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本頁は,日作紀(Japan.Jour.Crop Sci.)58(1):1−6(1989)に報告したものです.

         暖地のビール大麦の収量と気象条件の関係の統計的解析

              浜 地 勇 次・吉 田 智 彦
                   (福岡県農業総合試験場)
                    昭和63年2月23日受理

 要 旨:暖地のビール大麦の収量と気象条件の関係を知るために,生産力検定試験の品種ごとの収量および 収量関係形質(穂長,穂数および千粒重)と気象要因(平均気温,降水量および日照時間)との関係を変数増減法による重回帰分析法で分析し,個々の気象要因との表現型相関および気象要因相互間の影響を取り除いて解析を行った.
 1966〜1980年のビール大麦の全生育期間の気象要因とビール大麦の6品種の収量との関係では,表現型相関はおおむねどの品種ともに気温と降水量が収量と負の,日照時間が収量と正の関係にあり,また降水量が穂数と負の関係にあった.しかし,重回帰分析によると,収量に対して有意な関係がある気象要因は降水量のみ(あまぎ二条を除く全品種)であった.回帰係数からみると,総降水量で1mm増えると収量が0.04〜0.06kg/a減少することになった.高温が減収に寄与しているようにみえるが,これは温度と降水量に正の相関があるためであり,減収は主に多降水の影響によってもたらされた.日照時間の影響は比較的小さかった.収量関係形質では穂数が多降水で減少した.さらに,出穂期を境にして気象要因を前期と後期に分けても,減収は主に両時期の多降水によってもたらされた.
 したがって暖冬年には,踏圧等によって生育を抑えることのみより,暖冬にともなう多降水が真の減収要因であるので,排水対策を中心とした栽培管理を行うことが極めて重要である.
 キーワード:気象要因,降水,湿害,重回帰分析,ビール大麦.

 Multiple Regression Analysis of Malting Barley Yield and Climatic Conditions in Kyushu Region:Yuji HAMACHI andTomohiko YOSHIIDA(Fukuoka Agricultural Research Center, Chikushino, Fukuoka 818, Japan)
 Abstractt:Multiple regressions of six malting barley cultivars between yield and climatic conditions in Kyushu region over years were computed by backward and forward procedure.
 Phenotypic correlations between yield and mean temperature,total precipitation and total sun shine duration during the whole growing period (Dec.1−May 20)were generally negative,negative and positive,respectively. Multiple regression analysis showed,however,that only precipitation contributed yield adverselly. The negative phenotypic correlations between yield and temperature suggested that high temperature caused yield decrease,but this was because of the positive correlation between temperature and precipitation,and the influence of temperature on the yield was little. The influence of sunshine duration to yield was also little. Regression coefficients showed that yield decreased at the rate of 4-6kg/ha per additional 1mm precipitation. The number of ears was restricted by precipitation,resulting in yield decrease.
 Growing period was devided into two stages; before heading and after heading. Regressions were computed between yield and climatic conditions before and after heading for three cultivars. Precipitation in both of the growing period before and after heading date caused yield decrease.
 Therefore,high precipitation or wet injury was the main restriction to higher yield of malting barley in Kyushu region.
 Key words:Climatic condition,Malting barley,Multiple regression analysis,Precipitation,Wet injury.

 福岡,佐賀県を中心とした北部九州はわが国のビール大麦の主要な作付地帯の一つであるが,収量の年次間変動が大きく作柄が不安定であり,その原因は気象条件によるところが大きいと思われる.一般に作物の生育が気象要因によって大きく影響されることはよく知られており,作物の収量と気象要因との関係については,すでに大後2)が1904〜1936年までの33年間にわたる全国の県別作物の収量と気象条件との解析を行っている.その後,麦類の生育と気象条件との長年にわたった解析は小麦を中心に農林水産省の各作況研究室の試験研究成績(注1:農林水産省統計情報部 試験研究資料)も含めて数多く報告されている1,3,6,7,10,11,14,16)が,大麦では少なく,ビール大麦については高橋13)の報告があるのみである.また大後2)によると,暖地は麦作にとって気象条件がよくないとされているにもかかわらず,暖地での大麦に関する報告は金川8)や大分県の成績(注2;大分統計調査事務所作況試験室1973.大分県における麦類の収量予測方法に関する研究.第1報 予想収穫量調査時における小麦・裸麦の収量予測方法試案.試験研究資料第41集:133−134.)を除いてみられない.

