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佐藤弘一 (福島県農業試験場 水稲育種研究室長)

2007.3 修了

学位論文 (要旨本文PDF 658KB)

発表論文
1.味度メーターおよびラピッド・ビスコ・アナライザーを利用した水稲良食味系統選抜.佐藤弘一・斎藤真一・平俊雄.日作紀 72(2003)390-394.
要旨:水稲の育種において,良食味系統を効率的に選抜するために,味度メーター値 (以降味度値と表記),ラピッド・ビスコ・アナライザー (以降RVAと表記 ) 特性値と食味官能検査との関係について検討した.味度値,RVA特性値のコンシステンシーは食味官能検査との相関が高く,遺伝力が高かった.食味の優れた品種,系統の特性を総合的に判断するために,味度値,RVA特性値の相関行列をもとに主成分分析を行った.第1主成分は,最低粘度,最終粘度,コンシステンシー,味度値の4特性と関わりが深い因子であり,炊飯米の老化性を表すと考えた.また,これらは遺伝力が高く,遺伝的に安定していると考えた.第2主成分は,最高粘度,ブレークダウンの2特性と関わりが深い因子であり,米飯米の膨潤性,崩壊性を表すと考えられた.また,これらは遺伝力が低く,環境に影響されると考えられた.良食味品種であるコシヒカリは,米飯米の老化性が低く,膨潤性,崩壊性が高いことが認められた.これらのことから,良食味系統を選抜する場合において,味度値およびRVA特性値の利用は有効であることを認めた.

2.水稲糯品種の餅硬化性、糊化特性および尿素崩壊性による選抜方法.佐藤弘一・斎藤真一・吉田智彦.日作紀74巻3号(2005.9):310-315.
要旨:多様な加工形態に対応した糯品種を育成するために,現在栽培している品種,育成系統について,餅製品の加工上重要な指標とされる餅硬化性,RVAによる糊化特性について検討した.餅硬化性には品種間差が認められ,こがねもちは餅硬化性が高かった.また,品種と年次間に交互作用が認められた.育成系統について餅硬化性試験を行ったところ,著しく餅硬化性の劣る,あるいはこがねもちより明らかに優る系統は認められなかった.餅硬化性は,RVA特性値中の糊化温度,ピーク温度,最低粘度,最終粘度,コンシステンシーと正の相関関係にあり,ブレークダウンと負の相関関係にあった.また,餅硬化性,糊化温度,ピーク温度,最低粘度,最終粘度,コンシステンシーは,登熟期間の気温との相関係数が高いことから,登熟気温の影響を受けると考えられる.尿素崩壊性には品種間差があり,糊化温度と相関関係にあることから,少量で簡易な餅硬化性の選抜方法として利用できると考えられる.餅硬化性の優れた品種育成を目的とする場合は,登熟気温を考慮した餅硬化性の優れた品種を交配母本に選定し,RVA,尿素崩壊性により餅硬化性を間接的に初期世代から選抜可能であると考えられる.なお,登熟気温別に選抜するなどを考慮する必要がある.

3.水稲福島育成系統の家系分析.佐藤弘一・吉田智彦.日作紀 76(2)):238-244.2007
要旨:福島県農業試験場で育成した系統,福島県で現在まで作付けされてきた品種 (比較品種)の家系分析を行った.育成系統は最終祖先までの最大世代数が14〜17で,総祖先数は568〜3500で,重複品種を除いた祖先数は62〜131といずれも高い値を示した.育成系統の最終の祖先品種と育成系統との近縁係数を計算したところ,値が最も大きかったのは旭 (朝日),次に愛国,大場(森田早生),亀の尾,器量好 (選一,神力),上州,京都新旭の順であった.最終の祖先品種との近縁係数をその品種による遺伝的な寄与率とすると,上位3品種合計で43.6〜64.1%,5品種で63.5〜79.9%,7品種で75.0〜87.5%の寄与率が認められた.育成系統は対コシヒカリ,対トヨニシキ近縁係数が高かった.収量に関し,比較品種は対農林1号近縁係数と有意な負の相関関係にあったが,育成系統は比較品種に対し収量性の向上が認められ,有意な相関関係が認められなかった.倒伏に関して,比較品種の倒伏は対トヨニシキ近縁係数と有意な負の相関関係にあったが,育成系統は耐倒伏性が強化され,倒伏程度の値が小さく,相関係数が小さかった.玄米品質について,育成系統は対コシヒカリ近縁係数と有意な負の相関関係にあり,対旭(朝日)近縁係数と有意な正の相関関係が認められた.食味について,比較品種は対コシヒカリ,対農林22号近縁係数と有意な正の相関関係にあったが,育成系統は有意な相関関係が認められなかった.

