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本頁は“九農研 38:58,1976”に掲載したものです.

大麦の一株子実重と子実蛋白含有率の関係

     吉田 智彦・桐山 毅
     (九州農業試験場)
   YOSHIDA, T. and KIRIYAMA, T.
On the relationship between yield and grain protein content in barley.

 大麦の収量(一株子実重)と子実の蛋白含有率の遺伝相関係数を,両親とそのF1・F2・F1に両親を戻し交配した集団を使って求めた.

試験方法

 高蛋白品種,Hiprolyに多収品種,西海皮1号(組合せ1),同10号(組合せ2),同12号(組合せ3)をそれぞれ交配したものの,後代および両親を畦間70cmで12cm間隔の二条千鳥に一株植えして個体ごとに収穫,一抹子実重と子実の蛋白含有率を求めた。第1表に試験区の反覆数を組合せ別に示す.分離個体を含まないP1・P2・F1の一反覆内の平均個体数は6.6個体,分離個体を含むB1・B2・F2の一反覆内の平均個体数は23.0個体である.各反覆ごとに分散,共分散を計算し,平均した.二変数P,Qの共分散COV(P,Q)を遺伝共分散COV(PG,QG)と環境共分散に分割,遺伝共分散を相加的遺伝共分散COV(PG,QG)Aと非相加的遺伝共分散COV(PG,QG)Nに分割した.マザーの分散の分割の方法と同じに,COV(PG,QG)は
 COV(F2)−1/3(COV(P1)+COV(P2)+COV(F1))
で,COV(PG,QG)A
 2COV(F2)−COV(B1)−COV(B2)
で推定した.

結果と考察

 子実重と蛋白含有率の分散から計算した,広義,狭義の意味の遺伝力の値(h2B, h2A),F2集団での表現型相関係数(rP),環境相関係数(rE),全遺伝相関係数(rT),相加的遺伝相関係数(rA),COV(PG,QG)AとCOV(PG,QG)Nの値を第2表に示す. 子実重のh2B,h2A,蛋白含有率のh2Bはどの組合せ共に高い値である. rPはどの組合せも負で子実重の多い個体は蛋白含有率が少ない傾向を示す. rEは組合せにより異なった傾向であるが,rTはどの組合せも負で,負の表現型相関は遺伝的要因によることを示している. rAは組合せ(2)では負,組合せ(1)では正,組合せ(3)では抵定不能だが, 組合せ(3)のCOV(PG,QG)Aは正である. 一方COV(PG,QG)Nはどの組合せ共に負だから負の全遺伝的相関は相加的遺伝共分数によるよりも,主に非相加的遺伝共分散による作用の大きいことを示している.
 以上の結果より,収量と蛋白含有率の間の負の表現型相関は遺伝的要因によっており, その遺伝相関は主に遺伝子間の非相加的交互作用によっていることが明らかになった.

参考文献
斎尾乾二郎 (1960) 農業及園芸,8,1351-1355.

  第1表 試験区の反覆数
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組合せ  P1    P2       P1 P2 F1 B1 B2 F2
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  1  西海皮1号×Hiproly   6 6 5 4 4 3
  2  西海皮10号×Hiproly  6 4 6 3 3 3
  3  西海皮12号×Hiproly  2 2 3 4 2 3
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 (B1:F1×P1,B2:F1×P2)

   第2表 遺伝カ,相関係数と遺伝共分散の値
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組 一株子実重 蛋白含有率  相関係数         遺伝共分散
合  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
せ  h2B  h2A    h2B  h2A    rP    rE    rT    rA   COV(PG,QG)A   COV(PG,QG)N
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1 0.47  0.32  0.83  0.59  -0.28  0.21 -0.54  0.37      l.69     -5.24
2 0.43  0.66  0.77  0.10  -0.40  0.09 -0.75 -0.57     -4.62     -0.78
3 0.54  0.63  0.58   −   -0.37 -0.46 -0.30   −       4.15     -5.79
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以上