 これらの解析の多くは収量および諸形質と個々の気象要因との表現型相関係数を計算したものであり,気象要因相互間の影響を考慮した多変量解析によるものは少ない.麦類の収量と気象条件の関係を重回帰分析を用いて解析した報告のなかでは,小麦で中川ら11),石丸ら6)およびその他に各作況研究室の試験研究成績のなかでいくつか検討されているが,大麦については大分県注2)と三重県(注3;三重統計調査事務所作況試験室1972.気象を説明変数とした麦類の作柄予想について.試験研究資料第39集:150−152.)の裸麦における検討だけであり,ビール大麦ではまだない.また,多くの報告は同一の品種か各県の平均収量のデータをあつかったもので,複数の品種ごとに解析したものはない.

 そこで本報告では,収量と気象要因の解析があまりなされていないビール大麦,特に皆無である暖地のビール大麦について,品種ごとの収量および収量関係形質と気象要因との関係を重回帰法で分析し,個々の気象要因との表現型相関および気象要因相互間の影響を取り除いて解析を行った.そして,どの気象要因が収量にどのような影響を与えるのかを検討し,あわせてビール大麦作の指導上の指針を得ようとした.

         材料と方法
 気象データは福岡県筑紫野市上古賀の福岡県立農業試験場病害虫部で測定した1966〜1980年の15年間のビール大麦の生育期間(12月1日から5月31日まで)の平均気温,総降水量および総日照時間の3項目を用いた.作物データは気象と同じ15年間のビール大麦育種の生産力検定試験の標準栽培のものである.栽培法はおおむね播種期が11月25日,窒素施用量がアール当り0.9kg,播種量がm2当り100〜150粒の条播(畦立)であった.供試品種は第1表に示すように成城17号,ダイセンゴールド,ミホゴールデン,あまぎ二条,博多2号,およびニューゴールデンの計6品種である.収量と収量関係形質の穂長,穂数および千粒重の計4項目について解析した.6品種の供試年数は7〜15年であるが,あまぎ二条とニューゴールデンが7年と最も短く,成城17号が15年と最も長かった.気象要因の影響はビール大麦の全生育期間を対象にした場合と,生育期間を2つに分けた場合とについてみた.後者は供試年数が長い3品種について出穂期を境にして前期と後期に分けて,期間は成城17号とミホゴールデンの早生2品種が12月1日〜4月10日を前期,4月11日〜5月20日を後期とし,晩生品種の博多2号は12月1日〜4月20日を前期,4月21日〜5月31日を後期とした.

 各年次における収量および収量関係形質と気象要因のデータを標本値として,表現型相関と気象要因相互間の影響を取り除いた偏相関を比較し,さらに気象要因を説明変数,収量または収量関係形質を目的変数として変数増減法による重回帰係数を計算した.変数増減法による重回帰分析の際の変数を落とすためのF値と,取り込むためのF値はともに2.0とした12).

          結果と考察
1.全生育期間の気象条件
 第1表で示すように収量の平均値は36.5〜43.2kg/aといずれの品種ともビール大麦としては高い収量レベルであった.これは育種の生産力検定試験のなかで栽培管理を十分に行った結果であり,また病害や薬害等の多発生もなかったことから,収量や収量関係形質の年次間変動の大部分は気象条件の差によったといえる.

 第2表に収量および収量関係形質と全生育期間の平均気温,総降水量および総日照時間の気象要因との表現型相関や重回帰分析の結果を示した.3気象要因の1966〜1980年の平均値と標準偏差は各々平均気温(℃)が8.42,0.587,総降水量(mm)が529,130,総日照時間(hr)が562,58.2であり,特に総降水量の年次間変動が大きかった.表現型相関はおおむねどの品種とも気温と降水量が収量と負の,日照時間が収量と正の関係にあり,大後2)の九州地方の大麦についての報告とほぼ一致した.

