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高橋行継 (群馬県西部農業事務所)

2006.9修了

学位論文要旨 (本文PDF 1.2MB)

発表論文

1.プール育苗における新育苗箱の検討.高橋行継.日作紀 72(1):19-24(2003)
要旨:
栃木県農業試験場と資材メーカーで共同開発された水稲の新育苗箱(商品名:かるかるニューライン)は,深さを在来の育苗箱の 2/3としたことで使用培土を 2/3に減量でき,軽量化を図ると共に床面にも凹凸を加えることにより,健苗育成が可能な新型の育苗箱である.そこで,群馬県で広く普及しているプール育苗条件で新育苗箱による育苗が可能かどうかの検討を3か年にわたって行った.その結果,プール育苗で問題となる育苗箱底面からの出根量は,在来の育苗箱よりも育苗期間によっては多くなるが,出根形態が異なっていた.このため,在来の育苗箱で移植作業時に必要となる出根の除去作業や,出根防止対策の必要はなかった.また,新育苗箱の苗の生育は,無追肥では培土量の減量分だけ減肥となるため,在来育苗箱よりもやや劣る場合もあるが,移植精度や活着,初期生育には明らかな差はなく,実用上問題はなかった

2.群馬県東毛地域における1998年および,1999年産の麦類の不稔発生状況.高橋行継.佐藤泰史.前原宏.石関敏宏.日作紀 72(2):219-226(2003)
要旨:
群馬県東毛地域の1998年,1999年産麦類は,2年連続して二条大麦を中心として不稔が発生した.今回の被害は、節間伸長期以降に氷点下の低温によって発生する幼穂凍死型の不稔とは異なり,出穂期前後の0℃前後の低温によって花粉が障害を受け,不稔となったものと考えられる.小麦の被害程度はごく小さく,二条大麦の被害発生状況には品種間差が認められた.

3.群馬県の普通期露地育苗における平置き出芽の適応性.高橋行継.佐藤泰史.前原宏.阿部邑美.日作紀 73(3):253-260(2004).
要旨:
群馬県における水稲の普通期栽培(6月中下旬移植)の露地プール育苗における平置き出芽法の適応性について検討を行った.出芽までは何らかの被覆資材が必要である.6種類の被覆資材を供試して検討を行った結果,このうち2種類の資材が優れていることが明らかとなった.慣行の無加温積み重ね出芽法に対し,これら被覆資材の利用によって1〜3日程度の遅れで出芽させることが可能であった.また,その後の生育は慣行と何ら遜色はなく,実用可能であると判断した.

4.水稲育苗箱の培土量減量による軽量・低コスト化に関する検討―群馬県におけるプール育苗条件において―.高橋行継・佐藤泰史・加部武・栗原清・阿部邑美・吉田智彦.日作紀 73(4):389-395(2004)
要旨:
水稲育苗箱全重の軽量化と育苗の低コスト化を目的として,育苗箱に使用する培土量の減量について検討を行った.覆土量は原則として一定とし,床土量を標準の厚さ16mmに対して13,10,7〜5mm,さらに無床土区まで設定して検討を行った.その結果,床土量6(5)mmまでの減量が育苗や移植精度に与える影響は小さく,実用的には問題ないことが明らかになった.また,育苗覆土6mmのみの無床土区でも育苗は可能であり,移植精度も著しい低下はみられなかった.しかし,出芽時の根上がりが多く,播種時の種子飛散防止対策も必要であった.さらに床土量6mm区と共にマットが極端に薄くなるため,移植作業時のマットの取り扱いに十分注意を払う必要があった.このため技術として広く普及させるためには問題があると判断した.移植時のマットの取り扱いやすさ,移植精度を含めて,実用的な培土量は床土10mm,覆土6mmの計16mmであった.このことにより,育苗箱重量,育苗培土のコストは従来の約2/3に低減可能であった.

