ちょっとした動物の話
ここでは動物に関係のある面白い話、意外な話、役に立つ話など、動物生産学コースの教官が書いた文章を中心にご紹介します。
クローン羊の表と裏 肥満と遺伝子 ちょっとHでためになる? ちょっとHでためになる?お話2 ちょっとHでためになる?お話3
ちょっとHでためになる?お話4 動物の心を知る? タマゴのお話 ここは読まなくていいよ ここは読まなくていいよ2
動物に関する100字以内のコネタ集
- クローン羊の表と裏
ずいぶんとセンセーショナルに報道されたので知っている人が多いと思うが、ごく最近クローン羊やクローン猿の作出に成功したという報告がなされた。このニュースを聞いて、クローン動物を作れるまで技術が進歩したのだなという程度にとらえている人は動物生産学コースの学生としては失格かもしれない。この研究の学問的な意義というのは、その技術の確立というよりも次のようなところにある。
動物の身体というのは様々な細胞から成っているが、それはもともとひとつの受精卵が増殖しながら同時にそれぞれの特徴を持つ細胞に分化して作られるものである。われわれの体の中にはもとの受精卵と同じ性質を持つ細胞はないのだ。それぞれの細胞の中では、それぞれの細胞の特徴を維持するために必要な遺伝子が働いている。ということはわれわれの身体の各細胞がもつ遺伝子はもとの受精卵の状態とは変わってしまっているのである。クローン羊の場合は羊の乳腺から取った細胞の核を、予め核を除いておいた卵母細胞に入れたのだが、入れた核の遺伝子が受精卵のときの状態にもどって本当に羊の身体をつくることができるかどうかは誰にもわからなかったのである。要するに分化して状態が変わってしまった遺伝子は、もとの状態に戻ることができる(変化が可逆的である)ということが初めてわかったのである。
もちろんこの技術は、ヒトに応用することは認められないであろうが、動物生産の分野に正しく応用された場合にもたらされるメリットは想像に難くない。これからの新しい技術、知識や意識の変化などに柔軟に対応して行くためには、基礎から応用まで幅広い知識が必要である。我が動物生産学コースはそれらすべてを惜しみなく皆さんに提供する。 - 肥満と遺伝子
夢の特効薬の出現か?
現在アメリカでは、3人に1人が肥満に悩み、その脂肪を落とそうという努力のために年間30兆円以上が費やされているそうです。ここでは、最新の科学が肥満という現象の秘密をどこまで解きあかしてきたかを紹介してみたいと思います。ここ1年くらいの間に、肥満に関わっている遺伝子についての情報が急速にわかってきましたので、その辺を中心に述べてみたいと思います。
1.肥満遺伝子
中でも最も注目を集めているのは、一般に肥満遺伝子(Obese Gene)と呼ばれるものです。これから述べるように、実はこれは肥満を起こす遺伝子ではなく、肥満を防ぐ遺伝子なので、肥満遺伝子という言葉はあまり適当ではありません。
この遺伝子は、肥満マウスの研究によって発見されました。ふつう動物は、体に十分な脂肪が蓄えられていると自然と食べる量を減らし、一方体のエネルギーが足りないと食べる量を増やすということを自動的に行うために、体の脂肪の量はほぼ一定に保たれます。ところが、ある突然変異のマウス(ob/obマウスと言います)は、この自動調節機構が働かないため、異常に食べ続け、ふつうのマウスの2から3倍の体重になってしまいます。ただ単にたくさん食べるだけではなく、このマウスは動きが鈍く、体温も低く、エネルギーの消費量が低いこともあって、体にたくさんの脂肪をため込んでしまうのです。
このマウスをこのようにしてしまう原因について、多くの科学者が研究を続けてきました。ある人は、ob/obマウスと正常なマウスの血液がお互いに行き来するようにつないでみました。そうすると肥満マウスは過食をやめ、正常な体重に近づいてきました。このことから、正常なマウスの血液中にはあって、肥満マウスの血液中にはないような何かの物質が、肥満を起こさせなくすることが考えられました。また、肥満マウスは、両方の親から肥満の原因となる遺伝子を受け継がなくては肥満になりません(劣性遺伝)。ですから、肥満マウスでは肥満を防ぐ物質を作る遺伝子に異常があって、この物質を作れないということが考えられました。この物質は何か、多くの努力が傾けられてきましたが、最近まで明らかにすることが出来ないでいました。
そして最近の遺伝子組み替えの技術が登場し、この問題を解決してしまいました。それは、ポジショナルクローニングと呼ばれる方法で、この肥満原因の遺伝子が染色体DNAの中でどの場所にあるのかを直接決めてしまう方法です。その結果が1994年の12月にアメリカのグループによって報告されました。この遺伝子は、これまでに知られていなかった全く新しい種類のタンパク質を作ることがわかり、OBタンパク質、またはレプチンと命名されました。そして、このタンパク質は脂肪細胞で作られていること、肥満マウスではこのタンパク質が正常につくられないことなどが確認されました。こうして、レプチンは自分の体にどのくらい脂肪があるかを感知して、その情報を脳に伝える物質ではないかと予想されたのです。
それから半年くらい後に、3つのグループがレプチンがどのように作用するかを報告しました。彼らはレプチンをob/obマウスや正常なマウスに注射してみました。するとレプチンを注射されたマウスは明らかに食べる量が減少したのです。さらに動作が活発になること、糖の代謝が盛んになってたくさんのエネルギーを消費するようになることもわかりました。正常なマウスに高脂肪食をたくさん食べさせて太らせておいてこれにレプチンを注射しても、体重を減少させることもわかりました。脳に直接レプチンを注射すると効果がもっと高いこともわかり、脳の中にレプチンの情報を受け取る仕組みがあること、すなわちレプチン受容体と呼べるようなものがあることが示されました。
レプチンによる体重の調節は次のようにまとめられます。動物の体の中に必要以上の脂肪が貯まると、脂肪細胞はレプチンを盛んに合成します。レプチンは血液中を流れて脳に届き、脳やその他の部位はその情報によって食餌の摂取量を減らしたり、エネルギーを余計に使ったりします。逆に脂肪が足りないとレプチンは少ししか作られなくなり、動物はよりたくさん食べてその一方でエネルギーの消費を減らそうとします。ob/obマウスではこのレプチンを作る能力に欠陥があるので、体に脂肪がありすぎても脳はまだ脂肪が足りないと錯覚して、よりたくさん食べて脂肪を異常に貯めてしまうのです。
これら研究からわかったことは、ヒトの肥満の原因の解明や、その治療に関してどのような意義があるのでしょうか。残念ながらそれほどお話しは単純ではなく、これまでのところ、ヒトに関してはレプチンの遺伝子の異常が原因で肥満が起こるという例は報告されていません。しかしこの研究はヒトの肥満に関しても、新たな光明をもたらしています。
