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本頁は“育種学最近の進歩 第32集 育種−研究と実践−”.養賢堂.53-62(1991)に掲載したものです.図表は省略.

育種 −研究と実践−

吉田智彦
(元福岡県農業総合試験場.現九州大学農学部)
YOSHIDA,T. : Plant breeding − research and practice −

 通常の育種では、単一の遺伝子のみを取り込む場合ももちろんあるが、ほとんどの場合は、微動遺伝子に支配され環境変異が大きい数種の形質を総合的に改良していくことに多くの精力を注いでいる。そのため育種による収量の増加の割合は一年あたりにすれば1%以下となり(Fehr 1981)、極わずかな改良の積み重ねによって今日の品種を築き上げてきたといえる。このことは必然的に、従来から行っている育種方法を超えることを難しくしているし、多分従来の育種方法が多くの微動遺伝子を取り込むのにはベストなのであろう。
 このような状況下で、いわゆる基礎研究と育種の実践の接点がどのあたりにあるか、育種家が今後行うべき基礎研究にはどのようなものがあるか、育種の若手研究者にはどのようなテーマを追わせるのがよいか、等を本論文では探ってみたい。

1.現状
 近年は収量もさることながら、求められる品質が高度であり、品質の規準化がすすみ、需要者との合意の上で新品種の育成や普及を図るようになってきている。ビールオオムギではこの点が特に重要であるが(佐々木1990)、他の作物でも同様で、しかも将来はさらにこの傾向が強まるものと思われる。
 品質と栽培特性は通常負の遺伝相関がある。ビールオオムギの麦芽の品質(エキス、ジアスターゼ力等を総合化した値)と栽培特性(例えば収量)との関係をみると(第1図)、その両者の相関を打ち破りながら徐々に総合的に改良がなされてきた歴史がうかがわれる。図でいえば、同時代の品種は負の相関関係にあり、時代とともに右上の方向、つまり麦芽品質も収量も改良されている方向に動いている。ただし、麦芽品質や収量だけでなく、それ以外にその時代の緊急育種目標があるとき、この場合は大麦縞萎縮病やうどんこ病抵抗性を導入しなけらばならないときは、順調に育成がすすんだ場合の5-10年位遅れた座標に、該当の特性が付加された品種が位置していることもわかる。ここでは麦芽品質と収量との関係を例示したが、実際の品種ではこれら以外に成熟期、耐倒伏性、耐病性、子実の外観、等等の多くの形質を対象にしなければならず、これらのすべてを遺伝的に説明することは到底不可能だし、かつ遺伝的な考察をしながら選抜することは非現実的でもある。
 また、品種というのは言うまでもなく現場対応技術の一つであるので、例えばビールオオムギの基幹品種で凸腹粒(写真1)や裂皮粒(写真2)などの被害粒が発生して発芽率が低下したり、整粒歩合が低下する(これらの実態・原因・対策については浜地ら(1989a)で述べた)、といった突発的な問題に追われることも多い。これらの問題が結局品種で解決されることになるのは育種の成果としては結構だが、これも遺伝的な説明をしたり、解決のため新規に育種目標をたてて交配選抜をする、といったことをしていてはとても間に合わないので、手持ちの品種で品種間差をみて、当初の育種目標とは無関係に選抜して対応することを余儀無くされているし、その方が手っとり早い。
 たとえ単一遺伝子を扱う場合でも、優れた栽培特性や高度の品質の遺伝的背景の中にその遺伝子を取り込むには、戻し交配をしながら長期間それらでの選抜を繰り返して交配を重ねる必要がある。ビールオオムギ品種‘ニシノゴールド’の系譜をみると(第2図)、大麦縞萎縮病抵抗性品種の‘木石港3’から抵抗性遺伝子が当時の主要交配親である‘アズマゴールデン’との戻し交配で中間母本の‘南系B4718’にいったん取り込まれ、さらに次代の基幹品種である‘はるな二条’との2回の交配でやっと耐病性で良質の品種が育成された。この間始めの交配からは20年を要しており、このように単一遺伝子を導入するのでも簡単にはいかないことがわかる。

2.応用可能な新技術
 大規模な集団から圃場試験や高度の品質検定を繰り返しながら選抜をして徐々に総合的な改良をしなければならないとき、画期的な技術、特に肝心な遺伝学を応用したもの、の応用はなかなか困難である。多くの可能性を秘めているとして過去に発表されたものが実際には育種の場へほとんど導入されなかったり、導入されても長続きしなかったことがこのことを物語っている(これは育種家の怠慢とのみいうわけにはいかないだろう)。
 ただし、むしろ周辺技術とでもいったらよいのかもしれない特性検定方法の進歩や育種への導入は確かで、微動遺伝子の的確な選抜という面でこれら技術の寄与は大きかったといえる。例えば耐病虫性の幼苗・室内検定法、ビールオオムギでの縞萎縮病や湿害の検定(写真3)、少量で多数の検定が可能になった品質検定法等数多くの技術が開発され育種に寄与している。

