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本頁は“日作関東支報16:52-53(2001)”に掲載したものです.図表一部省略.

トウジンビエの栃木県での子実収量
吉田智彦1)・重宗明子2) (1)宇都宮大学・2)農業技術研究機構) Grain Yield of Pearl Millet Grown in Tochigi Tomohiko Yoshida1) and Akiko Shigemune2) (1)Utsunomiya Univ.; 2)Natl.Agr.Res.Cent.)

 トウジンビエ(Pennisetum typhoideum Rich.) は半乾燥地帯での重要な穀類作物である.主にアジア,アフリカで2700万ha (ICRISAT 1996)栽培され,millet類として合算された子実収量は0.765 t/haである(FAO 2001).不良環境でも比較的安定して子実生産が可能な作物である (Burton and Powell 1968,Jauhar and Hanna 1998).わが国では,宮崎県で700g/u(神崎1952),福岡県の5月播きで371〜511 g/u,8月播きで164〜239 g/uの収量であった(吉田・角田1996).北関東においてトウジンビエの収量がどの程度得られるかは不明であるので,栃木県で子実を目的とした栽培を行い,その可能性を探った.

材料と方法
 供試品種は短稈と長稈の2つの自然受粉品種(Totokら1998)と,それらからの葯培養による再分化系統(重宗・吉田2000)である(第1表).宇都宮大学内のガラス室内でペーパーポットに2001年4月24日播種し,5月10日にペーパーポットごとビニールマルチを被覆した畑に移植した.1ポット当たり1個体とし,株間20cm,1条で11個体(条長2m)を1区,条間を50cmとし,3反復した.窒素肥料を元肥のみ7kg/10a施した.同様な方法で長稈集団を1月おきに播種し,ほぼ1週間後に移植した.5月10日移植のものは8月17日に収穫した.5月26日,6月23日,7月28日播種のものは9月30日,10月15日,10月30日に収穫した.それぞれ代表的な5個体について収量調査を行った.

結果と考察  鳥害以外には病虫害などの障害はみられなかった.7月28日播種は出穂が遅れ登熟不良であったが,それ以外の生育は順調であった(第1図).SP(短稈品種)以外,草高は2m前後で旺盛な生育であった.倒伏はほとんどみられなかった.有効な穂の数は1個体当たり2〜3,穂長は20cm程度,1穂粒重は20g程度,1000粒重は10g程度であった.4月24日播種の収量はTPが最大で579g/uであった.葯培養再分化系統の収量は原集団であるSP,SPよりも低下する傾向であった.播種時期が遅れると収量は低下した.特に晩播では出穂や成熟が遅れるので,北関東では5月末がトウジンビエの播種限界であろう. 要旨:半乾燥地帯の穀類作物であるトウジンビエを栃木県で栽培したところ,4月末播種で400〜500g/uの子実収量を得ることが可能であった.播種限界は5月末と思われる.
引用文献
Burton, G.W. and J.B. Powell 1968. Adv. Agron. 20:49―89.
FAO 2001. http://apps.fao.org/.
ICRISAT 1996. Improving the unimprovable. 1―13.
Jauhar, P.P. and W.W. Hanna 1998. Adv. Agron. 64: 1―26.
神崎優1952.日作紀 21:59―60.
重宗明子・吉田智彦 2000.日作紀 69:224―228.
Totok, A.D.H., T.K. Shon and T. Yoshida 1998. Plant Prod. Sci. 1:52―55.    
吉田智彦・角田幸大郎 1996.日作紀 65:58―62.

    第1表 トウジンビエの生育収量.
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     出穂期 草高  穂数  穂長 1穂粒重 1000粒 子実収量
     月.日  cm    /個体 cm     g   重 g    g/u
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 4月24日播種         
  AC3   7.08  197  1.9  18.7    9.8   10.1   193 c
  AC4   7.19  197  1.8   17.7    7.9    8.4   204 c
  AC5   7.15  203  1.9   18.9   14.2    9.8    281 bc
  AC6   7.13  247  1.8   27.3   25.4    6.6    430 abc
  AC7   7.19  247  3.1   21.8   12.7    6.6    383 abc
  AC8   7.04  223  1.7   19.9   12.7    8.4    215 c
  AC9   7.17  163  1.4   25.2   12.2    6.8    255 bc
  AC11  7.21  247  1.8   26.7   22.9    7.3    384 abc
  TP    7.05  252  2.3   23.3   25.0    9.8    579 ab
  SP    7.12  125  2.3   26.0   20.8    9.8    473 a
 5月26日播種
  TP    7.25  250  2.2   19.5   12.1   10.0    267
 6月23日播種
  TP    8.27  245  1.8   20.0   12.1    8.2    218
 7月28日播種
  TP    9.21  170  1.5   18.5    8.6    6.5    129
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TP;長稈の自然受粉品種.SP;短稈の自然受粉品種.AC3
〜AC7;SP由来の葯培再分化系統.AC8〜AC11;TP由来
の葯培養による再分化系統.4月24日播種の収量の値に付
いた記号は,同一記号間にダンカンの多重検定で5%水準
の有意差がないことを示す.

第1図 トウジンビエの出穂・開花期の様子. (略)

以上