5.群馬県の早植・普通期栽培における育苗箱全量基肥栽培.高橋行継・大島賢一・神沢武男・吉田智彦.日作紀 76(2):171-180(2007)
要旨:水稲の移植時期が6月中下旬となる群馬県の稲麦二毛作地帯において,省力施肥を主目的に水稲育苗箱全量施肥栽培の導入の可能性について検討した.育苗は県下で普及しているプール育苗とし,水稲育苗箱全量基肥専用肥料「苗箱まかせ」を供試し,4か年にわたり圃場試験を実施した.その結果,育苗期間中に肥料の溶出が始まり,苗は徒長しやすい傾向がみられた.このため,育苗期間は20日程度が限界で,17〜18日間が適正であることが明らかとなった.本田移植後は,肥料の濃度障害とみられる生育抑制が発生する場合もあったが,湛水深を3cm以上とすることで被害の軽減が可能であった.活着後の水稲生育は,従来の肥効調節型肥料に特有な生育を示した.初期生育はやや抑制され,茎数は少ないものの,有効茎歩合,登熟歩合が高まり,基肥+追肥の標準体系35〜40%減の施肥量で収量,品質共に同等以上となった.以上の結果から,群馬県稲麦二毛作地帯において,育苗箱全量施肥栽培技術の導入が可能であると結論づけられた.

6.群馬県稲麦二毛作地帯における水稲育苗箱全量基肥栽培のプール育苗法に関する検討.高橋行継・吉田智彦.日作紀75(2):119-125
要旨:群馬県稲麦二毛作地帯への水稲育苗箱全量施肥栽培導入を前提とした育苗法について検討した.育苗は,県下で普及しているプール育苗によって実施した.水稲箱育苗全量基肥専用肥料「苗箱まかせ」 (N400-100,NK301-100) を供試し,育苗期間は20〜22日とした.育苗時期,肥料のタイプ,育苗箱内の施肥位置,覆土の種類,播種量について3年間育苗試験を実施した.その結果,4月育苗は問題なかったが,5〜6月育苗は育苗期間後半に肥料の過度の溶出が始まりやすく,苗は伸長し,マット強度も低下する傾向がみられた.肥料のタイプ及び施肥位置は,苗の生育にほとんど影響を及ぼさなかった.供試した覆土資材中,粒状培土は苗の出芽,生育に問題はなかった.一方,粒状熔性燐肥はほとんど出芽しなかった.砂状熔成燐肥も生育障害やマット強度の低下が発生しやすく,実用上問題があった.粒状培土覆土で発生する比較的軽度のマット強度低下であれば,播種量の増加で問題を解決することができ,移植作業上支障のない育苗が可能であった.以上の結果から,群馬県稲麦二毛作地帯においても育苗箱全量施肥栽培技術の導入が可能であると結論づけられた.

7.群馬県東毛地域における水稲全量基肥栽培専用肥料の開発.高橋行継・阿部邑美,加部武,大島賢一・神沢武男・吉田智彦.日作紀 75(1):82-89(2006).
要旨:群馬県東毛地域の気象,土壌条件,栽培体系に適合した省力施肥技術の確立を主目的に水稲全量基肥栽培専用肥料について検討した.溶出タイプや溶出期間の異なる6種類の被覆尿素を用い,適切な溶出タイプ,溶出日数の選定及び組み合わせ,さらに速効性肥料との配合比率について様々な試作肥料を供試して検討した.1996年から4か年間検討を行い,LP70とLPS80及びLP100とLPS100の組み合わせで速効性肥料との配合比率を1:1とした試作肥料が基肥+追肥の標準施肥体系と収量・品質面で遜色ないことが明らかになった.これらの結果をもとに地元肥料メーカーと専用肥料について協議を行い,LP70とLPS80を1:1で配合し,速効性肥料との配合比率を1:1とすることに決定した.専用肥料は2000年から「ふれあい省力一発型253号」として販売を開始,現在広く普及している.