3.研究と実践
実際には周辺技術のみが進歩したので、画期的かつ本質的な技術、特に遺伝的なものは高度な実用品種を目標にした育種ではとうてい不可能であるとあきらめることはないし、近年進歩の著しい生命科学や情報科学の最先端を育種に応用しようとする研究が必要であることに異論はない。選抜や交配親選定の理論化も、どこまで適用可能かはともかく、考えながら選抜をしていく上に参考になる。  しかし、育種研究はやはり実践の場で検証や評価をすべきことが必須である。基礎部門にはあくまでも育種の実践で検証されうる研究を、実践側にはひとりよがりでないどこにでも通用する技術や理論化を、研究管理側には両者の処遇にアンバランスがないことを、それぞれ期待したいが、特に今後育種家が品種作りの実践をするかたわら行うのにふさわしく、実際的で基礎研究と実践の接点として希望される研究項目をいくつか挙げておきたい。

3.1 日頃気にはなっているが追求不十分な形質の特性解明
 ビールオオムギの例では、枯れ熟れ、湿害、外観品質、エキス収量、ジアスターゼ力等の麦芽品質の個々の項目、根の生育、子実の大きさ等、日頃選抜対象には一応しているが、一部を除いてそれらの品種間差、遺伝、選抜効率等を組織的に行っているわけではないので、これらを詰めた研究が必要である。例えば湿害抵抗性の選抜効果の報告(浜地ら1988,89b)は、湿害抵抗性というかなり複雑な形質ではあるがそれに品種間差があり、抵抗性の高いものとの交配後代で的確な選抜をすればある程度選抜効果があることを明らかにし(第1表)、今後の湿害抵抗性育種の基礎となった。

3.2 過去の選抜データや交配の解析
 どのような親から有望系統が輩出したか、選抜強度はどの程度が妥当であるか、どの世代でどの特性検定項目をするのが効率的か、等等の問題は内部で取りまとめたり会議資料としてのものが多いが、ぜひ数多く公開してほしい。うまくいった話のみでなく、失敗例を含めた過去の交配や選抜全体の評価が今後の育種戦略をたてるのに参考になる。
 例えば以下に詳述するカンショの選抜効果や交配親選定、収量の年次間差等に関する取りまとめ(吉田1985a,b、1986)は、カンショ育種における経験則の理論化へ寄与するところが大きかったと思うのでここに紹介したい。
 かんしょの交配記録は今日では膨大になっており、交配や系譜の解析にはコンピュータ利用が不可欠である。第3図に交配親データベースを用いて祖先を再帰的に検索して描かせた‘九州98号’の系譜を例示する。この系譜は多くのことを育種家に教える。系譜の右端をみると、カンショ育成の初期に使われた親が、‘元気’、‘七福’、‘長州’、‘吉田’、‘名護和蘭’、‘暗川’、等少数の特定品種であった(井浦1951)ことがわかる。これらの品種間交配で育成された品種をさらに交配親として利用する、といった繰り返しでカンショ品種の育成はなされてきており、‘九州98号’では、交配当初からは10世代も経過している。しかし、寄与している祖先の数はわずか17品種である。この間外来遺伝子を導入する試みは積極的になされてきたが、今日の品種に寄与しているのは‘T No.3’や‘L-4-5’等少数に過ぎない。当然育成品種の近交度が進んでいるのではないかと心配されるが、‘九州1号’から‘九州98号’までの地方番号系統の近交係数を計算したところほぼ0.1以下であり、0.1を超えるものはあまりなく、また近年特に育成品種の近交度が高まっているということはなかった(吉田1985b)。また、近交係数の異なる多くの材料の多年にわたる収量試験の結果から近交係数と収量との関係をみると(第4図)、近交係数が0.1以下では収量の低下はあまりないが、0.2を超えると明らかに収量が低下するようである。現在カンショの育種材料の家系は大変複雑であり、個々の交配候補品種の血縁関係を家系をみるだけで判断することは不可能になってきている。また、実際の交配を試験的にしてその後代で組合せ能力の検定をするには数に限りがある。ここで紹介したことは、交配親を選定するとき交配後代系統の近交係数が0.1以下になるようなものをコンピュータの助けを受けて選べば、その後代で多収のものが得られる可能性が高いことを示しており、交配親を従来のように経験に基づいて選定するのみでなく、ある程度理論的にできるようになったといえる。
 第5図に、外来の遺伝資源を導入せず、手持ちの品種のみを交配親として循環選抜を行ったとした場合の近交係数の推移を示した。この計算結果によると、組合せ能力の高い遺伝資源を探索することはもちろん大切であるが、たとえ外来のものを導入しなくとも丹念に捜せば(つまりコンピュータで10か20品種の総当たり交配後代系統の近交係数を計算してもらえば)、3回の循環選抜後でも近交係数から判断して多収の可能性のあるもの(近交係数が0.1以下のもの)を得られることがわかる。
 いも収量や切干歩合の年次間相関を20年分計算したところ(第6図)、3反復をした生検同士では相関の低い場合もあるがおおむね高い相関があり、反復がなく規模の小さい試験での年次間相関は低くあまりあてにならないこと、切干歩合よりもいも収量で相関の低い場合のあることが示された。いも収量と他形質との相関をみると(第7図)、いも一個重との相関が高い場合が多く、一方、一株いも数やつる重等はいも収量と相関がない場合が多い。これらは多くの年次の計算結果であるので信頼性が高く、どの程度の選抜をすべきか非常に参考になった。

