシ,センチュウ・・ 種子の品質や成分: 1)市場での(みかけ)品質.種皮の色,欠損,しわ.太ったものは脂肪含量が高い.  しわ粒は不適品種やり病.紫色は市場価格を下げる. 2)脂肪含量と質.大豆脂肪は世界の植物脂肪の3割を占める.オレイン酸含量を増やすとリノレン酸が減り,  脂肪の香りと安定性が増す. 3)蛋白含量と質.蛋白を増やすと脂肪が減る.制限アミノ酸はメチオニンだが遺伝変異は少ない. [利用]  蛋白源.消化が悪いので加工方法が発達.製油用が多い. [加工適性及び新用途の開発](喜多村 1990):  わが国の輸入量は世界の生産の5%の500万t.このうちの8割が製油用.豆腐・納豆等直接食品  の量は80数万t.国内産(25万t)はすべて食品用.  大豆蛋白含有率は30ー50数%.エンレイ,フクユタカ等は43ー45%.  大豆の脂肪酸組成はリノール酸が55ー60%,オレイン酸が20%位で旨さとオレイン酸含量とは負の,  リノール酸やリノレン酸とは正の相関がある.  リノール酸の多いタマホマレ,フクユタカの豆腐はコクがあり美味しいといわれる.  リノール酸の高いものはリノレン酸も高く,逆にオレイン酸は低い.淡泊な豆腐にはオレイン酸の多い品種が向く.  リポキシゲナーゼは脂質を酸化して青臭い不快臭を発生させる酵素で,大豆種子中にはL1,L2,L3の3種類  の酵素がある.L1,L2,L3の各欠乏系統がみつかった.青臭みの主な成分のn−ヘキサナースを定量し  最も強く青臭みに関係するのはL2で,L2とL3の両方を欠の系統はほとんど臭みがない.  このリポ欠系統で豆乳消費の低落の歯止め,青臭さのない豆乳をベースにしてプリン,ヨーグルト,アイスクリーム  などの利用が広がりうる. 戻る
小豆 アズキ     adzuki bean   Vigna(ササゲ属) angularis (Willed.) Ohwi & Ohahi  中国,朝鮮,日本原産.日本で古くから重要視.古事記,日本書紀に記述あり.  種子は大豆同様,子葉,胚軸,初生葉,幼根からなり種皮は小豆色.  子葉は下胚軸が5mm位しかのびず,地中にとどまり(hypogeal),上胚軸が伸びて初生葉が展開する.  種子の寿命は3ー5年. 草丈は30ー70cm.蔓性もある.開花迄日数が60日以下〜105日迄ある.  夏アズキ,秋アズキ,中間型とある.北海道は極早生〜中生の夏〜中間型,東北は極早生〜晩成の夏,秋型がある. 北海道で主産地だが不安定で冷害により減収.N;1.5-2,P2O2;3-4,K2O;3-4.5kg/10a施肥.  平均地温10度以上で播種.暖地では夏型は4月上旬〜5月中旬.22-4.4kg/10a播種.  栽培は大豆に準し,大豆よりやや密播する.  アブラムシ媒介のアズキモザイク病があり,抵抗性品種あり.害虫は大豆と共通が多い. あん用が70%,ぜんざい,赤飯,甘納豆,和菓子原料.大豆に比して蛋白と脂肪が少なく,  炭水化物が多い(蛋白22,脂肪1.6%). 戻る
リョクトウ 緑豆  mung bean   Vigra radiata L.  アズキと近縁.インドが栽培の起源.種子はアズキに似て鮮緑色.  デンプン含量はアズキより多い.種子寿命は長く,3ー10年で穀類,豆類で最長.  アズキと異なり下胚軸が伸長し子葉が地上にあらわれ(epigeal)展開する.  下胚軸伸長のよさがモヤシとして利用される.栽培方法はアズキに準じる.  アジア,アフリカではそのまま,または砕いて煮物,スープ,インドでは豆類で最も尊重される.  日本では数万tの需要のほとんどはモヤシ用で全部輸入.アメリカでは緑肥. 戻る
ササゲ 大角豆 cowpea   Vigra sinensis Endl.  アフリカからインドに伝播.現在生産の9割はアフリカ,その65%はナイジェリア.発芽すると子葉は地上へ. 種子が牛の皮のような茶褐色のものが多いためcowpeaという.高温を好む. アフリカでは主要な食糧で豆をひき割りして煮る.コーヒー豆の代用.牧草用.
