アグリ支援機構 宇都宮大学農学部

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コラム

ふん尿の隠れた力

  県内では牛や豚などの家畜がたくさん飼われており、私たちにおいしい牛乳や肉を提供してくれます。しかし、多くの家畜を飼っている地域では排出されるふん尿の量も多いため、周辺地域へのにおいや汚水の流出防止対策などさまさまな問題を抱えています。

私たちは古くから人や家畜のふん尿は作物の肥料として大切に使ってきました。それは、ふん尿に含まれている養分が本来は土の中にあったもので、再び土に返すことが自然だと知っていたからでしょう。しかし、かつてのように程良い量ならば土も歓迎して受け入れますが、多すぎては土の受け入れ能力を超えてしまいます。

その結果、過剰な養分は土を通り抜けて地下水へと流れ出て水を汚染します。水の汚染は私たの生活を脅かし時には生命にかかわる深刻な問題になることもあります。

 


ゴミ袋対策実験中の様子とカラス

(ゲルフ大学農場の家畜ふん尿メタン発酵プラント=カナダ)

●頭数を制限

では、どうすれば良いのでしょう。同じような悩みを抱えていた北欧国デンマークの例を紹介します。

デンマークは農業が盛んで国土が狭いところは日本と良く似ています。特に国土の三分の二が農地であり、もしも農地が汚染されると環境への影響がとても大きいのです。

そこで、デンマークではハーモニールールと呼ばれる環境に配慮する決まりを作り、家畜、土、水の調和(ハーモニー)を保ち、環境を保護する取り組みを行っています。家畜のふん尿を土へ過剰に与えすぎないように牛や豚の数を制限しているのです。デンマークの取り組みはこれだけではありません。ふん尿から微生物の力によりメタンガスを作り、これを燃料にして発電も行っています。

このような環境と調和した農業により地下水汚染を抑制し、なおかつ石油を使わず、メタンガス発電をすることで地球の二酸化炭素蓄積を抑制しようとずる取り組みは、日本にとって大変参考になります。

 


ゴミ袋対策実験中の様子とカラス

●過剰養分を利用

  私は企業と共同で家畜ふん尿のメタンガス化や低コストで有機肥料をつくる研究を行っています。また日本は食料や飼料の輸入が過多で、いわば外国からの養分により、国全体が養分過多の状態にあります。

そのため、ふん尿を肥料化して農地で使うにしても、国内で利用できる以上のふん尿が排せつされてしまっています。国全体が地下水汚染をはじめとする深刻な環境汚染の被害を受ける前に、過剰な養分を多様に利用する研究も行っております。例えば養分の輸出や海洋バイオマスの生産などです。

家畜と環境の調和を図ることはもちろん、日本国内の養分量の適切な管理を行い、デンマークをはるかにしのぐ環境調和型社会を実現する、そんなことを夢見ています。

 
掲載
(2004年8月16日 下野新聞掲載)
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