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本頁は“農業情報研究 3(2)1994.65−78に掲載したものです.

ビール大麦交配両親名データベースの構築と解析


       水田一枝・吉田智彦*

    福岡県農業総合試験場〒818筑紫野市大字吉木587
     *現九州大学

要 旨:
 ビール大麦の主要品種や育成系統の交配両親名と新旧名をPrologを用いてデータベース
化した.また家系図の作成や祖先数の検索・近緑係数の計算などを行った.福岡県農業総
合試験場で育成した51品種の時代推移をみると,当初の育成品種に比較して今日の品種で
は3〜4倍の数の品種が親として寄与しており,また導入品種であるゴールデンメロンか
らの世代数は8〜10代へとなっていた.しかし外来遺伝子は少なく,現在の品種は10〜14
程度の元々の品種からなっており,ゴールデンメロンとの近緑係数は40〜50%であり,極
めて狭い範囲での遭伝子源で交配・選抜がなされてきたことがデータベースからの解析で
わかった.

キーワード:
 ビール大麦,育種,遺伝子源,家系図,近緑係数,Prolog,両親名
1.はじめに
 わが国でビール大麦の栽培が始められたのは,北海道で明治10年頃,本州では明治20年頃からであり,その当時栽培した品種は外国から導入されたシバリー,ゴールデンメロンであった.ビール麦の育種もゴールデンメロンの純系分離から行われた.ゴールデンメロンは長稈・晩熟であったため短稈・早生化を図る交雑育種も早くから行われてきた.そして育成品種同士をさらに次の交配親にして,短稈・早生以外の他の形質はなるべくゴールデンメロンに近い特性を有するような循環選抜の形の育種がなされてきた.1975年頃以降は,当時育成された極めて醸造適性の優れた,はるな二条が醸造品質についての基幹品種となったのでその優れた醸造品質を維持しつつ,その他の栽培特性を改良するように,はるな二条を中心とした交配が行われた.近年では大麦縞萎縮病抵抗性,うどんこ病抵抗性,高度の醸造適性や子実の外観品質などを目標とした交配が盛んに行われている(増田ら1993).

このようにビール大麦の育種は発展してきており,現在育成されている品種の家系や血縁関係は相当複雑になってきている.そのため家系図作成,祖先品種の構成,類縁関係,生産力や醸造品質と交配親との関係などの調査を過去の多数の成績書を繰って人手で行うのはかなり煩雑であり,その結果ビール大麦育種にとって必須であるこれらの解析が必ずしも充分とはいえない.

そこで,ここではまずわが国で育成されたビール大麦の主要品種や配付系統,その他交配に使われた系統の両親名をできるだけ多くデータベース化して,育成品種の祖先や血縁関係の検索が容易にできるようにした.また,系統名は地域適応性検定試験(ビール大麦ではビール大麦育成系統合同比較試験.佐々木1990)に供試されるときや新品種になったときに変更されるので,品種名の新旧対照データベースも構築した.福岡県農業総合試験場で育成された地域適応性検定試験用の51系統についてはすべて,家系図を書いたときに検索が最終の祖先まで行われるようにデータを完備した.そして今後のビール大麦育種の参考とすべく,データベースを利用して各種解析を行った.

2.データベースの構築と検索プログラム
 祖先や血縁関係の検索のためには,従来の手続き型のプログラムよりも,推論,再帰処理,リストの処理などが比較的容易にできる推論型プログラムの方が簡単にできると思われるので,本データベースの構築と解析にはProlog(柴山ら1986)を使用した.Prologインタプリタは,パーソナルコンピュータ上で作動するように開発されたProlog−KABA(岩崎技研工業株式会社)を使用した.図1に本プログラムの内容の一部を示した.図1は家系図作成プログラム,交配両親名データ,新旧名対照データからなっている.後述する家系図作成以外の各種の解析は,このなかの家系図作成プログラムの部分を適宜改変しながら行った.

