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ソルガムの水ストレスが収量に与える影響と生長解析



2005

宇都宮大学農学部生物生産科学科
作物栽培学研究室

奥平 義郎



緒言

 ソルガムは,世界で食用,又は飼料作物として6000万tも生産されている.これは世界で第5位の生産量である.又ソルガムは、耐乾性に優れていると言われている.厳しい条件下で栽培できるこの作物の生産性を上げることは,イネやコムギ等を気象条件のせいで栽培できない地域の食糧増産に利用できる.本研究では、その水ストレスをかけるという擬似的に厳しい条件下で栽培するということで,その耐乾性について調べてみた.
 又,ソルガムの生長パターンを理解することは,より良いソルガムの増産につながると考えられる.よってその生長解析を行うことで,ソルガム生長パターンを調べた.

第1章 ソルガムの水ストレスが収量に与える影響

1.材料と方法
(1)栽培方法
供試品種は,宇都宮大学作物栽培学研究室所有のソルガム30品種を用いた.これらを2004年5月19日に,あらかじめ宇都宮大学農学部圃場から採取した土(約3.0kg)を入れた1/5000aワグナーポットに,基肥として約10g程各ポットに緩行性化成肥料を施肥し混ぜた後,30品種を各6ポットずつ180ポットに10粒程度播種した.これを同圃場にあるビニルハウス内に設置した.単純に与える水の量が収量に与える影響をしらべるため追肥は行わなかった.発芽後約60〜80日で出穂するので,出穂するまで適度に水をやり,出穂開花が終わったものから随時水ストレスをかけた.9〜10月にかけて収穫し,収穫したものから草丈,穂長,穂重を計測した.
(2)処理方法
 水ストレス処理は,出穂開花したものから1ヶ月行った.水ストレスをかける程度を,大,中,小と3段階にわけ,各2反復行った.水ストレスが小のポットには,ほとんどストレスを受けないように十分に水をやり,水ストレスが大のポットには,ソルガムは水ストレスを受けると葉を巻いて耐える特性があるため,それを見て枯れない程度に水をやった.水ストレスが中のポットは,それらの半分位の水分量を目指して水をやった.随時間引きを行い,最終的に一本立ちになるようにした.
(3)測定方法
 9〜10月にかけて収穫し,草丈,穂長,穂重を測定した.

2.結果
 ポットによって生育させた30品種のうち,各2反復ずつ6個体がそろった品種が10品種であったため,その10品種について比較した.その結果が第1表である.
 第1図と第2図には,それぞれ水ストレスが草丈と穂重に及ぼす影響と,穂長と穂重に与える影響を示す.それぞれのグラフから,どの水ストレスの程度においても,著しい傾向を認められなかったが,ストレスが大きいほど数値がばらつく傾向があった.
 第3図と第4図には,第1,2図と同じように草丈と穂重,穂長と穂重において,水ストレスが大と中のものの数値を程度が小のものの数値で割った数値で比較したグラフを示す.これらからは,どちらも正の相関関係が認められた.水ストレスの程度が大と中で大きな差異は認められなかった.

3.考察
 本実験の結果から,ソルガムにおいて水ストレスが収量に与える影響はほとんど認められなかった.第1〜4図において,水ストレスをかけた程度が小であるものが,必ずしも草丈,穂長,穂重において水ストレスの程度が中や大のものより高い数値を示すことはなく,むしろこの結果から,本実験のソルガムに与えた水ストレスの程度では,その収量に大きな影響がないことが示された.第3図と第4図において,グラフの数値の1.0を基準に考えると,数値の横の広がりよりも縦の広がりが大きいことより,草丈や穂長にあたえる水ストレスの影響よりも,穂重に与える影響の方が大きいことが認められた.
しかし,作物栽培において水ストレスは最も影響が大きい要素であるので,本実験では,結果的にソルガムが完全に枯れるまでは水ストレスをかけることはなかったためにその影響を確かめることが出来なかったが,水ストレスの回避は,作物の増収又は安定した収量の確保に多大な影響を与えるので,さらなる調査が必要であると思われた.