 また降水量が穂数および千粒重と負の,気温が千粒重と負の,日照時間が千粒重と正の関係にあった.穂長とは傾向がなかった.しかし,気温と降水量には正の相関(r=0.72**),気温および降水量と日照時間には負の相関(各々r=−0.59*,−0.47)があるために,これらの気象要因相互間の影響を取り除いた偏相関係数をみると,おおむねどの品種とも降水量が収量と負の,気温と日照時間が収量と正の関係にあり,気温と収量の関係については表現型相関と逆の傾向を示した.また変数増減法によって説明変数(気象要因)を選択した重回帰分析による
 Tablel.Experiment year,heading date,date of maturity and yield of six malting barley cultivars
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Cultivar     Experiment year  Heading date  Date of maturity  Yield1) (kg/a)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
New Golden  1966−1972   、 4.25−5.20    5.31−6.14    40.5(9.7)
Daisen Gold 1966−1973     4.14−5.01    5.26−6.07      40.1(9.2)
Hakata No.2 1966−1974      4.25−5.10    5.31−6.11    36.5(7.2)
Seijo No.17 1966−1980      4.10−4.30    5.23−6.07    39.7(7.3)
Miho Golden 1971−1980     4.12−4.28    5.21−6.02    37.5(10.9)
Amagi Nijo  1974−1980     4.14−4.19    5.25−5.31    43.2(7.8)
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1)Mean value and standard deviation over experiment years.
と,収量に対して有意な関係がある気象要因は降水量のみ(あまぎ二条を除く全品種)であった.回帰係数からみると,総降水量で1mm増えると収量が0.04〜0.06kg/a減少することになった.この場合の寄与率は48〜85%であった.大後2)は九州地方の大麦の全作付期間の気象要因では,特に日照時間が収量と密接な関係があることを表現型相関から述べているが,ビール大麦における重回帰分析の結果からは,収量に対する日照時間の影響は降水量より小さいといえる.収量関係形質では穂数が多降水で減少し,千粒重が多照で増加する傾向にあったが,穂長はいずれの品種とも気象要因と有意な回帰は得られなかった.

 収量構成要素からみた降水量による低収要因は主に穂数減によると推察される.品種ごとの収量と気象要因との重回帰分析の結果から,あまぎ二条を除いた5品種において降水量が収量と有意な回帰を示したことは,浜地ら4)が圃場試験においてビール大麦の耐湿性を検定し,暖地の最近の品種及び育成中の系統が全般的に耐湿性が劣った結果と一致する.

  2.2つの生育期間の気象条件
 次に生育期間別の気象要因の影響をみるため,出穂期を境にして前期と後期に分けて収量および収量関係形質と気象要因との解析を行った結果を第3表に示した.表現型相関は時期を分けても全生育期間の場合と同様で,気温や降水量が収量と負の,日照時間が収量と正の関係にあった.また気象要因相互間の関係では,気温と降水量には正の相関(前期がr=0.63*,後期がr=0.84**),気温および降水量と日照時間には負の相関(前者:前期がr=−0.54*,後期がr=−0.52*,後者:前期がr=− 0.73**,後期がr=−0.33)があり,個々の気象要因とも前期と後期には相関は認められなかった.

 収量と気象要因との偏相関は,3品種とも前,後期の降水量が収量と負の関係を示した.重回帰分析によると収量に対して有意な関係がある気象要因は,成城17号と博多2号が前,後期の降水量で,ミホゴールデンが前期の降水量と後期の気温であった.したがって,出穂期を境にして気象要因を前期と後期に分けても,収量は主に両時期の降水量によって影響されるので,降水量による影響はビール大麦の生育期間の一時期だけでなく,全期間をとおしていると推察される.収量関係形質では穂数が主に前期の多降水で減少し,千粒重が前期の低温と後期の多照で増加する傾向にあった.

 高橋13)のビール大麦における解析によると,収量を有効茎数と4月上旬(節間伸長期)の平均気温との式から求め,有効茎数は播種期から2月までの気温に左右され,収量もこの時期の気温によってある程度決定されるとしているが,降水量が収量に及ぽす影響については計算にいれていない.さらに,大麦について重回帰分析によって解析した報告では,大分県注2)の裸麦が平均収量と1月〜5月上旬の最低気温,気温較差および降水日数を変数として回帰を得ており,最低気温と降水日数の標準備回帰係数は負,気温較差は正の値となった.降水日数は降水量を反映していると考えられるので,降水量による影響は裸麦でも大きいといえる.