(1)交配両親名データ
 交配両規名データの構造は,r(品種名,母親名,父親名),の形のリストである.Prolog−KABAでは漢字データの検索が完全には作動しないことがあったので,原則として品種名はローマ字表記にした.ただし家系図作成の際に表示を10文字で打ち切ったので,できるだけ家系図中での表記を完全にするため昔の品種(1948年育成のアサヒ19号以前)はカタカナ表示にした.

 品種名が変ったときは最新の名前にして交配両親名データベースを作った.これは歴史的な正確さより今日の使いがってを優先したためである.新旧名のデータベースは作ってあるが,新旧名のどちらでも栓索できるようにはなっていない.

 品種名中のゴールデン,ゴールデンメロンはスペース節約のため単にgまたはgmと略した場合がある.エビスはエビス_カネコgと表記した.南豪州シバリーはchevallierと表記した.はるな二条の母親の両親はg-65_gmとk-3_gmと表記した.F1などを片親にしたときは,単にf1とするとそれ以後の検索を誤るので,すべてのf1を特異的にするためf1_mo/seのようにした.aaa二条b号はaaa2-bと表記した.データは合計244ある.

(2)新旧名対照データ
 新旧名対照データは,nn(新名,旧名),の形のリストである.合計216である.

(3)家系図の作成
 交配両親を再帰的に検索して家系図を作るプログラムを作成した.近年の品種では祖先の数は膨大になるので,一旦出現した祖先は以後表示しないものもプログラム中で選択できるようにした.これらでは,表示の都合で最高7代までさかのぼることとし,品種名の表示は10文字で打ち切ったが,全ての祖先をデータベース中の表記どおり表示することも可能にした(ただしその際は家系図の形式にはならない).この家系図作成プログラムの部分はわずか38行で,手続き型プログラムによるよりもはるかに簡単に家系図作成が可能であった.

(4)祖先の数
 家系図中にでてくる祖先の数を計算した.家系図作成プログラム中にカウンターを挿入し,祖先を換索するたびにカウンターを加算した.総数と,一度でてきたものは二回目以降数えないような計算もした.

(5)近緑係数の計算
 ゴールデンメロン及び木石港−3との間の近縁係数(Wright1922,酒井1957)を計算した.ここではゴールデンメロンの純系淘汰品種はすべてゴールデンメロンと見なして計算を行った.ニューゴールデンの家系図中にはゴールデンメロンが合計3回しか出現せず,近縁係数の計算は容易に手計算で可能である.しかし吉系38では合計42回も出現する.このような場合,手計算や従来の手続き型のプログラムでは近縁係数の計算は実質的には不可能であろう.ここでの計算は.家系図作成プログラムを利用して,ゴールデンメロンまたは木石港−3が家系図中の何世代前に出現するかをすべて検索し,その世代数を外部ファイルに出力し,それからBASICで近縁係数の計算をした.

/*家系図作成プログラム */
kakei(A):−write('***’),write(A),write('ノ カケイズ***’),
c_era,nl,nl,sosen(A).
oya(X,Y):-tab(1),haha(X,Y),count(N).
oya(X,Y):-titi(X,Y),coun2(N).
oya(X,Y):-coun3(N),fail.
haha(A,X):-r(A,X,_),cloc4(K),K<7.
titi(A,X):-r(A,_,X),cloc4(K),K<7,nl,tab(K*11+1).
cloc4(K):-clock(N),cloc2(M),cloc3(J),K is N+M−J.
sosen(A):-oya(A,X),kiru(X,Y),write(Y),sosen(X).
・
(以下29行略)
・
/*両親名データベース   */
r('yasiogolden','kanto2−5','harunanijo').
r('kanto2−5','newgolden','seijo−17').
r('newgolden','エビス_カネコg','アサヒ-19').
・
(以下241行略)
・
/*新旧名対照データベース */
nn('yosikeil','tikukei6186').
nn('yosikei2','tikukei6229').
nn('yosikei3','tikukei6242').
・
(以下213行略)
・
      図1.プログラムの内容

