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亀井忠文(山梨県立山梨園芸高等学校)

2007.4入学
2010.3修了

学位論文名
山梨県における絶滅危惧植物の保全や増殖技術の確立とそれを教材とする農業高等学校における学習指導法の開発に関する研究  要旨本文PDF

発表論文
1.山梨県における絶滅危惧植物の保全および増殖技術の開発とその教材化(第1報)
南アルプスにおけるマンテマ属絶滅危惧植物の教材化
亀井忠文・吉田智彦.農業教育学会誌 39(1) : 33-34 (2008)
要旨:タカネビランジの種子は,ジベレリン酸(GA3)50ppm水溶液に24時間浸漬処理後,播種すると高率で発芽し容易に実生が得られた. 採種直後の種子,暗所冷蔵(5℃)を12カ月・24カ月した種子をGA3処理したところ,24カ月冷蔵した種子でも発芽率72.5%だった. 栽培株の越冬はビニルマルチ等で霜除けすることで安全にできた. 夏は直射光を避けると旺盛に成長した. 開花期は4月末から10月はじめまでの長期にわたった. 花色は白・桜・桃など変化に富み,花弁の大きさも様々だった. 訪花昆虫の自然交配により大量の種子が得られた.
タカネマンテマの採取直後の種子,暗所冷蔵を3,6,12および24カ月した種子を次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液で15分間浸漬処理後,無菌的に播種した. 3,6および12カ月区で発芽率90%に達した.この結果,2種とも実生を一年中獲得できるようになった.
 マンテマ属絶滅危惧植物特にタカネビランジの教材化ができた.

2.D N A マーカーを利用した南アルプスの絶滅危惧植物タカネビランジ( Sileneakaisialpina) における鳳凰三山と北岳産個体の識別
亀井忠文・LyTong・吉田智彦.農業教育学会誌.農業教育学会誌 40 (2) : 印刷中.
南アルプスの鳳凰三山( 地蔵ケ岳・観音岳・薬師岳)および北岳の各山塊に自生する絶滅危惧植物タカネビランジ( Silene akaisialpina) 計38個体について, SSR分析とクラスター分析により個体識別を試みた. 12種類のプライマーで多型が検出された. このうち, Sb6-342プライマーにおいて, 北岳産個体( シロバナタカネビランジS.akaisialpina f.leucantha) すべてに約1000bpの特異的なバンドが検出された. このバンドは鳳凰三山産系個体では欠失し, タカネビランジの種内分類群, すなわちカネビランジ( S.akaisialpina) とシロバナタカネビランジS.akaisialpina f.leucantha)を識別するD A N 識別マーカーとして有効であると考えられた. 鳳凰三山系個体と北岳の個体の遺伝的距離および同一マーカー数の調査結果から, 観音岳の個体の遺伝的多様性が最も高かった. 薬師岳および北岳の個体の遺伝的ばらつきは低かった.地蔵ケ岳産個体が北岳産個体と最も隔たりがあり次いで観音岳であった. 薬師岳と北岳の個体間の遺伝的距離は比較的近いことが分かった.クラスター分析の結果, 4 つの山塊のタカネビランジは, クラスターT ( 鳳凰系1 ) , とクラスターU ( 鳳凰系2 ・北岳系) に分かれた. そしてクラスターU の下位のクラスターU -2( 北岳系) にD の個体がすべてまとまった.

3.山梨県における絶滅危惧植物の保全および増殖技術の開発とその教材化
( 第2報) タカネビランジの受粉様式の解明およびタカネマンテマの組織培養による大量増殖系の確立
亀井忠文・吉田智彦・和田義春.農業教育学会誌.農業教育学会誌 40 (2) : 印刷中.
タカネビランジの受粉様式を確かめた. 本種の1個の花の開花日数は7〜8日間がピークだった. 雌花と両性花の判別方法を確立した. 雌花は蕾の時期から3本の花柱が観察でき柱頭もはっきり確認できた. 両性花の雌・雄蕊の形態学的解析により,本種が雄性先熟の他殖性植物であることが分かった.
タカネマンテマの組織培養による大量増殖系を確立した. 外植体は生長期の植物体の根元に多数派生する分枝腋芽の茎頂組織,または無菌播種で得た in vitro の実生が適当であった.培地はMS処方(Murashige・Skoog,1962)にBA0.5mg/l〜1.0mg/l添加の範囲でシュート発生が優れた. 大量増殖のためのシュート塊誘導も同じ組成の培地でよいことが分かった.根毛を多数有する細根の誘導には,2,4-D0.5mg/l添加がきわめて有効であることが分かった. 順化および屋外における栽培は容易だった. 以上の実験結果を総合することにより,タカネマンテマの組織培養による大量増殖系および栽培方法が確立できた.
実験結果をもとに, 科目「 植物バイオテクノロジー」 の教材を作成した.

