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サツマイモ近親交配と収量の関係  本頁は,日作紀 72(3):309−313(2003)に掲載されたのを若干改変したものである.解説付き

  左の図(文献)はカンショの近親交配程度と収量との関係で,1986年発表の元値(文献)を総平均したもの.近交係数0.1程度に抑えればよかろうとの結論である. 近交係数の小さい交配組合せを探る文献はこちら. これらは昔大型計算機で行った結果である.

 以下の頁はイモ類の近交係数を簡単にPCで計算する方法と,カンショでの以後の材料,ジャガイモ,イチゴでの例を紹介している.

 Windowsでも稼働可能. Web上でも計算可能.


数種の栄養繁殖作物で近年育成された品種の近親交配の程度
吉田智彦
(宇都宮大学)

要旨

栄養繁殖作物のカンショ,バレイショ,イチゴなどの品種育成では,限られた育種材料間での交配を繰り返すため近親交配が問題となる.そこで,これら作物で近年育成された品種の近交係数を計算した.推論型言語であるPrologとパーソナルコンピュータを利用した手軽な処理系で計算プログラムを作成した.

カンショ品種のベニアズマ,シロユタカ,サツマヒカリ,ジョイホワイトの近交係数は0.017,0.073,0.140,0.009であった.バレイショ品種のトヨシロ,ニシユタカ,コナフブキ,ベニアカリでは0.043,0.072,0.028,0.018,イチゴ品種の女峰,とちおとめ,章姫では0.172,0.262,0.223であった.

バレイショでの値はカンショやイチゴより小さい値であった.カンショでは近交係数が0.1程度までは近交弱勢がみられず,0.2を超えると近交弱勢が顕著になると思われるが,本研究で得られた近交係数は,カンショでは近交弱勢の限界値以内,イチゴでは限界値を超えるものであった.

古い祖先品種の記録が正しくない可能性はあるが,最近の育成品種では祖先品種の由来の違いによる計算値間に大差なく,ここで得られた近交係数の値は概ね正確だと思われる.

キーワード :イチゴ,カンショ,近交係数,近交弱勢,バレイショ,Prolog.



 カンショ,バレイショ,イチゴなどの栄養繁殖作物は近親交配により近交弱勢がおきる.従って,これら作物の交配育種による品種改良では,近親交配をできるだけ避けるような交配両親の選定に努める.しかし,品種改良が進み,限られた育種材料間での交配を繰り返してくると,ある程度の近親交配は避けられない.

 近親交配の程度は近交係数として表され,その定義は「個体の相同染色体上の対の遺伝子が同一の祖先遺伝子から由来した確率」である (Wright 1922, Kempthorn 1969,井山 1974).例えば,きょうだい間の子や親子間の子での値は0.25,半きょうだい間の子では0.125,いとこ間の子では0.0625,自殖の子では0.5となる (共通祖先の近交係数を0とした値.究極の近親交配の結果である純系の値は1となる).

 近交係数は家畜について多く計算されている (水間ら 1982) が,植物での計算例はあまりなく,特にわが国の栄養繁殖作物で最近の育成品種がどの程度の近親交配になっているかの情報はほとんどない.そこで,品種改良の進んでいるカンショ,バレイショ,イチゴで近年に育成された品種の近交係数を計算し,近親交配の程度を推定しようとした.

 近交係数の計算には,両親の祖先の中から共通品種を探すこと,その共通祖先にたどる世代数を数えて (1+FA))x(1/2)(n+1)の計算をすること (Fは共通祖先の近交係数.nは共通祖先から両親へたどる世代数の和) と,この値を共通祖先をたどる全経路について累計することが必要である.品種の家系が単純なときは,その家系図から比較的簡単にこの計算ができる.しかし,家系が大変複雑になっている近年育成の品種では,手計算は事実上不可能である.

筆者らは自殖作物の近縁係数 (ある2品種間の近縁係数はそれら間の子の近交係数に相当) の計算を行うパーソナルコンピュータ用のプログラムを作り (水田ら 1996a),稲麦の家系と品種の性能との関係 (水田・吉田 1996b,大里・吉田 1996) や,わが国で栽培されている水稲品種の遺伝的背景 (吉田・今林 1998a,吉田 2001) を解析した.本論文では,自殖作物の近縁係数計算用プログラムを栄養繁殖作物の近交係数の計算用に改良して用いた.