第2章 ソルガムの生長解析
1.材料と方法
(1)栽培方法
 供試品種は,宇都宮大学作物栽培学研究室所有のソルガムの品種, T−20,U−22を用いた.2004年5月6日に宇都宮大学.農学部の圃場の畑に播種した.(条間40cm,株間15cm)
(2)調査項目
 調査は6月3日より2週間ごとに行った.一回の調査で,1品種5個体を採取して以下の項目について測定した.
発芽期……播種種子の50%以上が出芽した日.
出穂期……面積当たり50%以上穂が抽出した日.
草丈 ……地際から最頂端までの長さ.
稈径 ……地際より約10cmの位置にある節間中央部の短径または,収穫物の切断されていない最下部の節間中央部の短径の長さ.
乾物重……72時間通風乾燥させた植物体の重さ.
葉齢 ……展開葉の葉数に抽出中の未展開葉の出現割合(未展開葉の展開部分の長さ/未展開葉の全葉身長)を小数点第1位まで算出した数値.
葉色 ……SPADによって測定される最上位展開葉の中央部の値.
葉面積……1個体の葉の片面の全面積.


計算方法

※ Wを乾物重(g),Lを葉面積(cm2),tを時間(日)とする.

1.RGR(相対成長率)(g/g/day)
 調査を2週間ごとに行ったとし,第1回の時の乾物重が64g,
第2回の時の乾物重が293gとすると,期間は2週間であるので,
 RGR=(lnW2−lnW1)/(t2−t1)
   =(ln294−ln64)/14
      =0.109… となる.
2.NAR(純同化率)(g/cm2/day)
 同様に,第1回の乾物重を64g,葉面積を12.6cm2,第2回の
乾物重が293g,葉面積を63.8cm2とすると.
 NAR=(W2−W1)(lnL2−lnL1)/(t2−t1)(L2−L1)
       =(293−64)(ln63.8−ln12.6)/14(63.8−12.6)
       =0.518… となる.
3.LAR(葉面積比)(cm2/g)
 調査日の乾物重を64g,葉面積を12.6cm2とすると,
 LAR=L/W
   =12.8/64
   =0.196… となる.
2.結果

 T−20は,5月19日に発芽し,7月20日に出穂した.U−22は,5月17日に発芽し,7月15日に出穂した.調査は第1回を6月3日に行った後,2週間ごとに調査をし,計5回行った.
 乾物重と葉面積は,出芽後4週間を過ぎた頃から急激に増加し,本実験では生長が収束する地点を測定出来なかったが,10週間以降に生長が止まると推測された.(第5図,第6図)稈径は,同じく出芽後4週間を過ぎたころから急激に増加し,8週目頃には生長がほぼ止まった.(第7図)葉齢と葉色値は,初めから緩やかに増加し,どちらも10週目には生長が止まった.(第8図,第9図)
草丈は出芽後4週目から急激に生長し,その後は出穂後も生長を続けた.(第10図)第11図はRGR(相対成長率)を示したもので,これは,植物個体の乾物増加を単位時間,単位乾物当りの値で表したものである.この図からは,出芽後第4週目頃から乾物重が急激に増加し第6週目以降は増加が収束していくが,第8週目頃からまた急激に増加することが示された.T−20とU−22でほとんど差は認められなかった.第12図は,NAR(純同化率)を示したもので,植物個体の乾物増加を,単位時間,単位葉面積当りで表したものである.この図からは,第11図と同様な結果が得られたが,U−22が8週目以降にまた急激な増加をしているのに対して,T−20は第8週目頃で生長がほぼ一定となった.
第13図は,LAR(葉面積比)を示したもので,葉面積と個体乾物の比を表す.この図からは,T−20は,出芽後第4週から6週目にかけて増加の割合が増え,その後徐々に増加が収束していったが,U−22は,初めから減少し続け,葉面積の増加より,乾物重の増加の方が常に大きいことが推測された.第14図は,RGRとNARの関係を表したグラフで,ソルガムの生長には,RGRよりも,NARの方が,より強い傾向を示し,これは,ソルガムの生長が,より葉面積の増加に大きく影響を受けることを表していると推測される.