3.3 データ処理のシステム化
育種では類型化した多くのデータ処理があり(第8図)、ぜひともコンピュータ化し、野帳、ラベル、成績書、翌年用の設計の作製、データベースへの蓄積等を一貫処理したい。これは成績取りまとめや作業の効率化に益するのみでなく、処理により自動的に溜っていくデータはデータベース化され上記の解析に即使用できる(佐々木ら1983、吉田1984a,b)。交配両親名も同時にデータベース化する。事業実施中にみつけたデータの誤りは、データベース中のデータをオリジナルとして、このデータベースを訂正することと決めておくとなにかと都合がよい。データ処理作業を簡単にするには、表計算ソフトを利用するか(河田 1988)、またはもっと簡単にするにはワープロ使用のみでもかなりの目的を達することができる。 

3.4 圃場作業の機械化
 育種作業を効率化し、人材を確保するためには圃場作業の機械化がどうしても必要である。隣の研究室でDNAを扱った実験をしているのに、いくら育種が役に立つと強弁しても人手の播種作業と鎌の収穫では若手にそっぽをむかれても仕方あるまい。“研究”から主題がやや離れる感もしないではないが、自分の実験器具を色々工夫することは当然である。しかも育種では圃場作業がネックになっていることは多く、この点を解消すれば研究者が考えたり実験をする時間の余裕がもっとでるものである。データをとったり、そのデータ処理を機械化することもさることながら、肝心なのは播種や収穫の圃場作業をなんとか機械化することである。育種は頭でなく体を動かして行え、との意見がある程度真理を含んでいることは認めるが、圃場作業のみで疲れ果ててしまい、育種目標を考えたり、選抜方法を工夫する時間的・精神的余裕がなくなってしまってはいけない。
育種の圃場作業の中で、播種や植付けの機械化は比較的容易である。麦の育種用播種機は色々工夫されてきており、回転円錐体を利用したcone seeder(Berg 1958)が最も育種用の播種に適している。写真4に示す播種機は歩行型のトラクターにcone seederを装着したもので、播種精度は高く、異品種の混合はなく、作業時間は短く、価格は妥当であり、小規模圃場でも圃場の利用効率が低下しなかった。他の育種試験地でもぜひこのような機械を導入することを薦める。本機を使用することで、作業が円滑にすすみ、肉体的疲労が軽減され、臨時の労力を集める手間やそれにともなう精神的負担がなくなり、麦の播種作業が楽しくできるようになった。写真5はカンショの定植作業を単に椅子に座って行うようにしたのみであるが、これも作業能率が著しく向上した。一方収穫作業は、特に小規模圃場では困難が多いが、ぜひともしたい。機械導入には発想転換をし、機械に作業を合わせる必要がある。また、全自動化をねらうのでなく、部分的な機械化の効果が大きい。さらに、この種の機械を検討するときは、複雑な育種作業に機械導入するのは無理があるだろうといった否定的な先入観をまず捨て、利用を前提とした目でみることが必要である。機械導入は、作業のピークに合わせて配置されがちな労力の有効利用に益するところが大きい。また、機械化して、育種=肉体労働のイメージを消し、圃場作業以外の部分にもっと力を注ぎたいし、肉体労働の不得意な人にも大いに育種に参加してほしい。また、現状では収量試験の反復数が必要とされるものより少なすぎることが多い。機械化して圃場作業を楽にし、反復数を増やすことに精力をそそぐべきである。
 特性検定の精度向上や大量簡易法の確立、計算・作表でのコンピュータ利用、圃場作業や調査のための育種用機器の開発、等での周辺技術の進歩による選抜の効率化や精度の向上こそが今後の優れた品種育成の鍵の一つである。

