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本頁は,育雑(Japan.J.Breed.)28(3):269-271(1978)に報告したものです.

           系統用播種機の試作とその性能

                九州農業試験場 吉田智彦・農業機械化研究所 山影征男

 育種作業におけるネックの一つは,多数の異なる系統を誤りなく短期間に播種しなければならないことである。このため,各種の圃場試験用の播種機が考案されてきており(田辺 1972,氏原 1973,河合 1977),その有効なことが認められている。しかしそれらの機械は高価であったり,前準備に時間がかかったりすることもある。一方,回転円錐体を利用したconeseederは簡単な機梼ながら性能は高く(BERG 1958),利用価値はかなり高いと思われるが,わが国ではあまり利用されていない。そこでオオムギ育種作業の効率化を計るためこの播種磯を試作し,その性能試験を行った結果の概略を報告する。


第1図 播種機の構造

 播種機の構造と利用法
 構造を第1図に示した。円錐体(A)の真上から一定量の種子を落すと種子は円錐体の周りに均一に散らばる。前輪で円錐体を騒動させ,播種機が一定距離動く間に円錐体は一回転して種子は全量落下口(B)のscraper(種子のかき落し板)によりパイプに落ち(C)に播種される。播種深度は調節可能である。試作機の場合円錐体は高さ17cm,直径16cm,前輪の直径28cm,後輪の直径は20cm,前・後事軸の間隔は57cmであった。播種の距離は5mでであるが,距離はスプロケットを交換して調節可能である。

 実際に囲場に播種するときは,一定量秤量した種子を第2図のごとくA〜Dの順に並べておき矢印のごとく連続的に播種する。種子は袋に詰め播種予定の場所にあらかじめ置いておくか,または播種故に箱をとりつけ袋を播種順序に並べて箱の中に入れておき播種する。播種の始めと終りでの播種むらを除くため園場にマーク(第2図の点線)を印しておき,マークの少し前から播種を始め,マークの少し先で播種が終るようにし,出芽後マーク外の部分を除いて試験区をそろえる。

 作業能率は試験区の設計にもよるが,種子を袋に詰めて順に並べて準備しておけは,ほぼ1人で10a当たり2時間位で播種が可能である。オオムギのみでなく,コムギ・オカボ・ダイズなどの播種にも利用可能である。

 試験結果
 第1表に播種密度を何段階かに変えた場合の,播種された種子の間隔の分布を示した。同時に播種深度の分布も示した。種子の間隔や播種深度はできるだけ均一であることが望ましい。第1表によると例えば平均間隔5.6cmの播種(1m当たり18粒の播種)のとき,種子の間隔は全体の66%が1〜5cmになったが,13cmや15cm離れて播種されたものもあった。平均1.3cm間隔(1m当たり79粒)の播種ではすべて5cm以下の間隔で播種された。播種された種子の間隔が21cmになる場合もあったが同一品種を数条播種するときは間隔がある程度開いた場合が生じても実用的には問題は少ないであろう。一方播種深度は極めて均一であり,1.3cmや3.1cmの播種深度のものもあったがほとんどは平均2.Ocmの播種深度であり変異の幅は小さく精度は高かった.
 
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 A    B    C           D 

   第2図播種機による播種法

          第1表 播種間隔と播種深度の分布
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                      種子の間隔(cm)                   平均間隔
         1     3    5    7     9   11   13   15   17  19   21  (cm)
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@  22.6 26.4 17.0 7.5 18.9 7.5 3.8 3.8              5.6
A  33.3 22.2 15.6 4.4  8.9 4.4 6.7 2.2              4.4
B  38.9 30.6  5.6 8.3  5.6 5.6 2.8 0.0 2.8            3.8
C  44.9 23.2 20.3 4.3  4.3  1.4 0.0  1.4              3.0
D  42.3 36.6  8.5 5.6  4.2  1.4 0.0 0.0 0.0 0.0 1.4    2.6
E  50.9 29.1  5.5 5.5  5.5 3.6                    2.4
F  66.2 29.6  4.2                               1.3
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                 播種深度 (cm)          平均深度
    1.3   1.5   1.7  1.9   2.1  2.3 2.5  2.7  2.9  3.1      (cm)
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@〜F 6.5  0.0  0.0 25.8  41.9 22.6 0.0 0.0 0.0  3.2       2.0
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注)数値は%で示した。各々中央附近をほぼ2m位調査した。播種深度は各種の播種密度の場合を含む。

第3図播種機および播種されたオオムギの生育状況

 この播種機を使えば,準備は一定量の種子を袋に詰め圃場配置の順序に並べておくだけでよく,耕起・整地された圃場に播種・覆土・鎮圧を一行程で行える。また少人数で誤り少なく短時間で播種作業ができる。今後の問題点としては,播種むらをさらに小さくすること,施肥機をつけて施肥と播種を一行程でするょうにすること,などが考えられる。播種むらを小さくするには,種子の落下口を第1図のBの対称位置にさらにもう一つ作り,円錐体の周りに散らばった種子が2か所から落ちて行くような機構などが考えられる。1品種1,2条しか植えない場合に,種子の間隔が広すぎて株間に大きなすき間ができたときは番外から余分に収穫して収量の補正をすることも考えられる。

 謝 辞
 本試作機の実際の製造にあたった金子農機株式会社開発部に深く感謝します。

 引用文献
BERG,M.A.1958.A field plot seeder.Agron.J.50:713〜714.
河合 武 1977.国際圃場試験機械化協会(IAMFE)第4回総会に出席して.育雑 27:83〜85.
田辺秀男 1972.てん菜研究所におけるほ場作業機械化の現状.育雑 22:125〜127.
氏原和人 1973.プラントシーダー利用による大麦育種試験における播種作業の省力化.育雑 23:216〜218.
                                  (1978年4月20日受領)

以上