 また三重県注3)が裸麦の平均収量と3月〜5月の各月の平均気温および日照時間を変数とした回帰式を得ているが,5月の日照時間の標準偏回帰係数が正の値となり,収量への影響が大きくなっている.しかし降水量については検討されなかった.大後2)が暖地の大麦の低収要因の一つとして全生育期間をとおして降水量が多いとし,金川8)が宮崎県の裸麦の収量は4月の降水量との相関が高いと述べていること等からも,暖地の大麦の収量は降水量の影響が大きい.また暖地の小麦についても,収量は登熱期の降水量に左右され2,6,14,16),穂数は分けつ期頃の降水量の影響を受けている7,14,16)ことから,ビール大麦を含めて暖地の麦類の減収要因として特に降水量の影響が大きいといえる.
 Table2.The relationship between agronomic characters and climatic factors during the wbole
    growing period for six malting barley cultivars.
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                             Character
      Climatic1)  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Cultivar                        Yield            Ear length           Number of ears       1,000 kernel weight
      factors   ――――――――――――  ―――――――――  ―――――――――― ――――――――――――
             Phen.2) Part.3) Coef.4)  Phen.  Part.  Coef. Phen.      Part. Coef.  Phen.   Part.  Coef.
              cor.   cor.  reg.    cor.  cor.  reg.  cor.   cor. reg.  cor.   cor.  reg.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
New Golden   Temp.  −0.76  0.08       0.63  0.51    −0.33  0.38    −0.46 −0.06
       Prec. −0.92 −0.82 −0.054  0.37 −0.29    −0.63 −0.66    −0.40 −0.07
       Sun.   0.57  0.34       −0.52 −0.20      0.23  0.05     0.56  0.40
                    **(85)5)              −            −           −
Daisen Gold  Temp.  −0.60  0.05      −0.25  0.51     −0.19 −0.12    −0.67  0.30
       Prec. −0.85 −0.75 −0.050 −0.50 −0.59     −0.31 −0.24    −0.69 −0.62 −0.009
             Sun.    0.30 −0.15       0.47  0.54     −0.12 −0.33     0.83  0.80   0.035
                                 **(71)            −           −           *(81)
Hakata No.2 Temp.  −0.59  0.48       0.43 0.24      −0.18  0.34    −0.12−0.14
       Prec. −0.85 −0.83 −0.042   0.41 0.12     −0.53 −0.61     0.16 0.40
       Sun.   0.53  0.53       −0. 15 0.16      0.03 −0.05     0.42 0.44
        .              **(73)              −            −            −
Seijo No.17 Temp.  −0.46  0.17        0. 02 0.01     −0.25   0.13     −0.66  −0.32 −2.29
       Prec. −0.69 −0.58 −0.039   0.09 0.13    −0.46 −0.43 −0.38 −0.59 −0.21
       Sun.   0.44  0.23        0.12 0.17      0.16 −0.02      0.55  0.25
                     **(48)             −            10%          **(44)
Miho Golden  Temp.  −0.44  0.10        −0.11 −0.04    −0.39   0.11       −0.61 −0.21
       Prec. −0.69 −0.57 −0.057  −0.10 −0.02    −0.67 −0.59 −0.59 −0.60 −0.23
       Sun.   0.40  0.12        0.10   0.05     0.29 −0.03       0.72   0.57  0.026
                      *(47)             一             *(44)        *(51)
Amagi Nijo   Temp.  −0.00  0.36         0.11  0.05     −0.17  0.23        0.04 0.27
       Prec. −0.41 −0.34        0.01 −0.20     −0.52 −0.38          0.21−0.10
       Sun.   0.44  0.37       −0.31 −0.35      0.52  0.37      0.37 0.37
                                           −              −               −           −
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1)Temp.,Prec.and sun.; Mean temperature,total precipitation and total sunshine duration during the whole
  growing period(Dec.1−May 20), respectively.
2)Phenotypic correlation coefficient.
3)Partial correlation coefficient.
4)Coefficient of multiple regression determinated  by backward and forward procedure.
5)10%, *,**:The regression was significant atlO%,5% and 1% probability level, respectively. Value in the
  parenthesis shows coefficient of determination (%).
 以上のように,暖地のビール大麦数品種の収量および収量関連形質と気象要因との関係について,気象要因相互間の影響を取り除いた解析をしたが,ほぽどの品種も減収は全生育期間をとおして主に多降水によってもたらされることがわかった.このことは,降水量が多い年には多降水がもたらす水分過剰のために,麦の地上部では下葉からの枯れ上がり,穂数の減少等とともに減収となってあらわれるが,地下部では土壌空気が制限され,また土壌の還元化によって有害物質が生成され,根腐れ等によって根の機能が衰退するもの17)と考えられる.