4 育種目標の設定
 基礎研究も大切であるが、育種目標の設定をどうすべきかはさらに大切であるので、ここで水稲県単育種での例をあげて若干触れたい。近年県独自の銘柄米の必要性や県試験場の実力向上等のため、県単独で水稲育種を行う傾向が著しい(今林ら1990)。県の品種が育成されると、県内の種子行政は県が担当しているので国や民間育成の品種は県の奨励品種に採用されなくなるのではないかと心配するむきもあろうが、県の育成品種ばかりになることはないと思う。後から言ってもしょうがないことだが、北部九州で5年前に‘ヒノヒカリ’なり‘ユメヒカリ’、つまり暖地では無理とされていた、中晩生で‘コシヒカリ’並の良食味品種が育成されていたら、現在の過剰米の深刻さから判断するとそれがたとえ民間育成の品種でも必ずや県の奨励品種に採用されていたであろう。10数年前にはすでに米が過剰で、品種特性として良食味が欠かせないことは予想されていてもよかったのだから、収量よりも良食味の目標を設定できたはずである。過去の話はともかく、これから10年後、現在の流動的な情勢では5年後か、にどのような品種が求められているかを察知し、それにどれだけ的確に応えられるかが国・県・民間の品種の勝負である。その際、その品種が葯培養、細胞融合、突然変異を起源にするかの区別は全く関係なく、品種の性能のみが判断の基準であることは疑いない。蛇足であるがこの意味で、育種手法として従来の交配育種に優るものはないと信じている。手法の検討もよいが、衆知を集めて育種目標を検討することも大切である。

5 先端研究と若手の訓練
 上述してきたことから判断して、生命科学の先端と実用品種育成との間にはギャップがありすぎて当面は接点を見つけるのはなかなか困難であると筆者は感じている。ただし、育種は興味深い仕事で問題点は山ほどあり追求すべきことが多いのは確かであるが、実用品種を育成するにはわずかな部分の地道な進歩を追っていくので、その結果日々の仕事が単調になることも事実である。育種の主任はポストとして重要だから単調でもよいかもしれないが、とかく若手は圃場作業の下請けをやらされ、品種育成の成果の分け前が努力の割に少ないことが多い(吉田 1982)。その代償というわけではないが、若手に刺激や機会を与え、先端研究へのあこがれを満足させ、あるいは若手の知的訓練のために、たとえ即品種に還元されることはなくとも先端研究をさせることは必要である。通常の育種のみでは当局者の理解を得にくく、先端研究を看板にすれば予算がとりやすいことも現実である。実際場面では、主任は育種事業とそれらの研究の間のバランスを上手にとるようにすべきである。また、研究方向としては、ほっておけばいくらでも細分化していくのが常であるから、作物生産の問題に帰着させるべきであるし(写真6)、その方が成果も多い。生産の問題にどうしても関係づけることができないものは、深入りしないで終結させる配慮も必要である。また、近年育種の現場でも増加している女性研究員には、圃場作業もさることながら、品質や耐病虫性検定等、またはそれらの基礎研究で活躍してもらう場がいくらでもあろう。

  6 終わりに
 以上の議論は与えられた課題と噛み合ったものになっていないのでは、との感がする。20年前の当学会で行われた議論(日本育種学会、1972)からどれだけ前進したのかもよくわからない。学が進んだ分だけ実践との隙間がさらに広がったのではとも思う。“接点”をめざしたつもりだが、ついつい育種家側に目を向けた注文なり激励なりに終始した。近年は主要作物でも実際の品種育成の場が従来の国や県の指定試験から、県単独や民間にシフトしだしてきた。育種とはだいたいが応用そのもののはずであるから、基礎は大学や国、事業は県なり民間と分割すべきものでなく、育種事業を遂行しながら基礎研究や教育を同時併行に行うのが理想的だと筆者は思っている。多忙であろうが、育種事業を既に行っている試験地や、これから本腰をいれてやろうとしているところから、優れた品種とともに足が地に着いた役に立つ基礎研究が輩出することを切望する。
 大変残念なことに筆者は平成2年10月で育種の現場から足を洗った。育種の話は現場からでないと説得力を欠く。今後は教育の一環として実践と研究の調和をどう進めていくか模索していきたい。