これらの研究グループは、ヒトのレプチンの構造も明らかにしました。そしてヒトのレプチンをマウスに注射してみたところ、マウスのレプチンと同じように効果があることがわかりました。この事実と、レプチンは高脂肪食によって誘導された肥満にも効果があるという事実によって、レプチンはヒトの肥満にも効果があるのではないかという期待がもたれています。現在までにマウスに注射した実験では特に副作用も見られないようです。これは表題にあるように、レプチンが肥満の夢の特効薬になる可能性を示しています。ただしそれはあくまでも「可能性」であって、実用化までにはまだまだ調べなくては行けないことや解決しなければならない問題点が山積しています。
問題点の第一番は副作用についてです。本当に副作用がないのか、動物を使った実験、ヒトを対象とした実験をこれから繰り返して行かなければなりません。また、投与法の問題もあります。レプチンはタンパク質ですから、口から摂取しても分解されてしまい、効果がありません。ですから注射することになりますが、肥満の治療となれば毎日注射をつづけなければなりません。どのくらいの量を注射するべきか、適当な量を決定する必要もあります。さらにこれが濫用される心配もあります。もともと太っていない人が、モデルのように細くなろうとして使用するとなれば、倫理面での問題が生じます。
このようにまだまだ問題は多いのですが、現在実用化を目指して大量の投資をしている企業があるのも確かです。さて今後どうなるのか見守ってみましょう。 2.セロトニンレセプター
セロトニンという物質があります。これは神経伝達物質と呼ばれる物質の一つで、ある神経細胞から他の神経細胞に情報を伝える働きがあります。脳内のある種の神経細胞からセロトニンが分泌されて、他の神経細胞が持つセロトニン受容体に結合して情報が伝わっていきます。このような神経伝達物質にはいろいろな種類があって、神経細胞ごとに利用する伝達物質は異なります。食欲に関係する一群の神経細胞は、このセロトニンを利用しているのではないかと考えられてきました。
セロトニンの情報を受け取るセロトニン受容体には、いくつかの種類があることが知られています。少し専門的になりますが、セロトニン受容体のHT2Cと呼ばれるものが食欲に関係のある神経の働きを担っている様です。あるグループは、遺伝子工学の技術を駆使して、セロトニン受容体HT2Cを持たないマウスを作り出すことに成功しました。このマウスは、正常に生まれてきますが、てんかんを起こして早い時期に死んでしまいやすいことがわかりました。さらに、正常なマウスよりもたくさん餌を食べること、そのために体重が多いこともわかりました。このことから、セロトニンの受容体は食欲を抑える働きがあることがわかったのです。このような、食べたいという気持ちを抑える作用を、難しい言葉で摂食抑制と言います。満腹になったときには、もう食べたくないと感じますが、それが摂食抑制です。脳で摂食抑制の信号が出されるときには、セロトニンが放出されて他の神経細胞に伝えられることが、この研究によって確認されたのです。
この研究の結果を踏まえて、なぜダイエットが難しいかを理論化した人がいます。ダイエットをすると血中のトリプトファンというアミノ酸が減ることがわかっています。トリプトファンはセロトニンの材料になるものです。ですからダイエット中の人は、トリプトファンが十分に作られないため、摂食抑制が起こりにくく食べたいという欲望に負けてしまいやすいというものです。これは実験的に確かめられて、最近ネイチャーという学術誌に発表されました。
3.ヒトの肥満関連遺伝子
ヒトの肥満というのは、とても複雑な現象であり、たくさんの遺伝子が関わっています。少なくとも30種の遺伝子が肥満しやすいという素因に関わっていると推測されています。その中の一つが最近わかりました。
それは、アドレナリンのβ受容体というものの遺伝子です。アドレナリンというのは、脂肪や糖の代謝を調節する働きのあるホルモンですが、先のセロトニンと同じように神経伝達物質でもあります。アドレナリンもアドレナリン受容体というのに結合して、作用を発揮します。ヒトのアドレナリン受容体のうち、β3型という受容体の遺伝子を調べてみますと、何人かに1人は変異を持っていることがわかりました。多くの場合、遺伝子の塩基配列の変異は、その遺伝子がつくるタンパク質(この場合アドレナリン受容体)のアミノ酸の並びを変えてしまいます。この受容体の端から64番目のアミノ酸は普通トリプトファンというアミノ酸なのですが、これがアルギニンに変わっているという変異でした。そしてこの変異を持っているヒトと持っていないヒトを比較してみると変異を持っているヒトの方が成人してから肥満になる率が高いことがわかったのです。これは1995年の医学雑誌に発表され、ヒトの肥満と関係のある変異として注目されています。
おわりに・・・
遺伝子と肥満の関係ということで、3つの例を挙げました。ここからわかる重要なことは、肥満というのは、環境的な要因に加えて遺伝的な素因にも起因するということです。やせている人からみると、「太っている人は食べる量を減らせばいいのだから、やせられないのはただその人に節制心や忍耐力がないのだ」と思いがちです。確かに食べる量を減らせばいいのですが、ここに書いたようにヒトの食欲というのは、場合によっては遺伝的要因に大きく支配されているのです。また、そのヒトがエネルギーを消費する量も遺伝的影響を受けるのです。ですから、肥満に悩んでいる人は、単純に忍耐力のなさなどを責められるべきではないし、自分を責める必要もないのです。人によってはダイエットは非常に難しいのは仕方がないのです。だからこそ、肥満の治療には安易な方法に頼ることなく、長い期間かけた着実な方法が必要になるのです。(加藤久典、1995、DOMO健康科学) - ちょっとエッチでためになる(?)お話 吉澤 緑
1)春は恋の季節『季節繁殖』
北半球で四季のある地域に住む多くの生物は、雪の融ける春を今か今かと、待ち構えています。春は、花が咲き、蝶が舞い、鳥たちが番う相手を求めてさえずる、生き物にとって恋の季節です。哺乳類の雌は、季節のない赤道直下に住む動物や家畜化の進んだ動物種を除き、繁殖季節、すなわち、恋の季節を持つものが多いのです。このような動物を季節繁殖動物と呼びます。雄も、季節によって性行動が異なるものや種によっては繁殖季節と非繁殖季節とでは精巣の大きさまで違うものまでいますが、季節を問わずほぼ一年中雌との交尾が可能なものが多いのです。母体内で受精し、体内で子を育み、出生後は授乳によって子供を育てる哺乳類は、子供が生まれ育つ時期が外界の環境条件の良い、また餌の得やすい季節に子を産むようその生殖をコントロールしています。すなわち、北半球では、3月から6月の春先から初夏にかけてで、雄と雌の交尾は、動物種に特有の妊娠期間を遡った時期に起こるようになっているのです。しかし、熱帯地方のように季節のない地域に住む動物や牛や豚のように家畜化の進んだ動物では、季節を問わず一年中生殖が可能です。このような動物を周年繁殖動物と言います。さて、人間は? 自分のことを考えてみて下さい。
2)交尾排卵(こうびはいらん)
恋の季節を迎えた雌猫は、ミャーミャーと、連日連夜愛の言葉を囁いてくれる素敵な雄猫を求めて彷徨います。多くの哺乳動物の雄は、一定の周期(これを性周期といいます)に従って、交尾がなくても排卵を起こします。これらを自然排卵といいます(ヒトもそうです)が、猫やウサギなどいくつかの種類の動物は、交尾排卵動物といって、卵子を含む袋(卵胞といいます)は卵巣内で大きく育ったものの排卵されずにそのまま卵巣内にあり続け、雄と交尾し、生殖器に与えられたその刺激によって、初めて卵巣から卵子が排卵されます。また、排卵した後の卵巣には、黄体といって妊娠を継続させるための特別な組織ができます。この黄体からは、妊娠を継続させるための種々のホルモンが生産、分泌されます。
