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本頁は,日作九支報 61:70−71(1995)に発表したものです.

     二期作栽培でのキピの生長解析

         吉田 智彦・楠本 亮也
            (九州大学農学部)

Growth analysis of double−cropped Panicum miliaceum L.
    Tomobiko YOSHIDA and Ryoya KUSUMOTO
    (Faculty of Agriculture,Kyushu University)

 キビ(Panicum miliaceum L.)は生育期間が短く,暖地においては5月と7月〜8月の年2回播くことができる。耐旱性が強く,不良環境条件下で栽培可能である。しかし,キビの育種や栽培法の研究は少ない。ここでは,キビで多収をあげることを目的として,キビの分げつ発生と収量との関連及びそれらの品種間差などを検討し,また生育特性の詳細を明らかにするため生長解析を行うとともに,太陽エネルギーの利用効率を推定した。

 ここでは,5月と8月の年2回播種して収量試験を行った。8月播きではかなり晩播となるが,晩播でも多収をあげうる品種の特徴も同時にさぐった。

       材料および方法


 また分げつ発生時に節位を識別し,色の異なるビニールリングをつけ各分げつを判別した。主稈の第1,2,3,…葉の葉腋からの分げつを1,2,3…号分げつとし,主稈,1,2,3…号分げつをM,Tl,T2,T3‥・と表記した。

 生長解析は1993年の鎮川郡分白面産を用いて行った。2週間ごとに試験区から5個体を抜き取り,器官別に分け,LAI,CGR,NARを算出した。さらに,一定の生育期間中に増加した地上部乾物重の持つエネルギーをその期間中の全天日射量で除して乾物生産における太陽エネルギー利用効率(U)を求めた2)。また,子実として固定されたエネルギーを全生育期間の全天日射量で除して子実生産における太陽エネルギー利用効率(Ug)も求めた。ここで,植物体のエネルギーは乾物1g当り,16,800J(4,000cal)とした。全天日射量は福岡管区気象台の観測値を用いた。

       結果および考察

1.生育の概要
 1992,93年共通に供試された鎮川郡分白面産の生育収量の値を第1表に示した。8月播きは栄養生長をあまりせず,ただちに生殖生長に入って出穂迄日数が5月播きより32〜36日も短かった。子実収量は5月播きが114〜161gm-2であり,8月10日播きは109〜211gm-2,8月20日播きが16〜56gm-2で,8月20日播きは収量が低下した。また1993年の8月播きは1992年よりも収量が低下した。

 鎮川郡分白面産以外の品種はいずれも収量がかなり低く,最高で鎮川郡分白面産の8割程度の収量であった。

 主稈葉数は,5月播きは17.7,8月10日播きは11.2,8月20日播きは10.8で,8月播きで少なく,しかも播種期が遅れると少くなった。また収穫時において,全重に対する穂重の占める割合は5月播きは13%であるのに対し,8月10日播きは54%と全体の半分以上を穂重が占めた(表は略)。
     第1表 鎮川郡分白面産の生育収量
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 播種期   出穂迄 成熟迄 草丈 子実収量 Ug
       日数  日数   cm  gm-2      %
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1992.5.6   66   91   181   114  0.12
1993.5.6   70   90   189  161   0.21
1992.8.10  31    69   80  211   0.37
1993.8.10  37   78   107  109  0.19
1992.8.20  30   73   43   56  0.10
1993.8.20  38   74   76   16  0.04
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注)Ug:子実生産における太陽エネルギーの利用効率 
2.生長解析
 LAIは,5月播きでは生育後期まで増加し続け最大値は播種後70日での4.80であった。8月播きは生育量が少なく,播種後42〜56日でLAIは最大に達し,値も非常に小さく1以下であった(第2表)。CGRはLAIの増加に応じて増加し,LAIが最大の時にCGRも最大となった。CGRの最大値は,5月播きは20.5gm-2d-1,8月9日播きは6.11gm-2d-1,8月20日播きは4.91gm-2d-1で,LAIと同じように8月播きでは5月播きよりも低い値となった。