  
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第1図 ビールオオムギの麦芽品質と収量との関係
第2図  ビールオオムギ‘ニシノゴールド’の系譜
第3図  カンショ‘九州98号’の系譜  
(注)‘九州98号’の両親は‘九州84号’と‘九州88号’、‘九州84号’の
両親は‘Q693−1281’と‘九州66号’・・・と読む。Qは九系、KAは鹿系の
略。系譜中では品種名の表示を10文字で打ち切ったが、データベース中では
フルネームである。-shownは該当品種が系譜中に既にあることを示す
(吉田1985b)。

第4図  カンショの近交係数といも収量との関係
(注)近交係数が0-0.1、0.1-0.2、0.2-0.3の範囲にあるものをまとめて平均し、
近交係数とそのいも収量の値をプロットした。データがそろっている6年間を
平均した。年によりいも収量のレベルは異なるが、各年ともに近交係数との
関係は同じような傾向であったので、年次との交互作用はないものと思われ
る。各年次ごとの値は吉田(1986)に示した。
第5図 カンショの循環選抜による近交係数の推移
第6図 カンショ収量試験の年次間相関
(注)2か年同一品種が供試されている場合にその品種をとおした年次間の
相関を20数年分計算した。生検は3反復、予検は2反復、実生三年と二年
目は1反復で供試個体数も少ない。生検同士の比較でも、いも収量の年次間
相関が0.2しかない場合もある(吉田1985a)。  
第7図 カンショいも収量と他形質との相関
第8図  育種におけるデータ処理の流れ
(注)試験設計のファイルから種子袋やラベル、野帳を作製する。圃場データ
からの計算結果をデータベース化し、データベース内で検索をして選抜系統を
決定する。それらの経過を作表して本年の育種試験成績書を作製する。試験成
績ファイルから、選抜系統に翌年用の新試験名を付ける等をして翌年用の試験
設計のファイルを作る。こうして育種試験用のデータが一貫処理されるのみで
なく、データは累年のデータベース内に蓄積されていく。累年データベースは
育種試験の解析を行う際に非常に強力な武器になる。

写真1 ビールオオムギの凸腹粒
(注)粒の縦溝側が膨らみ、縦溝が開いたもの。爪でおすと陥没する。空洞に
なることもある。
写真2 ビールオオムギの裂皮粒
(注)内外穎の境目が開いて穎果が露出した粒。
写真3 ビールオオムギの耐湿害検定圃場
(注)節間伸長期に畦間に湛水して耐湿性を検定する。

写真4 麦類の育種試験用播種機
(注)回転円錐体は米国Kincaid社製のcone seederユニットで現地価格は一個
$660である(kincaid Equipment Manufacturing, P.O. Box 400, Haven, Kansas 67543, U.S.A.)。
狭い試験圃場での取扱いを容易にするため歩行型トラクターに装着した。作条、
覆土、鎮圧部は4条のドリル播種機を利用した(古庄ら1990)。写真5は本機
を使用して播種したものである。

写真5 カンショ育種試験圃場での定植作業の様子
(注)あらかじめ試験区での配置順に苗を荷台にそろえて用意しておき順次
植えていく。作業が一連の流れにのるようになり、かつ定植作業による疲労
が著しく軽減された。

写真6 倍加半数体ビールオオムギ系統の収量試験
(注)Hordeum bulbosum花粉とビールオオムギの交配で作った半数体由来の
約300系統の収量試験の様子。大規模な倍加半数体の収量試験は他にあまり
例がない。播種作業には写真1の機械を使った。
  第1表 オオムギの湿害抵抗性の選抜効果
================================================
  交 配 組 合 せ    世    湿害の被害程度  遺
 -----------------          --------------   伝
   ♀        ♂      代     M1  M2  M1' M2'  率
-------------------------------------------------
成城17号 はるな二条 F3-F4  1.9 3.5 1.9 2.3  0.27
 〃    〃      F4-F5  1.9 3.7 2.8 3.0  0.12
赤神力   水晶       F4-F5  2.0 3.6 2.6 3.4  0.48
成城17号 はるな二条 F5-F6  1.7 3 7 2.3 3.0  0.36
-------------------------------------------------
(注)被害程度は、過湿処理をしたときの葉枯程度とし、観察により0(無)
〜5(甚)で判定した(浜地ら1989b)。M1とM1'は、各々上位の選抜系統お
よびこれらの後代系統群の被害程度の平均値。M2とM2'は各々下位の選抜
系統およびこれらの後代系統群の被害程度の平均値。
 遺伝率は(M1'−M2')/(M1−M2)で求めた。  

以上