3)遅延着床(ちえんちゃくしょう)
北海道に棲息している日本最大の猛獣エゾヒグマは、ヨーロッパ、アジア、北アメリカに広く分布するヒグマの仲間です。ヒグマは5~6月に雄と雌が出会い交尾します。雌は、冬ごもりをしている1、2月中に通常2頭の子を産みます。交尾から出産までの日数を計算すると180~250日にもなりますが、生まれてくる子の大きさは、それに見合わず、体長約20cm、体重450~680gと小さなものです。これは、ヒグマでは、受精した卵子が、すぐに子宮に着床(子宮の壁の中に入り込む)しないで、しばらく子宮内を浮遊し、着床が遅延するためです。パンダもこの仲間で、妊娠期間のわりには、出生時の体重が100g程度と小さいのはそのためです。その他、医学の実験などに使われるラット(白ねずみ)も出産後、雄と同居していると後分娩発情といって直に交尾が行われ、受精が起こりますが、これらの受精卵は子宮に着床しないで、子宮内を浮遊しています。これも遅延着床といわれる現象です。もし、この間に違う雄と同居させたりしますと、これらの受精卵は着床することなく捨てられてしまいます。これは、新たな雄のフェロモン(後にまた紹介します)の影響と考えられます。
4)偽妊娠
よく新聞やテレビで犬が他の子犬や子猫に授乳して育てた話が報道されます。これは、犬の場合には、発情後に交尾がなくても妊娠と同様な状態(偽妊娠といいます)になって乳頭吸乳刺激が加えられれば、ミルクを出すようになるからです。ちなみに、わが家のミニピン(ミニチュアピンシャー)の雌は、すでに成犬となっている(人間でいえば高校生くらい)息子にいまだにミルクをあげており、この息子もチュウチュウと美味しそうな音を立てて上手にミルクを飲んでいます。また、マウス、ラット、ハムスターなどの実験小動物は、4-5日毎に発情を繰り返す短い性周期を持っているのですが、発情期に精管を結紮したような雄と交尾させたり、交尾に類した刺激を膣に与えると偽妊娠の状態になります。これは、これらの動物では、通常の性周期では作られない機能的な黄体が、交尾刺激によって排卵後の卵巣に形成され、機能化するためです。
5)性分化(せいぶんか):イヴからアダム?
旧約聖書では、アダムの肋骨からイヴが創造されたとされています。ところが、生物学的には、哺乳動物ではこの反対、すなわち雌から雄ができるといった方が正しいかと思います。受精した卵子(受精卵)から発生してくる胎児は個体発生の段階で、ある働きかけがなければ、すなわちそのままにしておけば、雌へと発生していきます。このある働きかけとは、雄性決定因子(雄性決定遺伝子)の存在です。これは、通常雄のみが持つ性染色体であるY染色体上にあります。この遺伝子を持つことによって、胎児の生殖腺は精巣になり、その精巣が作り出す雄性ホルモンの働きによって、体内外の生殖器官が雄として発達し、雄らしい特徴のある身体が作られ、自他共に認める雄になるのです。現在は、この遺伝子の塩基配列までが決定され、多くの動物種に共通な配列が見られることが分かっています。また、この雄性ホルモンは、性行動にも影響し、雄らしい性行動をするように脳を分化させ、雌では、性的な周期を示しますが、雄の場合は雌で見られるような周期性がなくなります。すなわち、常時交尾可能となるわけです。 - ちょっとエッチでためになる(?)お話 2 吉澤 緑
6)「アダムはイブから生まれた?」 -雄と雌、卵子と精子-
聖書では、アダムの肋骨からイブが生まれたということですが、実は、生物学的には、この逆と言えます。哺乳動物では、雄と雌の性の違いは、それぞれが持っている性染色体によって決まり、雌はXX、雄はXYです。性の分化、すなわち雄になるか雌になるかということは、子供がお母さんの体内にあるうちに決まる訳ですが、それは、その子、胎児が雄になる遺伝子を持っているかいないかで決まります。この遺伝子はSRYと呼ばれる遺伝子で、Y染色体という雄に特異的な染色体に位置しています。この遺伝子があれば、胎児は雄になるのですが、なければすべて雌になります。胚発生の初めには、雌雄どちらにもなりうる生殖器の原始的器官が備わっています。このままですと雌へと発生するのですが、そこにSRY遺伝子が存在しますと、生殖器は雄へと分化していきます。このことを指して、アダムとイブの話しは、生物学的には聖書と反対だといったのです。哺乳動物では、雌の生殖細胞、卵子はどれも皆同じにX染色体を持っていますが、雄の生殖細胞は、X染色体を持つ精子とY染色体を持つ精子の2型があります。このため、哺乳動物では性の決定は、受精した時にX染色体を持つ精子が受精したかY染色体を持つ精子が受精したかで決まります。すなわち、Y染色体を持つ精子が卵子内に入ると雄になり、X染色体を持つ精子が卵子と受精すると雌になります。これを遺伝的性と呼んでいます。その後、胎児が発生していく段階で、生殖巣が遺伝的性にあったように、すなわち雄でしたら精巣、雌でしたら卵巣へと発生し、さらに生殖巣に合った内部生殖器および外部生殖器が形作られます。これを生殖器の性と呼びます。また、脳も性的に雄のタイプもしくは雌のタイプへと分かれていき、雌は、哺乳動物の雌に特有の性周期、発情期を繰り返すようになり、さらに、雄は雄らしい、雌は雌らしい行動をとるようになります。さらに、成長して、性成熟期(思春期)を迎えますと、外部生殖器をはじめ、外貌的にも雄は雄らしく、雌は雌らしくと性に特有の特徴、第2次性徴を示すようになります。
7)「出会いと芽生え」 -受精と妊娠-
世の中には、数多くの出会いがありますが、卵子と精子の出会いほど劇的で、感動的なものはないのではないでしょうか? 新たな生命の始まりであるということが、まずその理由の一つではありますが、その出会いの可能性が天文学的な確率だということも大きな理由になると思います。 卵巣の中にある何万という卵子を包む感である卵胞から選ばれた1個の卵子と何億、何十億という数のうちのただ1個の精子が受精して、今までにない遺伝子の組み合わせの新たな生命が芽生え始め、誕生します。 しかし、卵子と精子の出会いは、すぐそのまま受精へとつながるという単純なものではありません。卵子にも精子にも時間的制約があり、卵子は排卵後一定の時間内に、精子は射出後やはり一定の時間内にお互いに出会わなければ、受精は起こりません。また、精子は射出されたままでは卵子の中に入っていくことはできません。精子は、雌の生殖器の中に一定の時間おかれることで、大変身を遂げて、卵子の中に入っていく能力を身につけます。 また、卵子と精子が出会う場所はといいますと、当然のことながら、哺乳類では雌の生殖器の中、卵管の上部で卵管膨大部と呼ばれる場所です。この場所へ行き着く精子は実はごく僅かなのです。では、残りの精子はどうなってしまうのでしょうか。精子は、どのようにして受精の場所までたどり着くのでしょうか。 また、出会った卵子と精子が受精をして生ずる新たな生命、受精卵はその後どうなってゆくのでしょうか?