8.群馬県稲麦二毛作地帯における水稲の新育苗技術と施肥技術による低コスト・省力化の評価.高橋行継・吉田智彦.日作紀 75(2):126-131.
要旨:群馬県東部平坦地域を中心とした稲麦二毛作地帯の水稲栽培の低コスト・省力化技術を経済性,省力性両面から評価した.まず,個々の技術について評価を行った.経済性に関しては10a当たり必要経費,省力性に関して育苗関係の技術は取り扱い育苗箱積算重量,施肥関係技術は10a当たりの作業時間によって評価を行った.その結果,新育苗箱育苗法及び培土減量育苗法は経済性,省力性で30〜36%,平置き出芽法,本田全量基肥法は共に省力性のみ30〜33%,育苗箱全量基肥法は経済性28%,省力性100%の低減となった.個々の技術を体系化した新育苗箱育苗法+平置き出芽法+本田全量基肥法及び培土量減量育苗法+平置き出芽法+育苗箱全量基肥法の2つの体系を,在来育苗箱育苗法+標準培土育苗法+無加温積み重ね出芽法+本田分肥法から構成される標準技術と比較したところ,前者は経済性で14%,後者は31%,省力性は共に33%の低減となり,今後の大規模経営および高齢化・兼業化に有益であることが明らかとなった.また,後者による現地試験を2か年間実施し,技術の有効性が確認できた.育苗箱全基肥専用肥料の連年施用による水稲生育・収量への影響は認められなかった.

9.群馬県稲作農家の低コスト・省力化技術や普及方法の意識調査.高橋行継・吉田智彦.日作紀 75:542-549(2006)
要旨:稲作の低コスト・省力化技術への関心を探るために,アンケート調査を実施した.対象は群馬県平坦部および中間地帯の稲作農家とし,稲作経営面積や専業・兼業別,経営主の年齢等のバランスも考慮しながら,県内16市町村計109戸に対して戸別訪問面接調査法で実施した.その結果,筆者らがこれまでに検討してきた低コスト・省力化関連の諸技術の普及率は概して低かった.この要因として,農家側の栽培技術の現状や新技術への考え方に関する試験研究機関の認識不足,農家の固定概念から生じている新技術に対する誤解や不安,普及指導機関の情報伝達不足などがあげられた.稲作農業の主力である50〜60歳代は,自身の技術に自信を持つ経営主が多く,新技術に対する関心はあるものの,積極的に導入しようとする意欲は低かった.一方,70歳以上の高齢者農家や稲作主体の兼業農家では,稲作経営の維持のために省力化技術に対する関心は概して高く,導入に前向きな農家もみられた.技術の普及のために対象農家の絞り込みや方法の検討が必要である.農家は技術情報の入手方法として「口コミ」を重視しており,技術を地域に波及させるための鍵を「口コミ」が握っていると考えられた.新技術普及のためには,普及指導機関が農家に正確な技術情報を提供し,正しく理解してもらうことが必要である.さらに現地実証圃において農家に自ら新技術を実践し,正しい技術を身につけてもらうことで栽培を必ず成功させ,「口コミ」による波及効果を狙うことが望ましいと考えられた.

10.群馬県における水稲育苗箱全量基肥栽培の溶性燐肥覆土および育苗期間の延長に関する検討.高橋行継・吉田智彦.日作紀 76(3):370-378(2007.6)
要旨:群馬県の水稲育苗箱全量基肥施肥栽培を前提とした育苗法のうち,溶性燐肥による覆土技術と育苗期間の延長について2005年から2か年検討した.出芽は平置き出芽法,育苗はプール育苗法によって実施した.水稲育苗箱全量基肥専用肥料「苗箱まかせNK301-100」を供試し,4月と5月に各1回播種 (2006年は5月播種のみ) を実施した.1箱当たり播種量は4月播種150g,5月播種100g,育苗期間は4月播種22日間,5月播種30日間とした.覆土に粒状培土,国内産および中国産の砂状熔成燐肥,国内産の球状熔成燐肥を使用した.その結果,粒状培土は出芽,苗の生育に問題なく,マット強度も十分であった.砂状溶性燐肥は国内産,中国産共に出芽時に生育障害が発生し,その後の苗の生育むらも目立った.しかし育苗完了時には生育むらはかなり回復し,マット強度も問題なかった.生育は中国産がやや良好であった.国内産の球状溶性燐肥は,出芽時から生育障害が激しく発生し,その後の苗の生育むらも回復せず,マット強度も大きく低下するなど実用上問題があった.溶性燐肥による覆土は,砂状タイプの利用により育苗は可能であるが,現場への普及技術として課題が多いことが明らかになった.以上の結果から覆土に培土を使用することが望ましい.また,育苗期間は30日までの延長は可能ではあるが,慣行育苗と比較した場合に苗の徒長傾向が認められた.このため,22日程度の育苗期間が健苗育成からみて無難であると結論づけた.

修士論文名
ネット被覆による防ひょう効果と微気象変化


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