3.考察
 ソルガムの生長は,葉面積,乾物重,草丈において,他の作物と比べて非常に早く,そして急激に生長することがわかった.乾物重は,出穂後においても,穂の重量増加により増加し続けるが,葉面積や,草丈は,出穂前にほとんど生長が止まってしまうことがうかがえる.ソルガムは,穂につける子実だけでなく,葉や茎も飼料用として重要な生産物であるので,その生長パターンを理解し,適切な施肥などを行うことは,ソルガムの増産に大きな影響を及ぼすことなので,更なる調査が必要であると考える.

総合考察

 本実験において,ソルガムの収量に水ストレスが与える影響を,最終的に穂重で比べることで調査した.この実験からは,水ストレスによって収量に大きな差異は認められなった.このことは,ソルガムの優れた耐乾性を表していると考えられるが,どの程度の水ストレスがその植物にかかっているかを考える時には,ポットの土の水分量.とりわけ水ポテンシャルがどの位かということ,調べてみないとわかりずらいと思われえる.又,耐乾性についても本実権では,漠然と強い,弱いといった判別しかすることができなかった.それを具体的に比較して判断するためには,他の植物も同じ条件で生育させ比較してみるなどの判断の基準を具体的に設定することが必要であると考える.

摘要
 ソルガムは耐乾性に優れているとされる.本実験はその耐乾性について,擬似的に水ストレスがかかった状況下で栽培することで調査した.
 結果は以下の通りである.
T.ソルガムの水ストレスが収量に与える影響
 水ストレスが収量に与える影響を,ポット試験において,水ストレスの程度を3段階に分け,その収量を比較することで比較した.
(1) 水ストレスによる収量に対する影響はほとんど認められなかった.
(2) 水ストレスによる影響は,草丈や穂長よりも,穂重に対して大きいことがわかった.

U.ソルガムの生長解析
 生長解析を行うことで,ソルガムの生長パターンを調査した.
(1) 葉面積や草丈は,およそ出芽後8〜10週間で生長が止まった.
(2) 葉齢,葉色値は,急激に変化することはなかった.
(3) RGRとNARを比較することによって,ソルガムの生長には,乾物重よりも,葉面積の変化が大きいことがわかった.

謝辞

 本研究は宇都宮大学農学部作物栽培学研究室において行われたものである.本研究の遂行において,何事も遅くなりがちだった自分をここまで導いてくださった同研究室の吉田智彦教授,和田義春助教授,三浦邦夫助教授に心から感謝申し上げます.本実験における生長解析は,その調査方法や,調査項目などご教示いただいた和田助教授には改めて感謝申し上げます.しかし,自分の担当共教官であったこともあり,多大な心配をかけ,至らないことも多々ありましたが,最後まで見放さずにご指導してくださった吉田教授には,特に感謝申し上げます.本当にお世話になりました.
 最後に,いつも明るく自分を向かえてくれた作物栽培学研究室と,作物生産技術学研究室のみなさんに心から感謝いたします.

引用文献

1.	犬山 茂 1980.灌漑水量がグレインソルガムの生育・収量に及ぼす影響.
        日作紀 49(2):226~231.
2.	津田 誠 1986.イネおよびソルガムの出穂に及ぼす水ストレスの影響.
        日作紀 55(2):196~200.
3.	後藤 雄佐・中村 聡・酒井 究・星川 清親 1994.スイートソルガ 
    ムの節間の伸長・肥大の解析−葉位齢を用いて−. 日作紀 63(4) 473−479.
4.	向山 竜二・上野 敬一郎・小山 敏憲・山形 誠 1993.主要ソルゴー型ソルガム
        品種の特性と鹿児島県における適応性.鹿児島県農業試験場研究報告 第22号.
5.	大政 謙次・近藤 矩郎・井上 頼直 1988.植物の計測と診断.朝倉書店,東京.124-127


図表省略



短稈ソルガム


以上

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