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作物各論(トウモロコシ)

トウモロコシ トウモロコシ Zea mays L.  maize, Indian corn  (corn は英国英語で小麦などの小穀類一般を意味するので maize がよい)  2n=20  写真 [起源] メキシコ,ボリビア近辺が起源.祖先はテオシント(2n=20)か. 古代の花粉分析によると,トウモロコシの花粉はメキシコ市付近で8万年〜2.5万年前以前 のものが発見されているが,テオシント花粉はずっと新しい地層からしかみつかってない. 結局起源はよく分からない. [伝播] アメリカ大陸内で農耕が始まったBC2千年頃から栽培され,南北大陸に広まった. ココロンブス(1492)がスペインへもたらし,その30年後には仏,伊,トルコ,北アフリカへ伝播した. 日本へは1579年ポルトガル人が長崎へ.明治初年には北海道の開拓民がアメリカから導入した. [生産状況] (FOA Production Yearbookから) ----------------------------------------------  年 栽培面積1000ha 生産量1000t 収量t/ha ---------------------------------------------- 1934-38 83,900 110,300 1.31 1948-52 87,988 141,568 1.61 1961-65 99,565 216,081 2.17 1973-75 112,345 309,363 2.75 - - - 2003-05  147,000    690,000   4.71 ---------------------------------------------- 収量が急増している. アメリカ(3千万ha),中国(26百万ha),ブラジル(12百万ha)などで生産が多い. わが国での生産は明治初年には5万haだが,現在は青刈りが多い. 輸入は飼料用に1600万tもの多量をほぼ全量アメリカから. [形態] 葉:各節から互生し,長大,LAIは22にもなる.葉の維管束内に形態的に特殊化した葉緑体をもつ. C4植物でCO2補償点が低い. 茎:直立し,1-4m.14ー16節.分げつはほとんどない. 花序(穂):雌雄異花.雄花は茎頂端にあり,雄穂(tassel)という. 雌花は茎の中位で1ー3節の葉腋に1個ずつ互生し,雌穂(ear)という. 雌雄両花とも発生途中までは両性器官をもつが,発生後期に一方が退化する. まれに雌・雄穂に両性花を生じることがあり,雄穂にも結実することがある. 雄穂;長い穂軸の各節から10数本の枝梗,ときには二次枝梗を生じ,多数(2千)の小穂をつける. 1小穂2小花,小花には長い葯をもつ雄蕊が3本あり,中央の雌蕊は退化している. 雌穂;分げつの節(6から10節)間が短縮し,その先に形成された穂とみなせる. 穂軸(cob)表面に対をなして2列づつ小穂が8ー20列並ぶ. 1小穂2小花で,下位の小花は退化する.上位の雌蕊はよく発達して結実する. 写真 [品種改良] Mass selection(集団選抜):植物体や穂の特性で個体選抜をくりかえす.収穫した種子は混合して翌代蒔く. トウモロコシ栽培の初期からなされたと思われる.成熟期,稈長,穂や粒の外観で選抜効果があった. しかし収量は向上しなかった.これは, (a)ヘテロ集団から多収個体を識別しにくい. (b)多収個でも他の花粉が受粉して,子孫で再現されない. (c)特定個体の強選抜が近親交配になり,自殖弱勢になる. (d)個体単位の観察なので環境の影響を評価できず選抜する. Ear-to-row breeding(1穂1列法):イリノイ農業試験場で1896年に始まった. 50ー100の穂をとり,1穂の種子の一部を1列に植える.残りの種子は翌年まで保存する. 各列の外観,収量をみる,優れた10ー20を決定する.翌年保存してあった種子を混合して播く. 穂を選抜し,これを繰り返す.選抜個体に未知の花粉が受粉しておらず, 外観で判定できる形質の改良は急速であったが,収量など外観では判定が困難なものは Mass selection同様向上しなかったので,反復つきの試験をして改良した. Variety hybridization(品種間交配):異なる自然受粉(open pollinated)品種間の交配に よってできたもの.1880年ミシガン農業試験場のBealが1つの品種を除雄して,その横に もう1つの品種を植えて受粉させて得た種子を播いたところ,その世代が多収になったと 報告した.分離が大きく実用品種はできなかったが,次のハイブリッドコーンを予見させた. Hybrid corn(ハイブリッド品種,F1品種):1909年にG.H.ShulllやEdward Eastは, 近親交配をして近交系を作り,近交系同士を交配して多収で均一な単交配をつくることを 提唱した.