l?−r(X,Y,'harunanijo'),write(X),nl,fail.
yasiogolden
mikamogolden
nisinogold
tuyusirazu
misatogolden
nankeib4641
yosikeil
yosikei2
・
(以下略)
・
no
l?−r(X,'harunanijo',Y),write(X),nl,fail.
nitta2-9
nittakei8
yosikei21
yosikei22
yasu2-7
hokuiku-19
hokuiku-20
nitta2-4
hokuiku-22
no

 図2・はるな二条を片親にした品種の検索の実行例(途中及びF1などは略)

yes
l?−nn(asakagold,X).
X=kyushu2-9
yes
l?−nn('kyushu2−9',X).
X=yosikei14
yes
l?−nn('yosikei14',X).
X=tikukei6987
yes
l?−nn('tikukei6987(',X).
no

 図3. アサカゴールドの旧名の検索の実行例  

l?−kakei('kyushu2-1').
***kyushu2−1ノ カケイズ *** 
_yakkei23_____アサヒ-19________アイチワセg-13__アイチワセg−5___タイショウムギ___ロッカクシバリー。
______________________________________________________________________________キツキワセ。
______________________________________________________________ゴールデンメロン。
______________________________________________ゴールデンメロン
_______________________________Cheva11ier。
______________アサヒー17_______キョウトワセ。
_______________________________キョウトチュウセイ。
_kanto2−3____エビス_カネコg___ゴールデンメロン
_______________________________シコク。
______________アサヒー19_______アイチワセg−13__アイチワセg−5___タイショウムギ___ロッカクシバリ                 ・      _______________________________________________________________________________キツキワセ
_______________________________________________________________ゴールデンメロン
_______________________________________________ゴールデンメロン
_______________________________Chevallier
no

    図4. 九州二条1号の家系図作成の実行例 (注; ______ はWeb画面で縦に揃えるため後から挿入)

l?−kakei3('nisinogold').
*** nisinogold ノ カケイズ2 ***
_f3-2_ナ/b___nankeib471__f1_az/mo____azumagolde__エビス_カネコg_ゴールデンメロン
_________________________________________________________________シコク
___________________________________________________アサヒー19____アイチワセg−13_アイチワセg−5
________________________________________________________________________________ゴールデンメロン
_________________________________________________________________cheva11ier
______________________________________モクセッコウ3
__________________________azumagolde−shown
______________harunanijo__flO_g/k‥‥g−65_gm
______________________________________k−3_gm
__________________________satukinijo__アサヒー5______アイチワセg−13 −shown
_____________________________________________________chevallier − shown
______________________________________サッポロー7_____hanna
_____________________________________________________duckbill
・harunanijo−shown

  図5.ニシノゴールドの家系図作成の実行例 (注;一度でたものは以後−shownと略す) 

3.結  果
(1)両親名
 図2に,はるな二条を直接の交配親にして育成された品種名の検索の実行例を示した(図中のアンダーライン部分がキー入力の箇所で,以下の図も同様).アンダーライン部分のような‘質問’をすることで容易に目的とする検索ができた.父親にしたのはヤシオゴールデン,ミカモゴールデンなど本データベース中には25品種,母親にしたのは新田二条9号.新田系8など9品種あった.

(2)新旧名
 図3には新旧対照名データベースの検索の実行例を示した.第一の質問でアサカゴールドの旧名は九州二条9号,第二の質問で九州二条9号の旧名は吉系14,第三の質問で吉系14の旧名は筑系6987であることがわかる.

