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五月女敏範(栃木農試栃木分場)

2007.4入学
2010.3修了

学位論文名
ビールオオムギにおける大麦縞萎縮病抵抗性遺伝子集積品種の育成とその普及に関する研究
 要旨本文PDF

発表論文
1.エステラーゼアイソザイムを利用したオオムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子の集積法
五月女敏範・河田尚之・吉田智彦.日作紀 77(2):174-182(2008.4).
要旨:オオムギ縞萎縮病(BaYMV)抵抗性遺伝子のrym5とrym3を集積した品種を選抜した.rym5と密接に連鎖しているエステラーゼアイソザイム遺伝子Est1-Est2-Est4の遺伝子型Ca-null-Nz/Ca-null-Nz(木石港型)を持つビールオオムギ品種と,Pr-Fr-Su/ Pr-Fr-Su(Prior型)でrym3を持つ品種との交雑後代において,Est1-Est2-Est4の型と,異なるBaYMV系統により汚染された圃場における抵抗性・罹病性の反応からBaYMV抵抗性遺伝子型を推定した.BaYMVのI型(rym5及びrym3を持つオオムギ品種が抵抗性を示すBaYM系統)汚染圃場で抵抗性を示しかつエステラーゼアイソザイムがPr-Fr-Su/ Pr-Fr-Su(Prior型)の品種を選抜することによりrym3を持つIII型(rym5を冒すBaYMV系統)抵抗性品種,エステラーゼアイソザイムがCa-null-Nz/ Ca-null-Nz(木石港型)でIII型汚染圃場にて抵抗性を示す品種を選抜することによりrym5とrym3とを集積した複合抵抗性遺伝子集積品種を選抜することが可能で,その誤選抜率は約4.9%であった.また,これらの交雑後代において農業形質で選抜を行うことにより,rym3の出現頻度が有意に低く歪んだ.

2.栃木県育成醸造用二条オオムギ系統の家系分析
五月女敏範・大関美香・小林俊一・吉田智彦.日作紀 78(3):344-355(2009.7).
要旨:栃木県農業試験場で育成した系統,祖先品種および標準品種の家系分析を行った.祖先品種と育成系統の近縁係数を計算した結果,値が最も大きかったのははるな二条,次いでミサトゴールデン,ゴールデンメロンであった.育成系統についても総当たりで近縁係数を計算した結果,0.115〜0.803まで広く分布した.この近縁係数を用いてクラスター分析を行った結果,遺伝的多様性は育成当初からあまり広がっていないと推察された.農業特性の結果からも当場育成系統と近縁係数の高いはるな二条は醸造適性だけでなく多くの影響を与えていることが明らかとなった.病害抵抗性の導入源である親品種の近縁係数は極めて低いことも明らかになった.今後,新たな遺伝子源の探索・導入を図るとともに家系図や近縁係数を考慮しながら育種計画を立てることにより,効率的な育種が進められる可能性が高いと考えられる.

3.栃木県のおけるオオムギ縞萎縮ウイルスの発生状況と新たに見出されたオオムギ縞萎縮ウイルス系統
五月女敏範・河田尚之・加藤常夫・関和孝博・西川尚志・夏秋知英・木村晃司・前岡庸介・長嶺敬・小林俊一・和田義春・吉田智彦.日作紀79(1):29-36(2010.1).
要旨:ビールオオムギ初のオオムギ縞萎縮ウイルス (BaYMV) I〜III型抵抗性品種スカイゴールデンの普及にあたり,対象地域の栃木県におけるBaYMV系統の発生調査を行った.その結果,栃木県南地域では現在もIII型が常発化しており,県中北地域ではI型が発生していることから,現在普及している品種では不十分なことが明らかとなった.加えて,栃木県大田原市で既知のI,II,III型と病原性が異なり,BaYMV抵抗性遺伝子rym3を犯す大田原系統を見出した.この大田原系統と同様にI〜III型と病原性が異なり未同定であった山口系統(五月女ら 1997)について,品種の反応,病原性及び塩基やアミノ酸配列の相同性や系統樹による分子系統解析を用いて同定を試みた.その結果,それぞれI〜III型と異なる系統で,大田原系統はIV型,山口系統はV型である.IV型とV型の判別は,早木曽2号または浦項皮麦3と三月を判別品種として用いることにより可能である.また,スカイゴールデン,木石港3は,BaYMV I〜V型のいずれにも抵抗性を示し,抵抗性育種に有効である.今後,ビールオオムギ品種育成において,BaYMV抵抗性遺伝子rym1,rym3,rym5の集積が重要と考えられる.