8)「重要なのはグッドタイミング」 -人工授精-
野生の哺乳動物では、雄と雌の出会い、交尾、妊娠、出産という一連の繁殖活動は、種としての生存繁栄を目的として、極めて合理的に組み立てられています。それら繁殖活動は、当然、種によって大きく異なります。哺乳動物の雌が卵子を排卵するのは特定の日だけで、交尾の期間も限られています。一方、雄は、常に精子を生産しており、いつでも交尾可能です。哺乳動物の雌は、春季発動期以降の生涯の大部分で交尾、妊娠、分娩、授乳、そして子の養育といった繁殖活動に励むこととなります。しかし、人間の女性は違います。女性がその生涯に産む子供の数は、先進国では低下し続け、日本では1.5人を切って1.39人になっています。すなわち、近頃のカップルは、1人か2人の子を持つ程度だということです。また、家畜は、その生殖を人が支配して繁殖させているために、野生動物のように自分で勝手に雄を見つけて交尾し、妊娠するということが少ない状況にあります。もっとも、アメリカやオーストラリアの広大な牧場での肉牛や羊の放し飼いの場合は、何頭かの雄を雌の群れの中に放しておき、雄が発情した雌を見つけて交尾し、妊娠させるという方法がとられています。一方、国土の狭い日本では、日常的に搾乳をしなければならない乳牛はもちろんのこと、肉牛まで牛舎で飼うという、集約的な飼育管理の下に家畜の繁殖を行っています。このような状況下では、1頭1頭の雌の個体管理が可能ですので、雌が排卵する日を見つけて、精子を雌の生殖器内に注入し、人工的に妊娠させる技術が盛んに用いられています。このためには、雌が妊娠することが可能な時期、すなわち排卵が起きる時には必ず精子を用意しておかなければなりません。そのために、雄から精液を採取し、その精液を処理して凍結保存し、適切な時期の雌の生殖器内に人工的に精液を注入し、妊娠させるという技術「人工授精」の技術が、何十年も前に確立され、利用されています。この「人工授精」の技術は、家畜の世界だけでなく、実は、人の不妊症治療の一手段としても長年の実績を持つ技術なのです。 - ちょっとエッチでためになる(?)お話 3 吉澤 緑
9)「生みの親は他人?」 -受精卵移植-
臓器移植のための脳死法案が日本でも制定され、臓器移植が法的にもきちんと認められました。しかし、臓器移植が法的に認められたからといって、臓器の移植が誰から誰にでもできるわけではもちろんありません。それは、血液型に適合性があるために輸血が同じ血液型同士間で行われるように、組織適合性という細胞の型があるからです。同じ型の組織適合性を持つ人の間では組織移植は可能ですが、異なる型の組織を移植すると、その組織を自分以外のもの、すなわち異物とみなして、これを排除する機構が働いてしまい、組織は生着することができません。これは、高等動物がウイルスや細菌のような自分以外の侵入者を排除して身を守るために、自分自身、すなわち「自己」とそれ以外のもの、「非自己」を認識する『免疫』という機構を持っているからです。ところが、この『免疫』から逃れている環境が雌の身体の中にはあります。それが着床期の子宮です。
アメリカで御祖母ちゃんに当たる女性が、自分の娘の子、すなわち孫を生んだというニュースがずいぶん前にありました。日本でも、妹の卵子をもらって夫の精子と体外受精させ子供を産んだ例が報道されて、世間を賑わせましたが、アメリカなどでは、自分の卵子が使えない不妊の女性が他人の卵子の提供を受けて子を産む例や、逆に卵子は正常であるが妊娠できないために他人に自分の子を産んでもらう『借り腹』などが、行われております。この技術が『受精卵移植(胚移植)』の技師です。しかし、日本では、日本産婦人科学会は、倫理上の問題から夫婦間の体外受精しか認めないとしております。これは、人工授精の場合は、他人の精子の提供を認めているのになぜ?との印象をぬぐい切れません。
しかし、家畜においては、他牛の卵であろうと胚であろうとなんら規制はありませんので、『受精卵移植』の技術は普及の一途を辿っております。とくに1回のお産で1頭の子しか生まず、妊娠期間も長いウシでは、どのような子が生まれるかは畜産農家にとって大きな問題です。例えば雌か雄か、またホルスタインの雄子牛よりも和牛の子の方が高く売れるなどの経済的理由から、『受精卵移植』の技術は、大きな意義があります。まだ人工子宮が完成していない現在、体外受精、トランスジェニックやクローンなどの先端技術で得られた胚も受精卵移植をしなければ子として生まれてきません。これらの先端枝術を支えている技術が、『受精卵移植』だといえます。ちなみに、ウシの非外科的受精卵移植技術のパイオニア、杉江 佶博士は、本学の大先輩です。
10)「神の手は人に?」 -体外受精と顕微授精-
何万の卵子のうちの1個の卵子と何億の精子のうちの1個の精子が出会い、受精して新しい生命が誕生する際の出会いの確率やさらに卵子、精子のもつ遺伝子の組み合わせの数値などは、まさに天文学的なものであり、このようにして決められる新たな生命の芽生えは、人間の力の及ばなかったことであり、神の選択ともいえるのではないでしょうか。
さて、哺乳動物卵子の発見は、1778年イギリスの学者によって交尾後のウサギの卵管や子宮内に卵子や初期胚が見出されたことが最初で、1827年にはフォン・べ一ルによってイヌの卵子が発見されました。そして、1878年に、モルモット、ウサギを使って体外受精によって分割卵が得られたとされていますが、これには確証がなく、1959年ウサギで初めての体外受精による新生仔が得られ、その後、ラット、マウスなど様々な実験動物、さらにウシやヤギ、ブタなどの家畜において成功を見ています。なお、ウシの体外受精仔より早く、1978年に英国でヒトで初めての体外受精児が誕生しました。現在、マウス、ウシ、ヒトの3種においては、体外受精の技術はすでに実用化の段階へ達しております。この体外受精、すなわち哺乳動物の卵子を体外へ出して、精子と一緒にして、体外で受精を起こさせる技術は、人の管理下での受精であり、また、卵子の中に1個の精子を注入し授精させるという顕微授精(卵細胞質内精子注入法:ICSI)では、注入する精子を選択するのは、紛れもなく人です。これは、受精現象における天文学的な確率での卵子、精子の選択という、神の選択が人の手に移ったといえるのではないでしょうか。なお、受精とは卵子が精子を受けることであり、授精とは人の手により精子を授けることと言えます。
両側卵管閉塞の女性の成熟卵胞から卵子を採取し、体外受精後8細胞期に発生した受精卵を経膣的に子宮内へ戻して妊娠させることで、初めての体外受精児ルイーズちゃんが1978年に英国で生まれてから早30余年が過ぎ、これ以釆、体外受精一受精卵移植(IVF-ET)によって産まれた子は、世界中で10万人とも20万人とも言われています。ルイーズちゃん誕生の立役者ロバート・エドワード博士には、2010年ノーベル医学生理学賞が授与されました。また、ヒトで初めての顕微授精による妊娠が、1992年ベルギーのグループから報告され、その後、体外受精では受精が成立しなかった150例の症例に顕微授精を実施し、64%以上が受精し、約45%が妊娠したという驚異的報告が翌年1993年同グループによってなされてのち、ICSIの手法は、男性不妊症の画期的治療法として、世界の男性不妊症患者に多くの福音を与えています。日本でも、これまでに多くの妊娠、分娩例が得られています。
