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本ページは九州農業研究 50:42(1988)に掲載したものです.

Prologを利用した近縁係数算出と交配両親名の管理システム

佐々木昭博・吉田智彦(農水省技術会議・福岡県農業総合試験場)

Akihiro SASAKI and Tomohiko YOSHIDA: Pedigree Data Management by "Prolog”

 プログラミング言語としてよく用いられているBasicやFortranなどは手続き型の言語である。一方,自然言語処理を主目的として開発きれたPrologは論理型の言語であり,演繹的な推論機能を有し,近年知識情報の処理によく用いられている1)2).ここでは,近縁係数の計算や家系図作成,交配両親名管理など,作物育種上で必要となるいくつかの問題へこのPrologを応用することを試みた。

1.方法
 処理系としては,パーソナルコンピュータ(PC9801VM),Prologインタプリタ(Prolog−KABA)及びその拡張ツール(WING)を用いた。
 近縁係数算出のプログラムは,自殖作物を対象としており,共通祖先の近交係数は1として計算した。プログラムの主要部分はある品種の祖先を探索する述語と子孫を探索する述語である。交配両親名データはあらかじめプログラム中に “r(品種名.母親名,父親名)” の形で書き込んでおく。近縁係数を計算したい2つの品種名を入力するとプログラムはまず2つの品種が直接的な祖先,子孫関係にあるかを調べ,次いで共通の祖先を探索する。 2つの品種間に何らかの関係がある場合にはこれらを結び付ける経路が画面上に表示された後,近縁係数が表示される。

 家系図作成のプログラムの主要部分は親を再帰的に検索する述語からなり,祖先を7世代までさかのぼって検索し,家系図を描く。交配両親名のデータは近縁係数算出のデータと共通である。

 ある系統が地方番号をつけられたり,新品種登録されて名前が変わった場合の品種名検索の便のため,新旧名のデータを “nn(新名,旧名)”の形で作った。

 2.結果と考察
 ビール大麦やカンショのデータで試行したところ.処理時間がかかることを除きほば満足すべき結果を得た。
ビール大麦数品種間の近縁係数を計算したところ(第1表),非常に近縁係数の高い組合せがある一方,比較的低いものもあり,育種材料の近縁化が進むなかで,組合せによってはまだ近縁度のあまり高くないものがあることをうかがわせた。第1図にカンショ,ベニコマチの家系図を示した。図中では名前の表示を10文字で打ち切っている(データはフルネームである)。

 交配両親名や新旧名のデータベースから,ある品種の両親名や新旧名の検索が容易にできた。
 従来の手続型の言語で近縁係数の算出や家系図作成プログラムを作るとかなり膨大な量であり,かつ複雑な内容になるが,ここでのプログラムは近縁係数の計算や家系図作成などの際に必要となる祖先の再帰的な検索などが容易にでき,プログラムが単純になり,他人がみても容易に追跡できる簡単で短いものになった。

    引 用 文 献
1)大塚雍雄・佐々木昭博・宮川三郎:育雑.35(別1).146−147,1985.
2)芝山悦哉・桜川貴司・萩野達也:Prolog−KABA入門(岩波コンピュータサイエンス〉.pp.301, 1986.

第1表 ビール大麦数品種の近縁係数
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組 合 せ             近縁係数
――――――――――――――――――――
ニシノゴールド 対 関東二条23号 0.617
ニシノゴールド 対 あまぎ二条    0.248
ニシノゴールド 対 はるな二条    0.789
ニシノゴールド 対 きぬゆたか    0.178
は る な二条 対 あまぎ二条    0.266
――――――――――――――――――――

*** benikomati ノ カケイズ ***

 kokei-14  nancy hall
        sham
 koganeseng kakei7-120 t no.3
                 kyushu-12  kohi
                         kanto-3   genki
                           sitifuku
              l-4-5

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第1図 ベニコマチの家系図