(3)家系図の作成
 図4に九州二条1号の家系図作成の実行例を示した.九州二条1号の母親は薬系23,父親は関東二条3号,薬系23の両親はアサヒ19号とアサヒ17号‥‥である.ここでは祖先はすべて表示してある.図5にはニシノゴールドの家系図を示した.母親は(南系B4718×はるな二条)F3-2,父親ははるな二条,南系B4718の母親はアズマゴールデンと木石港-3のF1,父親はアズマゴールデン・・・・である.ここでは,家系図中に表示されるべき祖先数は合計64と多くなるので,一度表示されたものの祖先は-shownとして以後表示していない.図4と5の家系図中の祖先名以外の記号(。や_)は説明の都合上後で挿入したものであり,元の出力結果では祖先名のみである.

(4)祖先の数
図4の九州二条1号の家系図にでてくる祖先の総数(「総祖先数」)は26である.しかし同一品種が何回かでてくるので,同一品種は一回しか数えないとすると,そのときの祖先数(「同一品種を除いた祖先数」)は15となる.また外部からの遺伝子導入がどの程度あったかという見地からみて,循環選抜の途中親を数えず,元々の品種のみ(「元々の品種数」)を数えると,九州二条1号は六角シバリー,杵築早生,ゴールデンメロン,シバリエー,京都早生,京都中生,四国(図中の。印)の7品種(これらの品種の判定は図をみて行った)からなっていることがわかる.

 前述したように,ビール大麦の当初の育種はゴールデンメロンの改良が主目的で,最初にゴールデンメロンと在来品種の交配で育成されたのは愛知早生ゴールデンメロン5号,同13号,金子ゴールデンなどである.次にはそれら育成品種同士を交配して第2世代のアサヒ19号,アズマゴールデンなどの品種が育成された.されにそれらの品種同士を交配して第3世代の品種を育成し・・としてきたのがビール大麦の育種の歴史である.九州二条1号では,図中の”。”印のゴールデンメロンから数えて(「ゴールデンメロンからの世代数」)5世代目である.ニシノゴールドでは総祖先数,同一品種を除いた祖先数,元々の品種数,ゴールデンメロンからの世代数は,64,24,10,8である.吉系44ではこれらの数字は,190,45,14,10である.表1に福岡県農業総合試験場の育成品種についてこれらの値を示した.なお,これらの値は本システムで全品種を同時に計算して外部ファイルに出力させることも可能かもしれないが,ここでは個々の品種の個々の値について計算していき,結果をワープロでとりまとめた.このように当初のゴールデンメロンとの交配からは現在10世代程度になっており,その交配に関与した総祖先数は200近くで,同一品種を除いても50近くにもなった.これらの値はカンショでの計算結果(吉田1985)と同様な値である.
  表1.育成系統の祖先数とゴールデンメロンからの世代数
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
番号 品種名     育成年  総祖   同一  元々の 世代数
                先数   除去教 祖先数
           *1   *2   *3  *4  *5
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1 ニューゴールデン(比)1965    12     10     5   4
2   九州二条1号     1974    26    15     7   5
3   九州二条2号     1974    38    19     8   6
4   九州二条3号     1977    26    16     7   5
5   九州二条4号     1980    28    14     6   6
6   九州二条5号     1980    30    18     7   6
7    九州二条6号     1982    54    23     9    7
8   吉系1           1981    70    27    10    8
9    吉系2           1981    44    22     9    6
10   吉系3           1981    32    22    10    6 
11    吉系4           1981    32    22    10    6
12    吉系5           1981    32    22    10    6
13    吉系6           1982    32    22    10    6
14    吉系7           1982    62    28    12    6
15  ニシノゴールド     1982    64    24    10    8
16    九州二条8号      1983    64    24    10    8
17    吉系10          1983    70    27    10    8
18    吉系11          1983    46    23    10    8
19    吉系12          1983    56    32    13    7
20   吉系13         1983    56    32    13    7
21  アサカゴールド     1984    76    37    15    7
22   吉系15          1984    94    37    15    8
23   吉系16          1984    94     37    15    8
24   吉系17          1984    86    29    12    9
25   九州二条10号      1985    86   29    12    9
26    吉系19          1985    86    29    12    9
27    吉系20          1985    110     32    12    9  
28    吉系21          1985    82     25    10    9
29    吉系22         1986    82     25    10    9
30    吉系23          1986    98      40    15    8
31    吉系24          1986    120     34    12    9
32    吉系25          1987    92     31    12    8
33    吉系26          1987    92     31    12    8
34    吉系27          1987    80     36    13    8
35 九州二条11号        1988    68     28    12    8
36    吉系29          1988    64       24    10    8 
37    吉系30          1989    196      47    14   10
38    吉系31          1989    196      47    14   10
39    吉系32          1989    196      47    14   10
40    吉系33          1989    196      47    14   10
41    吉系34          1990    196      47    14   10
42 九州二条12号        1990    196      47    14   10
43    吉系36          1990    196       47   14    10
44    吉系37          1991    196       47   14    10
45    吉系38          1991    220       42   15    12
46    吉系39          1991    196       47   14    10
47    吉系40          1991    186       56   18    10
48    吉系41          1992    122       39   13     9
49    吉系42          1992    134       31   12     9
50    吉系43          1992    152       36   12    10
51    吉系44          1992    190       45   14    10
52    吉系45          1992    162       37   14     9
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
注)*1:育成年とは命名年である.*2:家系図中に出てくる祖先の総数
*3:同一品種を除いた祖先数 *4:元々の品種数(本文参照)
*5:ゴールデンメロンからの世代数 
吉系30〜吉系40は半数体育種法による