 近年,分子マーカーを用いた品種識別や遺伝子多型性の解析が進んでおり,それらを用いて直接相同染色体上の遺伝子の差異を解析することが可能になってきているが,ここで取り上げた作物ではまだその解析を行うに充分なだけの分子遺伝学的蓄積はなく,特に実用品種群内での多型解析を行うには莫大な手間を要するものと思われる.近交係数の計算では両親の遺伝子の1/2ずつを子が持つと仮定しており,その結果は確率的なものではあるが,手軽に近親交配の程度を推定する実用上の価値は依然として高いと考えられる.

 カンショの過去の育種材料の近交係数については農林水産省の大型コンピュータを用いて計算がなされた (吉田 1986) が,ここではパーソナルコンピュータを用いた手軽な処理系で計算することとした.計算に用いた品種は,各作物で近年に育成され栽培面積が多いもの,有望なものなどから適宜選んだ.

 このような家系分析では古い祖先品種の由来の信頼性が問題となる.そこで,古い祖先品種の由来の違いが計算結果に与える影響を評価することで,計算結果の吟味もあわせ行った.


材料と方法

1.近交係数の計算

 自殖作物の近縁係数計算は推論型言語のPrologを用いており,そのリスト処理,バックトラックなどの機能のために,共通祖先の検索,祖先までたどる世代数のカウント,全経路についての累計などの計算プログラムは簡単になり,交配両親名データベースを完備しておけば計算が容易にできた (大塚ら 1985,水田ら 1996a).

自殖作物では,共通祖先は純系でその近交係数をすべて1としたので計算プログラムが単純となったが,栄養繁殖作物では各々の共通祖先の近交係数の値が必要である.そのため,自殖作物の近縁係数計算に用いた計算プログラムを改良し,まず昔の品種 (共通祖先の近交係数が0である品種) の近交係数を計算し,計算に必要な近交係数データを蓄積し,共通祖先と同時にそのデータも検索して計算するようにした.順次,家系図中の祖先品種の近交係数データが完備した品種についての計算を行い,最近の品種の近交係数を計算していった.

 ここでの処理系としては,パーソナルコンピュータはNEC社のPC-98型 (DOS/V以前の機種),PrologはMS-DOS版のProlog-KABA (アステック(株)) とその拡張ツールWING (形像&ソフネック(株)) を用いた (柴山ら 1986).

 近交係数を計算した作物品種 (育成年度と場所) は,カンショのサツマアカ (1962年九州農試),ベニアズマ (1984年農業研究センター) シロユタカ (1985年九州農試),サツマヒカリ (1987年九州農試),ジョイホワイト (1994年九州農試),バレイショのエニワ (1961年北海道農試),トヨシロ (1976年北海道農試),ニシユタカ (1978年長崎県農試),コナフブキ (1981年北海道立根釧農試),ベニアカリ (1994年北海道農試),イチゴの女峰 (1984年栃木県農試),とよのか (1984年野菜試),章姫 (1990年萩原章弘氏),とちおとめ (1996年栃木県農試) である.

家系は主に育成地の新品種成績書などを参考にし,交配両親名のデータベースを作成した.バレイショは日本いも類研究会のホームページ (注;http://www.jrt.gr.jp) 内のじゃがいも品種詳説,イチゴは木村 (1999) も参考にした.交配両親名を含む全計算プログラムは筆者のホームページ (注;http://www.d1.dion.ne.jp/~tmhk/yosida/yosida.htm) に掲載した.

 近交係数の計算とともに,その品種の概要を示すため,家系図の中の親の総数,その内の共通なものを除いた親の数,最終の祖先 (家系図の端に位置する品種) の数を数えた.交配両親名データからのPrologの再帰的検索機能を用いて家系図を作成し (水田・吉田 1994),親の数を数えた.数が多い場合は,家系図中の全両親データを出力し,それを表計算ソフト(Lotus社,Lotus1-2-3)に読み込んで数えた.共通なのものを除くときは,ソートして同一品種をまとめることで数えやすくした.

 なお,近交係数の値がデータとして蓄積されている祖先品種には家系図の品種名の前に*印をつけ,未計算品種との識別を容易にした.