11)「架空の動物が現実に」 -キメラー
ギリシャ神話に出てくる架空の動物『キメラ』は、頭がライオン、胴体が羊、尾がヘビという恐ろしげな怪物だそうです。生物学で言う『キメラ』とは、異なる複数の胚(受精卵)が合体してでき上がった生物体、もしくは異なる胚由来の細胞が1個体の中に混在している個体や状態のことを指します。実は、哺乳動物の『キメラ』は自然界でも生じているのです。それは、ウシで異性双子が生まれる場合、雄と雌の胎子の細胞が胎膜の癒着が原因でお互いの血流に混じり、『キメラ』の状態になってしまうのです。すると、雄の細胞にある雄性決定遺伝子が雌の中に入ることで雌の生殖器の発達を阻害し、そのために雌の生殖器は正常な形態とならず、不妊となってしまいます。このような雌をフリーマーチンと呼び、畜産農家にとっては大きな損失です。しかし、雄には全く影響はありません。ウシで異性双子が生まれた時、雌子牛の体細胞を調べ、雄の細胞が混じっていて『キメラ』となっていればフリーマーチンだと分かります。
人工的な哺乳動物『キメラ』は、1961年に、マウスのキメラが英国でタルコウスキー博士によって初めて生み出されました。そして、1984年、英国のケンブリッジ家畜研究所でヒツジとヤギの『キメラ』の『ギープ(geep:ヒツジ "sheep"とヤギ "goat" のキメラの意味)』が誕生しました。その後の発生工学、生殖工学の発展は、様々な『キメラ』個体を生み出しています。『キメラ』個体の作出は、実験手順としては容易であり、哺乳動物の初期胚を扱う技術を持っているならば、どこの研究室でも行い得ることです。さらに、栄養膜細胞と内部細胞塊の『キメラ』による異種動物間の胚移植への応用、それらの細胞だけでは個体になり得ないような細胞でも、他の正常細胞と『キメラ』とすることで個体発生を継続でき、新たな個体として出生し得ることなどが明らかとなっています。
また、様々な動物の胚から増殖された多分化能(種々の組織や器官など何にでも分化できる能力)を有する細胞株において、胚性幹細胞(ES細胞)や胚性生殖細胞(EG細胞)であるとの判定が、宿主胚に当該細胞を注入することで『キメラ』を形成できるか否かによってなされています。この胚性幹細胞(ES細胞)は、何にでも変身可能なスーパーマン細胞として、現在全世界の生物学者、医学者から注目を集めている細胞です。 - ちょっとエッチでためになる(?)お話 4 吉澤 緑
12)「人が創る新たな生命」 -トランスジェニック動物-
私たちヒトを含む哺乳類は、高等動物として分類され雄と雌がいて新たな生命体を創り出す、すなわち両性生殖を行っていることは、常識的な知識です。そして、生物は、単純なものから複雑なものへと変化してきました。古代から現在までの生命の進化の歴史が、私たちの身体の中に連綿と続いているといえます。しかし、カエルの子はカエルですし、ヒトの子はヒトです。生物体を形成し、その生物体の特徴や行動を種としてふさわしいものとするのは遺伝子の働きによります。遺伝子のレベルで考える時、その共通点と相違点が種を分けているといえます。近年の分子生物学、遺伝子工学といった学問分野の発展によって、特定の遺伝子を取り出したり、組み込んだりというように遺伝子を操ることが可能となってきました。人が人為的に、その遺伝子レベルでの改変を行って新たに創り出した動物を『トランスジェニツク動物(遺伝子導入動物)』と呼んでいます。すなわち、これまでこの世界に存在しなかった遺伝子組成を持つ生命体を人が新たに創ったということです。
『トランスジェニック動物』として最初に創られた哺乳動物が、スーパーマウスです。すなわち、1982年、パルミッター博士とプリンスター博士は、マウス受精卵の前核期という精子が卵子内に侵入後間もない非常に早い発生時期に、精子由来の雄性前核にラットの成長ホルモンの遺伝子を細いガラス管で注入し、卵割した胚を雌に移植したところ、生まれたマウスは通常のマウスの体重の1.8倍にも発達しました。すなわち、この遺伝子導入マウスにおいて、ラットの成長ホルモンが何百倍も生産分泌されたのです。さらに、この遺伝子導入マウスを交配させ、この導入遺伝子が子孫へ伝わることも確かめられました。
この遭伝子導入の技術は、特に畜産や製薬、医学といった分野に大きな頁献が期待されます。例えば家畜の品種改良のためには、良い遺伝子を取り入れ、好ましくない遺伝子を排除するように、選抜、交配、淘汰を繰り返して目的とする形質を取り込んでゆくのですが、このため、何世代、何十年もかかることもあります。1970年代になり遺伝子工学が発展し、優れた遺伝子を取り出して、これを他の動物に組み込むことによって、家畜の改良を一挙に行える可能性が出てきました。前述のスーパーマウスの誕生を機として、様々な『トランスジェニツク動物(遺伝子導入動物)』が創られています。動物に新たな遺伝子を組み込むことで、それまでなかった形質を備えたり、形質を作り替えることができるようになったのです。また、逆に特定の遺伝子を働かなくすること(ノックアウト)も可能となりました。
13)「雄はいらない?」-クローン動物-
1997年2月に英国のロスリン研究所で世界で初めての体細胞核移植による『体細胞クローン羊ドリー』が誕生したことは、まさに生物学のこれまでの常識を打ち破る衝撃的な出来事でした。なぜ、ドリーの誕生が衝撃的かといいますと、未分化な胚の細胞と違って、体細胞はすでに分化した細胞であり、何になるか細胞の将来が決まっているのです。例えば、皮屑の細胞は皮膚、筋肉の細胞は筋肉というように細胞の将来がプログラミングされているのです。しかし、ドリーでは、卵子に移植されたその体細胞(乳腺細胞)の核が、胚細胞のような末分化な細胞の核と同じようになった(初期化)ため、どんな細胞にでもなれるだけの能力(全能性)を得て、新たな個体として発生したのです。これまでは、一度分化した細胞が全能性を取り戻す可能性はないと考えられていたのです。その後、マウス、ウシ、ヤギ、ブタなど様々な哺乳動物の『体細胞クローン』が作られました。クローンとは、遺伝的に同一な個体や細胞を指します。体細胞クローン動物とは、元の細胞の持ち主の遺伝子組成とまったく同じであるコピー動物であるといえます。
しかし、実はクローンは下等な生物や植物では、ごく普通に見られる現象です。すなわち、分裂や発芽、栄養体生殖など、無性生殖(雄と雌の交配によらない生殖)によって生ずる個体はみなクローンです。クローンという言葉はギリシャ語の「小枝」に由来し、挿し木や挿し葉、株分けなどの植物で使われている増殖法がクローン技術です。そして、クローン動物は実は自然界にもいるのです。例えば、1卵性双子がそうです。有名な双子のおばあちゃん、『金さん、銀さん』もクローンです。人為的に作られるクローンにしても、1個の卵を2細胞期に2個に分ければ双子ができますし、4細胞期に4個に分ければ4子ができます。さらに分割が進んだ胚の細胞を使う時には、未受精卵の核を除去した後、ドナーの細胞1個と融合させれば、理論的には細胞の数だけクローン個体ができます。これらは、胚から作られたクローンなので、『胚性クローン』と呼ばれます。このようにクローン動物には、『胚性クローン動物』と『体細胞クローン動物』があります。