 NARは,5月播きでは最大24.1gm-2d-lであったが,8月播きでは値は低く,最大値が12〜13gm-2d-1であった。

 生育期間中の太陽エネルギー利用効率の最大値は5月播きが2.67%,8月播きが0.81%であった。これらの値は他の作物で推定された値にほぼ匹敵していた1)。子実として固定された太陽エネルギーの利用効率は(第1表),5月播きが0.12〜0.21%,8月10日播きが0.19〜0.37%,8月20日播きが0.04〜0.10%で,8月20日播きは低い値であったが8月10日播きでは5月播きより高く,効率の良い子実生産であることを示した。
  第2表 鎮川郡分白面産の生長解析(1993年)
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 播種  項   ―― 播種後日数 ――
 期   目  14  28  42  56  70
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 5.6  LAI  O.01 0.10 1.38 2.37 4.80
     CGR  0.01 0.73 5.24 7.44 20.5
     NAR      24.1  10.9  4.1  6.O
      U   0.00 0.07 0.52 1.08 2.67
 8.10 LAI   O.01 0.18 0.71 0.76 0.44
     CGR   O.02 0.71 5.02 6.11 4.64
     NAR      12.0 13.0  8.3  7.9
     U    O.00 0.08 0.63 0.81 0.64
 8.20 LAI   O.05 0.24 0.61 0.33 0.17
     CGR   O.10 0.94 4.91  1.21
     NAR      8.11  2.4  2.8
     U    O.01 0.12 0.70 0.16
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注)CGR:個体群生長率(gm-2d-1),
  NAR:純同化率(gm-2d-1),
    U:乾物生産における太陽エネルギーの利用効率(%)
3.分げつ別の収量及び収量構成要素
 第3表に主稈と分げつの収量への寄与率を,最も収量の高かった鎮川郡分白面産の値と,その他の品種の平均値で示した。8月20日播きは低収であったので表から省いた。T1は5月播きでわずかに発生しただけで,8月播きではほとんど発生せず,収量に寄与した分げつは主にT2〜T4であった。鎮川郡分白面産の主稈の収量への寄与率は5月播きが60%,8月播きが72〜74%,一方その他の品種平均では5月播きが52%,8月播きが53〜65%で,いずれも鎮川郡分白面産のほうが高い値となった。また5月播きよりも8月播きで主稈の寄与率が高くなった。

 これは分げつでの登熟期間が主稈より遅れ,特に8月播きでは登熱条件が不良で分げつの寄与率が低くなったためだと考えられる。これらのことは,主稈の収量への寄与率が高い品種の方が多収品種となり得ることを,特に8月播きでは主稈型のはうが有利であることを推察させる。

 第3表 主稈と各分げつの収量への寄与率(%)
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播種期     品種  M  T1   T2 T3 T4 その他
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1993.5.6 鎮川郡  60 3  20 15  2  0
       その他* 52 1  25 21  2   0
1992.8.10 鎮川郡   74 0  16 10  0  0
       その他   53 0  5 11  13  19
1993.8.10 鎮川郡   72 0  4  4  5  14
      その他  65 0   8  5  7  14
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注)*:美川系2号,黍信濃1号,伊那在来1号,
    伊那在来3号の平均値を示した。
         摘  要

1.キビを5月と8月の2回播種して二期作栽培し,その生長解析を行った。5月播きのCGR及び太陽エネルギー利用効率の最大値は20.5gm-2d-lと2.67%であり,それに対し8月10日播きは6.11gm-2d-1と0.81%であった。
2.主稈の収量への寄与率は5月播きは60%,8月播きは72〜74%であった。主稈の寄与率の高い品種が多収であった。

引用文献
1)村田吉男 1975.太陽エネルギー利用効率と光合成.育種学最近の進歩.15:3−12.
2)−・玖村敦彦・石井龍一 1976.作物の光合成と生態.農文協,東京.256−257.

Rep.Kyushu Br.Crop Sci.Soc.Japan 61:70−71,1995.
平成6年9月21日 第71回読演会(第57回九州農業研究発表会と共催)で発表.
キーワード:キビ,純同化率,太陽エネルギー利用効率,二期作,分げつ

以上