2.祖先品種の由来の違いが計算結果に及ぼす影響
 古い品種の由来の違いが計算結果に及ぼす影響を検討するため,近交係数計算の際に検索された古い祖先品種が近親交配の結果によるものと仮定し,カンショ品種の近交係数を計算し直した.それらの祖先品種の近交係数の値を0.1〜0.5とした計算を行った.計算の途中経過に必要な共通祖先品種の近交係数もそのたびに計算し直した.

また,カンショの交配育種が開始されたときの交配親 (赤藤 1968) がお互いに異なるものではなく,それらのいくつかが同一品種であったとの極端な仮定をした場合も計算した.

結果と考察

1.近交係数の計算

 本プログラムによるイチゴ品種章姫の家系図と近交係数計算過程の出力結果を第1図に示した (一部簡略化した.また参考のためイ〜チの記号を付記した).本データベースの品種名はローマ字を使用している.イチゴの場合,akihime (章姫) の交配両親はkunowase (久能早生) とnyoho (女峰),nyohoの両親はkei210 (系210) とreiko (麗紅) ・・・の内容のデータベースである.

第1図下に示した近交係数計算過程では,計算に必要な共通祖先 (家系図中にイ〜チの記号を付したもの)がたどられ,そのたどった世代数を数えて (1+F)x(1/2)(n+1)の計算がなされる.たどる途中の品種名,その経路における各々の計算結果が出力されている.最後にイ〜チと付した全経路について累積され,近縁係数値が出力されている.記号ニを付した品種reikoの近交係数は0.125であるので,この経路では (1/2)(2+1)+0.125x(1/2)(2+1)=0.125+0.015625と共通祖先品種の近交係数値での補正がなされている.

 共通祖先品種の近交係数値が0でない場合,その値をあらかじめ計算して品種名とともにデータベースに蓄えておく必要がある.イチゴ品種章姫では近交係数値が0でない共通祖先は1つであったが,カンショ品種サツマヒカリの場合その数は14であった.しかし,交配に使用されている祖先品種の数はどの作物,品種でもあまり多くはなく,同一の品種がたびたび他の品種の交配親に用いられているので,家系が複雑な他の品種でも,追加すべきデータ数は計算のたびに大幅に減少していった.

 第1表に計算結果の概要を示した.可能な限り記録をたどって祖先品種を含めて作成した本データベースで,カンショ品種サツマヒカリの家系図中に含まれる総親数は124,その中から共通のものを除いた数は53,最終の祖先数は10であった.近交係数は0.140であった.なお,共通祖先をたどる経路の数は55であった.シロユタカの近交係数は0.073であり,共通祖先をたどる経路の数は113であった.ベニアズマやジョイホワイトの近交係数は0.017や0.009と大変小さい値であった.

バレイショでは,トヨシロ,コナフブキ,ベニアカリの近交係数は0.043,0.028,0.018と大変小さい値であった.一方,ベニアカリの家系図中の親数は多く,総数が546,共通を除いても80,最終の祖先数は26もあり,共通祖先をたどる経路の数は326あった.

 イチゴでは,とちおとめの家系図中に含まれる総親数は72,共通を除くと25,最終の祖先の数は9であった.近交係数は0.262であり,この値はきょうだい間交配の場合 (0.25) を超えるものであった.共通祖先へたどる経路の数は17であった.章姫の近交係数は0.223であり,第1図の家系図に示すように,2代前の親が同一 (reiko) であり,3代以前の祖先にも同一なものが多く,高い値となった.なお,とちおとめと章姫を交配したとしてできる品種の近交係数は0.289であり,近親交配の程度がさらに高まった.

 水稲の育成品種平均では,家系図中の総親数が494,共通なのを除いた親数が86であった (大里・吉田 1996).ここでのバレイショの値は水稲の値に匹敵し,バレイショの家系が水稲と同程度複雑なことを示した.カンショやイチゴ,特にイチゴは親の数が水稲より少なく,より単純であることを示した.

 カンショの多数・長年の育種材料の解析によると,近交係数が0.1程度では収量低下は認められないが,0.2程度を超えると近交弱勢が明らかに生じた (吉田 1986).バレイショの近交係数はかなり小さな値であり,祖先品種の数も多く,多くの遺伝資源から幅広く交配親が選定されてきたことを伺わせた.イチゴの近交係数の値はカンショで近交弱勢が明らかに生ずると思われる値を超えており,祖先品種の数も少なく,イチゴ遺伝資源の範囲の狭いことが懸念される.