高等動物である哺乳類は、両性生殖という生殖法をとって、遺伝子の多様性によって種の繁栄を築いてきました。しかし、哺乳動物のクローンは、卵子とドナー細胞の融合から生まれる無性生殖です。下等な生物で行われていた無性生殖法を高等動物の哺乳類に適用することが果たして適切なのかどうかは、これを利用する人間の英知にかかっているといえましょう。
14)「生命操作と人間社会」-生命操作をどう受け止めるか-
本コラムでは、ヒトを含む種々の哺乳動物について、現在までに発展してきている生命操作といえる様々な技術を紹介してきました。これらの技術の発展は、まさに日進月歩の感があり、昨日の不可能が今日は可能にもなってしまう、非常識が常識になってしまうような世界です。しかし、これらの技術発展の著しさにもかかわらず、これらの技術に対しての社会の対応は必ずしも迅速、的確なものとは言えません。体細胞クローン羊ドリーが誕生した時、世界中の人々がこの生物学のブレイクスルーに驚嘆し、危機感さえ抱きました。ローマ法王やアメリカ大統領をはじめ各国政府は、この技術のヒトヘの適用をいち早く禁止する姿勢を示し、議論が沸き起こりました。しかし、我が国では、その対応が他の国に比べ早いとは言えず、また充分ではありません。体外受精や顕微授精、胚移植などの生殖に関する技術的発展が目覚ましいにもかかわらず、倫理上の議論も充分ではありませんし、民法などの法律的な検討はほとんどなされておりません。これらの生命操作に関する技術について、その意義や倫理的な問題点を充分に議論せずには、人類はせっかく手にした偉大な技術、知識を有意義に使いこなせないだけでなく、悪魔の技術にさえ変えてしまいかねません。何が問題で、どこまでが人類にとって役立ち得る技術・知識なのかを明らかにしなければなりません。先頃、ヒトのクローンの作出を罰則付きで禁止する方向が示されましたが、まだまだ検討を要する問題が山積みされています。
また、トランスジェニツクサルが作出されたとの報道があり、その記事の中で、サルで成功したのであるから、ヒトにおいても成功し得るとありました。しかし、これは、現実の技術的発展を知らないといえます。なぜならば、このサルの作出に使われた遺伝子操作や胚移植といった技術に関して、ヒトについては非常に詳細に調べられておりますので、サルでの成功よりずっと容易に成功を導き得るといえるからです。要するに、ヒトの生殖医療技術は非常に高い水準にあるのですから、後はこれらの技術をいかに管理していくのかという倫理面、法律面での問題といえます。その点での国民的な合意形成を急ぐべきと考えます。
- 動物の心を知る?
動物の心を知る人はそう多くはないだろう。いや、知っているつもりでもそれは自分の心を鏡にしてその像を動物の心をみたものと思っているに過ぎないことが多い。訓練・学習で物を覚えさせ、その反応を見て心の現れと思うことも多い。動物が思考しているか否かは未だはっきりしない。脳科学が進んで動物の脳の構造が分かりつつある。ウマの大脳皮質もヒトの大脳皮質のように部位によって様々な特徴があることが分かりつつある。行動学的にウマの表情を客観的にとらえる指標もできつつある。それでも、もの言わぬウマの気持ちは分からない。ウマ、いや、それに限らず動物の心を分かる日が来るとは言い切れないけれども、そのような動物の不思議な面を考え解明していくのも動物生産学に学ぶ諸君らの楽しみの一つになろう。下の図はそれぞれヒトの脳とウマの脳である。新皮質において諸々の役割を担う部位を各模様で分別してある。どちらがどちらか分かるだろうか。(by 杉田) - 「タマゴのお話」
タマゴ(卵)というと、産婦人科の先生方や畜産関係者はともかく、一般の方々はほとんどが鶏の卵を連想されるようだ。私が「ウシのタマゴ、ブタのタマゴ」と言うのを初めて耳にしたときの母のきょとんとした顔が、それを物語っていた。彼女は、鶏の卵のような殻を持った卵の中にウシやブタが入っているのを想像したのであろうか?その母も私の「だってヒトも最初は卵でしょ。」という解説に、ようやく納得したようであった。
さて、ヒトを含む哺乳類のタマゴ(卵子)について紹介してみよう。
カモノハシなどの単孔類を除く哺乳類の卵(卵子)は、鳥類である鶏の卵と比べてずっと小さく、その多くが裸眼で見ることのできる限界の直径100mm内外、鉛筆やボールペンで点をついた程度の大きさであり、受精後3日もしくは4日で100個位の細胞数となる。哺乳動物の卵割(卵子の細胞分裂)は、他の脊椎動物や無脊椎動物よりゆっくりしたテンポで進む。カエルの卵は1時間に約1回分割し、金魚の卵は20分毎くらいであるが、マウスの卵子は最初の卵割に約20時間を要し、引き続く卵割に各々約10時間要する。マウスの胚盤胞(哺乳動物の胞胚をいう)の腔(隙間)は、20-30細胞以上の細胞が存在する時に形成され始めるが、ハムスターではマウスより早く、すなわち、細胞の数が少ないうちに胚盤胞になる。ウサギにおいては、マウスよりもっと遅くに胚盤胞の形成が始まるといわれている。
ウサギの胚盤胞は透明帯(哺乳動物の卵子に特有な卵子を包む膜)を着床(子宮壁に付着して発生を始めること)直前まで保持しているが、他の多くの動物種の胚盤胞は、拡張胚盤胞と呼ばれる透明帯いっぱいに膨れあがった時期の後、透明帯から脱出し、その後も着床するまで発育を続ける。着床時の胚盤胞の大きさは種によって異なり、マウスやラットでは、初期胚盤胞の1.5-2倍であるが、家畜では著しく増大する。ヒツジとウシの胚盤胞は徐々に細長くなり、妊娠の2-3週の着床の前には、約20cmの長さに達する。ブタの胚盤胞は、着床前、妊娠の9-16日の間に小さな球形の胞状のものから約300倍に伸長し、長さ1m以上の細長い管状になる。これは胎児を取り囲んでいる絨毛膜嚢の伸長によるものであり、胎盤が形成される前に子宮腺からの分泌物の吸収を増加させるためと考えられている。しかし、胚盤の大きさにはそれほど大きな変化は見られず、その後両端から退行して短くなる。また、マウスや豚などの多胎動物(1回のお産で多数の子を産む動物)においては、着床時に胚が適度な間隔をとって着床すること(スペーシング)が知られており、さらに家畜では、ヒトと違って子宮が2つの角に別れているが、子宮内移動という一方の子宮から他方の子宮へ胚が移動することや、腹腔内を胚が移動し、他側の子宮内へ侵入する腹腔内移動が知られている。これらの詳しい機序については、まだ明らかとなっていない。
卵1個にも、生命の遺伝子保存の術の素晴らしさが包含されていることを学生諸君に伝え、驚嘆を共有できればと日頃思っている。 (吉澤緑)