 表2.交配親の推移
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番号 品種名     アサヒ 関東二 はるな 木石港 ミサト はがね Spartan UM570 Klages
           19号 条3号 二条  ー3  ゴールデン むぎ
           *1   *2   
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1 ニューゴールデン(比)     ・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2   九州二条1号    ・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3   九州二条2号    ・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4   九州二条3号    ・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5   九州二条4号    ・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6   九州二条5号    ・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7    九州二条6号    ・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8   吉系1          ・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9    吉系2          ・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10   吉系3          ・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
11    吉系4          ・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12    吉系5          ・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
13    吉系6          ・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
14    吉系7          ・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
15  ニシノゴールド   ・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16    九州二条8号    ・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
17    吉系10         ・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
18    吉系11         ・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
19    吉系12         ・○・・・・・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
20   吉系13       ・○・・・・・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
21  アサカゴールド   ・○・・・・・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
22   吉系15         ・○・・・・・・・○・・・・・・・・・・・○・・・・・・・・・・・・・・
23   吉系16         ・○・・・・・・・○・・・・・・・・・・・○・・・・・・・・・・・・・・
24   吉系17         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・
25   九州二条10号    ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・
26    吉系19         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・
27    吉系20         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・
28    吉系21         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・
29    吉系22        ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・
30    吉系23         ・○・・・・・・・・・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
31    吉系24         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・
32    吉系25         ・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
33    吉系26         ・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
34    吉系27         ・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
35 九州二条11号      ・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・○・・・○・・・・・・
36    吉系29         ・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
37    吉系30         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・
38    吉系31         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・○・
39    吉系32         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・○・
40    吉系33         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・○・
41    吉系34         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・○・
42 九州二条12号      ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・○・
43    吉系36         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・○・
44    吉系37         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・○・
45    吉系38         ・○・・・・・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○・
46    吉系39         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・○・
47    吉系40         ・○・・・・・・・○・・・○・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○・
48    吉系41         ・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・○・・・○・・・・・・
49    吉系42         ・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・○・・・○・・・・・・
50    吉系43         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・○・・・○・・・・・・
51    吉系44         ・○・・・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・○・・・○・・・・・・
52    吉系45         ・○・・・○・・・○・・・○・・・・・・・・・・・○・・・○・・・・・・
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注)*1:その他,アサヒ5号やサッポロ7号
  *2;または,アズマゴールデンかダイセンゴールド

