アグリ支援機構 宇都宮大学農学部

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コラム
日本固有の誇れる財産

  日本は中緯度温帯に位置し、数多くの植物相を有する”緑豊かな国”です。シダ植物と種子植物を含めると、約5,300種の野生植物が日本列島に生息しており、そのうち約1,800種(34%)が日本固有のものです。これらの野生植物は日本列島の多様な自然環境に適応して進化を遂げ、今日まで生き抜いてきた強者であり、日本の誇れる財産といえるでしょう。  

ゴミ袋対策実験中の様子とカラス

(イワダレソウ改良種の花イワダレソウ・ピンク=写真上=と琉球大農学部での台風時におけるイワダレソウ改良種を用いた赤土流出抑止効果試験。右の植栽区に比べ左の裸地区での流出がはげしい)

●破壊の助長に

残念ながら、この貴重な野生植物の自生地が、高度経済成長期以降、農耕地の宅地化、ダムの建設などにより、急速に破壊されてきました。しかし、将来的に危惧されるのは、安易な外国産植物の導入による、破壊の一層の助長です。近年の園芸ブームにより、各家庭の庭やベランダが花などで美しく飾られ、私たちの目を楽しませてくれます。この中には海外から導入されたさまざまな植物が使用されています。ところが最近、その一部が本来使われるべき場所から逸出し、道端や空き地などで見かけることが多くなりました。こうした植物は日本固有の植物にとって脅威なのです。

私の研究室では、屋上緑化、砂漠緑化、土壌保全など環境保全のために、日本に自生する野生植物を有効に利用する研究を行っています。これまで世界で最も耐塩性の高い日本芝などを選抜しており、これらの植物を用いた屋上緑化試験も公開しています。ここでは「イワダレソウの改良種」について紹介します。イワダレソウは草丈が低く踏み付けにも強いことから芝に替わる地被植物として着目されてきました。また緻密性に優れ、根が地中深くまで到達することから土壌流出抑止効果に優れることも分かっています。この改良種は、日本最西端の与那国島に自生していた在来種を基に改良したもので、昨年3月農林水産省に新品種として種苗登録されました。在来種は、緻密性などで優れていますが、寒さに弱いので利用地域が限定され、種子をたくさん付けるので周辺の植生を乱す心配もあるという欠点があります。

 

●世界中で試験

  改良種は宇都宮でも一部緑を保った状態で越冬するほど耐寒性を持ち、緑化期間が長いので世界のさまざまな地域で生育可能です。また、種子による繁殖能力が極めて低く、さらに管理方法も確立しているので周辺植生を脅かす危険性は少ないと考えられています。こうしたことから、世界各地での土壌流出抑制や緑化に有効であると思われ、既に、いくつかの国から問い合わせがきています。現在、韓国とアメリカでは、現地での適応性試験を始めており、中近東諸国での緑化試験も計画されています。野生植物を単なる雑草と見るのは、私たちがまだその有用性に気付いていないからです。まだまだ日本にも、優れものの野生植物がたくさん存在しているはずです。そんな目で見ると、道端の雑草も、どこか頼もしく見えてきませんか?  
掲載
(2005年4月3日 下野新聞掲載)
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