- 世紀の名著「動物生産学実験実習マニュアル」が作成される前に、生物科学実験の前期(主に解剖・形態学の実験実習を行っている)では、適当に作成したプリントを使用していました。その中に「ここは読まなくていいよ」というコラムを載せてました。「動物生産学実験実習マニュアル」の発刊に伴い、それは記載されなくなりました。でも、せっかく書いた文章なので(いくら拙いとは言え)ここに載せておきます。
哺乳類の首の骨の数はその進化の中で非常によく保存されている。キリン、ヒト、クジラ・・・どれも首の骨の数は7個である。これほどよく保存されていることは驚きだが、例外もいる。ミツユビナマケモノのそれは9個である。この動物は四肢で木にぶら下がって生活しているのだが、彼らは木にぶら下がったまま首を180度回転させて真下を見ることができる。首の骨の数が多いほど首をよく回せるのは簡単に想像できる。おそらく首の可動域が彼らの進化のテーマの一つなのだろう。 また、指の骨の数(指の数じゃないよ)もよく保存されている。アイアイ、ヒト、ウマ・・・どれも指の骨の数は3個である(ただし親指は2個)。しかしここにもアウトローがいる。シロナガスクジラの人差し指の骨は8個、ヒレナガゴンドウのそれは14個もある。アザラシ、マナティー、そしてイルカに到るまで指骨の数は3個に保存されている。いったいクジラのどんな進化のテーマが指骨の数を増やしたのだろうか。
映画「ジュラシックパーク」の中に恐竜の子孫は鳥類であるという言葉が出てくる。この説は今でこそ世界中で受け入れられているが、長いこと議論の対象だった。現在鳥類が恐竜の「子供」であることは、結局骨における共通点の多さで決定されている。例えば、アロサウルスの骨は中空であり、その左右の鎖骨はくっついてブーメラン状になっていた。これらの特徴は鳥類特有のものであり、ワニ(ワニは恐竜の比較的近い「イトコ」である)など他の爬虫類には見られない。また、ベロキラプトル(「ジュラシックパーク」で活躍?した体長2~3メートルの凶暴でズル賢くて素早い肉食恐竜)の恥骨はワニのように前方ではなく、鳥類のように後方に向いていたのである。「生きている恐竜を見たい!」という願いはだれもが一度は持つだろう。その願いが実はかなっていることを示してくれた古生物学者達は偉大である。古生物学者は我々以上に形態学を勉強しているのかも知れない。
私(この欄の執筆者)は「ロボコップ」や「ユニバーサルソルジャー」などのSF映画が好きである。この2つ、娯楽映画としても面白いのだが、この2つには妙な共通点がある。主人公アレックス・マーフィーやリュック・デブローは一度死んでしまうのだが、科学技術の力で「ロボット」に改造されるのである。そして彼らはその任務を遂行して行く内に生前の記憶を取り戻し、また、感情も取り戻して行く。前置きが長くなったが、ここでこんな問題提起をしよう。彼らには「魂」というものがあったのだろうか? もし死とともに「魂」はあの世へ行ったのなら、彼らは記憶も感情も取り戻さなかったのではないか? あるいは、彼らの記憶や感情の源は死後も体内に残っていたのだろうか? 最近の脳の研究から、記憶や感情が起こる仕組みが神経細胞の回路や神経伝達物質の分泌などで説明され始めている。臨死体験(瀕死の重傷を負った患者が病院のベッドで寝ている自分の姿を見たとか・・)さえ、ある程度は脳の研究から科学的に説明がつく段階まで来ている。脳の研究に携わる人は、一応は「生物には魂というものはなく、記憶や感情は全て脳の機能から生み出されるものである」という立場に立つだろう。上述の映画もそういう立場で作られたようだ。もし科学技術が進み、実際に死者を動かすことが可能となった時、彼らはどんな動きを示すか・・。脳の研究者のハシクレとして、不謹慎ながら楽しみである。
数年前、なにかの雑誌で人工肝臓の話があって、「できるわけないだろう」と思った。人工腎臓や心臓のペースメーカーと異なり、肝臓のような多機能で代謝に関わる臓器の再現など無理と思ったのだ。しかし実際に人工肝臓の研究は盛んに行われている。下記の記述は、某研究機関のホームページからの転載である。「・・ハイブリッド型人工臓器*を開発するためには ・・中略・・ 体内において臓器機能を再現、維持する技術を確立することが不可欠である。本プロジェクトチームは、このためには生体組織の構造を三次元的に模倣する(biomimetic)ことが有効であることを肝細胞、軟骨細胞、血管内皮細胞などについて示し・・・」 ここで注目すべき箇所は、この研究チームが、臓器の役割のマネをするには、それの組織の三次元的構造、つまり「形」をマネすることであると考えていることである。生体の「形」はそのまま「機能」の現れである。体全部、器官、組織そして細胞1個に到るまで、その形はある目的を達成するために適したものになっている。順序は逆だが、人工臓器の話がそのことを思い出させてくれる。
*ハイブリッド型人工臓器:人工物と生物組織(人工肝臓の場合は肝細胞)を組み合わせて作成される人工臓器
紀元前4-5世紀頃、砂漠の多い地方ではヒトコブラクダがほとんど唯一の輸送手段であった。そしてラクダは戦争にも使用されていた。輸送用のラクダもそうであったが、戦争用のラクダにもその取扱いの容易さからメスが頻繁に用いられていた。このラクダの軍隊を迎え打つ側の参謀は一計を案じ、押し寄せる敵軍の中にオスのラクダを放ったのである。ラクダは交尾排卵動物であり、ほとんど常時発情している。発情メスはオスに遭遇すると、交尾をし易いようにと反射的に座り込んでしまい、数時間は立ち上がらない。この作戦によりほとんどメスで構成されているラクダの軍が攻め込んでくるのを防いだのである。ラクダの生理と行動を熟知した上のすばらしい戦略と言えるだろう。これだけでもけっこう話のネタになるのだが、さらに驚くべきことは、この「オスによる防御」に対し攻め込む側の参謀が用いた戦略である。攻める側は、メスラクダに卵巣摘出手術を施したのである。発情は卵巣より分泌されるエストロジェン(女性ホルモン)の作用により引き起こされる。すなわち卵巣を摘出してしまうと発情は起こらず、オスと遭遇しても座り込むことはない。彼らは外科的手術の技術を持っていただけでなく、発情が卵巣の働きによりもたらされることを知っていたのである。手術器具もレントゲンもラジオイムノアッセイも無く、エストロジェンの存在が知られる2000年以上前の話である。彼らの獣医畜産?に関わる技術と知識と、そしてなによりも洞察力には感服するばかりである。
青山 真人 - 私青山は、栃木県農業大学校で家畜解剖学の非常勤講師を務めさせて頂いております。そこで使用している資料(世紀の名著「動物生産学実験実習マニュアル」が元になっている)に、また下らないコラムを載せております。「ここは読まなくていいよ」が好評だったかどうかは分かりませんが、一応ここで紹介させてもらいます。