 限られた育種材料の間での交配を繰り返すと近親交配の程度が高まっていくのは避けられない.このため,積極的な遺伝資源の探索,交配親のより広範囲からの選定,候補交配組合せの近縁度をあらかじめ予測し,できるだけ値の小さくなる交配計画の策定などがさらに必要となるであろう.

 なお,遺伝子多型解析などによる相同染色体上遺伝子の差異の解析がここでとりあげた作物でも将来進展し,確率的な計算によって得た本論文での結果との整合性の検討がなされることを期待したい.

2.祖先品種の由来の違いが計算結果に及ぼす影響
 カンショ品種サツマヒカリで近交係数計算に検索された最終の祖先は,七福,蔓無源氏,紅皮,元気,吉田の5品種であった.それらの品種がすべて近交係数0〜0.5の値を持つとした場合の変化を第2図に示した.比較として,より家系の構成が単純なサツマアカ (最終祖先品種の数は3) の場合も同時に示した.近交係数を0.3とした場合,サツマヒカリとサツマアカの近交係数は0.141と0.101で,近交係数を0とした値 (0.140と0.086) と大差はなく,特にサツマヒカリではほとんど差がなかった.近交係数が0.5とした場合も,サツマヒカリとサツマアカの近交係数は0.143と0.113で,これも大差なかった.家系がより単純なサツマアカでは祖先品種の由来の違いが計算結果に及ぼす影響はやや大きかったが,きょうだい交配による近交係数0.25程度まではほとんど影響が認められなかった.

 次に,最終の祖先である七福,紅皮,元気,吉田,潮州 (蔓無源氏はサツマアカに含まれないので除いた) のいくつかが同一であったとした場合を第3図に示した.同一とした品種は,まず七福と紅皮の2品種,次にそれらと元気の3品種,次にそれらと吉田の4品種,最後にそれらと潮州の5品種とした.これらの順番は,サツマヒカリへの寄与率(ある品種とその祖先品種との間の近縁係数)の高い順である (七福の寄与率は3.61%,紅皮は3.13%,元気は2.34%,吉田は1.76%,潮州は1.46%).2品種が同一とした場合,サツマヒカリとサツマアカの近交係数は0.144と0.102で,5品種がすべて異なる場合と大差なかった,3品種が同一の場合は0.149と0.172で,サツマアカの値はやや大きくなったが,サツマヒカリは大差なかった.5品種すべてが同一の場合は,両品種の近交係数は0.161と0.375に上昇し,家系がより単純なサツマアカでの値は特に大きくなった.

 このように,多くの古い祖先品種が同一であったとか,それらが高度の近親交配によっていたとすると,ある程度の食い違いが出てきた.しかし,すべての祖先品種がきょうだい交配によっていたとは考え難く,しかもそうであっても計算結果に大差はなかった.多くの古い祖先品種が同一であったとも考えにくく,たとえ2,3の品種が同一としても計算結果に大差はなかった.さらに,多くの交配を繰り返してできた,家系が複雑な品種の場合は計算結果への影響が小さかった.

 自殖作物でも,家系の複雑な品種の場合,祖先品種の由来が多少相違しても近縁係数の計算結果は大差ないことがわかっている (吉田 1998b).

 従って,古い祖先品種の由来の違いは近年育成の栄養繁殖作物品種の近交係数に大きな影響を与えず,本論文での計算結果は概ね正確であると思われる.但し,イチゴの家系はやや単純であるので,計算結果に若干の差がでる可能性はあるが,育種計画の策定に参考とするには支障のない範囲であろう.