(5)寄与してきた遺伝子源
 表2に交配親の推移を示した.表2はシステムからの出力結果ではなく,品種ごとの家系図をみて当該品種の鍵になった主要な交配親を判定してワープロで作成した.直接の交配親のみでなく,祖先にその品種が含まれるときも○印とした.ニューゴールデンから吉系6まではアサヒ19号,同5号,サッポロ7号などを祖先とする循環選抜で,本質的には新しい遺伝子源は加わっていない.九州二条1号からはエビスとアサヒ19号を共通の両親とする関東二条3号,アズマゴールデンとダイセンゴールドがもっぱら親に使われた.吉系1からは良質品種として,はるな二条(この品種も従来の遺伝子源のみの組合せからなっている)が交配親の中心になった.吉系7から木石港−3が加わっている.木石港−3は大麦縞萎縮病抵抗性を育種目標として交配母本に導入したものである.吉系17からは大麦縞萎縮病抵抗性でかつ多収を目標とするためにミサトゴールデンがよく交配に用いられた.はがねむぎ由来の縞萎縮病抵抗性の遺伝子源が吉系15と吉系16に導入された.九州二条11号及び吉系41〜45には,うどんこ病抵抗性の遺伝子源としてSpartanが,また高ジアスターゼカの遺伝子源としてUM570が導入された.Klagesは優れた醸造品質親として導入された.

なお,大麦縞萎縮病が蔓延する以前の基幹品種である,あまぎ二条との交配はかなり行われたが組合せ能力は劣り,あまぎ二条を片親にしたのは3つしかなかった(表には略).しかし現在の品種でも元々の品種は10〜14位しかなく,関与している品種数はきわめて少ないことがわかる.しかも,元々の品種の中で六角シバリーと杵築早生,大正麦はアサヒ5号とアサヒ19号の祖先,HannaとDucbillはサッポロ7号の祖先であり,それ以外の品種には関与しておらず,アサヒ5号,アサヒ19号,サッポロ7号が主な祖先であり,元々の品種数は実質的にはさらに少なくなっている.これはビール大麦品種に要求される醸造特性がきわめて高く,どうしても近縁の良質品種同士の交配両親を選定してきており,極めて限られた範囲内での循環選抜がなされてきたためであることを示している.

(6)近縁係数
 ゴールデンメロン及び木石港−3と育成品種の間の近緑係数の計算結果を図6に示した.これはBASICでの近緑係数の計算結果から,Lotus(ロータス株式会社)を利用して作図したものである.  


ゴールデンメロンとの近縁係数はいずれの品種も40〜50%の高い値であった.近年の育成品種では値は低下傾向にあったが,それでも40%程度であった.これは酒井(1957)がイネで計算した育成品種とその祖先品種との近縁係数よりかなり大きな値で,ビール大麦育種における特殊性を示すものである.

木石港−3由来の耐大麦縞萎縮病抵抗性遺伝子は吉系7から導入されたが,木石港−3との近緑係数は最大6.25%であり小さい値であった.これは木石港−3の持つ不良形質をできるだけ除き,大麦縞萎縮病抵抗性の遺伝子のみを取りだそうとして数回の戻し交配がなされたためである.近緑係数の値は最近の品種では低下傾向にあるべきであるが,そうでないのは吉系30からの両親が共に抵抗性品種で木石港−3を祖先に持っためで,将来はさらに値が低下するであろう.

4.論 議
 育種試験地では交配両親名や育種成績を色々な形でデータベース化して,データ処理や成績書の作成などに利用している.使用システムも様々であるが,交配両親名をPrologを用いて管理する試みは既に大塚ら(1985)がイネで行っており,煩雑な手続き型のプログラムを作成することなく各種の解析が可能であることを示している.ここでもビール大麦の交配両親名をPrologを用いてデータベース化し,両親名の管理,家系図作成,祖先数の検索,近縁係数の計算(但し現在のところは片親の祖先が他と類縁関係のないもののみからなる場合だけ計算可能)などが容易にできることが再確認できた.またそれらの挨索結果は今後のビール大麦育種にとって貴重な各種の示唆を与えるものであった.

