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本頁は“日作関東支報, 16:28-29(2001)”に掲載したものです.図表一部省略.

湛水土壌表面播種用水稲品種の選抜

吉田智彦・藤井真弓
(宇都宮大学)
Selection of Rice Lines Direct-Seeded on the Soil Surface in Flooded Paddy Fields
Tomohiko Yoshida and Mayumi Fujii
(Utsunomiya University)

水稲の直播き栽培を定着させるには,直播きに適した品種の育成が必須である.直播き用品種には発芽,苗立ちが良く耐倒伏性が高く,かつ良食味であることが求められる.本研究では,湛水土壌表面播種栽培を想定した直播きに適する品種を選抜することを目的とした.

材料と方法
供試品種は第1表に示すように,外国の直播栽培用品種のLemontなどに日本の移植用良食味品種を交配したものの後代を用いた.同時に標準品種として第2表に示す供試材料の親系統など9品種を用いた.
 宇都宮大学農学部圃場で2001年に代掻き後落水し,30p間隔で長さ50センチに1系統ほぼ30粒ずつ条播し,直ちに水入れを行った.播種期は5月24日である.種子の催芽など,予措は行わなかった.窒素4kg/10aを元肥として施肥し,追肥は行わなかった.除草として6月2日にキックバイを1kg粒剤で散布した.また生育期に手取りで1回除草を行った.10月4,12,18,26日の収穫時に各系統の稈長を測定した.

結果と考察
 発芽苗立ちはどの系統も順調であり,浮き苗もあまり見られなかった.  倒伏は耐倒伏性の低い標準品種のコシヒカリで多く見られた(第2表).ヒノヒカリは稈長が高いにもかかわらず倒伏は見られなかった.稈長の頻度分布を見ると(第1図),No.6,10の組合せでは稈長の低いものが多く,No.7,11,12,13の組合せでは高いものが多かった.
 播種期がやや遅かったこともあり,全般に成熟期は遅れた.成熟期における収穫数の頻度分布を見ると(第2図),成熟期はどの組合わせも10月26日付近が多かった.収穫は10月4,12,18,26日に,倒伏したものや分離の著しいものを除いて行った.10月27日以降の成熟期のものは選抜しなかった.W42/ヒノヒカリの組合わせで,10月26日迄に成熟し,倒伏が少ない系統が多く選抜でき(第1表),この組合せは有望と思われた.今後は食味試験などを行い,良食味で直播適性のあるものをさらに選抜する予定である.

参考文献
井上直人 2002.直播,石井龍一編,作物学辞典.朝倉書店,東京.325−329(印刷中).
内村要介・佐藤大和・松江勇次 2001.酸素発生剤を用いない湛水土壌表面直播栽培の出芽苗立ち評価.日作紀 70:393−399.

第1表 供試材料と選抜数 
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番号 	    世代 供試個体・系統数 選抜数 選抜数/供試数
----------------------------------------------
1	H/N	  F2	20	8	0.40
2	W38/H	   〃	50	35	0.70
3	関東199号/H 〃	65	51	0.78
4	W76/H	   〃	30	22	0.73
5	H/W42	   〃	155	87	0.56
6	W53/Lemont F3	33	9	0.27
7	W38/H	   〃	20	11	0.55
8	W42/A	   〃	23	14	0.61
9	W53/H	   〃	36	18	0.50
10	W53/A	   〃	36	18	0.50
11	W53/H	   〃	148	66	0.44
12	W42/H	   〃	109	67	0.61
13	W42/H	   F4	26	14	0.53
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H;ヒノヒカリ, N;ニシホマレ, A;Ansanbyeo, W53,76;ユメヒカリ//Lemont/H,
W36,42;葵の風//Lemont/H, C/F;     Cawwa/Fortuna 6-103-15,
 Ansanbyeo;韓国の直播用早生品種.      F2は個体, F3,F4は系統.	

(参考)
In Kyushu, Sown directly 5/20,1999
              Heading
Ansanbyeo    8/11
Hinohikari    8/25
Lemont       8/23

第2表 標準品種の出穂期,稈長,倒伏程度.			
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品種     出穂期(月・日)稈長(p)倒伏程度
-------------------------------------
ニシホマレ 9/8	84	  無
ヒノヒカリ	 9/1	87	  無 
ユメツクシ	 8/21	68	  微
C/F      9/3	85	  無 
W42	 9/5	80	  無 
コシヒカリ	 8/19	82	  中
W53     9/1	73	  無 
日本晴	8/29	64	  微
Lemont	8/18	68	  無 
コシヒカリ 8/7	80	  多
(同日移植)
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組合わせ〜60	〜70	〜80	〜90	〜100cm
6	1	3	3	0	
7	0	0	5	5	1
8	0	0	14	0	0
9	1	0	10	6	1
10	5	9	3	0	0
11	5	9	3	0	0
12	5	9	7	35	10
13	1	1	11	45	9
第1図 稈長の頻度分布(データ)

組合わせ	〜10/4	〜10/12	〜10/18	〜10/26	10/27以降
6	0	0	2	7	9
7	1	1	0	9	0
8	1	0	4	9	1
9	0	1	5	12	0
10	3	0	3	12	4
11	1	0	5	60	5
12	0	1	12	54	9
13	0	2	3	9	0
第2図 成熟期の頻度分布(データ)
以上