引用文献
井山審也 1974. 変異と淘汰. 松尾孝嶺監修, 育種ハンドブック.養賢堂, 東京. 100―113.
Kempthorne, O. 1969. An Introduction to Genetic Statistics. Iowa State University Press, Ames, U.S.A. 72―80.
木村雅行 1999. 品種の変遷と地域適応. 野菜園芸大百科 イチゴ. 農文協, 東京. 113―120.
水間豊・猪貴義・岡田育雄 1982. 家畜育種学. 朝倉書店, 東京. 132―139. 
水田一枝・吉田智彦 1994. ビール大麦交配両親名データベースの構築と解析. 農業情報研究 3:65―78.
水田一枝・佐々木昭博・吉田智彦 1996a. 近縁係数のためのPrologによるコンピュータプログラムとその
  ビール大麦品種の近縁関係の解析への応用.農業情報研究 5:19―28.
水田一枝・吉田智彦 1996b. 小麦品種の近縁係数およびその品質との関係. 農業情報研究 5:57―67.
大里久美・吉田智彦 1996. イネ育成系統の近縁係数およびその食味との関係. 育雑 46:295―301.
大塚雍雄・佐々木昭博・宮川三郎 1985. 論理型言語Prologによるイネ品種の血縁関係処理.育雑 35(別1):146―147.
赤藤克己 1968. 作物育種学各論. 養賢堂, 東京. 279―289.
柴山悦哉・桜川貴史・荻野達也 1986. 岩波コンピューターサイエンス Prolog-KABA入門. 岩波書店, 東京. 1―301.
Wright, S. 1922. Coefficients of inbreeding and relationship. American Naturalist 56:330―338.
吉田智彦 1986. カンショの近交係数と収量との関係. 育雑 36:409―415.
吉田智彦・今林惣一郎 1998a. 水稲良食味育成品種の遺伝的背景. 日作紀 67:101―104.
吉田智彦 1998b. 最終祖先間に類縁関係がある場合の近縁係数の変化―現行作物品種を例にして―. 
    農業情報研究 7:97―104.
吉田智彦 2001. コシヒカリとその近縁品種の栽培面積. 農業技術 56:294.



第1図 章姫の家系図作成(上)と近交係数計算過程(下).
 家系図中のイロハ・・・は近交係数計算にかかわる共通祖先を示し,右側の数字はその経路での値.
章姫(akihime)の家系図
kunowaseho/kuhokowasetahoe
yakumo
kurume103イロ mi/sunmiyazaki
the_sun
fukuba
*reiko fukuba
harunokakurume103mi/sunmiyazaki
the_sun
fukuba
donnerトチ
nyohokei210donner
kei2harunokakurume103mi/sun
fukuba
donner
donner
*reikofukuba
harunokakurume103mi/sunmiyazaki
the_sun
fukuba
donner
近縁係数の計算過程
イ  kunowase  ho/ku  kurume103  
   kurume103  harunoka  kei2  kei210  nyoho  0.0078125
ロ  kunowase  ho/ku  kurume103  
   kurume103  harunoka  reiko  nyoho         0.015625
ハ  kunowase  ho/ku  kurume103  fukuba  
   fukuba  reiko  nyoho                      0.015625
ニ  kunowase  reiko  
   reiko 0.125 ** nyoho                   0.125+0.015625
ホ  kunowase  reiko  fukuba  
   fukuba  kurume103  harunoka  kei2  kei210  nyoho  0.00390625
ヘ  kunowase  reiko  harunoka  
   harunoka  kei2  kei210  nyoho             0.015625
ト  kunowase  reiko  harunoka  donner  
   donner  kei210  nyoho                     0.015625
チ  kunowase  reiko  harunoka  donner  
   donner  kei2  kei210  nyoho               0.0078125
Coefficient of Inbreeding = 0.20703125 + 0.015625 = 0.22265625


第2図 祖先品種の近交係数が0でなかったとした場合のカンショの近交係数.
横軸は祖先品種である七福,蔓無源氏,紅皮,元気,吉田の近交係数の仮定値.
図は省略.
(元値)
──────────────────────────────
品種名     0   0.1  0.2  0.3  0.4  0.5
──────────────────────────────
サツマヒカリ   0.140  0.140  0.141  0.142  0.142  0.143
サツマアカ    0.086  0.091  0.097  0.102  0.108  0.113
──────────────────────────────
サツマアカ;経路数4,共通最終祖先数3(吉田,元気,七福)
サツマヒカリ;経路数55,祖先5(上+蔓無源氏,紅皮)

第3図 祖先品種が同一であったとした場合のカンショの近交係数.
横軸は,0;祖先品種がすべて異なる,2;七福と紅皮が同一,3;+元気も同一,
4;+吉田も同一,5;+潮州も同一とした場合.
図は省略.
(元値)
───────────────────────────
品種名     0   2   3   4   5
───────────────────────────
サツマヒカリ   0.140  0.144  0.149  0.156  0.161
サツマアカ    0.086  0.102  0.172  0.297  0.375
───────────────────────────