4.栃木県那須地方におけるビールオオムギ生産の課題と高品質安定生産に向けた取り組み
五月女敏範・藤田正好・郡司陽・小川雄大・白石淳夫・星一好・小林俊一・高橋行継.日作紀投稿中.



修士相当と認定された成果

1. 成果名
 オオムギ縞萎縮病抵抗性ビールオオムギ品種の育成と栽培法に関する研究およびRFLP解析を用いたビールオオムギの主要農業形質のQTLマップ(遺伝子座地図)の作成に関する研究

2.成果の概要
1) オオムギ縞萎縮病抵抗性ビールムギ品種の育成
 早生で倒伏に強いなど栽培性に優れ,多収かつ高品質で,オオムギ縞萎縮病抵抗性ビールオオムギムギ品種「タカホゴールデン」を育成した.また,新型で被害が拡大しているオオムギ縞萎縮病ウイルスV型系統に抵抗性を示す同病抵抗性遺伝子rym3を持ち,従来の極高品質品種「ミカモゴールデン」に比べて麦芽エキスで1.5%,ジアスターゼ力では29゜WK/TN高いなど醸造品質が極めて優れ,多収なビールオオムギ系統「関東二条29号」を育成した.本系統は調査の結果,九州から北海道(春播)のビールオオムギ作付け地帯で本特性を示し,広域適応性を持ことから中間母本として極めて有用と考えられた.
2) オオムギ縞萎縮病抵抗性ビールムギ品種の高品質栽培法の確立
上記タカホゴールデンの施肥量や播種量による主要農業特性や醸造品質の変動特性を調査した結果,従来の品種よりも粗タンパク含量が変動しやすく,粗タンパク含量の増加に伴って麦芽エキス等醸造品質が著しく低下することなどを明らかにし,高品質となる栽培法を確立した.
3)RFLP解析を用いたオオムギの主要農業形質のQTLマップ(遺伝子座地図)の作成
はじめに,非放射性検出法のECL法やDIG法でのハイブリダイゼーションバッファー,プローブ濃度,発光基質,フィルター,ブロッティング条件を検討し,検出法を確立した.次に,日本型ビールオオムギSSDRI系統を用いて,RFLP分析により,出穂期・成熟期・稈長・穂長・粒大・粒重・外観品質形質(穀皮のしわ・同厚さ)・脱粒性・脱芒性・叢生・茎立性・不稔障害抵抗性・葉の立性・止葉の抽出度などのQTLマップを作成した.このQTL領域のうち,出穂期と粒大は既知の遺伝子座と一致したが,他のQTLは新たな領域として位置づけられた.

3.該当の業績一覧
1)二条大麦新品種「タカホゴールデン」の育成(二条大麦農林16号) (1995) 栃木県農業試験場報告No.43:107-126 河田尚之・石川直幸・福田暎・早乙女和彦・加藤常夫・五月女敏範,他
2)オオムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子ym3を持つ極高品質,多収ビール大麦系統「関東二条29号」 (1996) 栃木県農業試験場研究報告No.44:91-108 五月女敏範・早乙女和彦・河田尚之・福田暎・石川直幸,他
3)オオムギのECL法及びDIG法を用いたRFLPの検出 (1997) 栃木県農業試験場研究報告No.46:49-56 五月女敏範・小山内英一・長村吉晃
4)「タカホゴールデン」,「ミカモゴールデン」の施肥量及び播種量による農業特性及び醸造品質の変動 (1999) 栃木県農業試験場研究報告No.48:39-46 五月女敏範・佐藤圭一・河田尚之・早乙女和彦・福田暎
5)本邦ビールオオムギを用いたゲノム解析研究 5.主要農業形質のQTL解析 (1999)  育種学研究1別1:24 五月女敏範・河田尚之・石川直幸・金子隆史・小山内英一

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