4.水稲糯品種の糊化特性と玄米千粒重,玄米白度との関係.佐藤弘一・吉田直史・大谷裕行・吉田智彦.日作紀 76:65-70(2007).
要旨:栽培特性,餅加工特性の優れた糯品種を育成するために,餅硬化性の優れるこがねもちと耐冷性,穂発芽性の優れる育成系統福島糯8号を交配し,選抜実験によりRVAによる糊化特性,玄米千粒重,玄米白度の遺伝率を検討した.ピーク温度,玄米白度の遺伝率が高く,最高粘度,ブレークダウンの遺伝率が低かった.糊化温度,ピーク温度と玄米千粒重は,値は低いが負の遺伝相関にあった.糊化温度,ピーク温度と玄米白度については,どちらを直接選抜するかで符号が異なることから遺伝相関は0に近いと考えられた.表現型相関係数では,糊化温度,ピーク温度と耐冷性については,値は低いが有意な正の相関関係が認められた.また,糊化温度,ピーク温度,玄米白度は登熟気温と有意な正の相関関係にあり,稈長,穂長は登熟気温と有意な負の相関関係にあった.なお,糊化温度,ピーク温度は稈長と有意な負の相関関係が認められた.短稈で,餅硬化性の優れる品種を育成することは可能であると考えられた.餅硬化性の優れ,耐冷性の強い,玄米白度の高い品種を育成するには集団の個体数を多くし選抜する必要があると考えられた.また,選抜において玄米千粒重の低下に留意する必要があった.

5.水稲の味度値とRVA特性の組合せ能力.佐藤弘一・吉田智彦.日作紀投稿中.
  要旨:良食味品種であるコシヒカリ,ひとめぼれと不良食味品種であるアキヒカリ,トヨニシキとの相互交雑により,味度値,RVA特性値についての組合せ能力を検討し,また,ダイアレル分析を行った.味度値,最低粘度,最終粘度,コンシステンシーの組合せ能力について検討した結果,良食味品種同士の交配組合せにより味度値が高く,最低粘度,最終粘度,コンシステンシーの低い品種が育成可能と考えられた.さらにダイアレル分析結果より,味度値,最終粘度の遺伝率が高く,味度値,最終粘度,コンシステンシーに関する遺伝子は優性遺伝子が相加的に作用することが認められた.味度値については優性遺伝子を,最終粘度,コンシステンシーについては劣性遺伝子を集積することにより,良食味品種が育成できると考えられた.

修士相当と認定された成果

1.成果名:水稲品種の栽培に関する研究

2.成果の概要
1)水稲新品種「ふくひびき」の収量性と酒造用掛米適性
酒造用掛米には、「トヨニシキ」、「チヨニシキ」、「はなの舞」などの一般食用品種が用いられてた。しかし、これらの酒造特性が必ずしも良好とはいえず、改良が求められていた。超多収系統選抜試験において多収性が確認された「ふくひびき」について、掛米品種選抜試験を行い、掛米としての適性を明らかにした。
2)会津地域における「ひとめぼれ」の生育診断指標
 「ひとめぼれ」の良質、安定生産を目的として、施肥法試験とそれに基づく種々の生育相について検討し、最高分げつ期、幼穂形成期における生育診断の指標を確定した。
3)湛水土中直播栽培における「コシヒカリ」の目標生育量
  湛水土中直播栽培における「コシヒカリ」の生育指標
  福島県における水稲直播栽培技術の開発−湛水直栽培の施肥技術の開発
「コシヒカリ」は倒伏に弱く、また、直播栽培では出穂期の遅れが懸念される。作期移動試験を行い、播種時期を確定した。併せて、窒素成分量に関する施肥法試験を行い、基肥窒素成分量、成熟期の目標形質、幼穂形成期の生育指標を明らかにした。また、稈質と倒伏との関係を明らかにした。

3.研究業績一覧
1) 水稲新品種「ふくひびき」の収量性と酒造用掛米適性 1993  東北農業研究 佐藤弘一・渡部隆・桑田彰・佐藤博志
2) 会津地域における「ひとめぼれ」の生育診断指標 1995 東北農業研究 佐藤弘一・山内敏美・渡部隆
3) 湛水土中直播栽培における「コシヒカリ」の目標生育量 1999日本作物学会東北支部会報 佐藤弘一・佐藤博志
4) 湛水土中直播栽培における「コシヒカリ」の生育指標 2000 日本作物学会東北支部会報 佐藤弘一
5) 福島県における水稲直播栽培技術の開発(湛水直栽培の施肥技術の開発)2002 福島県農業試験場研究報告 小林弥一・荒井義光・手代木昌宏・平子喜一・佐藤弘一・朽木靖之・渡邉和弘・佐藤浩一・半沢伸治・寺野圭悟・青田聡・岡本和夫・渡辺有策

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