デンキウナギ、デンキナマズ、シビレエイいう魚を知っているだろうか?電気を体内で発生し、我が身を守る魚である。特にデンキウナギの電圧は最大で800ボルト以上にもなる。これらの魚の発電器は、実は筋肉である(ただし、収縮という機能は失っている)。 筋肉は、「動け=収縮せよ」という命令を、運動神経から受けているが、この運動神経は、軸索というケーブルを筋肉に伸ばしている。筋肉は細長い筋細胞の束(たば)でできているが、軸索は数多くの枝分かれを持ち、ひとつひとつの筋細胞全てにこのケーブルをつなげている。軸索を介して来る命令は、最終的には電気信号として各筋細胞に伝えられ、筋肉の収縮を起こすのである。 デンキウナギなどの発電器となった筋肉(もと筋肉)は、その筋細胞の片側にしか軸索がつながっていない。片側にしか電気信号が来ないため、細胞自体の両端に電位差が生じる。彼らはこれによって発電しているのである。しかも、この筋細胞は形が平たく、何百にも積み上がっており、ちょうど電池の直列つなぎのような仕組みになって電圧を上げている。電気を発生する魚は、ある目的を持って作られたものが、状況に応じて他の目的にも使うことができることを示してくれる。 ちなみにカツオノエボシ(デンキクラゲ)は、毒で他の生物をしびれさせるのであって、電気を発生するのではない。カツオノエボシは、多分デンキウナギよりも危険だから気を付けよう。
寄生虫というコトバを聞くと、だれでも「気持ち悪い」「病気のモト」と思うだろう。実際に寄生生物(細菌、ウイルスも含む)が原因の病気はたくさんある。また、寄生バチは他の昆虫にタマゴを生みつけ、その子は最終的に宿主を食い破って出てくるという「エイリアン」のような恐ろしい寄生虫もいる。しかし、宿主に利益をもたらす寄生生物も多い。「パラサイトイヴ」というSF小説(映画にもなった)では、生物の細胞はミトコンドリアを寄生させて共生関係を営んでいるという前提から始まっている。細胞にとってもはやミトコンドリアはなくてはならない存在である。それと同じくらい宿主と寄生生物が強い絆で結ばれているのが、反芻動物とその反芻胃内に住むバクテリアであろう。反芻動物(ウシ、ヒツジ、ヤギ、キリン、インパラ、ヤク、トナカイ等々)は世界中に広がっている。(代表して)ウシは、その巨大な反芻胃内にバクテリアを飼っている。バクテリアはセルロース(紙の成分と思って良い。デンプンと同じブドウ糖が鎖のようにつながってできているが、ブドウ糖同士のつながり方がほんの少し違うために本来哺乳類には消化できない)の消化を行い、これの分け前をウシに与えているのである。もはやウシにとって体内のバクテリアはなくてはならない存在なのだ。その代わり、バクテリアは、常に一定条件に保たれた環境で生活でき、ウシが食事をする限り食べ物に困ることはない。バクテリアにとっても、やはりウシがなくてはならない存在なのである。 この前話題になった口蹄疫を引き起こすウイルスや狂牛病を引き起こすプリオンは、反芻動物よりも先に絶滅してしまうかも知れないが、反芻胃内のバクテリアは、反芻動物がいる限り絶滅はしない。「パラサイトイヴ」に登場したミトコンドリアは、「核」に対し反抗しようとしたため、結局死んだ。天然痘を引き起こすウイルスも滅びた。病気を引き起こす生物も、寄生バチも、エイリアンも、宿主に害を与える寄生生物は、いつかは滅びる運命なのかも知れない。
大切な物事を「肝腎」とか「肝要」とか言う(「かんじん」は「肝腎」であり、「肝心」ではない。まあ、腎臓も心臓もなくてはならない器官だからどっちでもいいと思うが・・)。大事なことを心に刻み込むことを、「肝(きも)に命じる」と言う。また、英語で肝臓のことをliver(レバー)というが、これはlive(生きる)から来ているみたいだし、ドイツ語での肝臓Leverはやはり生命という意味のLebenから来ている。肝臓が生命に関わるとても大切な臓器だということは、昔から洋の東西を問わず理解されていたことがうかがえる。 一方、すい臓は英語でpancreasという。このコラムの執筆者がそうであったように、一瞬「パンクラス(Pancrase:船木誠勝と鈴木みのるが設立したプロレス団体)」との関連を思い浮かべてしまう人もいるだろうが、残念ながらこっちの方はあまり関連がない。すい臓:pancreasの語源はギリシャ語で、pan(全て)とkreas(肉)ということらしい。見た目の色とさわった感じが、肉に思えることから、「全体が肉の臓器」という意味でついたとのことである。ちなみにパンクラスの名前の由来は古代ギリシャの総合格闘技パンクラチオン(Pancratium)である。Panは「全て」、cratiumは「支配」とか「権力」を意味する言葉である。パンクラチオンは、「全てを支配する」=「最強の格闘技」だと言いたかったのだろうか。すい臓(pancreas)とパンクラス(Pancrase)の共通点は、ギリシャ語のPan(全て)だけである。
- ガラパゴス島では、ゾウガメの人工繁殖に尽力しているが、家畜に比べて難しいところがたくさんある。難しくしていることの一つに、爬虫類は交尾を何時間も続ける、というのがある。(by 青山 真人)
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- 反芻動物(ウシ、シカ、カモシカ、キリンなど)は、胃が4つある特殊な哺乳類だということはよく語られるが、角がある特殊な哺乳類であることは全く語られない。唯一の例外はサイ。(by 青山 真人)
- 海に住んでいるのに、フグは「河豚」と書く。ちなみに「海豚」はイルカ。(by 青山 真人)
- 深海魚といえばアンコウ。ある種のアンコウのオスは、大人になるとメスに寄生し、その血を吸って生きる。生殖器と生きるために必要最小限の器官以外はすべて退化してしまう。「究極のヒモ」と言えよう。(by 青山 真人)
- 水の上を歩く昆虫アメンボ。あれは、「雨ン坊」と思われがちだが、実は「飴ン坊」。理由は、飴のような甘い香りがするから。(by 青山 真人)
- 地球上に現れた動物で、自由に空を飛べる(飛べた)のは、翼竜、鳥類、コウモリ、昆虫の4種のみ。このうち、前足を前足として残したまま飛べるのは昆虫のみ。(by 青山 真人)
- ディズニーのキャラクター、ドナルドダック。「クワックワッ」と鳴くが、実はあのような鳴き方をするのはメスのアヒルだけ。ドナルドは実はメスか? (by 柿崎 美代)
- 中国には、「馬鹿」という生物が存在する。読み方は、「マーロー」。ただ、見た目がウマに似たシカであるというだけの理由で、他のシカに比べて劣っているわけではない。(by 青山 真人)
- ヒツジの尻尾は短いと思っている人が多いでしょう。本来、ヒツジの尻尾は地面に届くほどに長い。飼われているヒツジは、管理上便利だという理由で、仔ヒツジの頃に尻尾を切られるのである。(by 前島 裕子)
- パンダのぬいぐるみの尻尾は黒いが、実際のパンダの尾は白い。パンダが日本に来た当時、ぬいぐるみを作る人のもとには、尻尾が写っている写真がなかったため、想像で尻尾を黒くしたのである。(by 青山 真人)
- ちなみに、日本全国で、尻尾の白いパンダのぬいぐるみが手に入るのは、パンダが最初にやって来た上野動物園だけである(らしい)。(by 青山 真人)