第1表 栄養繁殖作物の近交係数と家系中の親の数.
──────────────────────────                   
 作物名        近交  総親数  共通を除  最終の
  品種名       係数       いた親数  祖先数
──────────────────────────                   
 カンショ 
  サツマアカ     0.091      20      14       6
  ベニアズマ     0.017      40      32      13
  シロユタカ     0.073     136      44      12
  サツマヒカリ   0.140     124     53      10
  ジョイホワイト  0.009     156      65      18
 バレイショ
  エニワ        0.036     166      44      13
  トヨシロ        0.043     180      50      15
  ニシユタカ      0.072     202      51      16
  コナフブキ      0.028     364      61      19
  ベニアカリ      0.018     546      80      26
 イチゴ
  女峰            0.172      20      11     4
  とよのか     0.063      16      15       8
  章姫       0.223      40      16       6
   とちおとめ      0.262      72      24       9
──────────────────────────                   
総親数;家系図中の親の総数.共通を除いた親数;総親数から共通なものを除いた数.
最終の祖先;家系図の端に位置する親.
Jpn. J. Crop Sci. 72:309-313(2003)

Inbreeding in Several Recently Bred Cultivars of Vegetatively Propagated Crops: Tomohiko Yoshida (Utsunomiya Univ., Utsunomiya 321-8505, Japan)

Abstract:
  Inbreeding is a great concern for breeding of vegetatively propagated crops because of the repeated crossings among a limited number of breeding material. Coefficients of inbreeding (CI) in recently developed cultivars of sweet potato, potato and strawberry were calculated using a personal computer and a programming language, Prolog.

  The CI in sweet potato cultivars, Beniazuma, Shiroyutaka, Satsumahikari and Joy White was 0.017, 0.073, 0.140 and 0.009, respectively; that in potato cultivars, Toyoshiro, Nishiyutaka, Konafubuki and Beniakari was 0.043, 0072, 0.028 and 0.018, respectively; and that in strawberry cultivars, Nyoho, Tochiotome and Akihime was 0.172, 0.262 and 0.223, respectively.

  These values of potato were smaller than those of sweet potato and strawberry. It had been reported that the plants with a CI less than 0.1 showed no inbreeding depression, but those with a CI more than 0.2 showed significant inbreeding depression in sweet potato. CI values in sweet potato obtained in this study were lower than the critical value for inbreeding depression, but that in strawberry was higher.

  The records of old ancestors might be inaccurate, but estimated CI values of recently bred cultivars may be reliable because the discrepancy of old ancestors had little effect on the CI values .

Keywords: Coefficient of inbreeding, Inbreeding depression, Potato, Prolog, Strawberry, Sweet potato.


<解説>
 昔,九州農試でカンショの育種をしているときに,農水省の大型コンピュータの家畜用近交係数計算プログラムを改変してカンショ育種材料の近交係数を計算し,近親交配の程度といも収量の関係の解析をしたことがある.以来,最近のカンショ品種やその他の栄養繁殖作物で近親交配程度を計算した報告は,少なくとも公開された形ではみあたらない.

 近年,分子マーカー解析が進み,もう統計的手法による近交係数計算は流行らないのかもしれないが,そうはいっても,いも類でマーカー利用による近親交配程度推定の研究が行われているとも思えない.

 手軽なパソコン利用による自殖作物の近縁係数の計算は,Prologを用いて稲麦について数多く行い,楽しんだし,色々な意味での成果も多かったと思う.しかし,栄養繁殖作物の近交係数計算には,共通祖先品種の近交係数を考慮して計算しなければならず,ソフト的な対応が小生の能力を超えており,手を出しかねていた.

 ある年の正月休みに暇にまかせて試行錯誤で挑戦し,かなりの手作業部分を含むのではあるが,なんとか近交係数の計算がパソコン上のProlog利用で手軽にできるようになった.そこで,カンショのみでなく,バレイショ,ついでにイチゴの最近の品種について近交係数を計算し,それなりの面白いお話になったので上記論文を投稿した次第である.

 案の定レフェリーから,いまどき統計的な手法によるものの価値があるのか,との指摘がきたが,勿論統計的推定に意味がないはずはない.それに,分子的手法を利用すればよいとはいっても,現実にはなされてはいないので,そのような指摘を小生にするのはお門違いとも思う.

 前向きに言えば,この報告が契機になり,分子的研究がなされることを切望する.そのデータがでると,本論文での手法との突き合わせをどうしてもしたくなるであろう.ご遠慮なく本計算プログラムを利用下さい.

以上