4.山梨県における絶滅危惧植物の保全および増殖技術の開発とその教材化
(第3報)南アルプス産ツリガネニンジン属(Adenophora Fischer) 2種の組織培養による増殖法の検討
亀井忠文・吉田智彦・和田義春.農業教育学会誌.農業教育学会誌 40 (2) : 印刷中.
南アルプス産絶滅危惧種のヒメシャジン(Adenophora nikoensis )およびホウオウシャジン(A.takedae Makino var. hozowana)の2種について保全や増殖技術の確立を目的として,組織培養による大量増殖系の確立を検討した。
ヒメシャジンの組織培養による大量増殖系を確立した。外植体からのシュート発生は,MS処方を基本培地としてBA0.5mg〜1.0mg/l添加が有効だった。シュート塊の誘導には,BA0.5mg/l添加区が優れ,継代培養を繰り返すことで順調に増殖した。不定根誘導は,植物ホルモン無添加培地で容易にできた。順化・屋外栽培は容易だった。
 ホウオウシャジンの組織培養による個体再生系を確立した。外植体からのシュート発生およびシュート塊形成にはMS処方にBA0.5mg/l添加区で優れた。不定根誘導は植物ホルモン無添加培地でよかった。本種は培養による増殖がヒメシャジンより緩慢であった。順化・屋外栽培は今後の課題である。本種の個体再生系は完成できた。
 なお,この研究の結果をもとに,科目「課題研究」への教材化を図った。

5.山梨県における絶滅危惧植物の保全および増殖技術の開発とその教材化
( 第4 報) 無菌培養によるキタダケデンダの増殖技術の確立
亀井忠文・吉田智彦・和田義春.農業教育学会誌.投稿中
南アルプス北岳産キタダケデンダ( Woodsia subcordata) の株から未裂開の胞子嚢をもつ葉を採集し, 無菌的な胞子発芽による大量増殖法の開発 を行った。胞子嚢を含む羽片をNaClO水溶液で表面殺菌し培養した。培地はMurashige & Skoogの処方を基本として, これに植物ホルモンを添加し胞子発芽, 前葉体形成, 胞子体形成および個体獲得状況の調査を行った。実験の結果, 胞子発芽, 前葉体形成, 胞子体発生および個体獲得ともに植物ホルモン無添加のM S 培地で好成績が得られた。前葉体は集まって集塊を形成した。馴化は前報( 亀井ら2008) の方法で問題なかった。安定的な増殖体系を確立できた。ただし, 培養期間が8 か月以上かかり, 培養期間の短縮が課題と思われた。
なお, この研究は特別活動( クラブ活動) における教材化を目的として取り組んだ。農業教育学会誌 受理.
	

修士相当と認定された成果

成果名 	山梨県における絶滅危惧植物の保全,増殖及びその教材化

要旨                                              
   研究の背景、動機・目的 南アルプスには植物地理学的に貴重な植物が多数生育する。しかし、それらは様々な原因で絶滅の危機に
瀕している。私は農業科教員として学習指導及びクラブ活動において絶滅危惧植物の保全や増殖技術の確立をはかると共にその教材化を
試みた。
 
研究の内容 
 1 タカネビランジの総合的な保全及び増殖体系の確立 @腋芽茎頂からの組織培養による大量増殖: ハイポネックス処方、BA添加
が不定芽増殖に有効だった。発根は植物ホルモン無添加でよかった。 A種子の休眠打破条件解明: GA3水溶液50ppmに24時間処理で
容易にできた(発芽率85%)。採種直後の種子、暗所冷蔵(5℃)を12か月・24か月した種子をGA350ppmで処理した。24か月冷蔵し
た種子でも発芽率75%だった。 B平地での野外栽培: 栽培株の越冬はビニルマルチ等で霜除けすることで安全にできた。夏は直射光を
避けると旺盛に成長した。開花期は5月から9月までの長期にわたった。花色は白・桜・桃など変化に富み、花弁の大きさも様々だった。
自然交配し大量の種子が得られた。果実1個の種子数は平均60.3個だった。種子繁殖・組織培養・栄養繁殖による本種の保全、増殖体系を
完成させた。
  2 タカネマンテマの保全及び増殖体系の確立 @種子の休眠打破条件の解明: 採取直後の種子、暗所冷蔵を3・6・12・24か月した
種子を次亜塩素酸Na水溶液で15分間処理後、無菌的に種子を播いた。3・6・12か月区で発芽率90%に達した。この結果、実生を1年中
獲得できた。
 3 その他の絶滅危惧植物の教材化 ムシトリスミレ・キタダケデンダの増殖法を確立した。
 4 絶滅危惧植物の教材化と授業展開の実際 絶滅危惧植物の教材としての特性を分析し、「年間学習計画」を作成した。次に学習単元
ごとの「学習指導案」を作成し授業を実施した。授業を評価・分析し、生徒達の学習到達度を測定した。この結果を踏まえ個別に学習の深
化を指導した。

研究業績一覧
 1. 稀少野生植物の組織培養による増殖について −クラブ活動での取り組み. 1997.日本高山植物保護協会,JAFPA   
   No.27
 2. 山梨県域における希少野生植物の遺伝資源保全技術の確立.2001.テレビ山梨厚生文化事業団,『第11回テレビ山梨サ
   イエンス振興基金研究報告書』
 3. 南アルプス鳳凰山にて採取したタカネビランジ,ホウオウシャジンおよびヒメシャジンの大量増殖. 2003.2.22.山梨
   県立山梨園芸高等学校,山梨県立山梨園芸高等学校研究集録 第18号
 4. 科目「植物バイオテクノロジー」の指導・評価方法について.2004.3.31.山梨県教育委員会・山梨県高等学校教育研究
   会,平成15年度研究紀要
 5. 山梨県における絶滅危惧植物の保全・増殖技術の開発とその教材化.2006.6.30.(社)山梨科学アカデミー, 山梨科学
   アカデミー会報 第22号 	
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