 さらに,生育期間の高温によって減収するように表現型相関からみえるが,それは降水量と気温に相関があるためで,収量に対する影響は温度ではなく降水量であることがわかった.また日照時間の影響も比較的少なかった.これらの知見は暖地のビール大麦安定栽培技術の普及上重要なことと思われる.すなわち,今までは収量に対する温度の影響が大きく,暖冬年は低収になりがちなので,茎立ちを遅めること等を目的として,踏圧を積極的に行うことのみを勧めてきた.しかし,麦の生育期間が高温の年は降水量も多い傾向にあり,真に収量に影響しているのは降水量であることがここでの解析でわかった.したがって,暖地のビール大麦作では,高温の年は排水対策を中心とした栽培管理を行うことが極めて重要であるといえる.

 ここでの収量データは,各品種の最高の生産力を発揮させるように行った育種の生産力検定試験であり,湿害回避のための排水対策等の栽培管理は十分に行ったが,それでも多降水によって地上部では下葉からの枯れ上がり,穂数の減少等の湿害の徴候があらわれて,減収していることは注目すべきである.大麦は麦類のなかでも耐湿性が劣る5,9,15)とされており,しかも暖地の最近のビール大麦品種は大麦のなかでも耐湿性が低い4).したがって,暖地のビール大麦の生産力を高めるためには,湿害を回避するような栽培技術をさらに進めるとともに,耐湿性品種を育成することが必要である.

 謝辞 本報告は福岡県農業試験場病害虫部で測定した気象データと同作物部二条大麦育種研究室のビール大麦生産力検定試験のデータを用いた.関係諸氏に感謝いたします.

 Table3.The relations between agronomic characters and climatic factors before and after heading
      date for three malting barley cultivars.
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                                      Character             ̄
        Climaticl) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Cultivar                        Yield               Ear length              Number of ears       1,000 kernel weight 
         factors  ―――――――――――――   ―――――――――   ――――――――――   ―――――――――――――
            Phen.2) Part.3) Coef.4) Phen.   Part.  Coef. Phen. Part. Coef.    Phen. Part. Coef .
             cor.    cor.   reg.    cor.   cor. reg.  cor.  cor.  reg.    cor. cor. reg.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Bakata No.2  Temp.1  −0.64  0.32        0.50 −0.01    −0.15 0.90       −0.21 −0.63 −1.92
       Prec.1 −0.46 −0.85 −0.035  0.42  0.20    −0.60 −0.95 −0.44 −0.07  0.81  0.015
       Sun. 1  0.25  0.78      −0.42 −0.29    −0.01  0.14      0.74  0.86  0.045
        Temp.2 −0.30  0.77        0.09 −0.08     −0.23 −0.90       0.19  0.84  3.65
       Prec.2 −0.64 −0.90 −0.053  0.06  0.38     −0.00 −0.75      0.31  0.27
       Sun.2   0.45  0.32       0.30  0.45      0.06 −0.66     −0.33  0.29
                      *(78)5)          −             10%           *(91)
Seijo No.17 Temp.1 −0.39  0.12        0.08  0.15      −0.07   0.38 59.1   −0.63 −0.40 −1.51
       Prec.1 −0.36 −0.47 −0.033 −0.06 −0.13     −0.25 −0.54 −0.59 −0.40 −0.24
       Sun.1  0.18  0.13        0.08 −0.00      0.06 −0.04       0.25 −0.04
        Temp.2 −0.32  0.08       −0.15 −0.39      −0.55 −0.53−114    −0.30 −0.12
       Prec.2 −0.52 −0.46 −0.046  0.18  0.43     −0.34 −0.12      −0.35  0.04
       Sun.2   0.43  0.22       0.08 0.32      0.16  0.00        0.51  0.48 0.022                                              *(50)            −          *(50)         **(56)
Miho Golden   Temp.1−0.29  0.25          −0.11 0.09      −0.23   0.25        −0.43 −0.01
       Prec.1 −0.41 −0.55 −0.054  −0.34 0.01     −0.30 −0.54 −0.45  −0.32 −0.19 −0.007
       Sun.1  0.31 −0.10         0.28 0.57      0.19 −0.20         0.51  0.45
        Temp.2 −0.47 −0.18 −9.42   −0.02 −0.81     −0.49  0.01         −0.59 −0.56  −1.22       
             Prec.2 −0.47 −0.27        0.29  0.79     −0.58 −0.46 −0.86  −0.44  0.18
       Sun.2   0.33  0.20      −0.15 −0.67      0.27  0.21        0.64 −0.29   0.025
                                    10%               −            10%             *(71)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1)Temp.1,Prec.1 and Sun.1:Mean temperature,total precipitation and total sunshine duration before heading
  time(Seijo No.17 and Miho Golden:Dec.1−Apr.10.Hakata No.2:Dec.1−Apr.20).
  Temp.2.Prec.2 and Sun.2:Mean temperature,total precipitation and total sunshine duration after heading 
  time(Seijo No.17 and Miho Golden:Apr.11−May20.Hakata No.2:Apr.21−May31).
2)−5):See Table2.