この方法はトウモロコシ育種を完全に革命的にした. 当初.近交系による採種量が少なく,種子が高価であったが,1918年D.F.Jonesが単交配同士 の交配の複交配をすることで解決した. 1920,30年代に近交系育成,単交配や複交配の組合せ能力検定が精力的に行われた. 1940年代までには米国コーンベルト中がハイブリッド種になった. 1950年代には除雄操作を省くため,細胞質雄性不稔−稔性回復遺伝子利用システムができあがった. しかし,雄性不稔細胞質をもつ系統にごま葉枯病が発生し,利用は中止され, 他の細胞質の探索と検定が始まった. この期間にまた,近交系の改良が進み,生育収量が向上し,1960,70年代にかけて徐々に, 最初Shullが提唱したように,単交配による採種が複交配にとって変わった. [育種目標] -収量 多くの形質が複合して表現された結果で,多くの関係遺伝子を集積して他収になっていく. 例:光合成,呼吸,転流・・,成熟期,倒伏抵抗性,耐病虫性・・, また,注目形質として,草型,登熟期間の長さ,多穂性,葉の角度(直立葉にして光の透過をよくする)・・, -適応性 (a)該当生産地に適した成熟期, (b)土壌肥沃度への反応, (c)暑さ,乾燥への抵抗性, (d)耐寒性.その他, からなる.直接間接には耐病虫性も. -倒伏抵抗性 組織的に弱いもの,根腐れ,虫害などで生じるのでこれらへの耐性が付与される. -耐病虫性;葉枯病(leaf blight),ごま葉枯病(leaf spot),穂病(smut), アワノメイガ(European corn borer)・・・ -品質 高蛋白.イリノイで1穂1列法を適用し,1896年から0pen pollinate品種のBurr White (10.90%)を選抜し,10世代で14.26%へ,70世代で26.6%へと増加させた. 低いほうへは,70代で4.4%になった. このことは非常に多数の遺伝子が関与していることを示す. 蛋白の質.opaque-2遺伝子のリジン含量は4%で通常の倍あった.取り込みの努力がなされたが, 収量が落ちる,粒が小さくなる,胚乳が柔らかくなる,耐病虫性が劣るなどの問題が克服できなかった. また飼料用としてはリジン添加が安価にできるので,高リジンの実用品種はできていない. 高油脂.イリノイの実験で,元の4.70%が10世代で7.37%,70代で16.64%へ, 低いほうでは70代でたった0.40%となった.併せ,胚の大きさが変わっていった. [特別な目的]  dent corn はつぶ種.側面が硬質でんぷん.飼料用.  flint corn かたつぶ種.周囲すべてが硬質でんぷん.食用・飼料用.  sweet corn 甘味種.  pop corn 胚乳の大部分が硬質でんぷんで,内部軟質部の水分が熱せられるとはぜる.  waxy corn もちでんぷん. [細胞質雄性不稔遺伝子の利用状況](農水省草地試,大同ヘテロシス研室長による) Corn and Corn Improvement 3rd Editionによる1987年のデータでは, T型雄性不稔細胞質はごま葉枯病の問題で利用は現在ないが, その後,S型,C型の細胞質利用の採種が試みられている. 1987年のThe American Seed Trade Asociationによる調査では, ノーマルな細胞質つまり通常の除雄で採種された種子が66.1%, C型細胞質を利用した採種によるものが22.1%,S型細胞質を利用したものが11.5%である. ただし,C型細胞質利用のうち,cms-Cを持つ種子親と稔性回復遺伝子を持つ花粉親による 種子が100%というものは1.9%で,残りの20.2%は稔性回復遺伝子を持たないか稔性回復の 程度が低い花粉親を使っているようで,このままでは採ったF1の花粉稔性が低いので通常の 除雄によって採種したノーマルな細胞質を持つ種子を花粉源としてブレンドしている. 同様にS型細胞質の場合も100%cmsというものは0.4%で残りの11.1%はノーマルなものをブレンドしたもの. つまり正確には,22.1%はC型細胞質を利用した種子を含む品種の種子の割合, 11.5%はS型細胞質を利用した種子を含む品種の種子の割合ということになる. ブレンドの割合は25〜50%ということなので,20.2%とか11.1%の種子の中にはこのくらいの割合で 普通に採った種子が入っているとすると雄性不稔を利用して採種した種子は1987年では20%程度と推定される. パイオニア社の研究者によると,除雄の労力とコストは依然として問題で新しい雄性不稔のシステムを 構築中であるとのこと.現在でも除雄による採種が主流である. 日本の国内ではF1採種はほとんどやってないが,いまのところ雄性不稔利用は念頭にない. 戻る
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