インゲンマメ 菜豆    kidney bean, garden bean   Phaseolu(インゲンマメ属) vulgaris  メキシコ起源.日本へは隠元禅師が1654年に中国からもたらした(実はフジマメだった?).世界では大豆, 落花生についで第3位の生産.アジアでの生産が多くインドは世界の約半分.温帯から熱帯各地に広く栽培.  蔓は1.5-3m伸び,支柱に巻き付く.種子の寿命は2年で,3年目には発芽しない.下胚軸が伸びて子葉は地上に でる.高温を好むが,高緯度,高冷地でも夏期に高温なら矮性の早生品種が栽培される. 完熟豆,むき実(未熟豆),若莢用.  最低気温が10度以上で,晩霜の恐れがなくなったころ播種.西日本では,4月上〜下旬,または梅雨あけの 7月上〜中旬に播種.1株2ー3粒播,播種量は4ー11kg/10a.  炭疽病,タネバエ,センチュウがある.でんぷん,糖質,蛋白質が多い.餡,煮豆,菓子原料. 戻る
ラッカセイ 落花生,南京豆    peanut, groudnut   Arachis (ラッカセイ属) hypogaea L.  南米ボリビア起源.ペルーのB.C.850年の遺跡で発掘されている.16世紀には欧州,アフリカへ,18世紀にアジア,北米へ. 日本へは1703年中国から伝来し南京豆の名が付いたが普及せず,明治初期に導入したのが現在の栽培のもと. 世界の生産は大豆についで2位.アジアは世界の6割を生産.インドは世界の3割を生産.2位は中国,3位はアメリカ. 大粒種,小粒種とある.分枝で立性とほふく性に分かれる.   バージニア型:大粒,立・ほふく型   スパニッシュ型:小粒種,立型     他に バレンシア型,ソウスイート・ランナー型   わが国では早生,半立,多収,良質,大粒が育種目標. 莢に通常2粒.発芽時に子葉は地表面に出た所で水平に展開し,epigealとhypogealの中間型.下胚軸の 伸長は播種深度で異なり10-12cm伸びる.自家受粉.授精後5日目から子房と花托の間が伸長して子房柄 (gynophore)となり,地面に向かって伸び,先端の子房は地中数cmまでもぐると莢として肥大しだす.  本来熱帯作物で高温,多照と適度の降雨を必要とする.欧州ではスペインなど南部,アメリカでは36N度が北限. 施肥量はN;4, P2O2;8, K2O,15kg/10a.カリの肥効大.石灰が結莢に特に必要で,子房に直接吸収され莢に蓄積. 播種は北九州では5月上〜下旬.畝間60cm,株間20ー30cm.1株1ー2粒播.移植栽培可能.  マルチ栽培で早播き可能になった.  褐斑病,黒渋病,ヒメコガネ,センチュウ・・あり.  タンパク質は大豆より少ないが26%,脂肪は大豆より多い.  いりまめ,バターピーナッツ,搾油原料,製菓原料,豆腐,味噌原料. 戻る
エンドウ 豌豆  pea, garden pea, field pea    Pisum sativum L.  メンデルが実験に使用. 起源は地中海沿岸から南西アジア.ギリシャ・ローマ時代の文献に記載あり.中世までは主に完熟種子を利用 していたが,以後莢の蔬菜用品種が発達.18世紀以後グリーンピース用品種が発達.  日本へは中国から伝来(8世紀?).江戸時代に莢エンドウが伝来.明治始めに欧米の各種品種を導入.  世界の生産は大豆,落花生,インゲンに次ぐ.アジアで53%.その大部分は中国.ソ連,欧州が次ぐ. 収量は100ー130kg位.北海道が多い.輸入も多い.  子葉は地中に留まり,発芽して最初に2枚の単葉の初生葉がでる.自家受粉.授精後,子房は豆莢として 発達し,1莢に3ー6粒.発芽は3ー6年が限界. 乾燥種子用,生豆(むき実,green peas),若莢(サヤエンドウ)用に分けられる.  グリーンピース用として糖分含量多く,大粒,濃緑色.若莢用は早生,莢の良く発達したものが育成. 豆類中最も寒さに強い.インドは冬作物.連作で収量は減る.Nを減らす.N;1.5,P;5,K;4kg/10a.  北海道で春播,温暖地で秋播.初霜10日前を標準.支柱を立てる.うどんこ病,さび病,マメゾウムシ・・・.  収穫は北海道で8月,その他は6月下旬.グリーンピース用では開花後40日位,若莢用では15ー20日位. 戻る
ソラマメ 蚕豆   broad bean, field bean   Vicia faba L.  西アジア,アルジェリア起源.西アジアで古代から栽培.  莢が肥大して蚕のごとくなる,あるいは蚕の結繭期に実るので蚕豆,または莢が天を向くのでソラマメという. アジアが世界の7割を生産.中国がほとんど(98%).完熟用は日本はなく未熟豆用が暖地で千ha程度栽培.    種子の寿命は5ー7年.発芽時に子葉は地中に残る.温暖多湿に適す.エンドウの栽培法に準ずる.  褐斑病,菌核病,ソラマメゾウムシ・・・ タンパク質はエンドウより多く25%.煮豆,菓子(甘納豆,餡)味噌醤油原料.未熟豆は蔬菜用.アメリカでは牧草. 戻る
ヒヨコマメ chick-pea   Cicer (ヒヨコマ属) arietinum L.  ヒマラヤ西部から西アジアが栽培の起源?ギリシャ,ローマ時代の一般人の食糧.インドが大生産地で77%.  自家受粉.1莢に1ー2個種子.種子のへその近くにくちばし状の突起がありヒヨコの頭部に似るのでヒヨコマメ.  発芽し子葉は地中に残る.高温に適す.主要な冬作.単作以外に麦やアマと混作.  蛋白17%,脂質5.33%,糖質61.22%と栄養価が高い.煮食,スープ,製粉して小麦に混ぜる. 戻る
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