 今後の課題には,旧名でも挨索できるようにすること,品種名の漢字表示,一般的な場合での近縁係数の計算,生産力や醸造品質データとの関係の解析などがある.また,新規にデータを追加して本データベースを更新しておくことも大切である.

 なお,交配両親名と新旧名データを含む家系図作成プログラムは,福岡県農業総合試験場の研究情報検索システムであるFARCIS(吉田1992)に登録してある.残念ながらFARCIS上ではPrologは稼働できず,単に本データがテキストとして電話回線を通じて参照できるだけであるが,誰でも利用可能である.本データがなんらかの参考になれば幸いである.

5.謝 辞
 本データベースの作成には農林水産技術会議事務局(1966),増田ら(1993)を参考にしたが,ビール大麦育成系統合同比較試験に参画している各試験地の皆様,及び佐々木昭博博士(九州農業試験場)からも多大の協力を賜った.

6.引用文献
1)増田澄夫・川口數美・長谷川康一・東修(1993)「わが国におけるビール麦育種史」.
 ビール麦育種史を作る会.東京,452pp.
2)農林水産技術会議事務局(1966)「二条大麦品種および系統の特性」.115pp.
3)大塚雍雄・佐々木昭博・宮川三郎(1985)論理型言語Prologによるイネ品種の血縁関係処理.
 育雑35(別1):146−147.
4)酒井寛一(1957)「植物育種法に関する理論的研究 V.自殖性作物の育種における近緑係数
 の応用」.育雑7(2):87−92.
5)佐々木昭博(1990)作物育種と食品加工[4]ビールオオムギ.農及園65:537−542.
6)柴山悦哉・桜川貴史・荻野達也(1986)「(岩波コンピューターサイエンス)
 Prolog−KABA入門」.岩波書店.東京.301pp.
7)吉田智彦(1985)カンショ育成系統の近交係数.育雑 35:464−468.
8)吉田智彦(1992)福岡県の農業研究情報システムの設計.農業情報研究 1:143−150.
9)Wright,S.(1992)Coefficients ofinbreeding and relationship.
 The American Naturalist 56:330−338.

Construction and Use of a Datebase from Malting Barley Crossing Records
Kazue Mizuta and Tomohiko Yoshida*
Fukuoka Agricultural Research Center,Chikushino,Fukuoka 818
Summary

A database of malting barley crossing records was developed using Prolog-KABA interpreter for a personal computer. Breeding lines change their names in breeding progress. Data of old name were also included in the database. By simple programming in Prolog, it was possible to draw pedigree trees, to count the number of ancestors and to compute the relationships among cultivars. Fifty one lines were developed from 1974 to 1992 for regional adaptability test by Fukuoka Agricultural Research Center. All crossing records included in these lines were assembled and the perfect pedigree trees were drawn for them.

'Golden melon' was one of the malting barley cultivars introduced and cultivated extensively in the late 19th century of Japan. Early cultivars were developed from the crossings between Golden melon and some indigenous lines or between pure line selections of Golden melon. Later, crossings of malting barley in Japan were, essentially, among lines developed in the previous cycles, though a few genes were introduced for specific breeding objectives as BaYMV resistance, powdery mildew resistance or high diastatic power. The database showed that 1) lines developed recently were about 10-th generation's from Golden melon, 2) the number of original cultivars contributing them was a very few, 3) the coefficients of relationship between Golden melon and them were large and the values were about 40%, and 4) the gene pool of malting barley in Japan was extremely narrow.

Key words : Ancester, Coefficient of relationship, Crossing record, Gene pool, Malting barley, Pedigree, Prolog.
* present address) Faculty of Agriculture, Kyushu Univ., Fukuoka 812

以上