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稲葉幸雄 (栃木県農業試験場栃木分場)

2007.3 修了

学位論文 (要旨本文PDF 840KB)

発表論文
1.イチゴのクラウンの傾斜と花房伸長方向の関係.稲葉幸雄・吉田智彦・杉山信男.園芸学研究4(2):159-163(2005.6)
摘要;花房伸長方向の目安となるランナー軸を持たない組織培養苗を用いて,クラウンの傾斜と花房伸長方向の関係を調べた.頂花房の花芽分化時期に20から25°の傾斜を付けた培養苗は,傾斜方向に花房を伸長させた.一方,最初の傾斜処理から40日後の頂花房開花始期にポットの傾斜を180°回転させ傾斜方向を逆転させた場合,頂花房は反対方向に伸長した.これは頂花房の伸長方向が屈地性によって決定されること,また花房の伸長方向が花芽分化時期より後,開花始期よりも前の時期に決定していることを示すと考えられた.ランナー軸およびクラウン傾斜を持たない培養苗の定植に当たっては,定植時に株を通路側に倒して定植することで,花房を通路側に伸長させることが可能となると思われた.

2.近年育成されたイチゴ品種の近親交配の程度および近交係数と収量の関係.稲葉幸雄・吉田智彦.園芸学研究5(3):219-225(2006)
摘要; 栄養繁殖作物のイチゴでは,限られた育種材料間での交配を繰り返すため近親交配が問題となる.そこで,近年育成されたイチゴ品種の近交係数を計算した.また,近交係数と収量との関係を調べた.近交係数の計算は推論型言語P r o l o gとパーソナルコンピューターを利用した手軽な処理系で計算プログラムを作成した.交雑実生の近交係数と実生の選抜率との間に相関関係は見られなかった.栃木県農業試験場栃木分場の育成系統(3次選抜系統)の近交係数と収量の関係を調べたところ,−0.37(危険率1%)の有意な負の相関が認められた.
また,イチゴでは近交係数が0.3程度までであれば,近交弱勢による収量の低下は見られないことが分かった.
近年育成されたイチゴ品種の近交係数は一季成り品種では0.2を超える超えるものが多く,‘とちおとめ’‘章姫’‘さがほのか’‘あまおう’‘さつまおとめ’‘ひのしずく’‘やよいひめ’はそれぞれ0.261,0.222,0.257,0.213,0.257,0.247,0.346であった.一方,四季成り品種では‘サマープリンセス’と‘きみのひとみ’が0.183,0.195でやや高い値であったが,それ以外はいずれも0.1以下であった.代表的な一季成り品種15品種の総当たり交配による子供の近交係数を計算した結果,自殖を除いた近交係数の値は0.067〜0.440で平均は0.210となり,近親交配の程度が高くなることが分かった.

3.イチゴの10月どり作型における一次側花房の連続出蕾技術の開発.稲葉幸雄・家中達広・畠山昭嗣・吉田智彦.園芸学研究 6(2):209-215(2007)
 夜冷短日処理によって8月上旬に頂花房を分化させた苗に対して,継続して夜冷処理を行なうことで頂花房の花芽発育と1次腋花房の花芽分化を同時に促進させる育苗法を検討した.頂花房分化後に8日〜10日の夜冷処理中断期間を設けることで,栄養生長が促進され頂花房着花数が増加した.また夜冷処理中に追肥を行うことで1次腋花房の花芽分化が促進されることが明らかとなった.本処理方法で1次腋花房を分化させた苗を9月上旬に定植することによって,10月上中旬から頂花房の収穫が可能となり,1次腋花房も連続的に収穫できることから年内収量が大幅に増加することが明らかとなった.

修士相当と認定された業績
1.業績名
イチゴ‘とちおとめ’の生産安定に関する研究 
2.業績の概要
 イチゴ‘とちおとめ’はチップバーン症状(以下「がく焼け」)が発生しやすく、日照不足や低温などの不良環境条件下では不受精果が発生しやすい。そこで、まず花房出蕾時期の土壌水分および草勢が, ‘とちおとめ’のがく片のチップバーン症状(以下「がく焼け」)発生に及ぼす影響を検討した.‘とちおとめ’は‘女峰’に比べて株当たりの蒸散量が多い上に,11月中下旬のT/R率が‘女峰’より高いことから,1次腋花房出蕾時期には根からの水分吸収と茎葉からの蒸散による水分収支のバランスが崩れやすい.したがって,土壌水分不足や茎葉の過繁茂ががく焼け発生の原因と考えられた.がく焼け発生を防止するためには,花房出蕾時期の土壌水分をpF1.8からpF2.1の範囲で管理するとともに,過繁茂的生育とならないよう注意することが重要であると提唱した.
 次に、9月上旬定植の促成栽培の作型において,‘とちおとめ’の花粉および雌ずいの受精能力について検討した.‘とちおとめ’は,‘女峰’と比較して花粉の発芽率がやや低く,開花後の受精能力低下程度が大きかった.同様に雌ずいの受精能力保持期間は開花後3日から4日程度で女峰より1日から2日短く,開花後の能力低下程度も大きかった.‘とちおとめ’の花粉と雌ずいの受精能力は,‘女峰’よりも光の影響を受けやすく,低日照条件下で花粉の受精能力が著しく低下した.受粉・受精の不良による不受精果の発生を防止するためには,日中のハウス内温度を花粉発芽に最適な25℃程度に長く保ち,花粉発芽率の向上を図るとともに,ミツバチの訪花活動を促進し,開花後速やかに受粉させることが重要であることも明らかにした.
3.業績一覧
1) イチゴ「とちおとめ」の花粉と雌ずいの受精能力. 栃木県農試報告 50:51-61(2001) 稲葉幸雄
2) 花房出蕾時期の土壌水分および草勢が,イチゴ「とちおとめ」のがく焼け発生に及ぼす影響. 栃木県農試報告 51:9-16(2002) 稲葉幸雄・石原良行・植木正明

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