         引用文献

1.安達一明 1952.気象と小麦の作況に関する一考察.
  日作紀 21:162−163.
2.大後美保 1945.日本作物気象の研究−日本におけ
 る農作物と気象との関係に対する汎農業気象学的研
 究−.朝倉書店,東京.pp655.
3.後藤虎男 1986.コムギの太陽エネルギー利用効率
  と子実効率の地域性(3).農及園 61:605−609.
4.浜地勇次・古庄雅彦・伊藤昌光 1985.節間伸長期に
  おけるビールオオムギの耐湿性.日作九支報 52:81
  −83.
5.池田利良・東駿次・川出武夫・西郷昭三郎 1955.麦
 類の耐湿性に関する研究.第1報 麦類における耐
 湿性の品種間差異.東海近畿農試研報・栽培部 2:11
 −16.
6.石丸治澄・波多江政光 1971.九州地域における小麦
 の作況判定法に関する解析研究.第1報 収量推定
 に関する解析.日作九支報 35:94−96.
7.――   1971.―.第2報 穂数・稔実粒数推
 定に関する解析.日作九支報 36:67−69.
8.金川修造 1948.宮崎県における麦作と気象.九州農
 業研究 2:8−9.
9.桐山毅・井出義人・吉富研一・小西猛郎 1956.麦類耐
 湿性の品種間差異(予報).九州農業研究 17:57−58.
10.松村修・波多江政光・宮川敏夫・岐部利幸 1985.昭和
 59年度の作況試験にもとづく小麦の生育・収量解析.
 日作九支報 52:73−77.
11.中川元興・牛腸英夫・西尾小作 1968.東海近畿地域
 における府県別小麦収量と月別気象要因との関係.
 東海近畿農試速報 5:31−59.
12.奥野忠一・久米均・芳賀敏郎・吉澤正 1981.多変量解
 析法(改訂版).日科技連,東京.128−157.
13.高橋俊明 1955.ビール麦の収量予想.生研時報 7:
  118−122.
14.田谷省三・荒木均・野中舜二 1981.コムギ「農林61
 号」の収量および諸特性に及ぼす気象条件の影響.
 日作九支報 48:15−18.
15.時政文雄 1952.麦類の湿害に関する研究.第2報
  湿害に対する種類並に品種間差異.日作紀 20:266
  −267.
16.徳永初彦 1959.小麦の登熱に及ぼす生育末期の気
 象条件について.日作九支報 35:94−96.
17.山崎 伝 1952.畑作物の湿害に関する土壌化学的 
 並びに植物生理学的研究.農技研報 B1:1−98.


以上