アグリ支援機構 宇都宮大学農学部

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コラム
カラスに学ぶ都市生活

  当地、下野の地でも昔は、豊作や山仕事の安全を祈願する「山入り」や「鍬入り」の神事にカラスにお供えをしていたそうです。カラスは、本来「神の使者」としてステータスの高い鳥でした。  


ゴミ袋対策実験中の様子とカラス(ゴミ袋対策実験中の様子とカラス)

●嫌われもの

「神の使者」としてのカラスは足が三本あり、ヤタガラスと言われました。神武天皇が東征の途上、このカラスに道案内されて熊野山中を行軍したと「古事記に記されています。全国にヤタガラスをまつる神社も多くあります。このように、カラスは昔から人の生活と、とても関係の深い鳥なのです。

そのカラスですが、どこの国でも嫌われものです。神の使者としての起源を痔つ中国でさえ縁起の悪い鳥となっています。またトルコでは農作物を荒らすカラスの首に、賞金がかかっているようです。一昨年訪ねたエジプトではホテルの裏のごみ捨て場に群がるカラスにホテルの従業員が困っていました。

ところで、都市化とともに浮上してくる問題としてごみの問題が挙げられます。一時、ごみの量が生活の豊さのパラメーターとなった事さえありました。しかし、今は限られた資源を無駄にしないよう質源のリサイクルや循環型社会の形成が叫ばれる時代となっています。そうはいっても、消費に慣れた私たちはいまだごみ問題を解決できていないのです。

このごみ問題と切り離せないのが東京などで問題になっているカラスのごみ集積所への到来です。カラスが生ごみを食い散らかし集積所付近は目を覆うほどの汚さです。また、人間の食い残した生ごみは栄養もあることからどんどん繁殖率があがり、東京都区内のカラスが十五年前の約五倍(推定約三万五千羽)にもなっています。

宇都宮市はよだ深刻ではありませんが、早朝の本町釜川付近では飲食店から出された生ごみがカラスに食い散らかされているのを目にします。東京の現象が起こり出しているのではと心配になります。

 

●共存考える

  このカラス害を解決するため、私の研究室ではカラスの体の仕組みや学習能力を調べるとともに産学連携で対策グッズを開発しています。

昨年は、カラスが嫌がるごみ袋の開発に成功しました。現在も数々の品を試しています野生生物との空間を分かち得なくなった人間とカラス・野生動物との共存を考える試みです。

私はカラス対策を考えながら思います。「ごみの問題はむしろカラスというより都市化に伴い隣人をも気にしない利己主義が作りだしたごみ出しのモラルや食糧問題の意識の低さが原因」だと。

カラスは自然との調和とその恵みの尊さを忘れてしまった私たちに対し、"闇(あん)"にそれを諭しているのではないかと思います。

やはりカラスは、「神の使者」なのかもしれません。

 
掲載
(2003年5月19日 下野新聞掲載)
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